機動戦士ガンダム 天使の飛ぶ空   作:からすにこふ2世

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お久しぶりでございます。おまたせして大変申し訳ありませんでした。


訓練工程

 

宇宙とは。空気もなく、水もなく、重力もない。生命の住めぬ場所。

そこに巨大な筒を作り、地球と同じように土と水と空気を用意。外に漏れぬよう密封して、生命(人間)を住めるようにしたのがスペースコロニーである。

地球という限られた大地から、無限の宇宙へと人々の生息域と可能性を広げる、進化した人工衛星。尊く、画期的な発明……のはずなのだが、ジオンは、ザビ家はそれをあろうことか巨大な爆弾として地球に落とした。

 

 コロニー落としに使われなかったコロニーも、戦火にさらされ被害を負った。

 被害にあわなかったコロニーは、かねてよりの地球連邦政府による圧政と、宇宙軍の大敗により、連邦に未来なしと見て非協力的な態度を取っている。中立とは言うものの、実際はジオン寄り。

 地球連邦軍の宇宙における拠点は実質ルナツーのみであり、コロニーへの影響力は非常に小さいものとなっている。

 

「とはいえだ。ジオンのやり方に反発もある。連邦がジオンを押し返せばひっくり返るというのが政治家たちの考えだ」

「そんなに都合よくいくものかしら。虐げられた恨みってのはいつまでも残るものよ」

「上っ面はジオンに搾取されてたんですー、私たちは連邦政府の忠実な下僕ですーと言うだろう。連邦が確実に勝つときまで、裏でジオンとの取引を続けるだろう」

「政治屋共はいつも考えが甘いんだよ。甘い汁ばかり啜っているからな」

 

 宇宙要塞ソロモンへ向け航行中の連邦宇宙軍艦隊・コロンブス級輸送艦の中に、レオナ・ネーレイドは居た。何故か。エースキラーのホワイトベース隊と同じく、撃墜王を地上で寝かせている場合ではないという宇宙方面軍の強い要請と本人の希望もあり、出撃の許可をもぎ取ったのだ。決して医者を脅したり、賄賂を送ったりはしていない。

 マゼランやサラミスのような戦闘艦でないのは、新兵の訓練している最中だから。コロンブス級は輸送艦であり、大量の人、物を積んでいるため、新兵をまとめておいて訓練をさせるには都合が良かった。

 

 今はシミュレーター上でジムとの模擬戦を終えての休憩時間。その時間を使って先輩の連邦軍兵士から色々と教えてもらっている最中である。

 

「大体よ。本当に搾取されてたんならあれだけデカい要塞や大量の軍艦、モビルスーツを用意できる金と資源がどこにあったんだよ。意外と余裕あんだろ」

「全くだ。もっと絞り上げてもよかったんじゃないか?」

 

 我慢の限界に達したから抵抗したら、抵抗する余裕があると判断されてさらに締め上げられる。彼女も身に覚えのある話だ。かつてはそういう虐げられる側に居たから、わからないでもない。

 ただ、ジオンは調子に乗ってやりすぎた、というのが正直な感想だ。それともこれは交渉ではなく殺し合いを挑んでいるのか。地球連邦政府を殺して、ジオン公国地球支部にすることが目的であれば、納得ができるやり方だと思わなくもない。

 本気でできると思っていたのなら馬鹿げている。多少うまくやれたところで大人と子ども程の力の差があるのに、どうやって勝つつもりだったのか。多少痛い目を見せて、譲歩を引き出すならともかく……と、考えても仕方がないことに気がついた。

 考えてもどうしようもないことを考えても意味がない。自分でできることといえば敵を殺すことだけなのだから、それに専念すればいい。

 

 ……実際のところ。スペースノイドに対して地球連邦政府による圧政が敷かれていたのは事実だ。重税を課し、自治権を与えず、政治への関与も許さず、死なない程度に絞り上げていたのは間違いない。

 死なれると搾取できないので、死なない程度に。わずかに余裕がある程度に……これを圧政と見るか、正常な管理者と見るかはさておき。地球から一番遠いのをいいことにうまく余裕を隠して溜め込み、軍事に注ぎ込んで、独立をかけた博打に勝利したのがジオン。連邦から独立したことで圧政から解放され、搾取されていたリソースが自由に使えるようになったことで、市民の暮らしは連邦統治下の時代から変わらぬまま軍拡は加速。搾取する政府がアースノイドからサイド3、ズムシティに変わっただけで……しかしその甲斐あってか、見事連邦に、地球に、深刻な出血を与えることに成功したのだ。

 出血多量で死にかけたが、死には至らなかったため立ち直ったのが今の連邦軍である。

 

 閑話休題。

 

 地上における撃墜王は、宇宙においてはどうか? というと、地上ほどには戦えないのが実際のところだ。

 空には雲以外に遮るものがないが、宇宙では小惑星やデブリがある。単なる障害物ではない、その場にとどまり待ち伏せということもできる。慣れないMS、慣れない宇宙戦闘ということもあり、シミュレーション上での模擬戦ではデブリに紛れた不意打ちされて、反応が間に合い盾で防いで反撃で撃墜したが、被弾判定をもらった。新兵の小隊を相手に、だ。実戦であればどうだったろうか。シャア・アズナブルのようなエースパイロットであれば間違いなく撃墜されていただろう。

 ちなみにコア・ブースターでやり直したシミュレータでは本領を発揮し、被弾なしで新人の繰るジム一個小隊を相手に全機撃墜して勝利した。化物である。

 

「そんなことはどうでもよくて。私一人に小隊全滅だなんて、モビルスーツなんていらなかったんじゃないの?」

「いらなかったらルウムで負けてませんよ」

 

 戦争序盤の敗因は、ミノフスキー粒子による通信・レーダー撹乱で混乱した隙を突かれ、連邦自慢の艦隊戦力がその火力を発揮する前に沈められたせいである。よってモビルスーツの開発は不要、通常戦力を強化すべし、という話もあるにはあった。

 しかしそれでもMSは開発・配備された。特にホワイトベース隊の活躍は目覚ましく、サイド7からの脱出以降幾度となくエースパイロットと遭遇し、尽くを撃破・撃退してきた。赤い彗星を撃退し。青い巨星とルウムでレビル将軍を捕虜にした黒い三連星を仕留め。ザビ家の末弟ガルマ・ザビまでも撃墜し、北米奪還作戦始動のトリガーとなった。オデッサにおいては核ミサイルの迎撃を行い多くの将兵を救った。

 これら全て加えて、戦闘経験を学習コンピューターで後に生産されるMSへ共有し、シミュレーターにも活かされ、その後量産されるMSとパイロットの戦闘力の底上げにまで貢献した……新たに生産されたMS部隊を主力に用いたオデッサ攻略戦は、無論それだけが成因ではないが見事に成功し、今ではMS不要論を唱える者は軍の内部にはほとんど存在しない。

 一部、彼女のような者も居るが、これは例外。一般将校の間ではMSは、いずれあらゆる兵器を圧倒しうる万能兵器、という認識を持たれている。

 

「准尉の愛機だって元々はMS開発の副産物ですよ。コア・ファイターはMSの脱出パーツで、性能がいいから量産。火力増強と航続距離延長にブースターが開発されたって話です」

「へー。じゃあMSも必要ってこと」

 

 横から頼んでもないのに説明してくる名前も知らない兵器マニアの新兵に適当な相槌を打つ。

 准尉の適性は戦闘機が最も高いが、MSの適性も低くはない。しかし、正直なところMS・RGM-79ことジムのことがそれほど好きではないのだ。というのもジャブローで赤いMSと交戦した際に、あと一歩まで追い詰めたところオーバーヒートで動けなくなり、危うく死にかけたため。そのおかげでジムの改良が行われたとはいえ、経験から来る苦手意識というのはそう簡単に拭えるものではない。

 

「さて……もう休憩は十分。訓練再開! 私に負けるようならジオンのエース共にはただの的、しかしこれは実戦ではない。安心して死になさい」

 

 皆が水分補給を終え一息ついたのを見計らい、訓練の再開を宣言する。鬼軍曹、ならぬ准尉である。

 もちろん、結果は変わらない。これはただ新兵をいじめて楽しんでいるわけではなく、エースの前ではジムに乗り始めたばかりの新兵などただの的だ、という意識を叩き込むため。功を焦って無理に前進し、無駄に撃墜されることを防ぐため。彼女なりの気遣い……というわけではない。徹底的に痛めつけて、トップクラスとの戦闘を経験させる。そのあとは新兵同士の模擬戦で練度を上げさせる。という上から渡された指令をこなしているだけである。

 

 その後も訓練を終えて、また次の艦へ移乗するためにコアブースターに搭乗。違う艦に乗り移っての訓練訓練また訓練。ソロモン到着までの間、殺人的な密度のスケジュールで、新兵たちの訓練を行い続けた。

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