闇の巨人は正義を語らない   作:頓西南北

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ごちゃサマの続きがなかなか進まないから、HDの肥やしになってたヤツを放り込んでみる。

ところでウルトラマン出るとか書いてあるけど、この話だとまだ出てこない罠。


01最初の使徒

 

   ◆   ◆   ◆

 

 

 

 さて。

 

 特典もらって転生した。

 

 一言でいえばそんな感じの、ネタとしては割とありふれた話である。前世の記憶とか転生特典とかその辺の情報が戻るのは原作開始時点、とかいう話で、この僕『夕霧アカツキ』が転生した先の世界がどんなところかといえば。

 

 窓の外を見てみれば一目で分かる。近代的なコンクリート製のビルの合間を横切っていく巨大な影、その姿は人型と呼ぶには少しばかり歪。痩せた体躯には不釣り合いに異様に発達した肩、直立した体勢でも地面に着きそうな長い腕と、その先端から放射状に延びる三本の鉤爪。頭部がなく、代わりに胸の中央にへばり付いた髑髏のような白い仮面状の顔。巨大な鉤爪が生えた掌から杭のような閃光を突き出して戦略自衛隊のヘリを撃墜するその姿は、前世で見たアニメで確かに見覚えがある。

 

「確か……第三使徒サキエル、か。いや、新劇場版だと番号違うんだっけ? ま、どっちでもいいけど」

 

 うん、割とどっちでも問題なし。『新世紀エヴァンゲリオン』…………前世でも二次創作のネット小説ならそこそこ読んだ事がある、そんな感じのアニメの世界だ。大ヒットして、映画化とかリメイクとか色々とされた超人気作。確か最後は世界が滅んでビターエンド、っぽい感じの割とよく分からん風な終わり方をした。

 だがまあ、海が赤くなっていなかったりする辺り、旧作の世界で間違いないのだろう。まあ、ありがたくはある。新劇場版の世界は色々と裏設定が複雑そうで、裏に何があるか分からないから。

 

「で、肝心の転生チートは、といえば……」

 

 まず、Fate系サーヴァントスキル詰め合わせ十七個セット。具体的には『暗黒の神核(B)』『黄金律(B)』『概念改良(A+)』『カリスマ(C+)』『虎口にて閃く(A)』『狂化(-)』『商売繁栄(A)』『神格転成(B)』『心眼(偽)(B)』『スイングバイ(A)』『スケープゴート(C)』『沈着冷静(B)』『対魔力(EX)』『天眼(A)』『巫邪霊媒(A)』『燎原の火(B)』『楽園への扉(B+)』。

 そしてFate系宝具詰め合わせ四個セット。こちらは『巌窟王(C)』『初歩的なことだ、友よ(B)』『極星よ我が敵を照らせ(A+)』『射殺す百頭・羅馬式(A)』。

 でもって残りは体内のストルム器官と、まだ受け取りが済んでいないアイテム系の特典か。

 

 まあ、悪くはない。特典の数も多いし。

 真名解放式の派手派手しい宝具がないのは気になるが、あらゆる敵に突破口を作り出す『初歩的なことだ、友よ』と、いかなる敵の弱点をも見破り固定する『極星よ、我が敵を照らせ』という二つの宝具のコンボは、それをサポートする『心眼(偽)』や『天眼』といったスキル群と併せてどんな敵をも打倒し得る可能性を引き出すものとなるだろう。『射殺す百頭・羅馬式』のおかげで戦闘スキルも万全だし、『黄金律』『商売繁栄』があれば生活に困る事はない。

 ……これで原作通りに世界が滅びるような事がなければ最高なのだが。

 

 軽く溜息を吐いて部屋の中を振り返る。割とどこにでもあるような狭苦しいアパートの一室。掃除から何から何まで何かとサボり気味の僕の性格を反映して、しばらく干していない布団が転がっていたりとか、一応洗って畳んだきり数日放置されている洗濯物がその辺の床に積み重なっていたりする、汚部屋と呼ぶにはまだ早いが、それでもそこそこ汚い割と普通の部屋だ。

 その布団の中央に、引っ越しで家電なんかを入れて運ぶのに使うような巨大な段ボール箱が一つと、片手で持ち運べそうなサイズの小さなジェラルミンケースが一つ。どうやらこの中に残りの転生特典が収められているらしいのだが、中身は知らない。ウルトラマン系のアイテム、という事は知っているのだが。

 

「大きなツヅラと小さなツヅラ……さて、どっちから開けたもんかな……頼むから、いいのが出てくれよ」

 

 まあ、ウルトラマンとかそこまで詳しくないから良し悪しなんて分からないのだが……まあ最近のウルトラマンは惑星も平然と木端微塵にできる性能の奴がゴロゴロいるらしいので、とりあえずウルトラマンという時点でそこまでハズレじゃないだろう、多分。

 と、いうわけで、まずは先にジェラルミンケースの方を開けてみる事にする。ロックとかそういうモノは掛かっていなかったようで、不用心だとは思うが、丈夫な銀色の蓋は大して苦労もなく開ける事ができた、

 

 中に入っていたのは、腕に装着するガントレットタイプのアイテムだ。前腕を保護するように小盾のような円盤型のジャイロがあり、黒色の表面に血管のようなラインが走ったジャイロの中心とその上下左右に合計五つ、メダルのようなものを嵌め込むらしきスロットが備え付けられている。

 

「見覚えのないアイテムだな。変身ツールなのは多分間違いないと思うけど……というか、多分これ、僕が知ってる既存の作品に出てきたようなツールじゃない。オリジナルアイテム……か?」

 

 と、ジェラルミンケースの中に一緒に入っていた薄い説明書を開く。おそらくは電池交換の項目がない分だけバンダイのDX変身セットよりも薄いであろう説明書にざっと目を通し、一通りの項目を流し読みしてツールの名前と大雑把な使い方を把握する。

 このツールの名は『イヴィライザー』、やはりオリジナルのアイテムらしい。ジャイロの中心にある『セントラルスロット』に付属のルーブクリスタルをセットする事で変身する。その周りに空いている四つの『センチネルスロット』も同じくルーブクリスタル、または怪獣クリスタルをセットするものだが、こちらは召喚、または能力発動用であり、強化変身にも使われる、と。

 それ以外にも付属の宇宙船にアクセスしてデータリンクを行う機能もあるようだが、この宇宙船というのは『ウルトラマンジード』に登場した星雲荘みたいなものだろうか。

 

「……ってか、今時ルーブクリスタルを使うのか」

 

 ルーブクリスタル、または怪獣クリスタル。ウルトラマンシリーズ作品の一つである『ウルトラマンR/B』に登場するメダル型のアイテムだ。歴代のウルトラマンやウルトラ怪獣の力が宿っており、それをルーブジャイロやAZジャイロといった専用のツールにセットする事で、変身や召喚を可能にする。

 似たようなアイテムとしてはウルトラマンギンガに登場するスパークドールズ、ウルトラマンジードのウルトラカプセル、ウルトラマンゼットのウルトラメダルなんかが該当するが。

 

「ま、別にいいや。どれでも大差ない」

 

 イヴィライザーを腕にセットすると、自律的に起動したイヴィライザーの側面から、クリスタル9枚を収納できるパレットが展開する。ジェラルミンケースに同梱されていた変身用のメダルをパレットの一番上に収納すると、ライザーを付けたまま今度は放置していた段ボールへと手を伸ばす。

 デカい、そして汚い、というのが段ボールを一目見た感想だ。実際、家庭用の冷蔵庫が入るくらいのサイズがある大型の段ボールであり、見える。だが一番の問題は、それでも段ボールのサイズが足りていなさそう、という事だ。一体どれだけの量が入っているのか、堆積した埃と半ば同化しているかのような薄汚れた段ボールは無理矢理詰め込まれた中身に圧迫され、段ボール本来のサイズに比べて一回りも二回りも膨らんで見え、一つ間違えば内側から破裂しかねないように見える。

 

「……うん、でも仕方ないよね。多分、この中身がルーブクリスタルって事なんだろうが」

 

 バリバリと音を立ててその表面のガムテープを剝がすと、経年劣化した段ボールは案の定、内圧に耐えかねて中から裂けるかのようにその蓋を開き、溢れた中身が零れて布団の上に散らばった。予想通り、ルーブクリスタルや怪獣クリスタルだ。

 中身には統一性がない、というかどれがどれだか分からないが、ウルトラマンの力を宿したルーブクリスタル、そして怪獣の力を宿した怪獣クリスタル、それらが一切区別される事なく限りなく大雑把に無理矢理詰め込まれていた。

 

「この段ボールはもう使えないとして……保管とか、どうすんのさ」

 

 まあ、その辺は後で考えるとして。イヴィライザーのパレットに格納できるクリスタルは残り八つ、か。ウルトラマンベリアルやゴモラ、レッドキングみたいな有名どころは一目で分かるが、大抵は区別がつかない。特に昭和ウルトラマンのやつとか、タロウやセブンくらい特徴的な顔、というか頭部をしていればまだしも、そうでないならワケが分からん。それ以外にも同じクリスタルが複数枚混ざっていたりもするようで、カイザードビシやシビトゾイガーなんて数十枚くらい入っているっぽい。

 とりあえず布団と潰れた段ボールの上で山になっているクリスタルの中から適当に八枚を取り出し、それをパレットに並べ、パレットを押し込むようにしてジャイロに格納する。これで、とりあえずの準備は完了か。

 

「さて、それじゃあ行くとするかね。あー……だいぶ離れているな。もう結構遠くに行ってるよ、あの使徒」

 

 身体がデカくて足が長い分、ただ歩くだけでもスケールの違いから結構なスピードになるって事で。じゃ、さっさと行くとしますかね。置いてかれちゃあ敵わん。

 

 再びパレットを展開し、その一番上に入っているクリスタルを掴んでジャイロ中央、セントラルスロットへと装填。そのままパレットを閉じたジャイロの側面に手を掛けて回転を掛ければ、軋るような稼働音が唸りを上げると共にジャイロの表面を渦巻く濃紫色の光が流れていき。

 

「オレ色に染め上げろ、とでも言うべきかね、この場合。それともこっちか、絆の力お借りします、ってか?」

 

【イヴィルライズ────ダークキラー!!】

 

 腕を一振りすると共に、ジャイロに渦巻く濃紫色の光が膨れ上がる。そのまま際限なく膨張していく光は粘着くような光沢と共に、頭上に振り上げた腕から一気に流れ落ちて僕の全身を覆い尽くし、僕を包み込んだ闇色の輝きはそのまま一気に縮退するとその場から姿を消して。

 

 

 

   ◆   ◆   ◆

 

 

 

 その瞬間、少し離れた特務機関NERV本部では、異常な程の超高エネルギー反応が計測されたらしい。発生元は第三新東京市直上、高度五百メートル。その地点に濃紫色の光が渦巻いて、その中から溢れ出す闇色の輝きと共に暗銀色の巨人が出現する。

 憤怒相の仏像にも似た厳めしい顔面を中心に放射状に延びる特徴的な五本角、鎧のような意匠を持つ暗銀色のボディ、両腕から伸びる鋭利なナイフエッジ。正義の守護者ウルトラマンの姿を基調としながら、破壊の力を体現するかのような攻撃的なデザインを取り入れた異形の巨人。

 

 名を────『ウルトラダークキラー』。かつて前世で見た『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』に登場した事件の黒幕たる闇の巨人。かつて歴代のウルトラマンに倒されてきた怪獣や宇宙人たちの怨念が宇宙に数知れない程に堆積し、かつての敵であるウルトラマンに酷似した形を取って具現化した存在だ。

 

 頭上に渦巻く闇色の光渦の中から一直線に地上に降り立ったダークキラーは、腕組みを解くと両腕のナイフブレードを誇示するかのように両腕を広げ、格闘の構えを取る。

 対峙する第三使徒サキエルがその意図を理解したかは定かではないが、攻撃的な意志を向けられた事だけは理解したのか足を止め、その鉤爪が生えた掌をこちらへと向ける。

 放たれるのはサキエルの固有能力たる光のパイル。だが動き自体は単調で機動力も低く、ゆえに光杭の存在さえ頭に入れておけば、回避するのはそれほど難しくなく。

 

「効くか、馬鹿め」

 

 右腕のナイフエッジで受け流しつつ、左拳を繰り出して反撃。転生特典として魂に刻まれた『射殺す百頭・羅馬式』の型通りに体が動き、突き出された拳から迸るエネルギーが黒紫色の光の渦と化してサキエルの胸板、その中心にある仮面状の顔に直撃する。

 同時に展開した赤い幾何学模様のバリア『ATフィールド』を容易く粉砕し、その拳はその勢いのままサキエルの巨体を真後ろへと殴り飛ばした。吹っ飛んだサキエルは背後に立っていたビル数件を貫通しながら薙ぎ倒し、最後に一際大型のビルに直撃して停止する。

 ビルに半ば埋もれるようにして身動きを止めたサキエルが起き上がるまでに数秒程度の時間が掛かったのは、存外にそのダメージが大きかったからだろうか。その間にすぐ隣のビルのガラス張りになった側面へと視線を送り、姿見を見る感覚でガラスに映った鏡像を確認する。

 

「なるほど、僕が知ってるダークキラーと姿は一緒か」

 

 にしても、奇妙な感覚だ。自分の身体が二つある感覚。ダークキラーとしてサキエルと対峙している自分の体。そして、その内界たるインナースペースでイヴィライザーを手に戦いを見守っている自分の体。その双方を同時に操作できるからこそ、ウルトラマンとして戦いながら変身ツールを操作して、フォームチェンジや能力の発動ができる。

 戦闘技能の方は転生特典に頼り切りだが、それでもそれだけで経験を重ねた達人と同様の動きができる、そういう能力だ。だから戦闘の素人に過ぎない僕が使っても無様を晒さず、歴戦の戦士に匹敵する戦いができる。

 

「じゃ、試しに使ってみるかね」

 

 僕はインナースペースでイヴィライザーのジャイロ側面からパレットを展開し、クリスタルを一枚抜き取ってジャイロのセンチネルスロットに装填、ジャイロを回す。ジャイロの回転に合わせて装填したメダルに対応したウルトラマンの掛け声なのだろう誰かの気合いの声が響き、ジャイロから噴き上がるのは深い青に輝く波飛沫のような輝きだ。

 

【ウルトラマンアグル────イヴィルロード!】

 

 イヴィライザーの機械音声に合わせて右腕に収束するのはダークキラーのものとは異なる深い青の閃光、一点に収束して高エネルギーで構成された細身の長剣『アグルブレード』と化す。性質としてはサキエルの光杭にも近しいが、その切れ味は抜群だ。

 走って、というよりは早歩きといった体で踏み込んでくるサキエルが突き出した光杭は驚くほどの伸縮性を発揮して、その腕の長さも相まって体躯から見て取れる以上のリーチでもってこちらへと突き込まれてくる。紙一重の体捌きとアグルブレードの一振りでその一撃を受け流すと、こちらも一息に踏み込んだ。

 ブレードを展開した右とは逆の左掌から放つ散弾式の怨念光弾キラークラスター、その直撃を受けて体勢を崩した敵に向かって踏み込もうとした瞬間、仮面状の顔から放たれる閃光が僕を迎撃する。体勢に関わらず発射できる光線は距離を問わず有用な武装だ。身体の前に収束させた暗黒バリアで受け止めるが、代わりに詰めた距離が反動で大きく開き。

 

「じゃあ仕方ないか、今度はコレだ!」

【ウルトラマンアグル、ウルトラマンエース────イヴィルロード!】

 

 もう一枚、クリスタルを追加してジャイロを回す。一振りしたアグルブレードの軌跡に沿って鋭利な手斧を象ったエネルギー刃が形成、二枚のルーブクリスタルの能力を上乗せした『ダークネスデスギロチン』が射出される。それに対してサキエルは光線を連射、数発の光線を直撃させる事で飛来するエネルギー刃の破壊に成功するが、それは大きな隙というものであり。

 

【ケムール人────イヴィルロード!】

 

 ジャイロにロードさせた怪獣クリスタルの力で高速移動を発動、相手が反応できない高速で背後に回る。サキエルの弱点は背中だ。顔が胸に貼り付いており首が回らないせいでビームは前面にしか撃てず、また光の杭も手首という構造が存在しない腕の先端からしか伸ばせない関係上、背面には届かない。だから、こうして背後に回ってやればサキエルの機動力が低いせいもあり、反撃は来ない。

 

「悔しかったら、新劇場版で進化して出直してこい!」

【ウルトラマンアグル、ウルトラマンエース、カミソリデマーガ────イヴィルロード!】

 

 クリスタルの三枚同時ロードによる大技『ヴォーパルアグレイザー』。瞬時に増幅・拡大したアグルブレードが赤黒いエネルギーを纏って大剣と化し、それを一気に振り下ろして頭上からサキエルを一刀両断。鋭利な刃を持つ怪獣の力をアグルブレードに上乗せした大斬撃、その切れ味のせいか戦略自衛隊のミサイル攻撃にも無傷だった使徒の肉体は思ったよりも柔らかく、ほとんど何の抵抗もなく剣を振り下ろした僕は、そのままブレードの展開を解除した。

 そうして、周囲に視線を向ける。周囲に展開した戦略自衛隊のヘリは未だこちらを警戒するように遠巻きに包囲しており、さらに第三新東京市に仕掛けられたエレベーターから紫色の装甲に全身を包んだエヴァンゲリオン初号機が発進してくるところだった。

 初号機の動きは想像よりも鈍く、その挙動はどう見ても半死人、あるいはゾンビ映画に出てくるゾンビのような精彩を欠いた動きしかできていない。もしかしたら現時点では重傷者であるはずの綾波レイがパイロットになっているから、かもしれない。原作通りであるのなら時間的に考えても、主人公である碇シンジは未だNERV本部に到着しているかも怪しいところだ。

 

「だがまあ、僕にはどうでもいい事だよな」

 

 肩をすくめるとイヴィライザーにクリスタルを再装填していく。数は三枚、先程の大技と一緒であり。

 

【ウルトラマンロッソ、ゼットン、セグメゲル────イヴィルロード!】

 

 炎の属性の扱いを得意とするウルトラマンロッソのクリスタル、そして同様に超高熱の炎を操る怪獣であるゼットンとセグメゲル。とりわけセグメゲルの炎には強烈な毒性が混ざっており、器を象った両掌の間に溜まった灼熱の火炎球にその属性を上乗せして放つ大技『ポイゾナススフィアショット』。

 粘着質の濃紫色に燃え上がる炎が真っ二つに両断されたサキエルの身体に着弾、その高熱と毒性を合わせてその死骸を解析できないように処分してしまう。使徒の残骸、放っておくとNERVに回収されて、色々と便利に使われてしまうからな。余計な事はさせないに限る。

 後は……と、どう見ても文房具のカッターナイフにしか見えない武器を構えてこちらに向かってくるエヴァンゲリオン初号機を無視してジャイロを再び操作。

 

【クリスタライズ────サキエル!】

 

 このイヴィライザーのベースになっているのはルーブジャイロであるので、当然ルーブジャイロにできる事は全部可能だ。ルーブジャイロにできたように怪獣の残滓から怪獣クリスタルを生成する事も当然可能であり、それは対象が使徒であっても例外ではない。

 イヴィライザーの中央に装填されたダークキラークリスタルから一筋の細い光線がインナースペースの空中に照射され、その中からサキエルの姿と共に“杭”の一文字が描かれたサキエルクリスタルが形成される。だがパレットは既に九枚埋まっているため、このサキエルクリスタルをどうしたものか、と思案した挙句、僕は結局ポケットの中にサキエルクリスタルを放り込んだ。

 

 これで、ここでやっておくべき事は全て終わりだ。後はもう、こんな場所には用はない。エヴァンゲリオン初号機が振るってきたプログレッシブナイフを体捌きで回避すると、そのまま足を引っ掛けて転ばせると同時に、腹腔に連続回し蹴りを叩き込み。

 

【ウルトラマンビクトリー、ゼットン、ケムール人────イヴィルロード!】

 

 一兆度の爆炎を纏ったダークキラーの脚が連続着弾、半死人のような鈍重な動きしかできない初号機は反応もできずに吹っ飛び、新東京市の兵装ビルを三つまとめて連続して貫通貫通貫通、四つ目のビルにその身体を深々と埋めた体勢で倒れ伏し、動かない。

 ここで追い打ちを掛けてもいいのだが、これ以上エヴァに向かって攻撃を仕掛けると初号機が覚醒して暴走を始めそうな気がするので、それはやめておく。これでサキエルは倒したし、攻撃を仕掛けてきた初号機も片付けた。後はもう、ここでやっておくべき事はない、か。何やら遠くの空からも見慣れないデザインの妙な戦闘機が飛んでくる様子もあるし、ここは撤退の二文字。僕は手を掛けたイヴィライザーのジャイロを再び回し。

 

【ケムール人────イヴィルロード!】

 

 そのままクリスタルの能力による空間転移で姿を消した。召喚能力も試してみたかったが、残念ながら今回は出番なしであるようだ。まあ、後々使う事になってくるだろうから問題ない、か。にしても存外に、このイヴィライザーという武器は便利なものだ。

 

 

 

   ◆   ◆   ◆

 

 

「……で」

 

 イヴィライザーのガイドに従ってイヴィライザーと連動している宇宙船を転移先にした、はいいものの。僕が転移した先には、宇宙船の艦内とは到底言い切れないような景色が広がっていた。その光景はどう見ても暗雲が立ち込める一面の荒野であり、とてもではないが宇宙船などというモノではない。

 にもかかわらず、僕の周囲には空中投影型のホロウインドウが幾重にも投影され、宇宙船のオーナーとして登録された旨のメッセージが表示されていた。溜息を吐いて、何故か荒野のド真ん中にぽつんと置いてあったやたらと豪華な玉座に腰掛け、ウィンドウの内容を確認する。

 ウィンドウに表示されたメッセージによると船の艦名は『ダークネスフィア』────元は『ウルトラマンメビウス』に登場する歴代ウルトラマンシリーズにおける屈指の強敵『暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人』の座乗艦である。見た目は直径五十メートルほどの赤黒い炎塊だが、内界には一つの世界が広がっている、という代物であり、こんな代物でも相当な超科学によって生み出されたれっきとした宇宙船であるらしい。

 現在はダークキラーの能力で生み出された異空間に、船ごと潜伏中であるらしい。まあ、そうでもしなければ今頃ネルフ辺りに捕捉されているだろうから、当たり前の話ではあるか。

 

「……ともあれ、これでクリスタルの保管場所に困る事はなくなった、か。善哉善哉」

 

 これからの人生を豊かにしてくれる転生特典。それを駆使してイージーモードでウルトラハッピーな人生を送るのが、僕の望みだ。

 

 

 




カンザキイオリ『命に嫌われている。』『君の神様になりたい。』辺りの曲がぴったりくるような感じ。この話だけだと分からんけど。

~割とどうでもいい設定集~

・夕霧アカツキ
 主人公。転生者。チート特典山盛りで転生した。
 基本的に暗い。自己肯定感がド底辺。
 教室の隅っこでいじめられてるような感じの中学生。家族仲も悪く、友達もいないので味方っぽい感じの人間がどこにもいない。
 そんな感じで割と精神的に荒れていたのを、前世の記憶が目覚めて自己認識の主体が前世の自分に移った事で、自分を多少なりとも客観的に見る事ができるようになった。

 名前はエヴァキャラと同じく、姓が漢字で旧日本軍の艦名&航海に関わる語句、名前がカタカナで聖書関連。「夕霧」は旧日本海軍の駆逐艦、かつ海難事故に遭った船。かつ航海の行く手を阻む「霧」の字が入っている。「アカツキ」はその名の通り暁の明星、つまりは神の子の敵対者ルシファーの事。また「夕」「暁」と姓と名前とで全く逆の意味の字を入れたお遊びでもある。

 コンセプトは「悪い意味で等身大の主人公」。
 コイツがチート特典特盛なのは、常識的に考えてこれくらい入れないと活躍できないだろ、という想定。
 普通の人間が努力して勝利したり成功したり成り上がったりするのが格好いい、というのは認めるが、それはそれとしてそれができるだけの「努力の天才」は、もうその時点で「普通の人間」でも何でもない単なる人間性チート人間だろ、という発想で、だから努力せずに最強クラスの戦闘力を発揮できるだけの特典を盛った。

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