翌朝、前日の様に相澤先生からのモーニングコールで目が覚めた。
「んぁい…」
『昨日と同じだ。はやく来いよ』
それだけ言われてプツリと電話は切れた。
スマホをベッドのに放り出して上を見上げるとまだスヤスヤと寝ているいずにぃの顔があった。
頬っぺたを軽くつついてから支度をしていると、テラスからはうっすらと明るくなってきていることがわかった。
テラスに出てみると、気持ちの良い空気だ。
深呼吸をすると体の中がすっきりとした。
「久しぶりに走ろうかな」
そう思って今度はスポーツウェアに着替えた。
流石に今日はそのまま学校に行くからビキニタイプじゃなくて半袖タイプのに。
着替えを収納してから家を出て、走り始める。
徐々にスピードをあげながら走っていくと昨日行ったコンビニが目についた。
「そういえば、相澤先生昨日と同じだって言ってけど……ゼリー買って行った方が良いのかな………一応買ってこうっと」
コンビニでゼリーを買うとまた一番くじが引けるみたいだった。
「そのゼリーを3つ以上買うと一回引けるんですよ。昨日お客さんが引いていった後は結構人が来たんですけど、もう一等が無くて絶望してる人の顔が傑作でしたね」
笑いながら言う店員は本当に本当に面白そうだった。
「まぁオールマイトは人気ですからまだ良いのは残ってますし……はい、どうぞ!」
「あはは……じゃぁこれで」
店員さんはウキウキした様にくじが入った箱を出してきた。
多分また良いのを引いてみろって事なんだけど……流石に二日連続は……うん。3等ならまぁ…普通かな。
「どれどれ……お、タオルですか~、オールマイト、エンデヴァー、ホークスの柄がありますけどどれにします?」
「それじゃぁ…無難にオールマイトで」
多分いずにぃも欲しいだろうからね。あ、そういえばフィギュアあげるの忘れてた。
今日こそはあげようと考えていると店員さんはタオルを持って来てくれた。
「そういえば、貴女ってあれでしょう?リカバリーガールの後継者の!」
「ま、まぁそうですね」
「やっぱり~その尻尾と耳目立ちますからね~、ほら、昨日のトレンドなんですけど……あ、まだ入ってますね」
店員さんは取り出したスマホの画面を見せてきた。
今仕事中でしょ……良いのかな?___うわ、
画面にはマスゴミ・ストーカー・狐と書いてあった。
それをタップするとマスコミに追いかけられるボクの写真や動画が大量に出てきた。
他にはオールマイトに連れ去られる動画が一番♥️を獲得していて、26万なっていた。
「うわぁ…」
「いやぁ大変でしたね~、あの数に追いかけられるの怖くないですか?」
「すんごい怖かったです」
「ですよねぇ!?」
本当に最近のマスゴミは…と店員さんはぶつぶつと言い始めた。まるで自分も体験したことがあるみたいに。
あ、そう言えば時間……すこしペースを上げれば間に合うかな。
時計を見てみればかなりの時間がたっていた。
軽く言葉を交わしてからコンビニを出ようとすると呼び止められた。
「あの、ツーショットお願いして良いです?」
「……ボクとですか?」
「ハイ!将来大物になりそうな気がするので!」
まぁ写真ぐらいなら時間もかからないし、良いかな。
ボクが了承するとすぐにレジから出てきて写真を撮った。
……いや近くない?
「ではまたの来店をお待ちしております~♪」
やけに上機嫌な店員さんを背に雄英に向かった。
……間に合うよね?
妖力を使って走れば余裕で間に合った。
本来は未成年の私有地以外での個性使用は禁じられているがそれは個性社会の中では"バレなければOK"という認識になっている。
保健室に向かうと相澤先生が何故かリカバリーガールの机に座ってパソコンを弄っていた。
「おはようございます相澤先生。これどうぞ、あと何でリカバリーガールのパソコンを?」
「助かる……昨日の戦闘訓練の録画だよ。これでも担任だから確認しなきゃならん。それにしても、お前の兄と幼なじみには問題児しかいねぇのか?緑谷はまた腕をぶっ壊すわ、爆豪は癇癪を起こすわ……ガキか」
相澤先生はうんざりした顔でVTRを見ながら言った。
「今回お前が駆けつけようとした判断は正しいよ。けどなこれが逆の立場でもお前は「行きますよ」」
「ボクがなりたいのは"倒すヒーロー"じゃ無いです。"助けるヒーロー"になりたいんですから」
「……そうだったな、だが」
「わッ!?」
相澤先生はボクの頭をクシャクシャに撫でながら立ち上がった。
そのせいでオウムみたいなアホ毛がたったのがわかった。
「お前がブラコンなのは知ってるが、緑谷が怪我するごとに冷静さは欠くなよ」
「……わかってますよ」
正直、いずにぃには怪我をして欲しくない。けど、相澤先生が言いたい事は怪我をしないヒーローなんていないってことだ。
「にしても…お前、熱でもあんのか?」
「へ?」
熱?多分無いと思うけどな……
相澤先生はおでこやら首に手を当てて確かめてきた。
「……そういえば獣人の平均体温は高いんだったか?」
「そうですね、因みにボクの平均体温は38°から39°ですよ」
相澤先生が勘違いした理由がわかった。
ボクみたいな動物の部分が強く出ている人は他の人に比べて体温が高い。それと相まって、さっきまで走っていたボクの体温は40°近くあるから相澤先生からしたら高熱な訳だ。
「今日はランニングしながら来たのでそのせいで体温が上がってるんだと思います」
簡単に説明すると相澤先生は納得したみたいだった。
それから暫く考えて保健室の角を親指で指しながらシャワーを浴びてこいと言った。
保健室にシャワーなんてあるの!?
「逆に無いと思ったか?雄英たぞ。そこらのマンションよりは良い設備がある。乾かすのは手伝ってやるからさっさと行ってこい」
そういわれてつれていかれたのは保健室の角で、相澤先生が壁を押すと仕掛け扉みたいに回転して通路が出てきた。
何で仕掛け扉なの?普通の扉で良いと思うんだけど
「保健室のシャワールームは主に女子生徒専用だ。校内にも別にシャールームはあるが保健室のはその、」
あ~と言い淀んでいる相澤先生をみて察した。
つまり、月のモノで汚れてしまったりした時用ってことかな。
相澤先生にお礼を言ってシャワールームに入るとシャンプーやリンス、更には化粧水等も置いてあった。
これ、使って良いのかな?
『そこに置いてあるのは学校の備品だから好きに使えよ』
良いんだ…これ、結構良いやつばっかりだけど…あ、これ睡さんのシャンプーと同じ匂いがするってことは、睡さんが揃えてるのかな?
そんなことを考えながらシャンプーやリンスはありがたく使わせて貰った。
数十分かけて尻尾まで洗い終わって保健室に戻るとまたVTRを見ている相澤先生がいた。
「相澤先生、上がりました」
「ん、そう、か…?」
「どうかしました?」
「……いや、何でもない…」
ボクを見るとピタッと動きが止まった。視線を追ってみると視線はボクの尻尾に向かっていた。
あぁ、多分萎んでる尻尾をみて驚いたのかな。相澤先生モフモフしてるの好きだし。
すこしションボリした雰囲気を纏った相澤先生に手伝って貰いながらドライヤーとブラシで整えていくと、朝より艶々でモフモフになった尻尾に戻った。
リンスを変えただけでここまで変わるなんて…馬鹿にできないよね、ホント。
「ん、もう時間か……行くぞ楪……楪?」
相澤先生についていこうする足を止めて、相澤先生を睨む。
昨日のやったことは忘れてない。
「……またボクを生け贄にするんでしょ!」
「しねぇよ…悪かったって」
渋々ついていくと相澤先生がボソボソと喋りだした。
相澤先生も流石にあそこまでマスコミが追いかけるとは思ってなくて、SNSでの反響もここまで大きくなるのは予想外だったらしい。……まぁ、そういうことなら…悪意2割偶然8割なら…
そのままついていって校門へ行くと校門前には既にマスコミが集まっていて登校してきた生徒を捕まえていた。
マスコミの中には昨日ボクを追いかけ回した人たちもいた。
よく筋肉痛とかにならないね…?
「相変わらずご苦労なことだな……ほら、行くぞ」
「……あぃ…」
あの中に行くのやだぁ……
「あの、オールマイトの、って小汚…!?君!リカバリーガールの!」
「うへぇ…」
相澤先生に話しかけた女性がボクの存在に気づいてボクに近寄って来ようとすると相澤先生が止めてくれた。
「彼は今日は非番ですからお引き取りを。それと彼女にはあまり強引な事はしないでください。昨日の取材方法は強引過ぎます。これ以上は私たちヒーローも警察も出るとこに出ますよ。それじゃ」
「あ、ちょッちょっと!」
相澤先生に腕を引っ張られてすぐに後ろ手警告音と重い音が鳴った。振り返って見るとさっきまで開いていた校門が鉄の扉で閉じられていた。
「対侵入者用防壁だ。通行許可証か生徒手帳を持ってなきゃ防壁が作動して入れなくなる。オールマイトさんが殴っても耐える代物だ」
「オールマイトのパンチを耐えるんですか!?」
パンチ一つで地形を変えたり、天候を変えたりする威力を……それってどんな素材を使ったらそんな耐久力に……
「まぁ本人曰くデトロイトならイケるらしいがな。それにしても、よくあんなのに囲まれてヒーロー活動できるな…」
「それは同感です」
ボクは絶対に無理だよ。あんな迫ってくる人たちを捌くのなんて…
そのまま一緒に教室へ行くと皆は既に着席していた。
「おはよう。そして昨日の戦闘訓練お疲れ、VTRと成績を見させて貰った。爆豪お前は力はあるんだからガキみたいなことすんな」
「…わかってる」
かっちゃんは唇を噛んで自分に言い聞かせるようにそう言った。
どうやら立ち直ってはいるみたいだ。
「それと緑谷、また腕をぶっ壊して一件落着か。個性の制御ができないのは仕方ないでは通させねぇ」
「クゥッ……」
いずにぃは相澤先生に言われると悔しそうに俯いた。
相澤先生の言っていることは正しい正論だ。
「俺は同じことを何度も言うのが嫌いだ。腕を壊さなきゃやれることは多い。焦れよ緑谷」
「……!ハイッ!」
今日からまたワンフォーオールの%制御練習の再開だね。
相澤先生はかっちゃんといずにぃ以外には特に何も言わずに成績表をおろした。
「ホームルームの本題だ。急で悪いが今から君たちには学級委員長を決めて貰う」
そして一呼吸が空いた後にクラスの全員が挙手した。
普通の学校なら学級委員長なんて面倒なだけだけど、雄英では違う。雄英のヒーロー科なら尚更だ。
トップヒーローに欠かせない集団を導くいう能力を鍛えられるし、何より
「静粛にしたまえ!」
突然飯田君が演説を始めた。飯田君が言いたいことを簡単に纏めると、責任重大な役目はやりたい人がやれるわけではないから平等に投票でやろうと言うことだった。
やりたい人全員が自分にいれると思うけどな……
「時間内に決まれば俺はどうでも良いよ。俺は寝るから何かあったら楪に言え」
相澤先生はそれだけ言うと教卓のしたに寝袋を来て寝転がって寝始めた。
とりあえず飯田君が言った通り投票にすることになって、八百万さんが小さい紙を人数分創造してくれて、それをボクが回収して黒板にかくことになった。
いざ書こうとすると切島君と上鳴君が話しかけてきた
「あ、ゆずちゃん代わりに書こうか?届かないっしょ」
「確かに!ゆずちゃん!俺も手伝うぜ!」
「上鳴君!切島君!呼び方は自由とは言われたが先生と呼ばないか!失礼だぞ!」
飯田君が言う二人はブーイングをした。
まぁボクとしては良いんだけどね。
「あはは…まぁ確かに立場上は先生だけど、結局は同い年だし、皆ともっと仲良くなりたいから良いよ、別に」
「せ、先生が言うなら…」
ボクがそういうと飯田君は席に座った。
そしてボクは尻尾の先を硬化させて体を持ち上げ、投票用紙を見ながら黒板に名前を書き始める。
(何か身長伸びた!?)
なんだろう、急に視線が……まぁ気のせいか
名前を書き終えて後ろを向くと視線がいつもより高いからか、遠くがよく見えた。
それと同時にいずにぃとかっちゃん以外がなんとも言えない表情でボクを見ていた。
「どうしたの?」
「い、いやちょっと衝撃的って言うか……尾白、お前あれできる?」
「一瞬なら……なんとか」
「何か、俺たちより高くね?」
「楪ちゃん、それ転んだりしないかしら?見ててすこし不安になってくるわ」
「慣れてるから大丈夫だよ?それよりほら、」
ボクが黒板を指差すとやっと皆見たようで、特にいずにぃは驚いていた。
「僕に3票!?」
「馬鹿な!?誰がデクにッ!お前か女狐ッ!」
「そんなわけないでしょ…」
いずにぃに入れたのは一人は飯田君だった。投票用紙に丁寧に名前まで書いてあったからね。
そんなこんなで委員長はいずにぃに決まり、副委員長は八百万さんに決まった。
……いずにぃ大丈夫かな……
相澤先生を起こして結果を伝えると寝袋に入ったまま器用に立ち上がった。
「そんじゃ委員長は緑谷、副委員長は八百万で決定だな。よしホームルーム終わり」