宇宙世紀0079、12月22日。
 ガダルカナル島で発生した連邦軍の追撃隊とジオン軍の敗残兵並び駐屯部隊との戦いは、後者のジオンが勝利した。

 それから十日後、戦争は終結。一年戦争は幕を下ろしたが、祖国ジオンやザビ家を崇拝する残党等は投降を拒み、地球と宇宙で連邦軍に対する抵抗活動を行う。

 その残党兵らの中に、あのガダルカナル島での戦いに参加したパイロットも含まれていた…。

オリーブドライブさんの機動戦士ガンダム 烈火のジャブローの三次創作となります。
主人公は自分が応募した「ロギー・グラーツ」です。

https://syosetu.org/novel/223795/

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機動戦士ガンダムUC 死に場所を求めて

 まずは、ロギー・グラーツと言う男を紹介しよう。

 宇宙世紀0058年七月十日に、ロギーは何処にでも居る中産階級のグラーツ家の次男として生まれた。一年戦争と言う人類史上初の宇宙大戦が無ければ、彼は何も不自由も無く育ち、何処にでもいる社会人として余生を過ごしていた事だろう。それ程に彼はこれと言っての特徴は無かった。

 そんな彼が高校を卒業した後、就職もせず、親の反対を押し切ってジオン公国軍に入隊したのは、自分に何も無いからである。ごく普通で不自由の無く育ち、トラウマや優れた才能すら持たない彼は、この連邦からの独立戦争で英雄となり、否、自分と言う存在を世界にアピールしたかったからだ。

 それにジオン公国の支配者であるザビ家の長男、ギレン・ザビ総帥の戦意向上演説で何もない自分に存在価値を感じ、それを与えてくれたザビ家に大いに感謝し、同時に崇拝するようになったからでもある。

 

 士官となるために士官学校へと入学し、首席では無いが無事に卒業できた。そこからMSのパイロットとなるべく操縦訓練を受けていたが、訓練期間中にジオン公国は地球連邦二宣戦布告し、一年戦争へと突入。まだ十分に訓練を終えていないロギーはルウム戦役に参戦できず、ただ訓練を受けながらルウム戦役のジオン軍の戦果をニュースで見るばかりであった。

 翌三月にジオン公国は早期に戦争を終結すべく、地球侵攻作戦を決行。この頃にはロギーの訓練は終えており、地上訓練を受けて実戦の機会を待っていた。初陣となるのは三回の地球侵攻作戦の内、二回目の北米侵攻作戦だ。そこでロギーはキャルフォルニアベース戦で戦果を挙げたが、昇進には程遠い物であり、以降は基地周辺の哨戒が主な任務となる。

 

 地球侵攻作戦で連邦を屈服させられなかったジオン軍は国力の差で限界を迎えており、七ヵ月余りの膠着状態となった。ロギーも哨戒ばかりでうんざりしていたが、ここに来て久しぶりの実戦に恵まれた。それは何と後にニュータイプ部隊と呼ばれるホワイトベース隊との交戦である。

 ここでロギーはザビ家の末っ子であるガルマ・ザビ大佐の指揮下に入り、ザクⅡJ型に乗って孤立無援のペガサス級強襲揚陸艦「ホワイトベース」を部下等や他の部隊と共に襲撃したが、ホワイトベースの搭載機である試作機のガンダムや中距離支援機ガンキャノン、長距離支援機ガンタンクの圧倒的な性能の前に敗北。ガンダムを相手にして乗機を撃破されても、運良く生き延びることが出来た。流石に無傷では無く、奪取した際に負傷し、基地へと徒歩で辿り着いたのち、後方の病院へと送られた。

 

 ガルマ・ザビ戦死後、ロギーはキャルフォルニアベースの守備軍の配属となり、実戦任務に就くことは無く、再び哨戒ばかりであった。だが、新型機のドムに乗れたので不満は無い。それに連邦軍機との小競り合いもあり、少しばかり戦果を挙げ、中尉に昇進した。

 だが、小競り合いの所為でジャブロー降下作戦への参加はしていない。しかし、参加していればロギーは戦死した事だろう。

 翌十二月十五日に連邦軍のキャルフォルニアベース奪還作戦が行われ、ロギーは激しい攻防戦の中に身を投じる。ドムに乗って奮戦するロギーであるが、物量差は覆せず、基地は遂に奪還されてしまう。

 ここでジオン軍は二つのグループに分かれて脱出した。もう一つはHLVで宇宙へと脱出するグループ。もう一つは地上に残り、潜水艦か陸路で脱出するグループだ。三つ目は諦めて投降する。ロギーはジオンの勝利を信じて後者の地上に残ることを選び、脱出するグループに合流。潜水艦に機体と一緒に乗り込み、ガダルカナル島へと逃れた。

 ガダルカナル島へと他の敗残兵らと共に逃れたロギーであるが、火葬隊と呼ばれる連邦軍の掃討部隊の襲撃を受ける。隊長機の圧倒的強さに苦戦を強いられるが、他の敗残兵らと共に協力して何とか撃退することが出来た。

 駐屯するガダルカナル島で終戦を迎え、放送でジオンが敗北したことを知るロギーであるが、愛国心溢れる彼が負けを認めるはずが無く、投降を拒んで数名の賛同者らと共にアフリカ大陸へと逃れ、機械を待って潜伏し続けた。

 

 ロギーは死ぬまで宇宙のサイド3へと帰ることは無く、終戦後は行方不明扱いとされた。

 家族は帰りを待ったようだが、終戦から三年後に起きたデラーズ紛争で完全に死亡したと思い、待つのを止めた。だが、そんな彼が本当に死亡したのは、一年戦争の終戦から十六年後である。

 

 そして宇宙世紀0081年十一月某日…。

 終戦から一年後に行われた地球各地に潜伏するジオン残党による一斉蜂起「水天の涙作戦」が失敗し、ジオン残党戦力が大幅に低下しただけでなく、連邦の軍備増強を許してしまった頃、ガダルカナル島から多くの残党軍が潜むアフリカ大陸の砂漠へと逃れたロギー・グラーツは、機体トラブルでその大規模な蜂起に出遅れてしまった。

 おかげで生き延びたが、これで納得するロギーではない。直ぐに同じく出遅れた同志等と共に、無駄な悪足掻きを行い、付近の連邦軍の基地を襲っていた。

 

「ジーク・ジオン! 我らジオンはまだ負けてなどいない!」

 

 ザク・デザートタイプ数機を僚機に、重MS(モビルスーツ)のドムを駆り、連邦軍の基地を襲撃するロギーは、この期に及んでジオンはまだ負けていないと宣う。

 後に大規模な抗争で漁夫の利を得たネオ・ジオンが連邦の首都であるダカールを無血開城することになるが、今のロギーは知る由もない。

 ロギーらが襲撃した基地にはジムと言ったMS等が配備されていたが、襲撃して来たのは一年戦争を生き延びた熟練兵らだ。基地のパイロット等の練度では相手にならず、あっさりと制圧されてしまった。

 

『大尉、あっさりと占領できましたぜ!』

 

『周囲に敵影無し! 呆気ねぇ! これが連邦かよ?』

 

「フン、所詮は儀を持たない連中よ! 大義無き雑兵共に、我らジオンは止められんのだ!!」

 

 部下より報告を受け、かつての一年戦争を聖戦だと信じるロギーは勝利に酔いしれる。この基地での勝利は間違いなくロギーたちの物だ。直ぐに彼らは時代の流れをその身を以て知る事となる。

 終戦から一年後に行われたジオン残党の一斉蜂起に対抗すべく、連邦地上軍で創設された遊撃特殊部隊「ファントムスイープ」が投入されたのだ。上空を飛来する大型輸送機であるミデア後期型より、三機のMSが投下される。

 

『連邦の増援だ!』

 

「馬鹿め、たった三機で来るとは! 破壊してスペアパーツにしてやる!!」

 

 真上を通過したミデアを見て、三機のMSが降りたのを確認した部下の報告で、ロギーは自身が駆るドムの手兵装であるジャイアント・バズを地面に降り立つ敵機に撃ち込んだ。が、それはあっさりと躱されてしまう。ロギーが狙った敵機はジム・カスタムと呼ばれる戦後生産型のジムタイプの一種であり、この時期では新型機に当たる。

 

『危ねぇ! 危うく新車事ローストチキンになっちまうところだったぜ! あれで避けられるとは、流石は新型だな!』

 

 そのジム・カスタムに乗るヒュー・カーター中尉は、直撃する寸前を躱し切ることに驚きつつ、即座に向かって来るザク・デザートタイプに対応する。

 敵機より放たれるマシンガンの掃射を躱しつつ、右手に持ったジム・ライフルを単発で胴体に撃ち込み、あっという間に撃破した。これにロギーを始めとしたジオン残党らは驚きの声を上げる。

 

「なっ!? 避けたばかりに速いだと!? だが、練度はこちらが上だ!」

 

『また病院送りか、戦死は御免だぜ!』

 

 驚きつつも向かって来るロギーらジオン残党らのMSに、カーターは臆することなく機体の特性を生かして迎え撃つ。僚機の二機のジム・コマンドも連携し、ブルパップマシンガンやバズーカでジオン残党のザク・デザートタイプを次々と仕留めていく。基地の守備隊とは大違いだ。

 

『な、なんだこいつ等!? 基地の連中とは、あぁぁぁ!!』

 

『連邦にこんな奴らが!? うわぁぁぁ!!』

 

「どういうことだ! 我が同志たちが連邦如きに!?」

 

 レーダーに映る友軍機が次々と撃破されていくのを見て、ロギーは慌てふためく。対するファントムスイープのカーター中尉は冷静に対処し、次々とジオン残党のMSを撃破する。

 

「クソっ、クソォォォ! せっかく機会を得たと言うのに! せめてあの新型を道連れに!!」

 

 出遅れてしまったことを酷く後悔しているロギーはカーターのジム・カスタムだけでも道連れにしようと、弾切れとなったジャイアント・バズを投げ付け、背中のヒートサーベルを抜く。シールドで投げ付けられたジャイアント・バズを防いだジム・カスタムは即座にライフルで反撃するが、ロギーのドムは狙いを定められないようにジグザグに動きながら接近してくる。

 

「ぬぁぁぁ!!」

 

『うぉ! 目晦ましか!?』

 

 ある程度接近したところで、ロギーは機体胸部左側に搭載された拡散ビーム砲を目晦ましとして使い、カーターの目を眩ませた。目晦ましを受けたカーターはライフルをフルオートにして接近させまいと乱射するが、重装甲のドムは中々倒せず、振るわれたヒートサーベルの斬撃でライフルの銃身を斬り落とされる。

 

「うぉぉぉ!!」

 

 空かさずロギーは二撃目を入れようとするが、カーターはそこらの連邦のパイロットではない。ロギーが二撃目を入れる瞬間にジム・コマンドと同型の盾による打撃を行い、怯ませてからバックパックのビームサーベルを素早く抜いて突きを入れる。

 

『テメェと、心中する気はねぇ!』

 

 そのカーターの叫びと共に放たれたビームの突きはロギーのドムの胴体に突き刺さり、戦闘どころか機能を完全に奪った。

 

「馬鹿な!? クソっ、クソォォォ!!」

 

 ビームサーベルを胴体に突き刺されたが、コクピットから離れていたのでロギーは無事であった。操縦桿を動かしても機体が動かないと分かれば、即座に機体から脱出して敵機より逃げる。

 

『残りカスが! また仕掛けるつもりか!?』

 

 カーターは機体を棄ててまで逃げるロギーを頭部バルカンで射殺しようとしたが、上官の無線で止められてしまう。

 

『またそれか…! ちっ、どうせこの砂漠だ。干乾びて死ぬだろうがよ!』

 

 上官の指示に従ったカーターは苛立ちながらも、ここが砂漠だと認識してロギーを放置し、残りの残敵を排除してから僚機と共に母艦へと帰投した。

 

 コロニーとは洒落にならない熱さでカーターはロギーが死ぬかと思っていたようだが、彼のしぶとさに死ぬまで気付くことは無かった。なんとロギーはこの砂漠の中でも生き延びたのだ!

 ロギー・グラーツの悪運は強く、何処かのジオン残党グループに発見され、以降、そのグループと共に僅かながらの連邦に対する抵抗を行っていた。

 

 それから時は流れ0088、後に第一次ネオ・ジオン抗争と呼ばれる戦いにロギーは短い期間ではあるが、そこに身を投じていた。

 エゥーゴとティターンズの抗争であるグリプス戦役後、漁夫の利を得て勝利したアクシズはネオ・ジオンと名乗り、温存していた戦力を持って多数のコロニーを占拠した。勢いを増したネオ・ジオンはまだ幼い指導者であるミネバの摂政ハマーン・カーンの指揮の下、艦隊を率いて地球へ降下し、連邦の首都であるダカールを無血開城した。

 八年の時を得て正規軍となって地球へ再び侵攻したネオ・ジオンに合流すべく、ロギーの居るグループも居場所を失ったティターンズ残党らと共にネオ・ジオンへ合流し、装備を受領する。ロギーは最新鋭機でドムの流れを組むドライセンを与えられ、唯一ネオ・ジオンに抵抗するエゥーゴの部隊であるガンダムチームを襲撃するのだった。

 

「こ、これがガンダムの力と言うのか!?」

 

 連邦より鹵獲したベースジャバーに乗り込み、同じドライセンに乗る仲間と共にガンダムチームを襲撃したが、子供とはいえガンダムチームはロギーの予想を上回る物であった。

 自分が指揮下に入った隊の指揮官はオウギュスト・ギダンであり、ガンダムチームの殆どのガンダムタイプを戦闘不能にする程の実力を見せたが、百式と呼ばれる金色のガンダムタイプのMSに乗る少年の強さは、それを上回るほど異常であった。

 

「それでも、隊長殿の元へ行かせる物か!」

 

 百式をオウギュストの元へ行かせまいと、妨害するロギーと仲間であったが、余りの強さに何も出来ず、共に乗っている僚機共々あっさりと撃破された。

 

「うわぁぁぁ!?」

 

 ビームライフルを撃ち込まれて吹き飛ばされ、砂漠の上で横たわったロギーのドライセンは爆発せず、動くことは無かった。その直後に指揮官のオウギュストが百式に討たれ、残ったドライセン隊は総崩れとなって撤退し始める。

 

「お、置いてかないでくれぇーッ!」

 

 撃墜されたと勘違いされ、母艦へと逃げるように撤退する友軍機に大声で叫ぶも、聞こえるはずもなく、ロギーはまた砂漠へと置いて行かれた。

 

 だが、ここでもロギー・グラーツは死ななかった。今度は速く残党グループに合流し、再びネオ・ジオンの指揮下に入り、打倒連邦を行おうとしたが、天下を取ったはずのネオ・ジオンは内戦によって崩壊したのだ。失意の末、ロギーはグループと共に連邦の目を逃れるため、地下に潜伏する。

 この時のロギーは愛国心を失い、ザビ家に対する忠誠心と自分の存在価値を失い掛けており、自殺しようにもその勇気すらなかった。ただ華々しく散る機会を待っていた。

 そんなロギーが再び動き出すのはその八年後、すなわち第三次ネオ・ジオン抗争、あるいはラプラス戦争と呼ばれる戦いである。

 オーストラリアのトリントン基地を襲撃を計画する同じジオン残党のカークス隊の要請に応じ、ロギーは密かにかき集め、組み立てたMSを持って馳せ参じる。

 

「良いんですか、大尉殿? こんな旧式機で」

 

「俺はドム系統の方が乗りやすいのだ。連邦の作ったハイザックとか言うのは気に入らん!」

 

 彼が最後の戦いに挑む際に乗る機体は、ドムの発展型であるドム・トローペンだ。元の搭乗者は宇宙(そら)に帰ったネオ・ジオン軍の忘れ物であるMSに乗っており、それがロギーのグループの方へと回って来たのだ。ロギーに従う部下らは自軍戦力の中で性能が高いハイザックを進めるが、彼は連邦が作ったザクを嫌ってドムタイプに拘った。

 全員の出撃の準備が終われば、温存してあった輸送機であるファット・アンクルに出来る限りMSを詰め込み、載せられない分は温存してあるド・ダイYSや連邦より鹵獲したベースジャバーやド・ダイ改に載せ、カークス隊が居るオーストラリア大陸へと急行する。

 

「クソっ、また出遅れたぞ…!」

 

 数時間以上の移動でようやくロギーらはトリントン基地付近まで到着した。既に戦闘が始まっており、カークス隊の要請に応じた他のグループか、それとも速く到着してしまったグループが先に戦端を開いたようだ。

 自分らと同じように遅れたグループもあったようで、乗って来た輸送機や鹵獲したミデア、サブフライト・システムから続々と地上へ降り立ち、連邦軍機と交戦を始める。ロギーらも遅れまいと輸送機やサブフライト・システムか飛び降り、他のグループと合流してトリントン基地の守備隊と交戦する。

 

「ジェガンとか言う奴が居ないな! 新しいのはジムの最終型だけか!」

 

 雑多な僚機らや友軍機らと共に地上へと降下したロギーは乗機のメインカメラに見える情報で、トリントン基地の守備隊のMSが自分らと同じ旧型機であると認識する。

 地方基地配備の旧型機とは言え、ジオン残党より一つ世代上のグリプス戦役や第一次ネオ・ジオン抗争で使用されたMSであり、性能的には向こうが上だ。だが、ジオン残党は実戦経験と練度の高さで上回っており、それに圧倒されてか、連邦軍機は押されている。空からの脅威は上空に旋回するファット・アンクル改に固定されているカークス機の狙撃で抑えられていた。

 格納庫に固定された狙撃用MSであるザクⅠ・スナイパータイプに乗るカークスは、トリントン基地の航空兵器や対空兵器、地上の友軍の脅威となる標的を狙撃し、前進を援護している。カークスの援護のおかげで、地上のジオン残党らはトリントン基地まで優位に前進できるのだ。それに乗っかる形でロギーは、手近な距離にいる後退するジムⅡに襲い掛かる。

 

「マイナーチェンジのジムなどのビームが当たる物か!」

 

 ジムⅡが持つビームライフルより放たれるビームをロギーは慣れ親しんだドムのホバー移動の特性を生かして躱し、ドイツ軍の対戦車火器であるパンツァーシュレックに似たラケーテン・バズを胴体に撃ち込んで撃破する。

 

「一機目!」

 

 敵機を撃破した後、僚機を撃破されて浮足立つもう一機のジムⅡに狙いを定め、相手が体勢を立て直す前に接近し、至近距離からラケーテン・バズを撃ち込んで二機目を撃破した。この戦いでのロギーの調子はかなり良く、我慢していた鬱憤も晴れてエースと呼べるほどの腕前になっていた。

 

「二機目! 良いぞ! 待っていた甲斐があったと言う物だ!!」

 

 二機目を続けて撃破したロギーは老いて行くはずの身体が軽く感じ、操縦桿と操縦ペダルを素早く操作して三機目に狙いを定める。狙いにしたのはマイナーチェンジのジムⅡでは無く、エゥーゴの主力MSであったネモだ。後退しているようで、ロギーのドム・トローペンには気付いていない。

 これにロギーは目前の味方に手一杯な相手がこちら気付く前にラケーテン・バズを撃ち込み、ネモが左腕に装備しているシールドを破壊した。防御手段を失ったネモは、ビームライフルを連射しながら後退する。無論、逃がしてやるロギーでは無い。

 

「もう一撃だ!」

 

 他の敵機に狙われないようジグザグにホバーで動きつつ、もう一発ラケーテン・バズをネモに撃ち込めば、ロケット弾は命中してネモは大破して地面に倒れた。三機目を撃墜すれば、即座に四機目を狙いを定めた。だが、狙いを付けた敵機は他の残党グループのイフリート・シュナイドに奪われた。

 こちらが照準を合わせようとした瞬間に、ジャイアント・バズで撃破したのだ。ロギーより獲物を横取りしたイフリートは弾切れのバズーカを捨て、二振りのクナイを両手に取って得意の接近戦を行う。一年戦争時なら激怒していた所だが、十六年もの歳月を地球で過ごしているロギーは怒らず、冷静に四機目に狙いを定め、ラケーテン・バズの残弾を全部撃ち込んで撃破した。

 

「四機目!」

 

 四機目を撃破したロギーであるが、直ぐに索敵を行うなど冷静であった。若い頃なら舞い上がっていただろうが、この十六年余りの地球潜伏生活で、ロギーは勢いと威勢だけの若いパイロットから熟練のパイロットへと成長したのだ。

 今のロギーをトリントン基地で止められるとすれば、同じく一年戦争を経験した生き残りか、数々の激戦を潜り抜けてきた猛者くらいだろう。それ程にドム・トローペンを駆るロギー・グラーツは強力であった。残党軍には彼を含めて、そのような技量のパイロットが集結して基地を襲撃している。基地の守備隊は押される一方であった。

 

「ぬっ!? やるな!」

 

 残党軍が防衛線を突破し、基地へと雪崩れ込む中、守備隊のジムⅢの一機がライフルでロギーのドム・トローペンのラケーテン・バズを破壊した。これにロギーは一早く自機の武器を破壊した敵機を見付け、ビームの射撃を躱しながら予備の射撃兵装であるMMP-80マシンガンを腰のラックから左手で取り出し、右手でヒートサーベルを抜き、そのジムⅢに接近する。

 こちらに近付かせまいと、敵のジムⅢは両肩のミサイルポッドを掃射するが、ロギーはそれを躱しつつ、左手のマシンガンで牽制しながら接近してヒートサーベルを振り下ろそうとする。近付いて自分を切り裂かんとしてくるドムに、ジムⅢのパイロットは振り下ろされた一撃目を躱してライフルによる反撃を行うも、即座に振るわれた二撃目の斬撃でライフルを切り裂かれてしまった。

 

「こいつめ!」

 

 敵の動きで自分の方が技量が高いと分かったロギーは三撃目を入れるが、敵も落とされぬように躱し、バックパックのビームサーベルを抜いて反撃してくる。無論、斬られてやるロギーではない。ビームの斬撃を躱してヒートサーベルの突きを素早く入れ、ジムⅢの胴体を串刺しにした。ヒートサーベルで串刺しにされたジムⅢは機能を失い、その場に立ち尽くす。それを確認したロギーは素早く引き抜き、自分が一度の戦闘で五機のMSを撃破したことに驚く。

 

「ご、五機目だ…! 俺はエースだ!」

 

 自分が晴れてエースになったことを喜ぶロギーであるが、ここが戦場であることを思い出し、索敵を行って次なる敵機の攻撃を警戒する。

 既に基地は制圧寸前…と思われていたが、ここに来て残党軍にとってのアクシデントが起こる。海上基地方面を攻撃した友軍が押されているのだ。それもたった一機のMSに。

 

『海軍基地を襲っている友軍が、バイアランの改良機の単機に苦戦しているようですが。救援に向かいますか?』

 

「いや、基地の制圧が優先だ! そんな奴とで、基地を落とされれば撤退するしかあるまい!」

 

 自分の背後を守らせていたザクⅡF2型に乗る部下が海軍基地で多勢を単機で圧倒するバイアラン・カスタムの事を報告したが、ロギーは基地の制圧を優先した。昔なら即座に撃破しに向かっただろうが、今のロギーは優先事項を良く理解しており、基地の制圧することで、海軍基地の味方を単機で圧倒するバイアラン・カスタムを撤退に追い込めると思い、そう判断したのだ。

 

「それに我々にはカークス少佐の狙撃がある! そいつはカークス少佐に任せ、我々は基地の制圧に専念するのだ!」

 

『はっ!』

 

 熟練の戦士と指揮官に成長したロギーは、上空より狙撃で援護するカークスに任せれば良いと言えば、部下は納得して上司のドム・トローペンの背後を突こうとする敵を警戒した。

 そのバイアラン・カスタムの大立ち回りが自分らの敗北に繋がるとは気付かず、基地の連邦軍機を掃討するジオン残党軍であった。基地の司令部辺りまで前進したところで、戦況をひっくり返すほどの戦闘力を持つ敵部隊が現れる。

 

「れ、連邦の増援だと!? くそっ、来たのか!!」

 

 その部隊は連邦軍の外郭部隊「ロンド・ベル」だ。それも部隊旗艦であのブライト・ノアが館長を務めるラー・カイラム級機動戦艦のネームシップだ。アムロ・レイが居ないとはいえ、旗艦の搭載機のパイロットは十分に強く、連邦軍の中で最強の部隊と言っても過言ではない。おまけに搭載機は最新鋭機のジェスタであり、トリントン基地を攻撃するジオン残党軍では絶対に敵わぬ相手だ。

 だが、死に場所を求めるか、せっかくの暴れる機会でに恵まれたジオン残党が大人しく逃げるはずが無く、勝てる相手ではないロンド・ベルに無謀にも挑んでいく。

 

『何が新型機だ! そんな物で俺たちジオンが止まるとでも思っているのか!?』

 

「そうだ! これで連邦が倒せるかもしれんのだ! 例え我らが倒れようとも、後に続く者が現れる! ジーク・ジオン!!」

 

 ラー・カイラムより出撃する十二機のジェスタに対し、グフに乗る一人の残党兵がヤケクソ気味に叫べば、ロギーもその後に続いて連邦軍最強の部隊であるロンド・ベルに仕掛ける。

 上空の三機のベースジャバーに乗るジェスタは碌な対空兵器を持たないジオン残党軍の輸送機等を圧倒し、瞬く間に蹴散らしていく。それが済めば、今度は地上の残党軍機に攻撃を加え、一方的に撃破していく。並の連邦のパイロットなら実戦経験豊富な残党兵なら落とせてたかもしれないが、ロンド・ベルのパイロットは搭乗する機体の性能も合わさって凶悪であり、容易く避け、反撃して撃破する。射撃の腕前も中々の物で、一発も外すことなく素早く撃破している。

 

『く、クソっ! 我々がこうも容易く…』

 

 地上のジェスタ隊を攻撃した残党軍も、数でも実戦経験でも劣るはずのジェスタ隊に一方的にやられていた。性能差と練度、技量はロンド・ベルの方が上であり、瞬く間にジオン残党の雑多なMSはスクラップにされていく。ロギーの僚機であるザクⅡF2型も、的確なビーム攻撃で撃破された。

 

『ワァァァ!!』

 

「ナカモト!? 畜生! ちくしょぉぉぉ!!」

 

 部下を次々と殺され、更には友軍機を落とされていくのを見たロギーは、カークスからの撤退命令を無視して一機だけ突出したジェスタに突っ込んだ。

 気付いたジェスタは直ぐにアサルトライフルのようなビームライフルを向かって来るドム・トローペンに向け、的確に単発で撃ち込むが、ロギーは拾ったネモのシールドで防ぎながら突っ込む。左手に持ったマシンガンを撃ちながら突っ込むが、旧式のマシンガンの弾丸はジェスタの装甲に弾かれるばかりだ。それでも相手にシールドを使わせ、怯ませることには成功する。

 他のジェスタや支援用の装備を付けたタイプは、ロギーと同じように一人でも多く道連れにする為に突っ込む残党軍のMSの対処に追われている。ロギーは一瞬にしてその状況を理解し、自分はあの目前のジェスタを道連れにしようと、使い物にならない盾を投げ付け、右手でヒートサーベルを持って斬りかかる。

 マシンガンは弾切れとなっており、再装填をしてしまえばこの機会を逃してしまう。それが分かっているロギーは相手に反撃させぬようにマシンガンも投げ付けた。飛んで来たマシンガンに標的のジェスタの反撃は遅れ、ロギーのドム・トローペンのヒートサーベルの間合いまで接近されてしまう。

 

「死ねぇぇぇ!!」

 

 機体の両手に握らせたヒートサーベルの兜割りを叫びながら食らわせようとするロギーであるが、相手はあのロンド・ベルのパイロットだ。素早く躱してビームライフルを至近距離から食らわせようとする。だが、実戦経験はロギーが上だ。直ぐに左腕を動かし、左手でライフルを叩いて射線をずらした。それから外付けの頭部バルカン砲を放つジェスタに向け、ヒートサーベルを突き刺す。

 

「なっ!?」

 

 通常ならばこれで倒せるはずだが、相手は生きるのに精一杯であった。一人でも多く道連れにする為に生きて来たロギーとは違う。ジェスタは少し距離を取り、左腕にマウントされたビームサーベルを抜いてロギーのドム・トローペンに斬りかかる。

 

「くそっ! クソォォォ!!」

 

 これにロギーはドム・トローペンの胸部左側にある拡散ビーム砲を撃ち込むが、相手は撃つことが分かっており、それを左腕のシールドで防ぎ、スラスターを吹かせ、一気に接近して素早い突きを放った。

 

「何っ!?」

 

 ロギーの判断は速く、直ぐに回避行動を取るが、機体の性能差は天と地の差だ。圧倒的にジェスタが上で、瞬きする間にもうビームの刃はドム・トローペンの胸部を貫いていた。コクピットを貫いてしまっており、ロギーの身体は徐々にビームの熱で焼かれているが、まだ彼に息はある。

 

「まだ俺は! まだジオンは!? ジオンは勝ってなど…」

 

 ビームで焼かれているロギーはこの世に未練があるような断末魔を上げたが、長い間地球に居座り続ける所為で疲れ果て、ジオンの再興、ザビ家に対する崇拝なんてどうでも良くなった。

 投降して収容所で殴られて死ぬのは嫌だ。故郷に帰って一般の人間になり、ただ寿命を迎えて死ぬのも嫌だ。願うなら華々しく戦って死にたい。それがロギー・グラーツの本音だ。敵わないジェスタに倒されたことで、ロギーの願いは叶ったのである。

 戦って死ぬと言う願いが叶ったことで、ロギーは笑みを浮かべ、涙を流しながらビームの熱に焼かれた。こうして、ロギー・グラーツの三十八年の人生は戦死と言う形で幕を下ろした。

 彼の最後の乗機となったドム・トローペンは爆発しないため、ビームサーベルを引き抜かれて放置された。他にもロギーのように華々しく散ろうとロンド・ベルに突っ込む残党軍機が居るからだ。

 戦闘が終わった頃、ロギーが乗っていた乗機の残骸は他の残党軍機の残骸と共に連邦軍に回収された。ロギーの死体はビームで蒸発していたが、身体の一部は残っており、本人の同意なしで十七年ぶりに本国のサイド3へと送還される。投降を断ってテロ活動を行ったために正規兵扱いされず、それに遺族が断った為、残党兵用の集団墓地に同じく戦死した残党兵らの遺体と共に埋葬された。

 しかし遺品が家族の元へ帰ったのは、ロギーの死から四年後の0100年二月ごろであった。

 

 戦いが宇宙へと移り変わった後、ジオン残党は連邦軍に投降。少しばかり頑固な者とジオンの信仰者が抵抗していたようだが、年数を重ねるごとに減り続け、やがては消えた。再び地球が戦火に見舞われたのは、五十年後の連邦の支配体制が形骸化し始めたザンスカール戦争である。




二回目の三次創作です。

なんだろうな、長い残党生活でノイローゼになってんな。

次は停止状態の休戦後の悪夢の続きを書こうかと思います。

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