ポケットモンスター トータス【本編完結】   作:G大佐

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これまでは前編後編に分けていましたが、3チームをそうしちゃうとかなり時間掛かるため、1チームにつき1話ということにしました。というわけでサブタイトル通り、今回は幸利チームです。


聖剣士は見ている(幸利チーム)

 姿をポケモンへと変えられた上に、3つのチームに分断されたハジメ達。全員に与えられた試練は、迷宮に居るという聖剣士たちに認められる事。分断されたチームの内、幸利チームはと言うと――

 

「うにゃぁぁぁ! 助けてぇ〜!」

 

「坂上、受け止められるようにスタンバイ! 恵理、“おにび”で蜘蛛の巣を焼き落とすんだ!」

 

「分かった、任せろ!」

 

「あいあいさ〜」

 

 虫ポケモン達の罠と格闘していた。今は、パチリスと化した鈴の尻尾が巨大な蜘蛛の巣に引っ掛かり、宙吊りになっている。それを助けようと幸利達は動いていた。

 

「エリリン! だ、大丈夫だよね!? 私の尻尾焼けないよね!?」

 

「鈴ってば、ジタバタしないの。着地する場所ズレるよ? そーれ、“おにび”!」

 

 ポケモンの姿になった影響もあってか、幸利達はポケモンの技を繰り出すことも可能になっていた。特に相棒ポケモンと共に戦った経験のある幸利と恵理は、技を出すことに違和感がなく、スムーズに発動することが出来ていた。

 恵理の放った“おにび”によって蜘蛛の巣が焼き払われ、鈴は落下する。

 

「キャアァァァァ!?」

 

「うおっとぉ!!」

 

 龍太郎が何とか受け止める。ワンリキーは小柄ながらも、本来のポケモン世界では工事現場などを手伝うこともある程にパワーがあるため、軽々と抱えることが出来ていた。

 一方、助けた側の二人は蜘蛛の巣の正体について考えを巡らせていた。

 

「にしても、此処に蜘蛛の巣があるってことは……」

 

「クモ型のポケモンがいるって事だよね?」

 

「アリアドスとかデンチュラかもしれねぇ。いずれにせよ厄介だ。とっとと此処から離れて……」

 

 

「ヮンナ……!」

 

 

 突如聞こえた声に、4人は恐る恐る振り返る。そこには、4本の脚で下半身を支え、上半身はさながらケンタウルスのように起き上がらせたポケモンがいた。4本の腕?脚?であやとりのように糸を出している。どうやら、このポケモン……ワナイダーが、先程焼き払われた巣の主だったようだ。

 

「何だ、このポケモン……?」

 

「清水も知らないのかよ!?」

 

「ハジメが描いてきたイラストには、あんなポケモン居なかった! まさか、ハジメも知らない新種か!?」

 

「ね、ねぇ。あのポケモン何だか怒ってるような……?」

 

「もしかして設置した巣、というか罠を壊されて怒ってる?」

 

 4人は顔を見合わせ、同時に頷く。

 

「「「「逃げろおおおおおおおお!!」」」」

 

 4人は背を向けて一斉に駆け出した。未知の相手には無闇に挑まない。脳筋と言われてきた龍太郎でさえ学んだことだ。ワナイダーはというと、4本の脚をカサカサと動かして追い掛けながら、腕のように振る舞う残りの脚で“ねぱねばネット”を連発してくる。

 

「動きが気持ち悪い! 虫嫌ぁぁぁ!」

 

「鈴、蜘蛛って正確には昆虫とかには分類されないんだよ?」

 

「言ってる場合かぁ!」

 

 ギャーギャーと騒ぎながら逃げる4人。そこへ先頭になっていた幸利が何かに気付いた。

 

「あれは……! みんな、あの草むらに飛び込めぇ!」

 

「え!? う、うん!」

 

 恵理たちは戸惑いながらも草むらに飛び込んだ。ワナイダーは飛び込む瞬間を見ていたため、隠れても無駄だと言わんばかりに4人の居る草に近付いてくる。

 

「(ど、どうするの幸利くん!? あのポケモン気付いてるよ! 隠れても意味ないって!)」

 

「(落ち着け恵理! 俺が見たものが確かなら、ここら辺は……)」

 

 ワナイダーが草をかき分けようとした、その時だった。

 

「ァドス……!」

 

「ワナ!?」

 

 横から何者かに飛び掛かられたワナイダー。そのポケモンもまた、ザ・蜘蛛と言わんばかりの見た目で鈴は青褪める。龍太郎は幸利に、乱入してきたポケモンの正体を尋ねた。

 

「なぁ、清水。あいつは知ってるポケモンなのか?」

 

「あいつがアリアドスだ。ここら一帯は、アリアドスともう一匹の蜘蛛ポケモンの縄張りだったんだろう」

 

「じゃあボク達、アリアドスの縄張りに入っちゃったってこと?」

 

「正確には、追い掛けてきたポケモンと一緒に、だな」

 

 縄張りを荒らされた怒りからか、アリアドスはワナイダーと争い始める。ワナイダーの方も負けじと抵抗し始めた。

 

「ねぇねぇ、だったら今のうちに離れようよ!」

 

「そうだな。にしても、聖剣士は何処に居るんだ……?」

 

 アリアドスとワナイダーの喧嘩はまだ続いており、4人はそそくさとその場を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 蜘蛛ポケモンの縄張りから抜け出した幸利たち。彼らがたどり着いた先は、花畑と果樹園が混ざりあったようなエリアだった。

 

「わぁ……綺麗!」

 

「木の実も沢山あるぞ。ここって休憩スポットか?」

 

 キュワワーやアブリボンが飛び回り、色の異なるフラージェス達は楽しげにコミュニケーションを取っている。“あまいかおり”の満たされたこのエリアは、逃げることに精いっぱいだった幸利たちの心を癒やしていた。……この時だけは。

 

 

「クィン」

 

 

 花畑に響いた鳴き声で、先程まで楽しんでいたポケモン達が一斉に4人を見る。

 

 

 モンスターハウスだ!

 

 

「やっべぇ! この数はやべえぞ!」

 

「虫タイプや草タイプには、えーと、えーと!」

 

 流石の大群に幸利や恵理も慌ててしまう。だが、これを解決しようとしたのは、意外にも龍太郎だった。

 

「なぁ清水! あの空飛ぶ蜂の巣みたいなポケモン、分かるか!?」

 

「あぁ!? ってアイツはビークインじゃねえか! にしてもデッカ!!」

 

 龍太郎と幸利の視線の先に居たのはビークイン。しかも他のポケモンよりも体躯が大きい。ハジメのサイドンと同じ、オヤブン個体である。花畑のポケモン達が攻撃的になったのは、彼女の仕業だろう。このモンスターハウスのボスなのかもしれない。

 

「ビークインのタイプは!?」

 

「アイツは虫と飛行タイプ! だが坂上、今のお前は飛行タイプに弱い格闘タイプのワンリキーだぞ!」

 

「分かってらぃ! 確か、飛行タイプも虫タイプも岩に弱かったよな……!」

 

 龍太郎は足元の地面に手を付ける。……否、正確には地面を掴んだ。そして歯を食い縛り、ゆっくりと持ち上げていく。

 

「うおぉぉぉぉ……!」

 

「え、ちょ、坂上くん、マシで?」

 

 恵理がドン引きするのも無理はない。龍太郎は巨大な土の塊を持ち上げたのだ。あんまりな光景に、他のポケモン達も唖然としている。

 

「狙うはビークイン! どっせぇぇぇい!!」

 

「投げたぁ!?」

 

「ッ! ビ、ビィン!」

 

 ビークインはすかさず“ぼうぎょしれい”を発令する。近くを飛んでいたオスのミツハニー達が隊列を組んで防ごうとする。

 だが龍太郎の投げた土塊には、小石も混ざっている。ミツハニーの防御で土が崩れても、混ざった小石が猟銃の散弾のように凄い勢いで散らばった。それによって何匹かが気絶する。

 

「飛行タイプも合わせ持ってるなら、電気も有効だよね! よーしっ!」

 

「鈴、大丈夫なの!? 相手は女王バチだよ?」

 

「だって……皆の足を引っ張りたくないもん!」

 

「……幸利くん、ビークインは鈴に任せて、周りのポケモンはボク達で何とかしよう!」

 

「了解だ!」

 

 気合を入れるようにパシンと頬を叩いた鈴は、“じゅうでん”をしながら全力疾走してビークインの下へ走っていく。他のポケモン達はさせまいと行動を起こそうとするが、そこは幸利と恵理のコンビが援護していく。

 キュワワーやアブリボンを恵理が“おにび”で撃ち落とす。ゲームならば火傷状態にするだけでダメージは与えないが、現実であるこの世界においては立派な攻撃手段である。

 フラージェスやアゲハントは、幸利が“かげうち”で攻撃したり、“はっぱカッター”で飛行する虫ポケモンを落としていってた。

 そして、体に電気の溜まった鈴は、ビークインへと飛び掛かりながら技を発動した。

 

「“スパーク”! いっけえええ!」

 

「ビビビビビビビ!?」

 

 電気タイプの技は効果抜群。オヤブンビークインは目を回したのだった。

 

 

 

 

 

 モンスターハウスのオヤブンビークインを倒した幸利たち。ボスがやられたのを察したのか、周りのポケモン達も花畑をそそくさと去っていった。ところが……。

 

「ビィ……!」

 

「ま、まだやる気かコイツ!?」

 

 フラフラと体を起こしたビークイン。4人は警戒するのだが、両者の間に割り込む影があった。

 

『そこまでです』

 

 4人の頭に聞こえてきたその声は、穏やかと凛々しさを併せ持っていた。彼らの目の前に現れたそのポケモンは、四足歩行で緑色をしたポケモン。ビークインはその存在を確認すると、まるで王に仕える臣下のように恭しく頭を下げた。

 

『ビークイン、この場での試練は終わりとします。私は彼らと話がある。今は体を休めなさい』

 

「ビ、クィン!」

 

 緑色のポケモンの指示に頷くと、そのままビークインは木々の中へと消えていった。それを見届けた未知のポケモンは、今度は幸利たちに体を向ける。

 

『この迷宮の挑戦者たちですね。私の名は、ビリジオン。かつて偽りの神と戦った解放者達から、聖剣士と呼ばれていました』

 

「あなたが聖剣士!?」

 

『実は、あなた達がこのエリアへ飛ばされていた時から、様子をずっと見ていました』

 

「え……」

 

 鈴は少し動揺する。ワナイダーの巣に引っ掛かってしまったことや、追い掛けてくるワナイダーに悲鳴を上げながら逃げていた事を思い出したのだ。もしやその事を責められるのでは。そう思うと、そこから更に、聖剣士に認められず試練は不合格とみなされるのでは。悪い方へと考えが向かいそうになっていた。

 

『パチリスになっているお嬢さん。不安そうな顔をしていますが、心配しなくて良いですよ』

 

「ふぇ?」

 

『得意とするもの、不得意とするもの。それは持っていて当然のことです。ですが貴女は、不得意である虫タイプのビークインに対し、勇気を持って攻撃した。短時間でそこまで勇気を持つことは、中々出来る事ではありません』

 

「えへへ……」

 

 ビリジオンからの言葉に照れる鈴。するとビリジオンは、龍太郎にも顔を向けた。

 

『ワンリキーの貴方もですよ』

 

「え、俺も?」

 

『あのモンスターハウスは、試練の最終場。もし私の知る人間たちだったら、周りの者達を倒してビークインに挑んだでしょう。ですが貴方は、混乱しやすいあの場所でビークインを的確に見抜き、即席の攻撃を思い付いた。私はそこを評価しています』

 

「いやあ、あれは土壇場だったと言うか、直感だったというか……」

 

『その直感を大事にしなさい。過信するのは禁物ですがね』

 

 そして最後に幸利と恵理を見る。

 

『モクローとなっている貴方がリーダーですね?』

 

「あまり柄じゃ無いけどな」

 

『カゲボウズであるパートナーと共に、指示を出したり相手の特徴を伝えるその姿勢、誇っても良いですよ。今この場では、間違いなく貴方がリーダーです』

 

「良かったね、幸利くん!」

 

「へへっ……。サンキュー、恵理」

 

『私の試練は、合格です。恐らく、あなた達の仲間も私以外の聖剣士たちから試練を受けている筈です』

 

「「「「やったぁ!!」」」」

 

 こうして、幸利たちはビリジオンによる試練をクリアしたのだった。




次回は光輝チームを予定しています。
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