「…ぁ…ハァ……ハァ…」
途切れ途切れにいきをしながら、川にそって歩く。
今にもコウにぃを傷つけてしまいそうで、それが怖くてあのばから走ってここまできた。
戻りたい。
できることなら今すぐコウにぃの所にいきたい。そばにいっていつもみたいに落ち着きながら寝たい。けれど今あの人を見ると、殺してしまいそうになる。
「ぁ…ははぁ……ぁはははっ…」
せめてこの嫌な身体の疼きがとまるまで、遠くに居ようとあるき続ける。
「コウにぃ…」
無意識にあの人のなまえが口がらもれる。
「アハッ……ハはは…は……」
わたしの笑いがもりに響く。そのまま何かにすいこまれるように聞こえなくなった。
「………」
どうしてこんな事になってしまったんだろうか。なんであいしている人を殺してしまいたくなるんだろうか。なんで…なんで…―――――我慢しなくては行けないのだろうか?
「っ!!ま…た…」
少し気をゆるめると、黒い感情がわき出る。そろそろがまんの限界も近づいてきている。
「ハァ…ハァ…」
がんばって歩き続けるが、すすんでいるきがしない。いやな気分になってまた弱音をはきそうになった瞬間、
「―――――黄薇?」
一番愛しくて、今一番会いたくなかった人がいた。
Side コウキ
今の時間帯は夜、俺を照らしているのは月明かりだけだ。
急に、目が覚める。周りは暗くてよく見えていない。 早めに寝たのが原因で、夜が明けない内に起きてしまったみたいだ。
「…?ぅ…ぁ……黄薇?」
となりにいた筈の黄薇がいない為、回りを見る、見つからない。目を凝らしても耳をすましても見つからない。
「っ!?黄薇、どこだ!どこへ行った!」
いつもなら、水を飲みに行ったりトイレへ行ったりなんなりと色々あるだろうが、今回はなぜか、ものすごい嫌な予感がする。
とにかく、早く探そう。嫌な予感が当たってしまう前に…。
…
未元物質をばら撒き走りながら探索する。
「…っ黄薇?」
何か音が聞こえてくるので、聞こえてくる方向に歩き始めた。そうすると川が見え、よく聞くと黄薇の声が聞こえる。他に人もいない為、何か大きな問題がある訳でもなさそうだ。
「……ハァ…ハァハァ……ハァ…ハァ………」
黄薇を見つけた…のは良かったが、なぜか走った後のように、息を切らしながら川の近くを歩いている。
「…黄薇?どうした?こんな所まで来て…」
「…!?…ハァ……コウ…ハァ……にぃ…?ハァ…ハァ…コウにぃ?…ハァ…なの…?」
…何を言ってるんだ?そう疑問に想いつつも黄薇を良く見る。
なぜか黄薇の瞳には色々な感情が渦巻いてる。困惑、驚愕、後悔、そして…至福。
「コウにぃ…?」
「…?あぁ、俺だぞ、コウキだ…、探したんだぞ…?一体どうしたんだ?ここまで来て…」
「あぁ…ああぁ…ぁっ……ぁぁああああぁぁあぁあぁぁ…!!」
黄薇は何かを後悔…そして堪えているような甲高い声を出しながら頭を抱える。背を丸めて震える。
何を考えているか俺には分からなかった。
「黄薇」
「っ……」
そう呼ぶと同時に、黄薇の身体が強く震える。
――――それでも、黄薇ならば一体何だろうが受け入れたかった。
「黄薇」
再び名前を呼ぶが、身体を震わせない。
「黄薇」
足を進めながら呼ぶと、そっと顔を上げる。
「黄薇」
「ぁ…ああぁぁあ……」
黄薇は何かを耐えながら、脅えたように声を出した。それが何よりも愛しく思えて、身体にそっと触れる。
「黄薔、黄薇…黄薇」
何度も同じ名前を言いながら、黄薇を腕に閉じこめた。
Side 黄薇
コウにぃの腕の中で、涙を流しながら震え続ける。
「はぁ…あぁあぁぁ…ああああぁぁぁ…!」
触っちゃ駄目なのに、近づいちゃ駄目なのに…そんなことをしたら傷つけちゃうのに…、なのに…なのに…離れたくない、傷つけてしまうと分かってても離れたくないと自惚れてしまう…。
こんなにもコウにぃが欲しい!こんなにもわたしのものだけにしたくて…壊したくて殺したくて愛したくて狂わしたくて…こんなにも…!!
「駄目ぇ…なのにぃ……触れちゃ駄目なのにぃ……!」
わたしはコウにぃにやさしくだかれながら、泣きながら、無意識に口から言葉が出てくる。
「黄薇…?」
「コウにぃ…」
ガチガチと嫌な音が聞こえる。歯を鳴らす音だ。
「…ぁ…ぁぁ…ぁぁぁぁぁ……ぁ……」
声を甲高く出す。掠れながら長く…それでも我慢するために喉が引きちぎれるくらいに力を込めながら耐える。
嫌々嫌々嫌々嫌々嫌々!コウにぃを壊したくない!ずっと一緒にいたくない!今そんな事したら…わたしは…
でも…わ…たし……こん…な…にっ!!
歯が震える、汗が出てくる、声がうまくでない、涙が漏れる、うまく頭が動かない、腕が震える、無意識に手に力が入る。すべて…すべて自分の行為を我慢するための行動だ。
触れちゃ駄目
“触れたい、触りたい”
近づいちゃ駄目、一緒に居てはいけない
“近づきたい、ずっと一緒に居たい”
…傷つけちゃ駄目なのに!!
“傷つけたい、満たされたい、愛したい愛したい愛したいあいしたいアイシタイ…”
すべて、なにをどう考えようとしても無駄だ、もう自分を抑えきる自信なんて少しもない。この人が近くにいると幸福感に見たされる…。なのに…貪欲になってしまってもっと満たされたいと心が訴えてくる。
…嗚呼、無駄だ、はっきりと分かった、我慢なんてできない―――
―――いくら違うことを考えようとしても、自分の行動を嫌だという言葉が出てきてくれない!
「ぁはは…はは…あははっ…あぁ……だ…いす……きだ…よっ?…コウにぃ…」
自分から、幸せに満ちた様な声が出てきた。
「ぁ…ぁぁ…だ…ぁ、から…ねぇ…っ…?」
もう我慢はやだ、もうしない。
考えるだけで幸せになる。コウにぃを傷つけて、ばらばらにして、たくさんたくさん触って傷つけて壊して殺して…そうしたら…そうしたらわたしの物だけになってくるよね?
ずっと一緒にだよね?離せなくても動けなくても一緒に居てくれるよね?
そうだ、この幸福感は、ただの幸せじゃなくて心まで満たせるんだ。
ずっと一緒に居られるかもって思えて、コウにぃがずっとずっと…わたしの物って思えて…とても満たされる。
…だから…きっと、きっと傷つければ幸福感に満ちて、殺したら動けなくてなって…そうしたら…そうしたらがあっても、なにがおこっても最後まで一緒に居られるよ…?
「黄薇、大丈夫だぞ?」
「っぁ…」
そう考えていると、コウにぃは優しい声を掛けてくる。
「安心しろ、お前から離れなんてしない…」
「ぇ…」
この人はいつもそうだ
「行ったろ?お前の為に生きてやるってさぁ…」
「ぁ…ぁ…」
いつだってそうだった
「俺を傷付けたいならあればいい、お前が幸せになれるってなら俺はお前の物でいい。」
「ぁ…ああぁ…ぁ…」
わたしは今までしあわせだった、今だってそうだ
「なんだってしてやる。笑顔になっても泣いてても暴れて狂ってもお前が幸せになってないのなら、俺はお前を幸せにしてやる」
「あぁ…はぁ…あああぁぁ……ぁぁ…!!」
それはこの人が幸せにしてくれたからだった
「絶対に、お前が何言ったって、文句だって言わない…」
「ぁ…ぅぁぁ…うあぁ…ぁぁ……うぅ……」
わたしはいつも頼ってばっかなのに、馬鹿だった
「だから…だから教えてくれ…」
「うぁぁ…ううぅ……ひっぅ……ハァ……うぁ……ぁぁ…」
何がとても満たされるだ、なにがもっと幸せになりたいだ
「お前は、どうしたら今、幸せになってくれる?」
「うあぁあぁぁっ…うぁぁ…うああぁぁぁっ……!!」
わたしは、いつだってこの人がいるだけで最高に幸せじゃないか
「…大丈夫…だよぉ…」
「…んっ……」
だから、もうこれ以上は望まなくていい、望めない。これ以上のものは無いんだから…
「もう…いらない……もう…コウにぃがいれば…十分幸せだからぁ……いらないよ……」
「……そうか」
わたしはずっと貴方と生きていこう。何があっても心から一緒に居たいと思いながら。
Side コウキ
黄薇…お前はいつだって綺麗だ。何かを望むときも、笑ってても泣いててもお前が醜いと思ってる部分全て綺麗だ。受け入れようと苦にもならない。
お前の名前の由来は、薔薇。黄色い薔薇
黄色い薔薇の花言葉はたくさんの意味がある。
嫉妬、変わらぬ友情…だが、お前には今のどれのにも当てはまらない。
黄薇、お前に一番当てはまる黄色い薔薇の花言葉は―――――
―――――君のすべてが可憐。