オンバットの群れから助けられ、サイホーンと相棒になったハジメ。撃退する時の咆哮で驚いているのか、野生のポケモンが襲ってくることは無かった。そのお陰で、今は体力を回復するために休むことが出来ている。
「少しでも体力をつけとかなきゃ。サイホーン、もう1個木の実を食べなよ」
「ガルルッ!」
「え? 僕も食べろって? じゃあ半分こね」
今度はオレンの実を食べる。これも、浅い階層に居たアローラコラッタ&アローララッタが冒険者から奪ったのを、落とした物だ。オボンの実よりも硬く、ハジメの味覚ではあまり美味しく感じない。だが不思議と痛みがゆっくりと引いていくのを感じた。
そこからハジメは、近くの岩壁を錬成で削り取った。その切り取った石を更に錬成して、頭の中でイメージする水筒の形にしていく。蓋はそれっぽく加工しただけなので、地球にあるような密封性の高い物ではない。だが、飲み水の確保が優先だった。
水を汲み終えたハジメだったが、不思議なことに気が付いた。
「(石製だから重く感じると思ったのに、軽く感じる……。それにさっきのサイホーンと繋がったような感じ、何なんだろう?)」
もしやステータスが変化したのではと思いステータスプレートを見ると、その変化に驚愕した。
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南雲ハジメ 17歳 男 レベル3
天職:錬成師、魔物学、魔物使い
筋力:50
体力:1000
耐性:10(+990)
敏捷:50
魔力:70
魔耐:10(+990)
技能:言語理解(真)、錬成、回避行動、背面取り、魔物攻撃耐性
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「嘘だろ……? 魔物使いって、つまりポケモントレーナーみたくなったってことか? 繋がったような感覚は、サイホーンが相棒になった事を意味してるのか? それに魔物攻撃耐性って、もしかしてオンバットに攻撃されても簡単に倒れなかったのって、これが関係してる……?」
しかしハジメとしては、ポケモンの事を魔物と呼ぶ事に抵抗があった。だがステータスプレートがそう記してる以上、仕方の無い事だろう。
「……よし、出口を探そう」
そうして歩こうとするのを、サイホーンが呼び止めた。
「ガァッ」
「ん? どうしたの?」
「グルル」
少し屈んで、頭を上にくいっと動かす。
「もしかして、乗せてくれるってこと?」
「グウッ!」
「わぁ、ありがとう!」
ゲームでもポケモンを移動手段として使う描写はあるが、それとは違って鞍が無い。そのためお世辞にも乗り心地が良いとは言えないが、体力を温存できるのでハジメにとって助かった。
早速サイホーンに跨がると、休憩しながら決意していたことを語った。
「サイホーン。僕には、大切な恋人が居るんだ。そして僕の趣味と夢を笑わない大切な友達が居る。僕の夢を応援して手伝ってくれる親が居る」
サイホーンは答えない。だがその声が決意に満ちていることは感じていた。
「みんなに会うためにも、何としてもこの洞窟を抜ける! だから前に進み続ける! 力を貸してほしいんだ、サイホーン!」
「グオオオッ!!」
勿論だ!と言わんばかりの返事に、ハジメは笑みを溢した。
「行こう! 前進だ!」
ズシンと音を響かせて、その一歩を相棒と共に踏み出した。
道中、ダンゴロやガントルといった洞窟に住むポケモンと遭遇した。しかし1人と1匹は、錬成や地面技のコンビネーションを駆使して、それらを撃退していった。
――襲ってくるのなら戦う! 生きるために!
今までウジウジとしていた「ポケモンを傷つけたくない」という悩みは、消え失せた。
彼は独りじゃない。相棒が出来て、さらに待っている人達がいる。だからこそ戦う覚悟が出来たのだ。
ポケモンが自然の理に従って襲い掛かるのなら、自分もそれに従って戦おう。野生のポケモン同士が縄張り争いで戦うように、自分の身を守るために戦うように!
そうして進んでいくと、何やら聞き慣れない声がした為、サイホーンから降りて慎重に岩陰から覗き込んだ。
「(あれは、オンバーンか。あのオンバット達の親玉かな?)」
スピーカーを思わせるような大きな耳を持つ、ワイバーンとも似たような姿のそのポケモンの名は、オンバーン。奈落に落ちたハジメを襲ったオンバットの進化形である。
「(確かオンバーンは、飛行・ドラゴンタイプ。僕たちの攻撃手段なら、岩タイプの攻撃が通るかな)」
この時ハジメは、あることを実行しようとしていた。
それは、技能の中にある「背面取り」というもの。あくまで襲ってきたポケモンだけを迎撃してきたため、あまりその技能を試せていない。だが、あのオンバーンは奥へと続く道に陣取っている為、戦いは不可避になるだろう。そのため少しでも有利に進めるために、不意打ちを狙っているのだ。
「(後ろを向け、後ろを……よし、今!)」
その大きな耳は伊達ではなく、オンバーンは耳が良い。音を立てないように静かに両手を合わせて、地面に魔力を流して錬成する。
オンバーンが野生の勘で振り向こうとしたが、一歩遅く“人間版ストーンエッジ”が背後に炸裂した。
「グキャァァァァァ!?」
「今だ、サイホーン! “ロックブラスト”!」
「ゴアァァァァッ!!」
ゲームとは違い、現実での戦いはターン制ではない。不意を突かれて動けないオンバーンを、ハジメとサイホーンが畳み掛ける。
「“スマートホーン”!」
「ゴオオオッ!」
角を光らせて突進するが、さすが奈落で生きているオンバーン。体勢を立て直し、“りゅうのはどう”を放ってきた。
「グウッ!」
オヤブン個体だからか大きく傷つくことは無かった。しかしオンバーンの攻撃は止まらない。
「キィィィ!」
「僕を狙ってるのか!」
オンバーンの翼が鈍く光り、“はがねのつばさ”で迫ってくる。その狙いは不意打ちをした下手人であるハジメだ。
勢いよく突っ込んでくるオンバーン。ここでハジメは身構え、技能の1つを発動する。
「回避行動!」
端から見れば明らかに当たっているであろう攻撃。しかし、まるでハジメの体をすり抜けたかのような現象が起こった。
これが、ハジメの技能にある「回避行動」の効果。ポケモンの攻撃限定だが、これを発動した状態でダイブのような回避をすると、その攻撃を無効化出来るのだ。
「サイホーン、“ストーンエッジ”!」
「ゴオオオオッ、アァッ!」
「グキィッ!?」
ハジメのとは違う、本家本元の“ストーンエッジ”が炸裂。オンバーンは大きく突き飛ばされた。
「キャアッ、キャアッ……」
よろよろと飛びながら、逃げていくオンバーン。ハジメ達はそれを見届けるとお互いに頷いて、逃げた方向とは逆の、奥へと続く道へ歩き始めた。
爪熊ポジションはリングマ……ではなく、オンバーンでした。
いや、あの、言い訳させて下さい。
前の話でオンバットが出たので、親玉として進化形を出した方が良いのかなと思ったのが1つ。
もう1つは、LEGENDSアルセウスをプレイしていて、リングマは紅蓮の湿地のような、開けた場所が合うような気がしたのです。
リングマじゃねえじゃん!と思った方は、申し訳ありません。
また、蹴りウサギとか二尾狼は、奈落のような洞窟でこの2種類に該当するポケモンを思い浮かばなかったために、ダンゴロ等を出しました。