ドゴン!
「……んぅ?なに……?」
深夜に物音が鳴りふと目が覚める。
「なんだろ………おとうさん帰ってきたのかな…?どうしたんだろ…」
もしかして酔っぱらって帰ってきて転んじゃったのかな……いってみようかな
ガチャ ギシ……ギシ……
自信の長い銀髪とその上に生えた銀色の《狐耳》と自分の背丈とほぼ変わらない《9つの尻尾》を揺らしながらリビングへ向かうと
リビング電気ついてる…やっぱり帰ってきてたんだ。
ガチャ
「おかえり、おとうさ………え?」
「ゆず!?起きたのか!逃げなさい!早く!」
リビングではおとうさんとおかぁさんが知らない男と険しい表情でテーブルを挟んで向かい合っていた。
「アン?ガキがいたのかよ!ヒヒヒ!ますますたのしめそうだなぁ!しかも狐娘ときたモンだ!こりゃぁアタリだなぁ!」
「黙れ!ヴィラン!直美!楪を連れて逃げろ!俺が時間を稼ぐ!」
「わかったわ!楪!こっちにきて!」
おかぁさんが突然ボクを抱き上げて走り出そうとする
「行かせるとおもってンのかぁ?」
ドン!!「グァッ!?」
「!?楪!きゃぁぁ!!」
ザク
男がおとうさんを殴り飛ばしナイフを持っておかぁさんとボクに向かってくる。おかぁさんはボクを深く抱きしめて庇った。
「いっ…………ぐぅぁぁァ………」
おかぁさんから赤い血が溢れ出した。
「直美ぃぃ!」
「おかぁさん!!おかぁさん!大丈夫!?」
「大丈夫よ…早くにげなさい!急いで!もうすぐヒーローが来てくれるわ!」
「直美!糞!お前ェ!」
ガツン!
「グェ!?」ドスン
男が後ろからおとうさんが持ち上げた椅子で男の頭を殴られて崩れ落ちた。おとうさんはすぐにボクとおかぁさんに駆け寄ってくる。
「おとうさん!おかぁさんが!」
「すぐに家の外に出るぞ!」
おとうさんがおかぁさんを抱き抱えてドアを開けようとした瞬間
「いってェなぁ……てめぇ……ぶっ殺してやるよ!」
後ろで踞っていた男がナイフを投げ、おとうさんの背中に深く突き刺した。
「ぐぁ!?」
ナイフを刺されバランスを崩す。抱き抱えられていたボクとおかぁさんは玄関に投げ出された。
「あなた!」
「おとうさん!」
「ハァ…俺を怒らせるからだ……馬鹿が。アぁ……いってぇなぁ……もういいわお前ら。ガキもやっぱ要らねぇわ。おつかれさん。 死ね」
ザシュッ!
おとうさんとおかぁさんがナイフで切りつけられ血が流れ落ちる。
「う………ぐぁぁ……」
「いっ………ゆず……りは……にげ……て………」
おかぁさんが口から血を吹き出しながら言ったくる。でも怖くて足が言うことを聞いてくれない…にげなきゃ…行かなきゃ………!
「にがさねぇっていってんだろガキがよ」
気づいたら目の前に男がいた。
あぁ……ボクも………ドガンッ!!!!
「大丈夫k…ッ!!!クソッ!!」ドガ!
急にドアが開いたと思ったらまた知らない人がいた。でもその人は男を殴り飛ばしてボクと男の間に入る。
「大丈夫!絶対に助ける!」
その人はそういうとボクを安心させるように笑ってくれた。そこでボクは意識を失ってしまった。
気がついたら真っ白なところに居た。回りを見渡してもなにもない。ただただ真っ白な空間が続いている。
「ここどこ………?なんでここに?……………ッ!!!」
思い出した!あの男が!!
「おとうさん!!!!!おかぁさん!!!!どこ!!!???おとうさん!!!おかぁさん!!!」
ひたすらにおとうさんとおかぁさんを呼び続ける。すると後ろからおかぁさんの声がした。
「楪。」
「!!!!!!おかぁさん!!!!!おとうさん!!!」
後ろにはおとうさんとおかぁさんが居た。
「ここはどこなの!!あの男どうしたの!?」
泣き叫ぶようにおとうさんとおかぁさんに聞くとおとうさんが
「大丈夫だ!ゆず!ヒーローが来てくれたんだ。ゆずは無事だよ」
おとうさんが微笑みながら教えてくれる。でもどこか悲しそうな顔をしている。 それにボクは安心しながら違和感に気づいた。
「………おとうさん……《ゆずは》ってどういうこと………?」
「………………」
おとうさんに問いただすと申し訳なさそうに。悲しそうな顔をした。
「楪………ごめんなさい………」ポロポロ
おかぁさんが謝りながら泣き出した。
おかぁさんなんで泣いてるの…?なんで?………うそだ……まさか……
「ゆず」
「ごめんなぁ……」ボロボロ
うそだうそだうそだうそだ
「おとうさんとかぁさんは………なぁ?ダメだったみたいだ………ごめんなぁ…………う………くそ…………」ボロボロ
「…………な……んで……なんでよ!!!」
受け入れられない。
「なんでおとうさんとおかぁさんが死ななきゃいけないの!何も悪いことしてないのに!なんでよ!!……………なんで………ボクだけ助かっちゃったんだよ………」
「ゆず「楪」」
だんだんおとうさん達の姿が消えかかってきた。
「まって!!おいていかないでよ!……………ひとりにしないでよ………ひとりにしないで!!!」
ひたすらに涙が溢れだし、顔をくしゃくしゃに歪めなから泣き叫ぶ。
「………ごめんなぁ」
「一緒には…いけないの」
「ゆず「楪には生きててほしいから」」
…………わかったよ………おとうさんとおかぁさんはボクを助けるために死んだんだ………
「わかった………ボク………生きるよ…….!おとうさんとおかぁさんの分まで生きる!そして……ヒーローになるよ!!」
もう涙は止まりかけていた。最後は笑った顔で見送りたいから。
「がんばれ」
「頑張ってね」
「「ゆず」」
もうおとうさんとおかぁさんの姿は光の粒子みたいになってほぼ消えてしまっていた。でも、声はまだ聞こえた。
「もう私たちは楪の側にはいれない……だから………私たちの力《個性》をあげる」
「忘れるなよ。ゆず。とうさんたちの力はずっとゆずの味方だ」
「うん!忘れない!!絶対に忘れないから!!」
ニカッと笑ってくれたおとうさんが見えたような気がした。だからボクも答えるようにボクもニカッと笑う。そこでまたボクの意識は無くなった。
「ん………」
また知らないところだ………でも今度は寝てたみたい………なんか口に付いてるし…………病院かな…?まぁ良いや………ッ!!
「ッアッ!!あ…たっま………いた……い……!!」
なんで?なんで頭痛いの!?わかんないわかんないわかんない!何か入ってくる!!!こわいこわいこわい!!!
目が覚めた瞬間に頭が割れるのではないかという頭痛に襲われバタバタとベッドの上をのたうち回る。
「いッ!ぐぁあ!!!!」
「どうしたの!?…!おい!鎮静剤を持ってこい!あの娘が暴れてるぞ!急げ!!!」
「は、ハイッ!」
まだ小学3年生の楪の体は医者に簡単に押さえつけられる。
「落ち着け!大丈夫!大丈夫だから!」
「ッッッッッッ!!!アアア!!」
いたいいたいたいたいたいたいいたい!!
「先生!持ってきました!」
「よし!私が押さえているうちに早く!鎮静剤を!!」
鎮静剤を打たれた楪は再び意識を手放した。
「…………ゥあ…………」
「…………効いてきたか…」
「また今度起きたときに暴れるかもしれない……看護師達で交代で様子を見続けてくれ。」
「はい………わかりました。でも先生、この娘大丈夫なんでしょうか………起きた瞬間に暴れるなんて………」
「この娘はヴィランに目の前で親を殺されたんだ……フラッシュバックしてしまったのかもしれない……」
「そう………ですね………かわいそうに………」
「ともかくこの娘を一人にしないように頼む。」
「はい、わかりました。」
「う………ん………」
眩しいな………ここは…あぁそうか病院だ………もう頭は大丈夫みたいだけど…けど………
「おとうさん…………おかぁさん…………」
目尻に涙が溜まる
「目が覚めたの?」
ッ!!誰かいるの?誰?
「だ、だれ………?」
「あっ安心して!私は看護師よ!待ってて、すぐに先生を呼んでくるから!」
「は、はい…」
それからしばらくすると先生が来て体に異常は無いか検査が終わって先生お話をすることになった。
「とりあえず検査結果に異常は無いね……良かったよ。さて、自己紹介をしようか。私は佐藤 幸太って言うんだ。君は…時守楪ちゃんで合ってるかな?」
「はい。ゆじゅ………楪です。」
噛んじゃった………恥ずかしい………
「うん、問題無さそうだね。」
「それじゃぁ、今からとても大事なことを言うね。」
あ、眉間にシワが寄ってる………おとうさん達のことかな……
「お、おとうさん達のお話をですか……?」
「ッ!………うん……そうだよ……君のお父さんとお母さんは…助けられませんでした………すまない…」
あぁ……….やっぱり夢じゃなかったんだ……夢だったら良かったのに…!
俯いて溢れそうになる涙をぎゅっと堪えていると
「ごめんね……先生も頑張ったけど助けられなかったんだ………ごめんね………!」
側にいた看護師さんが涙を滲ませながら楪をぎゅっと抱きしめていた。
優しい人なんだな………
「…………はい…………そう………ですか………」
やっぱり夢じゃなかったんだよね………でもおとうさんとおかぁさんはボクに力を残してくれた………ッ!?頭に何か………何か聞こえる……?じげんしゅうのう?……しゅうふく?ふくげん…?なんだろこれ………
「……い……お…いおい!大丈夫か!?」
「は、はいぃ!」
びっくりした!!急に大声出さないでよ……
「先生!落ち着いてください!ゆずちゃんがびっくりしちゃってるじゃないですか!」
「す、すまない。話しかけても反応が無かったから何か異常があるのかと心配になってな……楪ちゃんもごめんね?」
そういうことなんだ……確かにボーッとし過ぎてたかな。でもびっくりするから大声を出すのはやめてほしいな。
「だいじょぶです。おとうさんとおかぁさんのことを思い出してたら急に声が聞こえて…….」
「声が?なんて聞こえたんだい?」
「なんか………じげんしゅうのう?とかしゅうふくとふくげんって聞こえました。」
「じげん………次元収納かな……修復と復元……………ん?まてよ」
ブツブツ言っていたら突然書類を漁り出す医者が持っていたのは時守と書いてある書類だった。
「先生?どうしたんですか?」
「楪ちゃんの親御さんの《個性》だったような気がしてね………やっぱり……どちらも親御さんの個性だ……だけど復元?復元の個性は無かったはず……」
あ、そういえば夢でおとうさんとおかぁさんに会ってお話したの先生に言ってなかったな……話した方が良いかな?
「あ、あの、せんせい?」
「うん?あぁごめんね。どうしたんだい?」
「最初に起きたときに凄く頭が痛くて、その前にに夢でおとうさんとおかぁさんに会ったんです。」
「最初に起きたとき………暴れていた時の前……運び込まれた時か………」
またブツブツ言ってる………話し聞いてほしいんだけどなぁ……
そう思っていると看護師さんがもう我慢ならんと言うように
「先生!いい加減にしてください!」ベシッ!
「あた!?」
殴られてる……びっくりした顔になってる
殴られた先生の顔が面白かったのか楪はクスクスと笑っていた。するとこっちをみていた先生が「笑わなくても……」と小声で言っていたのを楪は聞いていた。
「ごめんなさい。びっくりした顔が可笑しくて」
「まぁ良いよ。もとはと言えば私が話を聞かなかったんだから。それで、夢でお父さんとお母さんに会ったんだね?何か言っていたかな?」
「はい。一人にしてごめんなさいって言ってました。あと、もう側にいられないから力をあげるって言ってました。」
「力を………?力………個性のことか……?まさか………だが個性の譲渡なんて聞いたこともないな………その他に何か言ってなかったかい?」
あとは………なかったよね……?あ、でも
「おとうさん達の力はボクの味方だっておとうさんが言ってました。」
「味方………か………なるほど……話してくれてありがとう。それと……君」
ボクの後ろを見てどうしたんだろ?あ、看護師さんか!看護師さんがいるのすっかり忘れてたな……
「わかっていると思うが今聞いた話、それと今から話す話は絶対に他言無用だよ。わかっているね?」
「は、はい!わかってます!もし漏れたら大変なことになりますからね……絶対に喋りません。」
なんか先生のしゃべり方が怖かったな……どうしたんだろ?
「よし…じゃぁ楪ちゃん。今から言う話をしっかりと聞いて欲しいんだ。」
「は、はい」
先生本当にどうしたんだろ……?顔もちょっと怖いままだし………怖い…
「まだ予想でしか無いんだけど、多分楪ちゃんには今、《三つの個性》があると思うんだ。」
「三つの個性……ですか?それってもしかして」
「うん。多分楪ちゃん自身の《九尾の狐》とお父さんの《次元収納》そしてお母さんの《修復》この三つのがあると思うんだ。でも、復元については検討もつかないんだけどね」
おとうさんとおかぁさんの個性がボクの中に……そっか…味方ってそういうことだったんだね
「それで、今の話を聞いた上で何か体に異常は無いかな?」
異常かぁ……特に何も無いけど……でも…….なんだろう?何かわかるような……
「う~ん……わかるような…わからないような………」
「そっか………とりあえず今日はここまでにしようか。部屋まで送るよ。」
「あ、はい!ありがとうございます。」
そのあと部屋まで送ってもらってから看護師さんが重湯を持ってきてくれた。わりと美味しかった。重湯を食べたあと、しばらく先生に言われたことを考えていた。
「おとうさんとおかぁさんの個性…か……」
ボクに使えるようになるのかな………どうやったら使えるんだろう?よく考えてみたらおとうさんとおかぁさんが個性を使ってるのみたこと無かったな……
そんなことを考えているうちに楪は眠ってしまった。
「楪ちゃん。起きて」
「んぅ?」
ゆさゆさと体を揺すられて目を覚ます。眠いときに体を触られるのは嫌いだ…………とても嫌い……
「……起きたから触らないで………ふぁ………」
「あ、ごめんね?おはよ楪ちゃん。」
声のする方向に目を向けると昨日の看護師さんが笑顔であいさつをしてきた。
「おはようございます。どうかしたんですか?」
「もう八時半だよ?朝ごはん持ってきたから食べてね?」
ベットにテーブルをガシャッと設置し、目の前に朝ごはんが置かれた。ごはん、豆腐の味噌汁、鮭、サラダ、牛乳、とても健康的だね。鮭と牛乳は好きだから嬉しいな。
「ありがとうございます。」
「どういたしまして!じゃあ九時過ぎくらいにまたくるから、それまでにご飯食べて、歯磨きとかしといてね?」
じゃあねと言うように手を振りながら病室をでていく看護師さんを見送り、ご飯を食べ始める。病院食って味薄くて美味しくないって聞いてたけど、普通に美味しいじゃん。でも確かに味噌汁とか鮭は味薄いけどね。
「ふぅ……ご馳走さまでした!」
今って何時だろ…………ゲ……もう五十分過ぎてるじゃん……ゆっくりし過ぎたね。ちょっと急ごう。
「洗面台は………と、ここか」
口を軽く濯いでから置いてあった歯ブラシに歯磨き粉をつけて歯を磨く。あ、甘いな、イチゴかな?そう思いながら歯を磨き終わり再び口を濯ぎ、最後に水で顔を軽く洗い、洗面台をあとにする。
「さて、何時かな?…9時五分くらい…だね。もうそろそろ看護師さんがくるかな?」
あ、そういえばブラシ無いかな?尻尾ブラッシングしたいんだけどな……
ドアがガラっと開き、看護師さんが入ってきた。ノックくらいしてよ……ちょっとびっくりしちゃったじゃん……
「どうしたの?尻尾逆立てて」
「急に入ってきたからびっくりしただけです!ノックくらいしてください!それよりブラシとかありません?尻尾の手入れをしたくて」
「ごめんごめん……ブラシかぁ、確かに立派な尻尾だもんね。後でブラシ持ってくるよ。他の支度は終わった?」
まぁ、無いよね。手入れは後でいっか。
「はい。終わってます。なにか用事ですか?」
「うん。実はね楪ちゃんに会いたいって言うひとが来てるんだ。会っても大丈夫かな?」
ボクに会いたいひと………誰だろ………ボクにおばぁちゃんとか親戚とかいないっておかぁさんが言ってしな………
「は、はい、大丈夫です。でも、誰ですかね……ちょっと予想つかないです。」
「とりあえず合ってみよっか。じゃぁ入って貰っても良いかな?」
えぇ……もういるの…………?まぁ良いけどさ
「……はい」
看護師さんがボクの返事を聞いて、病室の外へ「入ってきてください」と声をかける。そして入ってきたのは……
「おはよう楪ちゃん……久しぶりだね。覚えているかな?」
「え………と……みどりや………おじちゃん?」
入ってきたのはおとうさんとおかぁさんの友達の緑谷久と緑谷引子だった。
「覚えていてくれたんだね………その……次元たちのことは……」
「良いんです。ちゃんと夢でお別れしましたから。」
「ゆ、夢で………?………ハハ、次元らしいな」
夢でと言うことに若干驚きつつも納得してくれた。でもらしいって何?らしいって。もしかしておとうさん何かやらかしてたの?
「そういえばどうしてボクに会いたかったんですか?」
「あ、ああ、そうだったね。楪ちゃん、僕たちの《家族》にならないかい?」
………え?家族に?
「……え、と、な、家族に、ですか?」
「…………楪ちゃん。」
今まで黙っていた引子さんが突然ボクの名前を呼び、それに反応して引子さんを見ると、目に涙を滲ませながら抱きしめてきた。
「え、引子さん?どうしたんですか?」
「次元さん達に親戚がいないのは私たちも知っているわ。このままだと楪ちゃんは……孤児院に行くことになるわ………それなら、私たちと一緒に…………家族にならない?」
震えた声で家族にならないかと言ってくる引子さん。確かにこのままだと孤児院に行くことになるよね………なら……それなら……!
「………ボクが家族になっても良いんですか……?」
「良いよ!」
「ボクは一杯迷惑掛けると思います」
「子供は迷惑駆けてなんぼだろ?」
「…………ボクで良いんですか?」
「「楪ちゃんが良いんだよ」」
……ッッ!!やっぱりこのひと達は優しいなぁ………
「………おじちゃん、引子さん………ボクを
家族にしてくださいッ!!!」
そしてボクは、緑谷楪になった。