ポケットモンスター トータス【本編完結】   作:G大佐

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今回は、太字や拡大など、特殊タグを結構使っています。


第二試練 雷炎問答

 目の前に現れた2体のポケモン。白い竜の名はレシラム。黒い竜の名はゼクロム。それぞれ、真実を司る英雄と理想を司る英雄である。

 

『真なる神の力、その欠片を集めし者よ』

 

『問おう。お前は何を願い、その欠片を集める』

 前世の知識では、イッシュ地方の建国神話に出てくる2体。その建国神話では、王である兄弟が対立し、最終的には兄弟は争いを止めた。しかしその子孫が争いを再び始めた時、ゼクロムとレシラムは怒り、イッシュ地方を焼け野原にしたと言う。

 つまり、この試練で嘘偽りは許されない。目の前の2匹を怒らせれば、自分はおろか後ろの仲間達も消し炭にされてしまうだろう。

 

「僕は……」

 

 2体の英雄からのプレッシャーで、息が詰まりそうになる。だが改めて、自分の想いを打ち明ける。

 

 

「僕は、アルセウスを解放して、ポケモンと人が一緒に生活できる世界にしたい!」

 

 

 言った。言ってやった。ゼクロムが口を開くまで時間は掛かっていないが、やけに長く感じた。

 

『ほう。この星の生命との共存を願うか』

 

 感心したような声を出したゼクロム。だがまだ合格と言われた訳ではない。レシラムが現実を突きつける。

 

『だが偽りの神に惑わされた人間達は、我らを害あるものとして傷付けている』

 

「知っている。そしてそれが、長く続いていることも」

 

『長く続いた思想は強固なものとなる。大衆に立ち向かうために、真なる神の目覚めを願うか?』

 

「違う! 人間の思想に変革を与えるのは、人間の仕事だ! 僕がアルセウスに求めるのは、エヒトから神の座を取り戻す事と、ディアルガ達三体の神の怒りを静めてほしい事だ!」

 

 人間は神の駒ではない。人間には、自分で考えて行動し、自分の想いを伝える力がある。それなのに神に依存する構想にしたエヒトは、神の座に相応しくないと。ハジメはそう叫んだ。

 レシラムが小さく頷くと、今度はゼクロムが前に出る。

 

『お前が真なる神の解放を願う理由、(しか)と聞いた。その上で聞こう。お前は……時代を破壊する覚悟はあるか

 

「え……」

 

『偽りの神は、己の都合に合わせて人間達を支配している。しかし、あやつが人間達に与えし魔法によって、国が発展したのもまた事実。偽りの神の終焉は、人間達に大いなる混乱を招く。その混乱が善き新時代へと進展するかは、我らをもってしても分からぬ。その過程で消え行く命もあるだろう』

 

 ゼクロムの赤い目が、ハジメに対して「負の側面から目を逸らすな」と警告する。

 

『お前は、その責務を背負う覚悟はあるか?』

 

 ハジメの肩に、ズッシリと重い「何か」がのし掛かる。腕が震え、足が震えて膝も着きそうだ。

 

 

「1人じゃないよ!」

 

 

 突然響いた叫び声。ハジメが顔を向けると、そこには愛しい人……香織が隣に立っていた。

 

「私たちはアンカジで、ポケモン達と一緒に暮らす様子を見てきた!」

 

 それに勇気付けられたように、シア、ユエ、幸利と次々に仲間がハジメと並ぶ。

 

「そうです! お父様も同族の皆さんも、みんなポケモン達と仲良くなり、弱小と言われていたにも関わらず、強くなりました!」

 

「アンカジの人々は、自分達で工夫して、魔法だけじゃなくてポケモンの力も借りて生きている!」

 

「もうとっくに、エヒトの野郎から一人立ちしようとしてる奴らが居るんだよ!」

 

 そして、この男も前に出た。

 

「俺は……この世界に召喚されてから、ポケモンは全部悪だと思ってた」

 

 光輝はゼクロムとレシラムから目を逸らさない。

 

「だけど、ようやく分かったんだ! そうじゃないって! 地球人ですら分かることが出来たんだ! だったらトータスの人たちも、分かることが出来る筈だ!」

 

「みんな……!」

 

 その時だ。ゼクロムとレシラムは天に向かって叫んだ。

 

『『ギュオオオオオオオオン!!』』

 

 雷のバチバチとした音と、巻き上がる炎のゴオゴオとした音。それらが大広間を埋め尽くす。その衝撃から顔を腕で守るハジメ達。その後に顔を上げると、2体の纏う雰囲気は喜びに満ちていた。

 

『良かろう! お前達の叫び、確かに聞いた!』

 

『故に我らは認めよう!』

 

『お前達の覚悟は理想を見せる!』

 

『お前達の勇気は真実となる!』

 

――雷炎問答(らいえんもんどう)、突破

 

 

 

 

 

 ゼクロムとレシラムに認められたハジメ達。2体の向こうにある扉が音を立てて開いた。風が吹き込み、頂上が近いのだろう。

 

『その先に、この塔の最後の試練が待ち構えている』

 

『行け。試練の主が、神の力の欠片を持っている』

 

「ありがとう。ゼクロム、レシラム」

 

『もう1つ、これを持っていくが良い』

 

 ハジメの手元に現れたのは、フリージオと言うポケモンを模したようなアイテムだった。ペンダントのようにも見える。

 

『我らは元々、1つの竜である』

 

『そこから我らが分れたが、残された骸も命を持った』

 

冷気と虚無を司りし竜。奴は、氷の大迷宮にて待っている』

 

『その証が、奴の元へと汝を導くだろう』

 

「それって、まさか……! 本当にありがとう! さぁみんな、行こう!」

 

 ハジメが扉の向こうへと行くが、ティオだけは動かなかった。

 

「……ティオ?」

 

「妾はちと、このお二方に用がある。先に行っててくれ」

 

「……分かった」

 

 真剣な顔をしているティオを断れる筈もなく、ハジメ達は先へと進んだ。

 そして、残されたティオは……。

 

『我らが加護を与えし娘よ』

 

『大きくなったものだ』

 

「光栄でございます。ですが、わたくしは偽りの神の使徒との戦いにて、半ば暴走の形でお二方の加護を使用しました。故に稽古をつけて頂きたく」

 

 頭を下げるティオに対する返答は、雷と炎を溜める音で返された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 塔の頂上。内部に入る前は快晴だった筈だが、ハジメ達の目の前には暗雲が立ち込めていた。

 周りに巨大な白色のクリスタルが立ち並ぶこのエリアに、1匹のポケモンが舞い降りた。

 

『よくぞ来た、人間よ!』

 

レックウザ……!」

 

「凄い……。あれが、ティオ達が崇める『龍神様』……!」

 

 レックウザはハジメ達を見ると、空に向かって咆哮した。その瞬間、周囲のクリスタルが輝き始める。クリスタルに浮かび上がるは、()()()()()()()

 

「このクリスタル、まさか……!」

 

 クリスタルからポケモンへと光線が当てられ、その姿が大きく変化する。

 

メガシンカ……!」

 

『余計な前置きは不要! さぁ、我が試練を乗り越えて見せよ!!』

 

 最終試練「烈空(れっくう)の試練」、開始……!




ゼクロム&レシラムとティオの場面で不穏を感じた方はご安心ください。2匹による修行を受けてるだけで死んでません。

次回、ハジメ達vsメガレックウザ!
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