虫タイプと合わせて「蝶のように舞い蜂のように刺す」とか、電気タイプと合わせて「スピードと連打で戦う」とか。
レックウザの試練を乗り越え、プレートを手に入れたハジメ達。ゼクロムとレシラムによる修行のためにティオと別れた彼らは、シアの故郷であるフェアベルゲンへと飛行船を飛ばしていた。
「ハジメ。王国の人たちは亜人族をかなり疎んでいたけど、向こうは人間である俺達を受け入れてくれるのか? 相当恨まれていると思うんだが……」
「光輝の心配も分かるよ。けど、シアの一件でポケモンに対する考え方も変わってきているし、最近は帝国も大人しいみたいだからね」
試練を共に乗り越えたからか、光輝とハジメは互いに名前で呼び合うようになった。そんな打ち解けた二人が話しているのは、フェアベルゲンについてだった。
道中話したのは、向こうはかなり閉鎖的で、奴隷狩りの歴史から人間を疎んでいる事だった。シアの事もあり中々に苛烈な出来事だったが、あれから変わっているのではとハジメは見ている。何故なら、亜人族に対して奴隷狩りを行なっていたヘルシャー帝国の動きが、近頃は大人しいと言うのだ。
光輝の話によると、勇者たちと会談したいという名目で来訪するはずが突然キャンセルとなり、それ以降音沙汰が無いという。
「政治関係でトラブルでもあったのかな?」
「さぁ……。そこは流石に分からないな」
いかに勇者であろうと、ポケモンの知識が豊富であろうと、彼らは高校生。政に詳しい筈もなく、そこはリリアーナ王女に任せようという結論になった。
一面に広がる大森林。そこにハジメの飛行船は着陸した。着陸地点には既に大勢の亜人族が警戒を露わにしており、その前衛を担っているのは、シアの同胞ハウリア族である。空飛ぶ謎の物体に対してポケモンを出して警戒していると……。
「お父様ぁ〜!」
「「「シア!?」」」
飛行船から飛び出てきたのはシアだった。一瞬驚いたものの、愛娘の姿を見たカムは腕を広げる。
「シア! おぉ、こんなに逞しくなって……!」
「お父様も元気そうで……あれ? こんなにムキムキでした?」
飛び込んできた娘を優しく抱きしめるカム。シアも父との再会を喜んだのだが、ふと感じたことを言葉にする。するとハウリア族は皆、フフンとドヤ顔をするように胸を張った。
「シアが旅立った後、我々は他の一族と共に働く事を許されてな。良い食事、良い勤労、良いポケモンバトルをしていたら体が丈夫になったのだ!」
「えぇ!? ってよく見たら他の皆さんもポケモンを持ってますぅ!?」
これにはハジメも驚き、周りを見る。見た目がエルフの森人族はミブリムやベロバーと言ったポケモンを、鳥のような見た目の亜人族はムックルを始めとした鳥ポケモン達を、そしてドワーフのような見た目の土人族は
ハジメと出会ったばかりの頃はポケモンを疎んでいたというのに、その事を覚えている長老たちは気まずそうに目を逸らす。その中で目を逸らしていなかったアルフレリックが出てくる。
「私が説得したんだ」
「アルフレリックさん!」
「試しにと各長老達でポケモンをゲットして、共同生活をしてみたんだ。そしたら、畑は耕してくれるし、念力とかで物を運ぶ手伝いもしてくれるしと良い事づくめでね。そしたら他の皆も……という訳さ」
「凄い……! こんなに早く広まるなんて!」
「新しい事に挑戦するというのは、良い刺激になったようだ。今では本当の意味で、種族の垣根も越えているよ」
ニッコリと微笑むアルフレリックに、ハジメの胸は暖かくなった。人間だからと疎まれることを覚悟していた光輝たちも、シアの一件を知っているユエも、心が暖まる。
「アルフレリックさん、カムさん。僕たちが来たのは……」
「分かっているとも。大樹の迷宮だね」
「実は数日前から霧が晴れたのです。晴れる周期では無い筈なのですが」
ハルツィナ樹海の霧は、大迷宮へ簡単に行かせない為に立ち込めている。一定の周期で霧が晴れており、それを知っているのは樹海に住む亜人族だけであった。それが突然晴れ、暫くしてからハジメ達が来たのである。
「まさか、迷宮を攻略したことで霧が晴れた……?」
ハジメは、遠くにそびえ立つ巨大樹に視線を向けた。
――待っていましたよ、ハジメ。
ふと、王都襲撃の際に出会ったゼルネアスの声が聞こえたような気がした。
原作ではヘルシャー帝国の話もありましたが、そこは本編完結後の出来事として書きたいのでカットしました。今回は樹海到着まで。次回から迷宮に突入です。