まずはプロローグから。ポケモンの登場はもう少しお待ちください。
一人の少年が、パソコンのキーボードを叩く。
「頼む……! 存在していてくれ……!」
少年はまるで何かにすがろうとする表情をしていた。声も震えている。
入力を終えてEnterキーを打ち込むと、パソコンの画面はほんの一瞬だけ白くなる。
そして画面の文字が告げるのは残酷な一言。
『ポケモン に関する情報は見つかりませんでした』
「どぉしてだよぉぉぉぉぉぉ!!」
「ハジメ、うるさいわよ!」
カ〇ジのような絶叫をする少年の名は、南雲ハジメ。中学二年生。
中身は大学生の、憑依転生者である。
自分自身が転生者だと気付いたのは、中学生になってからだった。ある日突然、見たことの無い生き物が出てくるゲームをプレイすると言う夢を見たのだ。
ゲーム名は、『ポケットモンスター』。だが、父の仕事の関係でゲームにそこそこ詳しいハジメは、当初はポケットモンスターと言うゲームに心当たりが無かった。
色々と違和感がある中、毎日立て続けにポケットモンスター、縮めてポケモンをプレイする夢を見た。
見続けていた夢に、変化があった。ゲーム機の電源を切る自分。暗くなった画面に映った顔が、見たことの無い青年だった。
それと同時に思い出したのだ。かつて自分は、ポケモンが好きな大学生だったことを。
正直なところ死因は覚えていない。トラックに轢かれた記憶も、苛めに耐えかねた自殺という記憶も、病死したという記憶もない。
だが、それはそれで安心した。あまりにも凄惨な死に方だったら、心が壊れていただろう。
前世の記憶を取り戻したハジメ(憑依)は、ポケモンに関する情報を集め続けた。新聞紙の番組表に、本屋の棚、ゲーム売り場とポケモンに関する事を調べ続けた。
しかし、結果はハジメにとって残酷であった。この世界は、ポケモンと言う概念自体が存在していなかったのである。
絶叫を母親に叱られた後、ハジメはベッドに寝転がって天井をボーッと眺めていた。
「ポケモンだけが、存在してないんだよなぁ……。他の任〇堂作品はあるのに」
だからこそ悲しい。テレビの向こうの少年少女が繰り広げる冒険を見れないことが。ゲームの向こうで生きる個性豊かなキャラやポケモンたちとのバトルや、冒険が味わえないことが。作者ごとに表現が違う、独自のストーリーを持った漫画が存在しないことが。
「はぁーあ……」
ため息を着きながらベッドの上で適当にゴロゴロ転がっていると、ふと本棚のある背表紙のタイトルが目に入った。
「キャラクターデザイン集……。父さんがプレゼントしてくれたんだっけ……」
その時、ハジメに何かが閃く。
「デザイン……?」
起き上がり、勉強机に向かう。椅子に座ってから、まだ使ってない予備のノートを開き、思うがままに鉛筆をはしらせる。
「描けた………!」
そこに描かれていたのは、ポケモンを代表すると言っても過言ではない生き物……ねずみポケモンの、ピカチュウの姿だった。
実はハジメの母は、結構人気な少女漫画家である。幼い頃から母と色んな絵を描いていた事が、ここで活かせたようだ。
「ポケモンの記憶が、僕にはハッキリと残ってる。そして母さんのお陰でポケモンの絵が描ける」
だからこそ、最初の閃きが徐々に具体化していく。
「そうだ! 無いなら作れば良い! あんな素晴らしい作品を誰も知らないなんて勿体無い!」
そこから、ハジメの生活は大きく一変することになる。
よく、ポケモンの概念が存在しないと言う二次創作を見かけますが、このありふれ世界の地球も同じです。
ですが、ハジメにはゲーム製作会社の父親と漫画家の母という、布教に最適な人間が2人も居ます。
さて、次回は、一気に高校まで時間を飛ばす予定です。香織との関係もそこで入れようかと思います。