一般的な認識が正しいとは限らない。

りんごはどうして木から落ちるのか?
空はどうして青いのか?
海はどうして波打つの?
炎はどうして熱いのか?

何を未知としてなにを既知とする? 解き明かすのは悪なのか。
いいや、否。そんなことは間違っている。
無知こそ悪で既知こそ正義。
神秘を守る聖職者と神秘を暴く解明者は相容れなくて当然だ。
神が怪異を使って解明者を殺そうとするのなら異世界の目をもって対処しよう。

神と人間の覇権争いの世界はようこそ、我々は異世界人を歓迎します。



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とある賢者の深相解明 ー未知/既知、怪異と異世界人ー

 

 

 「ヒトは潜在的に、未知なるものに恐怖を抱く。ゆえに、恐怖から逃れるためにヒトは事象を解き明かしたいという渇望を得た。

 

 渇望は学問という形で姿を表し、学問は積み重なって文明になった。既知とは力だ。解き明かす力こそ、この世で一番強い力なのだろう。

 

 しかし、それを許さない存在がこの世界には存在する。

 自らの正体が解き明かされたら困るもの……まあ、神とか呼ばれる秘密の究極みたいな連中だ。

 

 彼らは解き明かされた分だけ力を失う。暴かれた神秘(ひみつ)の数だけ彼らは特別性も減っていく。

 

 ヒトは未知を恐れるけれど既知となれば畏れない。

 タネの割れたマジックに感動しないように、奇跡も理由(しかけ)がわかれば感動しない。

 だから、神は神秘が薄れることを許さない。神秘のベールの向こうを覗き見る存在を許さない。

 だから、自らの領分を犯す愚か者を排除する機構を作った。目に見える脅威があれば、秘密を知ろうとする存在だって減るからね。

 

 だけど、人間はままならないものでね。一部の人間はそれでもなお秘密を探ろうとするろくでもなしがいるものさ。

 

 この世界で生きてる限り、怪異に襲われると必ず負ける。

 見えない、聞こえない、触らない。世界そのものに目隠しされてしまうのだから解き明かしようが無い。圧倒的に向こうの方が状況的に有利だから、一方的に襲われて死んでしまう。

 

 でも、怪異だって未知だから強い。正体不明だから彼らは強い。

 

 それを暴けば奴らは弱い。怪異は正体が見破られると致命的に弱体化する生き物だ。

 この世界のヒトの目は怪異の正体を見破れないけれど……この世界のヒトじゃなければそれは可能だ。

 

 わかるかな、異世界人。神を否定した世界で繁栄する神殺しの民。君たちだけが、神の領分を侵せるのさ。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 少年、セオドラの朝は早い。「ギョエー」とひどい鳴き声のニワトリにど早朝に起こされるからである。なお、雌鶏。

 本当なら二度寝したいがあまりにうるさくて寝れないので、仕方なく活動を開始する。

 

 まずは()()()()()。「いっちにーさっんしー」とリズムを刻みながらストレッチ。着替えてから顔を洗って、朝食をつくる。

 朝食を作ると言ってもあんまり労力は使わない。スイッチひとつで事足りる。技術者である父が作った全自動クッキングマシーンのボタンひとつで事足りる。セオドラが気をつけることは冷蔵庫の食材を切らさないようチェックするだけ。超高性能な素晴らしい機会だが、一品でも材料不足が発生するとオーバーヒートしてぶっ壊れるというとんでもない欠陥を抱えてるゲテモノだ。

 

 次はお掃除。これも同じくリモコンひとつでOK。半人型お掃除ロボの「ルンバ・アイロボ」が隅から隅まで綺麗にしてくれる。セオドラが気をつけるのは床に障害物を置かないこと。ひとつでもモノが落ちてるとルンバはすっ転んで家を破壊する(*総重量:300kg)

 まあ、机の上に置いておけば良いのでそこまで苦労はしてない。ルンバの伸縮自在なアームが定位置に片づけてくれる。

 

 その他諸々、父の発明品のスイッチを入れればあら不思議。掃除洗濯料理に水やり、家事の全てが終了する。

 (たいしたことしてないけど)ちょっとした達成感に額を拭った俺は最後の仕事に取り掛かる。

 

 己の部屋に戻り、徐に()()()を持ち上げ部屋を退出。本日は晴天なので遠慮なくテラスに出て、仁王立ち。大きく息を吸い込んで……パッパラパパッパラッパパッパラッパパーー(起床の号令)!!

 

 吹き鳴らすと同時に、室内でドタドタととんでもない音がした。「あいったぁー!」という絶叫も。どうせ昨日も夜更かしして機械いじりしてたんだ。足の踏み場もない床を思い出してうんざりする。どうせまた重量級の機械作ってたんだろう。重い・デカい・バカ高いの負の三拍子系のやつ、ら一度床抜けて一階が潰されたのにまだ懲りないんだな。というか、アリーシュの部屋の床は歪んでるから少しでも散らかせば部品で池みたいになるのに。

 あれ、片すの大変なんだぞ。誰が後片付けをすると思ってるんだ。もう俺はやらないぞ。やりたくないからな。片せというのならそれ相応の対応をするぞ(プンスコッ!)

 

 「……なーんちゃって」

 

 まだ部屋の中で悶えてるのか。一向に出てこないアリーシュを想って、俺は再び頬を膨らませる。集合合図を奏でてやれば再び「ぎゃーー!!」と悲鳴が上がる。

 

 がらら!と勢いよくガラス窓が開く。朝から痣と擦り傷をこさえた若い男が長い髪を振り乱しながら這い出してくる。

 髪で隠れた顔の向こう。寝不足で充血した目がギラリと光る。

 

 「セオーー!!

 ラッパはやめてっていってるだろ! もう!!」

 「やだよ。こうでもしないとお前起きないじゃないか」

 

 ぱっぱらぱっぱら意味のない曲を演奏して、「アリーシュが一発で起きる目覚ましだからわざわざ覚えたんだぜ」と胸を張ってやる。

 

 アリーシュ、まあ俺の父親は「毎朝心臓に悪いんだよぉ……」と情けない顔で崩れ落ちた。

 

 そう、この寝癖まみれで髭ボーボーのもじゃもじゃ男が俺の養い親。血のつながりがない義理の父親だ。通名はアリーシュ・ペップバーン。この「薔薇の国」の軍務を代表する一族、ペップバーン家の放蕩息子だ。

 

 アリーシュはその家の嫡男だったのに研究に狂った突然変異で、一度は軍(しかも近衛部隊)に所属したりしたのだけれど、あろうことが大切な女王陛下の戴冠式の警護任務をすっぽかしたため勘当された本物の天才(バカ)である。ちなみに奴の言い訳は「いや、世紀の大発明だったんだ。ただ突っ立ってるより時間を有意義に使えたと思う」である。

 

 これにアリーシュの父は大激怒。本来なら国外追放されるところを女王様に「よその国に迷惑をかけるわけにはいかない」と取りなして……? うん、取りなしてもらってなんとか国外追放を免れた過去がある真性の研究バカ。まあ、結局禁足地である「荊の森」に隔離されてるんだから追放とどっこいどっこいだろうけど。

 

 で、俺はセオドラ・ペップバーン。生活力のないアリーシュの身の回りの世話をしてる養子兼助手だ。ある日突然、瞬きの一瞬で天涯孤独になってしまった俺は荊の森に迷い込み、そしてアリーシュに拾われた。

 

 俺の身の上を知ったアリーシュは衣食住を補償する代わりに身の回りのあれこれをして欲しいと頼まれて助手という名のお世話がかりになったのだ。

 

 ま、俺が拾われた頃には家事をしたくないアリーシュの手によりありとあらゆるものが機械化してたし、あんまり苦労はしてないんだけどね。

 

 俺のすることなんて精々スイッチおしたり、アリーシュ起こしたり、家の外回りを掃除したりするくらいだ。

 

 ボサボサのアリーシュの身だしなみを整え、なんとか人間にした俺は、「あと少しでかんせいだから……」と寝言をほざくアリーシュを出撃ラッパでリビングまで進行させた。朝ご飯はお料理ロボが今日もしっかり仕事をしてくれたので完成してるし、俺の仕事は机に並べるだけ。

 

 そこまで機械化してしまったら俺もアリーシュと同じくダメ人間になってしまう気がするので、配膳ぐらいは自分でやることにしてるのだ。むん!

 

 いただきます、と簡素に手を合わせ食事開始。

 

 綺麗に両面が焼かれたベーコンの目玉焼きをカリカリに焼けたパンの上に乗せて、その上に白身が見えないぐらい山盛りのハニーマスタードをトッピングしてるアリーシュは絶対に舌が狂ってる。

 

 俺はシンプルにケチャップだ。これこそ王道。完食して、食後のミネストローネを楽しむ俺。対面に座るアリーシュが「あ、そうだ」と顔を上げた。

 

 「セオ、今日もお掃除頼みたいんだけどいいかな?」

 「ん、なんだアリーシュ。またお前の部屋に【出た】のか?」

 「いや、今日は僕じゃなくて。頼みたいのは僕の友達なんだ」

 

 からーん。床に落ちたスプーンが甲高い音を立てる。

 

 「……友達? アリーシュに、友達? イマジナリーフレンドじゃなくて?」

 「うん、セオが僕のことどう思ってるのかよくわかった」

 

 鼻の頭に皺を寄せて、渋い顔を披露しながら。アリーシュは「学生時代のルームメイトだよ」と一言告げる。

 

 「今は国立学校の地下教授をしていてね。僕の研究成果を買ってくれるお得意様でもある。

 ほら、セオだって知ってるだろう? よく転移魔法陣で食糧届けてくれる人だ」

 「ああ! ゴードンさん!」

 「あれ偽名ね。本当の通名はゴーシュ・メイヤー」

 

 アリーシュが最後の一口を口の中に放り込む。もっきゅもっきゅとりすみたいに頬が膨らんだと思ったら一瞬で萎む。空っぽのスープボトルとサラダボールを見て、「相変わらず早食いだよなぁ」と思考を逸らす。まだアリーシュ友達ショックが抜けてないのだ、俺は。

 

 リモコンでお料理マシーンにコーヒーを追加注文しながら、アリーシュがボソリと言葉を零す。

 

 「あいつ、ペド趣味のど変態野郎だからセオに合わせたくなかったんだけどね。本気で困ってるみたいだからどうにかしてやりたい」

 「そりゃそうだよなぁ、アリーシュの友達なんだ。やっぱまともじゃないよなぁ」

 「ねえ、それどういう意味。ねえ、セオ」

 

 わかりきったことを聞くアリーシュを無視り、「で、どうするの?」と問う。

 

 「ここに呼ぶのか? それとも俺が向かうのか?

 俺、あんまり森の外に出ない方がいいんだろ?」

 「シュレッケンを連れて行けば大丈夫さ。あいつは強いからね」

 「虎次郎に変な名前つけないでくんない?」

 

 虎次郎とは俺の飼い犬である。熊並みに大きいもっふもふの犬だ。見た目はセントバーナードに似てる可愛い子だ。

 

 大人しいし優しい、とってもいい子だというのに。アリーシュは頑なに「恐怖(シュレッケン)」なんて呼ぶんだ、意味わかんない。

 

 「いやね、セオと会う前の奴は本当に怖い犬でね。少しでも気を抜いたら殺される恐怖を味わえば僕の気持ちもわかるさ……。

 ほんの少しの角度もだめなんだ、球体じゃないと……」

 「もー、いつも俺の部屋の隅っこで大人しくしてるじゃん」

 「トラウマなんだ!」

 

 「セオにはわからないさ、シュレッケンと仲良しのセオにはね!」と大人気なく拗ねたアリーシュを軽くあしらって、ご機嫌とりにコーヒーを運んでやる。まあ、これもいい機会だろう。俺も、()()()()()()森の外にいってみたいと思ってたんだ。

 

 「今回はそんな遠出じゃないし、検問もないから大丈夫だろうけど。

 でもね、セオ。絶対一人になっちゃダメだよ。僕とはぐれたらシュレッケンと一緒に森に帰るんだ」

 「わかってるさ、それくらい」

 「わかってないよ、セオ!」

 

 と、執拗な過保護を発揮するアリーシュ。「わかってるわかってる」と耳を塞いで、俺は外の世界を夢想する。外、森の外。俺に優しい森とはちがって、もしかしたら死んでしまうかもしれない危険性を孕んだ世界。

 

 少し楽しみでテンション上がってしまったのか。いつもより森の()()に力が入る。

  ……そして今。俺は森の外に出たことを盛大に後悔してる。

 

 「きゃ〜〜〜ん!! なんってキュートなベイビーなの! 

 可愛すぎて食べちゃいたいわ!」

 

 巨 人 襲 来 。

 

 いや、コレはさすがに()に失礼だろう。まるで怪獣みたいにいうなんて。いや、まあ、某怪獣映画のBGMが頭の中で鳴り響いて入るけど。

 

 「ふふん、可愛いだろう。あ、セオ。こいつが僕の友人のゴーシュだ。挨拶できる?」

 

 アリーシュに背中を押されて一歩前に出る。普通に立った時の目線の位置が()()()()の位置で、「うげぇ」とあからさまに顔を顰めた。そろそろと上を見上げたら、壮絶な笑みで俺を見下ろすゴーシュと目が合う。

 

 「ひぇ……しぇ、セオドラ・ペップバーンです……」

 「ペップバーン? 

 アリーシュ、あんたもしかして実家から攫ってきたの?」

 「僕の息子って発想はないのかなゴーシュ?」

 「(うっそ)でしょ、信じらんない。あんたも繁殖に興味あったのね……」

 「いや、ないけど。性行為なんて(そんなもん)時間の無駄でしょ」

 「案外気晴らしになるわよ。研究に行き詰まった時にやってみたら?」

 「うーん、ちょうどいい雌がいたらかんがえるよ」

 「もうやめて、恥ずかしいから」

 

 とんでもないことを公衆の面前で声量も気にせず話す馬鹿の同類に見られたくなくて、フードを引っ張って可能な限り顔を隠す。

 

 だが、そうか。この人がアリーシュの友達のゴーシュさんか。坊主頭でメイクが濃い、女言葉を使いこなす身長3メートルの巨人族の男に「 想像してたのと違う」と感想を抱く。

 

 アリーシュの同部屋だったというから男の人だろうとは思っていたけれど、こんなにキャラが濃いとは思わなんだ。

 初めて見る人間族以外のヒト族に驚く前に、異彩を放つ個性の方に視線が持ってかれる。それを微笑ましげに見る我が養父(アリーシュ)

 

  「養子だよ、助手にするために拾ったの」とアリーシュが僕の説明をしても、「ちゃんと同意はとったんでしょうね? 誘拐はシャレにならないわ、治安維持隊が来ると面倒よ」と一般常識を疑うアドバイスをするゴーシュさんはさすがアリーシュの友人と言ったところだろう。おそらく倫理観が同レベル。

 

 「にっしても。あの偏屈妖怪なアリーシュが助手ねぇ。しかも自分と同じ人間の子どもなんて。人間族は生物的特徴が平坦だからつまらないんじゃなかったの?」

 「それは今も変わってないさ。人間なんてそのまんま、この世の全ての【ヒト族】の中間的特徴を持ってるってだけの種族だよ。

 だったら、君みたいに身体の巨大化に偏った巨人族や逆に水中に適応するために体を進化させた魚人族と交流を持った方が楽しい。獣人族も好きだけどペップバーン家(うち)に沢山いたからそこまで興味がわかなくてね。

 やっぱりさ、共に過ごして心地のいいヒトの方がいいだろう? 文化圏の違いからの発見も乙なものさ」

 「だからアンタ友達できないのよ」

 

 「誰が研究素材としてみられたいもんですか」と呆れるゴーシュさんに「うちの養父がすみません」と頭を下げる。ほんと、何やってんだこいつ。同級生にいたら絶対関わりたくないタイプのやつだろ。よくゴーシュさんという友達が生き残っ……この人も大概変な人だし、類は友を呼ぶというやつか。

 

 「セオきゅん……アリーシュに育てられてるとは思えないくらいいい子だわ……。

 ねえ、ワタシの養子になるのはどう?」

 「やめときなセオ。そいつ、14歳以下の子どもに目がない変態だから」

 「失礼ね! 14歳なんてクソガキでしょ!

 ワタシの好みは12歳以下の純粋無垢なベイビーちゃんよ!」

 「俺、15歳なのでお断りします」

 

 事前情報通りのど変態だった。

 

 

 ■■■

 

 

 さて、肝心の掃除場所はどこだとアリーシュがきいて、案内されたのは地下だった。

 

 地下は地下でも、なんか兵士が入り口を警備してるヤバそうなとこの地下。風体が全力で「何かありますよ!」「訳ありですよ!」と主張してる。

 

 雰囲気を恐れる俺とは反対に、アリーシュは中身を見て顔を顰める。ちゃんとすればそこそこ整ってる俳優顔も凶悪に歪んでる。

 

 アリーシュの視線を追った先……そこには、黒い人がうざうざと蠢いている。人影は一人。だけどまるでアハ体験みたいに少しずつ何かが変わってる。

 

 髪の色、肌の色、瞳の色、身長、横幅。足の大きさも手の大きさも、いろんなものが変わって変わって、変わってる。

 いろんなものが見えて、何が正解かわからない。不安になって思わず、アリーシュの手を握る。アリーシュは握り返してくれた。

 

 「……さて、まずは文句を言わせてもらおう。

 なあ、ゴーシュ。なんてものに手を出してるんだ、こんなな自業自得だろう」

 「ワタシじゃないわ。プロフェータよ」

 

 はぁ、と悩ましげにため息をついて、ゴーシュが頬に手を当てる。何があったのかと聞きたいけれど、聞くべきではないのだろう。

 

 「プロフェータ・ペップバーンが怪異兵器の封印を解いたの。古から続く負の遺産をかいほうするってね。で、失敗してワタシらの方に流れ弾が飛んできて今に至るってカンジ」

 「プロフェータ……あのバカっ!」

 

 ああ、と片手で髪をかき混ぜる。せっかく整えた髪型がぐしゃぐしゃになるからやめてほしいなぁと思いつつ、俺はアリーシュに問う。

 

 「プロフェータって誰? もしかしてお前の弟?」

 「いや、従兄弟。僕の三個年下のね。

 でも、はぁ……、なるほど、あいつならやりかねない」

 

 深い、深い、深〜いため息。いつもは能天気でヘラヘラしてるアリーシュがこんなに苦悩してるのは初めてで、なんだろう、こう、反応に困る。

 

 「仲悪いの?」

 「仲が良いとか悪いとかそういう次元じゃない。あいつは、そう、なんというか……」

 「言ってやればいいでしょ、アリーシュ。寮部屋で散々愚痴ってたじゃない」

 「いや、でも……」

 

 言い淀むアリーシュに、ゴーシュが代わりに答える。その答えは、あんまりよくわからなかったけれど。

 

 「プロフェータ・ペップバーンはね、光の亡者なのよ」

 「ひ、光の亡者……?」

 

 首を傾げた俺。斜め下をみて舌打ちしたアリーシュ。つま先でトントンと刻まれるリズムを聞くまでもなくわかる。これは不機嫌な時のアリーシュだ。

 

 「ああ、そうさ。プロフェータは『正義』に取り憑かれた亡者だよ。女王陛下のお父上である先代陛下の輝きに目を焼かれてる正義厨。

 いいとこだけ見れば秩序と善性の体現者と言えるんだろうけど、僕にしてみれば迷惑な話さ」

 

 べらべら。らしくもなく口数を増やして早口で捲し立てる。アリーシュ・ペップバーンらしくない様子だが、ゴーシュは慣れたように提案した。

 

 「まず、場所を移さない?」

 

 

 ______

 

 

 ……ゴーシュに促されて場所を変える。とはいっても、移った場所は怪しい人影がいる牢獄の、その一つ上の部屋なのだけれど。給湯室だったのか、それとも応接間か、それとも看守の夜勤部屋か。コンロと水道が生きているので、棚の上の方に隠されていたお高めの紅茶を飲むことに。お茶請けのお菓子も見つけたので出してしまおう。仕舞い込むのももったいないし。

 紅茶缶の底をみてびっくり、アヴァロン産のオレンジペコだ。めっちゃ高くて美味しいやつ。最高級品だと1グラム百円。とんでもないお値段だ。

 そんな高級なお茶を、「ずびっ!」と一気飲みして乱暴にテーブルに叩きつけるアリーシュは絶対にらしくない。どうしたこいつ。

 

 「で、プロフェータの話だよね。愚痴っぽくなるかもしれないから予め謝っておこう」

 「あ、うん」

 

 珍しく苛立っているアリーシュが怒気の混じる言葉を吐く。

 

 「プロフェータの本性は排他主義者だ。差別家と言ってもいい。

 あいつはね、怪異とか解明者とかを嫌ってるんだ。

 ヒトを襲う怪異は人類の脅威だって言って、その怪異を生み出す解明者も闇に取り憑かれた悲しき存在と主張する。神の意志に叛く叛逆者だって。

 ……あいつ、今どき珍しいぐらい敬虔な信徒でさ。

 ま、理屈はわかるけど」

 「……え、なんで?」

 「だって、俺たちが【神なんていない】って証明ちゃったら、王家が嘘ついてることになるじゃないか。

 この国じゃ王家は神の末裔だからね、王家に絶対的な「正義」を求めるプロフェータ(あいつ)が、神秘を削り、神を貶め、王家の正統性を否定するに等しい行いをする()()をヒト扱いするわけないじゃないか」

 

 いや、それどうなの。

 アリーシュの語る従兄弟(プロフェータ)像が酷すぎてゴーシュさんに視線を向けるが彼もアリーシュの言葉に頷くだけ。え、マジで?

 

 「プロフェータは狂信者だ。光の亡者だ。()()()()()()()が絶対の基準なんだ。他人の正義を尊重しない。

 下手にカリスマがあるから、他人の正義も自分色に塗り替えてきた奴だからね。今更何言ったって変わりっこないさ。

 今回の件もさ、どうせプロフェータの独断(エゴ)だよ。王という正義の象徴が怪異兵器を所有してる事実が気に食わなかったんだろうね。

 あいつは民意を操るのが上手いから、それをごちゃごちゃ綺麗事で装飾して、『これは国民のためなのです!』って言い張ってる今に至る……ってところじゃないか?」

 「すごいわアリーシュ。全く同じことをプロフェータが演説してたわ。そしてワタシも同じ見解よ」

 

 ティーカップを三本指で器用につまみ、口に運ぶ。アヴァロン産のオレンジペコは音を立てずにエレガントに飲み干されて、お茶請けの菓子を「これ美味しいのよ、セオきゅんにいっぱい食べてほしいわ♡」と差し出された。甘いものは我が家では貴重なのでありがたく貰っておこう。

 

 「本当にあの怪異兵器が解体できるならワタシたちだって文句は言わないわよ。あれがあるから私たちは地下でこそこそ研究しているわけですし?

 でもね、プロフェータ(あのクソガキ)がやろうとしてることは『解明者(はんぎゃくしゃ)を皆殺しにすれば怪異なんてなくなりますね!』ってことよ!?

 ジョーッダンじゃないわっ!!」

 

 両拳が机に振り下ろされ、茶器が数センチ空を浮く。不時着したカップとソーサーが「ガチャン!」と派手な音を立てる。

 

 「いやよ、何もわからないまま人生を終わらせるなんて!

 知らない現象を理由も知らないまま使い続けるなんて気持ち悪いじゃない!

 ワタシはわからないことを知りたいのよ、神秘だの魔法だの知ったこっちゃないわ! これからの時代は『科学』よ!」

 

 ゴーシュの叫びに呼応してか、それとも別の要因か。真下にいる怪異兵器が一際大きな叫びをあげた。大勢の声が重なって、何を言っているのかわからない音の集合体。ぞわぞわと聞いてるだけで不快になる音の群れの中に……そのなかに、あり得ないものを聞いた。

 

 「【■■■■(助けて)】」

 

 それは、きっとアリーシュもゴーシュも認識できてない異国の言葉。多分この言葉がわかるヒトはこの世界に数えるほどもいないだろう。俺と、もう一人いたらいい方で、二人いたら奇跡だ。

 俺の、母国の言葉。故郷の言葉。この世界にあるはずのない異界の言語。

 そしてその言葉を認識することで、俺は他の言葉も認識する。ただの音から言葉を抽出する。沢山の、たくさんの、重なりあった数多の言語。言葉は違えど共通している助けを求める声、声、声。

 帰りたがってる。助けてほしいと泣いている。俺は部屋を飛び出した。檻の向こうの存在は、助けてと泣いているのに俺に手を伸ばすこともしない。助けてと叫ぶくせに、助けてもらえるとつゆほど思ってない。

 その態度が、無性に悔しい。

 無意識に奥歯を噛み締めていた。俺が怪異の声に集中してる間にゴーシュとアリーシュの話はどんどん進んでて、少し喧嘩みたいになってる。アリーシュが「さすがにこれには付き合えない」と席を立って、俺の腕を取る。

 

 「セオ、コレは無理だ。森に帰ろう」

 「だめだ!」

 「ダメって言ってもこれは危険だ。君が一番危ないんだよ」

 「でも、でも、でも!!」

 

 見捨てろ、と暗に言うアリーシュを、涙の膜がはった瞳で睨む。嫌だ、嫌だ、嫌だ。諦めるなんて嫌。俺の突然の態度の変化にアリーシュも困惑してる。ゴーシュさんもポカンとあっけに取られて口を開けている。

 「なんで」「どういうこと?」「説明して」と聞かれても、俺は()()()()。不用意に俺のことを誰かに聞かせないように縛られているから言葉にできなくて、ただアリーシュに懇願する。

 俺なら救える。俺なら助けられる。俺ならみんなを返せる。だから。

 

 「お養父(とう)さん、許可をくれよ」

 

 そして、俺は(こいねが)う。救うためには許可がある。だから俺は許可を乞い求める。真実を語る口を、真実を見る目を、真実を聞く耳を。

 

 「俺、この人たちを解放したい。だって、この人たちは()なんだ。みんな帰りたいんだ! だから、返してあげたいんだ!

 たのむよ、お願いだよお養父さん! この目を、全力で使わせてくれよ!」

 「本当にいいのかい?」

 

 腰をかがめて、しゃがんだアリーシュ。目と目があって、問いただされる。瞳を通して語りあう。

 

 「君の目は見えすぎるだろう? 全力で使えば見えなくていいこの世界の真実だって見えてしまう。森の中ならまだしも、ここは森の外なんだよ。目を逸らしても、見えてしまう」

 「それでも俺は()()()んだ!」

 

 アリーシュの言葉は最もだ。そもそもアリーシュは俺を守り倒さなければ死ぬ呪いを自らかけているわけだし、俺を言い含めるのは妥当なのだろう。でも、俺は「否」を説く。

 

 「今、何もしないで帰ったら俺は絶対後悔する。これから先ずっと、ずっと、生きてる限り後悔し続ける。そんなの嫌だ、俺は、この()を正しいことに使いたい」

 「……わかった」

 

 深呼吸。アリーシュの瞳が一瞬金色に瞬いて、そして言霊を口に出す。

 

 「【瀬尾】、君の目の力を使うことを許可する。どうか怪異を解放してくれ。

 君が満足するまで何をしてもいい。何があろうとこの僕が、この世界から君を全力で隠すから」

 「ありがとう」

 

 アリーシュが心配してる。無駄な時間はかけてはダメだと悲しげに微笑む。俺は、一度硬く目を瞑って、そして……

 

 「そして俺の視界は開かれる」

 

 アリーシュの許可と俺の言葉(コード)で、制限されていた俺の視界が全て開く。ヒト、モノ、有機物も無機物もお構いなしに俺の視界(セカイ)は正体を暴く。ああ、頭が痛い。胸が苦しい。

 見えなくていいモノが氾濫する中、俺は見たいものだけを全力で見つめる。

 あとすこし、あと少しで全て掴める。人のパーツがつぎはぎになって、毎秒容姿が変わってた不気味な人型怪異の実態が、俺の視界に溢れていく。

 

 「あなたはずっと苦しかったんだよね。大丈夫、俺があなたに『本当』を返してあげるから」

 

 涙が溢れてた。たった今、俺の目に映る世界は()()になった。

 そっと、彼らを抱きしめる。否定と怨嗟ばかり吐く口が固く閉じられて、瞳が僅かに期待に輝く。

 

 「あなたは人間だ。俺の目にはそう見えてる。でも、それだけじゃ足りないんだよね」

 

 頷かないし、横にも振らない。否定と肯定もしない黒い塊は、たしかに俺の言葉を待っていた。

 

 「あなたたちはみんな、異世界人だよね。無理やり固めて一人にさせられた、国籍もバラバラな沢山の異世界人なんだよね。

 ごめん、俺じゃああなたたちの見た目や言葉だけで、住んでいた国までわからない。でも、故郷の名前は教えられる」

 

 そうだ、期待しろ。俺の言葉に耳を澄まして。そして、思い出して。

 

 「あなたたちは地球人。太陽系の3番惑星、地球に暮らす俺の同胞だ」

 

 ぱき、ん。

 ガラスが割れるような軽い音。怪異が紐解かれて、別れていく。真の姿が暴かれた兵器は力を失い無力に変わる。もう、彼らは迷わない。彼らの「未知」は「既知」となった。帰り道だってそうだろう。

 光となって消えていく彼らが一人一人、いろんな言葉で感謝を告げて消えていくんだ。俺に聞き取れたのは「ありがとう」「謝謝」「thank you」ぐらいだけど。

 彼らを見送る俺の姿を後ろで見ていたアリーシュは満足そうに微笑んでて、その隣のゴーシュはぽかんと、口を開きすぎて顎が外れそうになっていた。

 

 「アリーシュ、あんた、まさか……」

 「ここで見たことは誰にも言わないでね、ゴーシュ」

 

 しぃー、と。唇に人差し指を当てるアリーシュ。ゴーシュはもご、と物言いた気に、わざとらしく口をつぐむ。

 

 「まさか、言えるわけないじゃない」

 「うんうん、それでいい》

 

 白々しいやりとりをする養父とその友人を見て、俺はホッと安堵のため息をついた。まあ、あの人は科学信仰の解明品出し、正体がわかっても言わないよなぁ。

 ーーーー俺の正体が()()()()()()()1()0()0()%()()()()()()だなんて。

 

 セオドラ・ペップバーンとは仮の名前。俺の本当の名前は【瀬尾虎之助(せおとらのすけ)

 太陽系惑星地球の、日本という島国で暮らしてたただの中学生だ。通学中に雨粒が目に入って、瞬きをした隙にこの世界に迷い込んだだけで、特別な何かとかは何も持ってない、神様が否定されて科学が信仰される世界で生きていただけの、ただの子どもだ。

 そしてこの世界にとって異世界人は、「神秘を愚弄する悪魔」でありながら「真の世界を見つめる御子」だった。陣営によって尊ばれるか蔑まれるか両極端に分かれるまさに禁忌の子。

 

 俺にとって幸運だったのは迷い出た先が荊の森だったことだろう。

 荊の森に迷い込んだから、当時怪異だった虎次郎は【解放】を求めて俺の前に姿を現し、俺に「なんかでかい犬」と認識されたことで()()なった。

 アリーシュは己を殺す直前で突如消えたシュレッケンを探して俺を見つけ、そして俺の正体が異世界人だと看破した。

 アリーシュにより元の世界に帰れる確率が百億分の一だと知った俺は荒れ狂いながらもこの世界で生きることを決めて、そして……俺はアリーシュと真名契約を結んだ。

 神秘がモノを言う世界で、()()()()()()ほど強いものはない。本名なんてまさにそれで、己の魂を縛る真実の名前を知られると言うことはいつ殺されても文句は言えない状態になっていることを指す。

 アリーシュは俺の真名を一方的に握って契約することもできた。でも、アリーシュはそうしなかった。衣食住の補償の代わりに己の護衛を乞うたアリーシュは、俺への誠意として真名を差し出したのだ。

 試しに使ったけど本物だった。真名を使った命令というのはなんと言うか、感覚的なものなのだから説明が難しい。これは実際にやってみればわかるのだけれど、なんというか……コントローラーを使ってゲームのキャラクターを操る感覚に似てる。逆に命令されると操作されるキャラクターの気分になる。

 まあ、そんなことは今どうでもいい。肝心なのは俺とアリーシュが契約を結んだと言うことなので。

 アリーシュは契約の中に俺の視界を制限することを加えた。俺の視界は見えすぎてしまって、怪異も神秘も全て暴いてしまうから。あまり沢山暴いてしまうと、世界に目をつけられて殺される。だからアリーシュは「世界から俺を全力で隠す」という契約を遂行するべく俺の視界を閉じた。

 また、俺の目は閉じた状態でもある程度の『真相』を暴いてしまう。常に答えへの「ヒント」で溢れかえってる視界を知ったアリーシュは、俺に【都市伝説とされていた異世界人の末裔(*その、先祖返り)】という設定をつけた。

 先祖返りで血が薄まったから、脅威ではないのだと世界に印象付けるために。

 そして、今。全力で解放された異世界人の瞳により看破された怪異は消滅した。これで、俺の真実を知るのはアリーシュと、この場にあるゴーシュの二人に増えた。秘密は守り人が増えるほどに守るのが難しい。暴かれないために用意したフェイクも無駄になる。だってヒトは、隠されれば隠されるほど知りたくなってしまうものだから。

 

 「でも、アリーシュ。コレ大丈夫なの?」

 「大丈夫、僕は命に変えても瀬尾を世界から守ると契約してるからね。

 君から話を持ちかけられた時点で、言い訳の手段は作っておいた。

 ようは、瀬尾よりも観測しなければいけない危険物を作ればいいのさ」

 

 そう言って、アリーシュは両手で抱えている銃みたいなモノを持ち上げた。

 

 「つまり、この発明品の力だね。

 これは異世界のコトワリを解析して作り上げたミステリーキャンセラーでね。純粋な異世界人の目には劣るけれど、ある程度の神秘を打ち消し正体を看破する。まあ、通常状態のセオの視界と同じ効果が得られる。

 今起きた神秘消滅現象はこの発明品の力だって世界は認識するだろうさ」

 「それだと、あんたが危ないじゃない」

 「ま、そこは僕は引きこもりだし。荊の森は禁足地だからカミサマも観測しにくいんだろうね。研究施設としては最高だった。怪異がうじゃうじゃいるのが欠点だったけどセオドラのお陰で解消してるし」

 「なるほど、一理あるわ」

 

 

 うんうん、とゴーシュは納得したように頷き……

 

 

 「でも、ワタシはそれを認めたくないのよね」

  「へ?」

 

 ぽかり。アリーシュが口を「え」の形にあけて、固まる。

 

 「あんたは人間失格のクズだけど、研究成果だけは素晴らしいと思っているのよ。とくに、この発明品は最高だわ。異世界人がいなければ手も足も出なかった怪異に対抗できる、新しい力……」

 「え、と。あの、ゴーシュさん? まさかとは思うんだけど……」

 「その、まさかよ」

 

 にやり。凶悪に笑う巨人に見下ろされて、アリーシュが「ぴぃ!」と悲鳴をあげた。

 

 「ね〜〜ぇアリーシュ、そしてセオきゅん。我が校の講師と助手として、あなたたちをスカウトするわ。ワタシたちと沢山沢山世界の未知を解明しましょう?」

 

 ゴーシュが微笑み、手を差し出す。ひくりと引き攣った笑顔でアリーシュ。突然の展開にぽかりと開いた口が閉じない俺。

 

 「あの、ちなみに断ったらどうなります?」

 「そしたらアンタへの援助をぶった斬るまでよ」

 「まさか、喜んでお受けしますとも!」

 

 やけに丁寧な口調のアリーシュ。「断ればインフラを断つ」と無慈悲につげるゴーシュとあせった俺。

 まんまとゴーシュの罠にハマった俺たちは光の亡者とか神の意志とか、とにかくとんでもない困難に直面するのだけれど、コレはまた次のお話。

 長々と語ってきたけれど、つまりこの一言に尽きるだろう。

 俺、セオドラ・ペップバーンの父は常に俺を守るために自ら騒動の中心に入り込んでしまうとっても、とぉ〜〜っても困った養父なのだ。




[登場人物]
セオドラ・ペップバーン(瀬尾虎之助):異世界人
アリーシュ・ペップバーンの養子。黒髪黒目の15歳少年
ある日突然アリーシュの暮らす荊の森に異世界転移する。
【四隅から襲来する猟犬】という怪異の正体を見破り、アリーシュに異世界人だとバレる。
そして生活の保障をしてもらう代わりにアリーシュの周辺警護(介護)の契約を結ぶ。

アリーシュ・ペップバーン:人間
異世界人の瀬尾虎之助に偶然出会い、真名を差し出す代わりに護衛を依頼した解明者(*この世界では科学者と同義である)
神秘を暴き神の領分を侵す彼らは神に毛嫌いされているので世界の秘密を解き明かそうとするものたちは例外なく怪異に襲撃される。
アリーシュは軍門の一族だったが突然変異でマッドサイエンティストだったので騎士としての適性皆無でやらかしの末に荊の森に隔離されている。

異世界人とは…神による世界統治を拒絶し、神のいない世界のコトワリを持つ人々のこと。
ゆえに、彼らは魔法や神秘という存在を否定する。その目は未知の正体を既知として暴き、未知の言葉を既知の言葉として聞き取り、この世の真実に触れ、神すら殺し、「理解」の枠に貶める。

怪異…もとは何かしらの生物の末路。神により変貌させられた「ナニカ」
神が解明者を殺すという目的だけ与えて適当に作った存在ゆえに未知の深度が深く、一度怪異となれば誰も彼らを解放できない。……そう、異世界人以外には。

*怪異兵器とは
人間が神を真似て作ったよくわからないものの集合体。彼らにとって「未知」の塊たる異世界人を核として作られていた。
「無差別に殺す」ために作られた戦争における最終兵器で、地球における核爆弾的な扱いを受けるもの。




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