今回で、いよいよハジメが相棒ポケモンをゲットします!
「う、あ……」
水の音で目を覚ましたハジメは、ゆっくりと起き上がる。
「あの橋から落ちたんだよね……?」
どうやら地下水脈に落ち、そこから流され続けていたようだ。そして運良く陸地に流れ着いたらしい。ハジメが辺りを見回すと、天井の高い空間が広がっている。かなり広い洞窟のようだ。
「何処まで落ちたんだろう……。とにかく、今は体を休ませなきゃ」
濡れた服を出来るだけ絞ると、ゆっくりと慎重に歩き始める……その時だった。
「グルルル……」
「っ!」
鳴き声のした方へ思わず顔を向けると、そこに居たのは……。
「さっきのサイホーン!?」
しかしその鳴き声はか細く、間近で感じた野生のオーラとも言うべき気迫は感じられなかった。
「まさか、地下水脈で流れた事がダメージになってるのか……?」
サイホーンに水タイプの技は効果抜群。水に長時間晒された事が、彼を大きく弱らせているようだった。
「グオォォ……」
「…………」
ポケモン好きとして、純粋に助けたいと言う気持ちがある。
だが、先程まで殺されるかもしれない戦いをしたのだ。助けたところを襲われるかもしれない。
「(駄目だ駄目だ! アニメのように仲良くなれる訳じゃない、ここは現実なんだ! もっと自分に厳しくしないと生き残れないんだ! しっかりしろ僕!)」
首を振って、ギロリと目付きを鋭くしてサイホーンに背を向ける。しかし……。
――ポケモンを傷つけたくないよ!
「……っ!」
昨夜、泣きながら香織にぶちまけた本音を思い出す。それによって生まれる戸惑い。
――好きなことを話す時の笑顔、私は好きだなぁ
「香織……」
恋人が教えてくれた自分の良いところを思い出す。
「……弱虫だなぁ、僕」
思わず自虐的な笑みを浮かべる。ポーチを漁ると、出てきたのはオボンの実。浅い階層でアローラコラッタやアローララッタを倒したとき、冒険者から奪ったものと思われるそれを落としていった。幸いにも、地下水脈を流れている間にポーチが無くなると言うことはなかったようだ。
オボンの実を握り、ゆっくりとサイホーンに近付くハジメ。
「っ! グゥゥゥ……!」
「落ち着いて。今は動いちゃ駄目だ。もう君とは戦いたくない」
「グルルル……!」
「口開けて。この木の実なら、傷が治るよ」
オボンの実を差し出すが、警戒しているのか口を開けようとしない。
「……毒だと思ってる? 大丈夫だって、ほら」
その硬さに苦戦しながらも、一口かじる。辛味のないまろやかな味は、不味さを感じさせなかった。
だが、それでもサイホーンは睨むばかりで食べようとしない。
「このままだと、死んじゃうんだよ?」
「ガウッ!」
サイホーンには、オヤブンとしての意地があった。目の前の生き物から、施しを受けるのが我慢ならないのである。
だが、思わず吠えたその声に反応するものが居た。
「キキキキキキキ!」
「っ! オンバット! しかもこんなに……!」」
おんぱポケモン、オンバット。耳の大きなコウモリのようなその見た目通り、耳が良い。聞き慣れない音に、群れが引き寄せられたようだ。
「キィィィィ!」
「うっ、ぐうっ!」
“ちょうおんぱ”が放たれて、その耳障りな音に耳をふさぐハジメ。その隙を突いて、一匹のオンバットが大きく口を開けた。
「ガブゥッ!」
「いっ、ぎっ……!」
左腕を噛まれる。そこからチュウチュウと何かを吸う音がした。
「(しまった、“きゅうけつ”……!)」
錬成して“人間版ストーンエッジ”をしようにも、地下水を流れて冷えきった体と、サイホーン戦によって蓄積した疲労、この2つが原因で体が思うように動かない。
「(まずい、意識が……)」
サイホーンはその光景を見ていた。ここに落ちてくる前まで戦っていた人間が、オンバットに良いようにやられている。
今まで、自分をそこまで苦戦させる人間は居なかった。突進を防がれる事はあっても、足元を崩されもがく羽目になった事は無かった。
オヤブンとしての意地もあるが、そんな自分を苦戦させた人間に、情けを掛けられるような振る舞いをされたのが、気に食わなかったのだ。
しかし今はどうだ? オンバットの群れに囲まれて、噛まれて翼で叩かれてとやられてばかりだ。
――まさかアイツも弱っていたのか?
弱っていたのに、自分を助けようとした人間。ソイツが負けたら、苦戦させられた自分は何なのか。
「…………グルル」
目の前に落ちている、一口かじられた木の実。それをサイホーンは口に入れて、咀嚼した。
意識が朦朧とし始めたハジメ。流石の彼も死を悟り始めた、その時だった。
「ゴオオオオオオオ!!」
「キキィッ!?」
「キッ!?」
「キィィ!?」
洞窟内にビリビリと響き渡る咆哮。耳の良いオンバットはそれに驚き、中には気を失って倒れる個体もいた。
「サイホーン……!」
「グルァァァ!!」
“ロケットずつき”によって、低く飛んでいたオンバットが突き飛ばされていく。ハジメの側に立つと、彼を一瞥した。そして視線を残りのオンバットに向けると、“ロックブラスト”を放つ。
「キ、キキィ……」
「キュウ……」
虫の息な筈のサイホーンが猛攻を加えたのを見て、その迫力に圧されたのか、オンバット達は退散していった。
「助けて、くれたの……?」
「グルル」
まるで頷くかのような返しに、ハジメはクスリと笑った。
「ありがとう、サイホーン」
「グオッ!」
「サイホーン。この洞窟を抜ける為にも、君の力を貸してほしいんだ。僕も出来る限りサポートする。……一緒に行かないかい?」
「ガァァウッ!」
サイホーンは大きく頷いた。
「ありがとう! これから宜しくね!」
この時ハジメは、彼と何処か繋がったような気がした。
彼はまだ知らないが、この時ステータスプレートが変化していた。
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南雲ハジメ 17歳 男 レベル3
天職:錬成師、魔物学、魔物使い
筋力:50
体力:1000
耐性:10(+990)
敏捷:50
魔力:70
魔耐:10(+990)
技能:言語理解(真)、錬成、回避行動、背面取り、魔物攻撃耐性
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はい、ステータスが完全にハッキリしました。耐久に極振りしたようなステータスです。
以下、箇条書きによる技能解説です。
魔物攻撃耐性:ポケモンからの攻撃を受けた時だけ、耐性と魔耐のステータスが上昇。本編の場合、(+990)が付与される。人間からの攻撃では発揮しない。その為に檜山たちによるリンチでは大きく傷付いた。
簡単に言えば、サトシが10万ボルト食らってもピンピンしてるような、スーパーマサラ人のような状態になりました。