狐は守り続けたい   作:メヴィ

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保健室

 リカバリーガールから保健室を任されてから最初こそはどうしようかと頭を悩ませたが暫くいずにぃを見つめて落ち着ちついた。

 リカバリーガールの机を探ってみるとやっておくことのリストが置いてあった。

 

 「え~と、各用品の補充(包帯や消毒液等)……怪我の手当て…個性を使って良いんだね」

 

 以外にも怪我をした生徒には個性を使って全快させて良いみたいだ。まぁ個性は成長するものだからどんどん使えって前にも言われたから、個性伸ばせってことかな?

 メモを見ながら作業をしていって用品の補充はすぐに終わった。

 ……つまりやることが本当にない!

 

 「ん~…暇だねぇ…」

 

 椅子をぐるぐると回転させてそう呟いても聞こえるのはいずにぃの心臓の音と寝息、点滴の音……わりといっぱい聞こえるね。

 ドクン、ドクン……意識を集中させれば更によく聞こえる心臓の音。ボクが一番安心できて、大好きな音。暫く聞いているとだんだん眠気がやってきて

 

 『勤務中に居眠りとはぁ、感心しないねぇ?』

 「ッ!?」

 

 また、あの声だ。戦闘訓練中に聞いた、あの声。

 きょろきょろと周りを見ても違和感を感じる場所はない。

 

 『やだなぁ随分と警戒するじゃない?そんなに警戒しなくても、何もしないよぉ』

 

 すっごい胡散臭い話し方するから信用しないもんね

 

 『そ、そんなにかなぁ?本当に何もしないよ?あ、ほら狐火出してあげたじゃないかぁ!』

 「…まぁ、それはそうだけど、それだけだよね?そのあとは何も無かったし…そもそもあんたは誰?」

 

 信用してほしいなら名乗ってよ。て言うか姿を見せて!

 

 『うッ、あ~……それもそうなんだけど……まぁ、いいか、よし!じゃぁ!ご対面~ 』

 「は?なに言っ…」

 

 聞いた瞬間に力が身体から抜けていって、椅子から落ちると思った瞬間に保健室ではないどこかにいた。

 

 「ここ…は…?」

 

 辺りを見回せば泉に囲まれている孤島のようになっていて泉の先は藍色に淀んでいて見えない。

 逆に島の中心には大きな岩の上に大きな枝垂桜が根を張っている。……綺麗だけど、現実離れしているね。

 

 『やぁやぁ!誉めてくれるなんて嬉しいねぇ!頑張って作ったんだよぉ!』

 「誰!?」

 

 振り替えるとそこにいたのは()()だった。

 でもよくよく見てみれは決定的な違いがあった。それは……()()()()()

 

 「……ふんッ!!」

 『なぁんでぇッ!?』

 

 反射的にたゆんたゆんしている脂肪の塊を平手打ちすればぷよよぉ~ん…と揺れた。……なんかもっと腹が立ってきた。もう一発…

 

 『いやまってまってぇ!?痛いんだよぉッ!?』

 「おおきいから悪い」

 『理不尽だよぉッ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふぅ……」

 

 とりあえず追加で15発くらい叩くと落ち着いた。目の前のボクは胸を押さえてシクシクと泣いている。

 

 「それでさ、あんたは誰?ここは何処なの?」

 『……こ、ここは私の魂の領域だよぉ…それで私は君たちの言う神様だよぉ……グスッ』

 「神様?……もしかして、お稲荷様?」

 

 泣いているお稲荷様を見ればボクの同じ狐耳があった。だけど、尻尾は無いし、耳と髪の色は藍色だった。

 実は前にいずにぃと一緒に九尾の狐について調べたときに狐の神様についても調べたことがある。

 ()()()0()()

 ()()()()()()

 もしかして、

 

 「もしかして、空狐(そらぎ)様、ですか…?」

 『グスッ…うん……』

 

 いずにぃ……ボク、神様の乳を叩いて泣かせました……

 それからボクは空狐様をよしよししたり抱き締めたりして必死で慰めた。

 

 うん。だって空狐様は天狐様が3000年生きてなれるとされている狐の神様だもん。

 ボクは個性の影響か、かなり神様(狐関連の)が好きだ。でも一番好きなのは伏見稲荷大社のお稲荷様だ。正確に言うとお稲荷様は神様じゃなくて神様の眷属の狐だけど、そこは置いておいて、ボクの憧れの存在を泣かせたのは凄い罪悪感が……

 

 『う、うん。わ、わかったから!も、もう大丈夫だから離してぇ!そういうところはそっくりなんだから…

 「あ、はい」

 

 空狐様は顔を真っ赤にして離れて、顔をぱたぱたと扇いだ。

 

 『うん、よしでは改めてぇ!私は空狐!空狐の幸福(こふく)だ!』

 「え、えっと緑谷楪です」

 『まぁ知ってるけどねぇ!』

 

 ……なんだろう、全然神様って感じがしない…

 

 『失礼だなぁ……ッて、まぁいっか、あ~それでなんだったかなぁ…あ、そうだった!んっとね、ここは私の魂の拠り所であって、私の魂と君の魂の交わっている場所だよぉ』

 「うん……うん?』

 

 むふ~んと得意気に言う幸福様。いや話が突然すぎて何がなんだか……

 

 『まぁ今日話しかけたのはやっと準備が整ったからだよぉ、また近いうちに呼ぶからね!またねぇ~』

 「え、いやちょっとそれはどういう……」

 

 言いきる前に目の前にいる幸福様が薄れていった。

 ……やっぱり幸福様は神様だ…話が通じないよ……

 

 

 

 「Hey楪ァ!!good morning!!」

 「ッ~~~!?!?」

 

 突然の大声に思わず耳を押さえて体をのけ反らせる。その拍子にいつの間にか抱えられていたボクの身体はバランスを崩して床に叩きつけられた。

 

 「い、い"だい"…」

 「あ、すまん!いやぁ~しかしなんで床とKISSしてたんだ?」

 「あ~……ちょっと神様に呼ばれて……?」

 

 ボクがどういったらわからずにそう答えるとマイク先生は一瞬で真顔になって頭を撫でてきた。

 

 「いや、まじでごめん。ちょっとリカバリーガール呼び戻すからベッドに座ってろ」

 「え……あ!違うんですって!頭がおかしくなったとかじゃなくて!」

 

 

【少女弁解中】

 

 「……本当かぁ?うさんくせぇ…まぁ、お前がそういう冗談言うやつじゃないのはわかってるけどyo…」

 「ボクだってよくわからないんですよ…いきなりすぎて」

 

 マイク先生に今日急に火が出たこと、幸福様について話すと物凄く疑われた。説明中も残念なものを見る様な目をしてた。

 

 「ま、おれにゃなぁんもできそうに無いなぁ……ま、相談には乗るぜ」

 「わ、なんですかこれ」

 

 マイク先生は何かが沢山入った紙袋を押し付けてきた。どうやら校長先生からの贈り物らしい。

 

 紙袋を渡してAddu!と言いながらマイク先生は保健室を去っていった。…あ、これアデライル*1のカロリーバーだ。

 中には校長先生からの手紙が入っていて、どうやらボクの個性の補助として送ってくれたらしい。

 しかも種類がかなり豊富なのを選んでくれてて中には一本10000万円近くするものもあった。……今度校長先生にチーズケーキでも作ってお返ししとかないとね。

 

 カロリーバーを食べながら暇をもて余していると、保健室に初めてのお客さんが来た。

 保健室利用者表に名前を書いてもらうと三年のヒーロー科で先輩だった。

 

 「いや~!蝶々が足元にいてね!避けようとしたら頭をね!」

 「み、ミリオ!しょ、初対面の人にそんな態度は……えっと、ゆずりは…さんですか?ミリオが頭と足を…」

 「はい、ボクが楪ですよ。それとボクは年下ですから大丈夫です」

 

 適当に返しながら表に目を通すと、3年通形ミリオ、付き添いが3年天喰環、と書いてあった。

 USJでの災害救助訓練中に蝶を避けて額に切傷と右足の捻挫……と。

 リカバリーガールのパソコンに利用者の詳細を打ち込んでから額の切傷を消毒液とガーゼで綺麗にしてから修復する。

 右足を触診すると「痛いです!!」と笑顔を崩さずに言い放った。完全に油断してたから驚いて尻尾がブワッっとなっていた。

 

 「み、ミリオ!動物系の個性の人の前で大きな音は」

 「あごめんなさい!

 「だ、大丈夫です。では足の治療をするんで動かさないでくださいね…………と、どうですか?」

 

 ミリオ先輩は足踏みをすると治った!とサムズアップを向けてきた。それにサムズアップで返すとまた怪我したらお願いします!と言って出ていった。

 なんか、すごい元気な人だったなぁ、ずっと笑顔だったし、もしかしてミリオ先輩もオールマイトのファンかな?なんとなく雰囲気が似てたし。

 

 まぁ結局その日の利用者はミリオ先輩だけで、様子を見に来てくれたミッドナイト先生とか、ハウンドドック先生と話しているだけで、その日は下校時間になった。

 いずにぃの点滴はもうちょっとで無くなるというところでiPadに相澤先生から代わりにホームルームをしろとメールが来ていた。

 一応いずにぃが目を覚ましたとき用のメモを残しておいて教室に向かうと麗日さんや梅雨ちゃんにいずにぃの事を聞かれたりして、明日の事を伝えてホームルームは終わった。どうやら放課後は皆で今日の反省会をするみたいで帰らずに残っていた。

 保健室に戻ろうとすると、芦戸さんに引き留められた。

 

 「ゆずちゃん先生!」

 「ん?」

 「ねぇねぇ!轟君のあれ!どうやって防いだの!?」

 

 あれ……あれって言うと、凍結攻撃かな?

 

 「えっとね、こう、妖力を体を全体に纏ってバリアを張って……触ってみて?」

 

 そういうと芦戸さんはボクの肩に触れようとするけど、数センチの所で手が止まった。

 

 「えっ!?なにこれ!なんかある!」

 

 更に触ろうとして両手でペタペタしたり、軽く小突いたりしてきたこど、ボクには何も感じない。暫くそうしているといつの間にか囲まれてて動こうにも動けなくなっていた。すると尾白君が手を上げて質問をしてきた。

 

 「ところでゆず先生のあの格闘術って、前々から何か習ってたりしたんですか?」

 「いや?ランニングとか筋トレはしてたけど格闘技とかはやってないよ……全部、相澤先生に仕込まれた…」

 「そうですか…その、どうでした?」

 「……まぁ、ご想像にお任せするよ」

 

 そう答えると聞いていた皆は察してくれたようで哀れみの目を向けられた。

 

 「やっぱり相澤先生って鬼畜なのね」

 

 

 

 

 




空狐の読み方とか容姿に疑問が出るかも知れませんが私の知っている伝承だとこうなのでご了承ください。

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