「黄薇ぁ…」
狂った俺は手を伸ばす。
伸ばす、伸ばす、伸ばす、弱々しくも手を伸ばす。俺の目の前にいる黄薇に…
こいつはまだ小さく、たったの五歳の子供だ。
だが同士であり仲間であり親友であり家族であり…そして俺の最愛の……
だから俺は手を伸ばす。俺の為に、とにかく自分だけの為に。コイツを手放したくない強欲。一人は嫌だと言う本能…欲望…全て俺のためだ。
考えたくもなかった、俺を見て嫌悪する可能性など…黄薇が俺から離れようとする所を…、そしてなにより俺の手から離れて行こうとするところを!!
俺の本性を見た黄薇…だが、目にはなんらかの感情が映っているがそれでもまだ何もしないで動かないし声も出さない…俺には好都合だ。
コイツは…黄薇は俺の手元から離れていくか?あぁそうだろう。俺の本当の姿を知ったのだから……
“隠す必要はないだろ!?”
あぁそうだ、お前が俺から…俺から離れるくらいなら…狂ってる俺がお前を壊してやる。
“そうだろ?今、目の前にいるコイツを、壊してしまおう!”
あぁ、それが一番だ…。そうだ、そうだろ!?
嗚呼、愛しい。嗚呼、狂いたい、何故だ?
黄薇が俺から離れるくらいなら我慢なんてしない…俺の快楽の為に…欲望に操られたのままお前を壊してやる!
逃げようと歯向かおうと命乞いしようと誤魔化そうと泣こうと喚こうと何をしても俺はお前を壊す!
“黄薇、お前は一生俺のものだ…死んだ後もずっと…ずっと俺のそばに……!”
ずっと一緒だ…永遠に俺の手の中で美しい、ずっと…永遠に……
「コウにぃ?ねぇ…」
そう…決めた、コイツを欲望のまま壊してしまおう決めたのだ。
最悪な決断を下した俺は、しっかりと見られたと自覚してた時から元々伸ばしていた手を、弱々しい手から、徐々にハッキリと黄薇に向かって伸ばし始めた。
「…………」
黄薇は見る。まっすぐと俺を…。
何をされるかまったく分からずも本当の俺見た後でもどうしてか少しも目を逸らさない。
あぁ…本当にかわいい…美しい…壊してしまいたい。綺麗なお前の顔を苦痛ニ満ちタ顔に歪マしタイ…アァ、アァ…アァ……オマエハホントウニウつクシい…。ソンナおマエを…オレハ…俺は……
そんな歪んだことを考えながら、少ししか離れていなかった距離をさらに詰めて、黄薇に手が届くところまで来た。
そして俺は黄薇の体に手を伸ばした。
そんな狂った俺に黄薇は、抱き付いてきた
「…っな……?」
「コウにぃ……」
なぜ触れる?
なんでだ?なんでお前はこんな汚れた俺に触れるんだ?
人を殺しても罪悪感が沸かず、血を浴びて血だけで手はふやけてしまうような俺に…なぜ触れる?お前も俺があの忍び達を殺したのを見た筈だ。脅えて逃げてしまう筈だ…なのになんで自分から俺に触れる?
分からない…自分の中で疼くような感情が分からない…。
俺は黄薇をどうしたい?
壊したいのか…?脅えないで欲しいのか…?受け入れて欲しいのか…?もしも俺を哀れむというのならそんな同情なんていらねぇ。そんな事をされるくらいなら壊してやる。脅えを隠しているというのなら隠すな…、隠さなくても隠してもお前が俺を受け入れない限り俺に救いなんてないし、お前が俺を受け入れるなんてある筈が無い…。
それでも、俺は救いが欲しい。コイツと本当の意味で一緒に居たいというふざけた救いがだ。
俺は自分で自分を見直して侮辱し、そう考えながらも自分が何をしたいか何度も考える。
俺は、黄薇をもしも、壊したいなら壊せば良い。俺は俺の欲望が満たせれば良い。
なのに…なのに………なんで俺に触れるコイツの手が心地良いんだよ………
「…コウにぃ…わたしを見て?」
そう言いながら、俺の腹に顔を埋めていた顔を黄薇は俺に向ける。
「っあ”…」
しっかりと俺を見つめていた黄薇の眼に、負の感情など無かった。ただただ、俺の本性を見ても前と一切変わらずに見てくれている…いや少しは変わったが、それはむしろ幸福感からくる感情だ。
「わたし…知ってたよ?コウにぃがずっとわたしに何かかくしてたの…。守ろうとしてたの…。
何をかくしたかったかは分からないけど、コウにぃがわたしを守ろうとしてたがすごい嬉しかった…反対に何もかくさないでほしかった…。コウにぃがかくしたかったことはわたし…知っちゃったけど、わたしはこれを見ても嫌わないし、むしろコウにぃのことを知れてもっと嬉しい…。
わたし…コウにぃがどんな人でも大好きだよ…?」
――――――俺はこの言葉だけで救われた。黄薇が俺から離れないと知っただけで十分だった。
「例え、コウにぃが人殺しでも犯罪者でも殺人鬼でもわたしは受けいれるよ?」
――――――――だが、それ以上に黄薇は異常だった。
「拾ってくれて、やさしくて強くてかっこよくてそんなコウにぃが今までも、本当のことを知ったいまでもわたしは、本当に本当に大好きで…それで――――」
「―――すごく愛してるよ」
黄薇は、それが当たり前の様にそう言った。
後に続く言葉さえも。
「―――狂わせたいくらいに……ね?」
「―――――」
黄薇は綺麗な笑顔でそう言った。それが当たり前かのように、自然に言い切った。
「ふ……はは、ははははははははははははははは!!」
「…?」
何故俺が笑っているか黄薇は疑問にしているが、俺は可笑しくてしょうがない。
結局、どちらも初めから狂っていたのだ。
「コウにぃがどんな事をしてても…わたしは大好きだよ?ずっと…ずっと一緒だよね?」
「っくくく…」
あぁ、本当に自分が思ってる事がくだらなかったようだ。勝手に離れられると思い、黄薇を壊そうとして…俺は自分勝手だな…。
だから俺は、コイツのために…幸せにする為にこの世界で生きていこう。
「…あぁ、ずっと一緒だ。なんたって俺達は家族なんだからな。
喧嘩したら仲直りすればいいし、誤解があったら解けば良い…。お互い気を使うなんてなしだ。」
そう言いながら黄薇の頭を撫でてやると、目を細めて、幸せそうに笑う。
「うん!コウにぃとわたしはずっと一緒だよ!
かくしごととか無しだし…ずっと一緒に旅もするし…一緒に色んなことするんだよ!!
そう…ずっと…ずっと……コウにぃと…いっしょ…に……」
そう言うと、惚けた表情で胸に手を当てる。
「あぁ、いつでも一緒に居てやるよ。本当に…隠し事はしないし、一緒に色んなことしてな?
大好きだぞ黄薇…、壊したいくらいにな…」
「うん…わたしもだよ…?」
あぁ、俺はやっぱこいつを好きになって良かったのだろう。いくら傷の舐めあいでも、性格が違くても…あの黄薇の告白があったおかげで安心できた。
だから、俺はこの世界では、家族を守る為に動こう。一般人には極力傷付けねぇし、俺が愉快になる為に色々な事だってする…それでも第一は…家族の為に力を振るうと決めた。
「さて…とりあえず…ここら辺から出ないといけねぇし行くか。」
「うん…あの…さ、コウにぃ…」
黄薇は言い難そうに体を縮め、口を窄める。
「ん、どうした黄薇…なんだ?」
「ぇっと、手ぇ…繋いで…?駄目…かなぁ…?」
「…」
っは!?アカン、我慢だ我慢。いくらなんでも五歳はロリコンどころか外道って言っても過言じゃねぇ…。
しかし…黄薇も初心だな…かわいい奴め。いつもだったら自然に繋げるのにな…。
「ほら、どうぞ?お姫様?」
俺はそんな事を思いながら、血だらけの手を差し出した。
「うぅ、からかってぇ…。でも、ありがとう…コウにぃ…」
黄薇は万遍の笑顔で嬉しそうに、少し照れながらも血だらけの手を取る。
あぁ…これからも…ずっと一緒だ。
そう…“永遠に…ずっと一緒だぞ、黄薇?”