ブルーベリー学園に行ったり、キビキビダンスに巻き込まれたりしてました。
まぁそれ以上に、正月から早朝出勤や深夜勤務等が続いて、来月にはリハビリ資格の試験もあるので時間が取り辛かったのが大きいですが……。
聖剣士に認められるために、各々が試練を受けている中、ハジメ達は霧の立ち込めるエリアに飛ばされていた。“きりばらい”でも晴らせそうにないこの場所で、ゆっくりと足音が聞こえてきた。
『君が、イベルタルと戦った人間だな?』
現れたのは、コバルトブルーを基調とし、マーコールを思わせるような角を持つポケモン。凛々しさを含む声の主に、イワンコとなっているハジメは驚く。
「コバルオン……!」
『そうだ。このエリアにて君たちを見定める者だ』
いきなり聖剣士が、それも彼らの中ではリーダー格にあたるコバルオンの登場に、ハジメ達に緊張が走った。先に口を開いたのはコロモリになっているユエだった。
「……貴方と戦えば、試練を達成出来るの?」
『最初はそのつもりだった。だが、この者達の願いで試練を変えることにした』
コバルオンが嘶くと、何処からズシンズシンと重量感のある足音が聞こえてきた。
「な、何でしょう、この足音?」
「1つだけじゃない……。複数……?」
ミミロルとなったシアに、ピンプクとなった香織が辺りを見回す。やがて土煙と共に何かが突進してくる。
『ハージメー!』
「うわぁぁぁぁ!?」
イワンコとなった自分よりも大きな体格のポケモンに轢かれそうになったが、そこを別のポケモンが押さえ込む。
『サイドン、落チ着ケ』
「……ゴルーグ?」
それは、ユエの手持ちであるゴルーグだった。更に別のポケモンの声が響く。
『こりゃ、サイドン! 小僧が轢かれたら試練にならんじゃろ!』
『全く、その突進癖はサイホーンの頃から変わっていませんね』
『わ、悪かったよぉ。バサギリ爺ちゃん、アブソルぅ……』
「え、えぇ!? サイドンにバサギリ!?」
「この声、もしかしてアブソルですか!?」
大迷宮でポケモンの姿へ変えられてから見なかった、自分の手持ちのポケモン。思わぬ再会であった。コバルオンは続きを話し始める。
『彼らが願い出たのだ。自らの主と話をしたいと』
「話を……?」
ハジメがサイドンとバサギリを見ると、2匹は頷いた。
『よくお前さんは儂らに話し掛けてくれるが、やはり儂らと人間では意志が伝わるのにほんの少し壁がある』
『せっかく俺達と同じ姿になれたんだ! もっと話そうぜ!』
「バサギリ……。サイドンも……」
すると先程まで立ち込めていた霧が晴れ、木々に囲まれている広場のようになった。小さめの切り株が3つあり、ハジメと香織にはサイドンとバサギリ、ユエはゴルーグ、シアはアブソルと同じ切り株にいる。さながらテーブルで向かい合うような光景になっていた。
『へっへぇ〜。ハジメと話が出来る〜』
サイドンはずっとニコニコと笑顔を崩していなかった。確かにハジメとサイドンは良いコンビだが、香織はオルクス大迷宮で出会った位しか知らなかった。
「そう言えば、ハジメ君とサイドンってユエと会うまでどうしてたの?」
『おっ、よくぞ聞いてくれたな! 聞くも涙語るも涙の……』
『あー、これは長くなりそうじゃわぃ……』
呆れたようにため息をつくバサギリ。彼はハジメと向かい合うと、最初に頭を下げた。
『ハジメよ。あの時……操られ、暴走していた儂を助けてくれて、本当に感謝しておる』
「そう思ってくれてたんだ。えへへ、此方こそありがとう。バサギリってストライク達のリーダーだったんでしょ? それなのに着いてきてくれて、嬉しいよ」
『ほっほっほっ。見込みのある若い奴を選んだからの。とは言え、儂はまだまだ現役のつもりじゃ。これからも存分に頼っておくれよ? サイドンと共にな』
バサギリはそう言うと、何やら擬音が盛り沢山で語っているサイドンに軽く蹴りを入れた。
『ほれサイドン、其処までにせんか! ハジメに言いたい事があるのじゃろ!』
『おぉっと!? 忘れるところだったぜ!』
「あはは……。ありがとう、バサギリ」
香織が苦笑いすると、バサギリは彼女にも目を向ける。
『香織さんや。ハジメを支えてくれるだけでなく、
「今の私に出来るのは、これ位しか無いからね。出来ることは精一杯やるよ」
気合を入れるようにムン、と拳を握る香織。だがバサギリは真剣な顔をする。
『無理は禁物じゃぞ? お前さんもハジメもまだ若い。お前さんに何かあれば、ハジメは周りを気に留めず無茶をするじゃろう』
「……」
『かかか! いつかお前さんも、儂らのようなパートナーを得るじゃろうて。年寄りのお節介な勘じゃがのぉ』
「ううん。少し心が軽くなったよ。(やっぱり気付かれちゃったかぁ)」
ポケモンを持っておらず、ハジメ達以上の働きが出来ていない事に、若干の焦りがあった香織。だが不思議とバサギリの言葉に嘘は感じず、心が軽くなったのだった。
一方、サイドンとハジメ。両者はお互いに笑顔だった。
『こうやって話せるの、最高だなハジメ!』
「思えば、オルクス大迷宮の時から一緒だったよね〜」
『あそこには、生まれた時から居たからなぁ。最初は縄張りに侵入者が来たと思ってたのに、ハジメが結構良いバトルするんだからよぉ。おまけに地面が崩れて、水に流されたし』
「あの時は僕も木の実を持っていたからね。お陰でこうやって旅が出来るんだから、何が起こるか分からないよ」
初めて出会った時の事を思い出し、沁み沁みとした空気になる両者。そこへサイドンは思い出したかのように話題を変えた。
『あっ、そうだ。ハジメって俺達のことに詳しいんだよな? 俺、もう一回進化出来そうな気がするんだけど、何か知ってるか?』
「え、気付いてたの? 確かにもう一回進化することで、ドサイドンに進化出来るけど……」
『やっぱり! どうやったらなれるんだ!? これから強いポケモン達が相手になるなら、俺ももっと強くなりたい!』
ハジメは悩んだ。ドサイドンに進化するためには、プロテクターというアイテムが必要だ。ただし、非常に重いとされるそれは、明らかに人工物である。その様な物をトータスの人間が作れているかどうかは怪しい。
「進化に必要なのは、人間が作った道具だからねぇ……。今すぐに進化、とはいかないかも」
『そっか……。だったら、進化しても大丈夫なように、もっともっと今の俺を鍛えれば良いんだな!』
「お、おぉう。凄いポジティブ」
『これからも、バサギリのじっちゃんと頑張るからさ。これからもよろしくな、ハジメ!』
「ふふっ、勿論さ」
そうして二人はまた笑った。
ユエとゴルーグ。その身長差は大きいが、ユエが飛んでゴルーグに目線を合わせることで解決した。
「こうやって話せるなんて、思わなかった」
『私モダ、ユエ』
片言ではあるものの、頷いたりなどすることで感情が伝わってくる。ユエはふと、あることが気になった。
「ねぇ、ゴルーグ。貴方はかつて、伯父様に仕えていた。なら、どうして私を突然封印したのか、知っている?」
ユエのゴルーグは、元は彼女の伯父のポケモンである。彼ならば真実を知っているかもしれないと思い、質問した。
だが、答えはあまりにもアッサリとしたものだった。
『……知ラナイ。私ガ主ニ命ジラレタノハ、オ嬢様ヲ守ル事ダ』
「私を……?」
『ダガ1ツダケ言エルノハ、主ハ、オ嬢様ヲ大切ニ想ッテイタ。ソレダケ、ダ』
「伯父様……」
大切に思っていたのならば、何故化け物だと罵ったのだろうか。心が晴れるはずが、却ってモヤモヤし始めた。それを察したのか、ゴルーグは続ける。
『大切ニ想ウカラコソ、主ハ辛カッタノデハナイダロウカ』
「え?」
『自身ガ恨マレル覚悟デ悪ヲ演ジ、オ嬢様ヲ守ロウトシタノデハ。私ハソウ考エテイル』
そう言われてユエは思案する。確かに、もし本当に自分の事を嫌っていたのならば、ゴルーグに『ユエを守れ』等と命じない筈だ。封印されて永い間孤独だったのは辛い。だが自分を始末するならば、再生の能力を利用した拷問を……普通の人間ならば何度も死ぬような拷問をしていたかもしれない。
「(伯父様は、私を殺しきれなかったからじゃなくて、何か別の理由で封印した……?)」
それこそゴルーグが言うように、何かから守るために。
「……ありがとう、ゴルーグ。貴方のお陰で、伯父様について別の視点で考えることが出来る」
『ソウ言ッテ貰エタナラ、何ヨリダ』
パートナーとの会話に、ユエはどこか安心感を得ていた。
シアはアブソルの毛並みを堪能していた。幼い頃から共に育ってきたパートナーと会話できるようになり、テンションが上限突破したが故の行動である。
『ふふ。シアは小さい頃から、私の毛に顔を埋めるのが好きでしたね』
「こんなにフカフカなんです! 堪能しなくてどうするんですか!」
シアは思い出す。幼い頃のアブソルは今とは大違いでやせ細っており、毛並みも荒れていた。アブソルは災害を予知するが、それが災害を呼ぶと間違われて迫害された悲しいポケモン。同族達が言うには、他のポケモンとの縄張り争いに負けたか、ポケモンを危険視する亜人族によって傷付けられたのではないかと言うことだった。
事の真相は分からない。だが、過去の事をシアは恨むつもりは無い。今は仲間たちと共に、そしてアブソルと共に旅を出来ているのだから。
『ありがとう、シア』
「アブソル?」
『貴女に会えて、こうして冒険が出来るとは思いませんでした。私はフェアベルゲンの森で、貴女と共にひっそりと生涯を終えると思っていた。けども、様々な場所を巡ることが、こんなに楽しいとは思いませんでした』
「お礼を言うなら私もですよ、アブソル」
ニコリと笑みを溢して、シアはアブソルを見る。
「ユエさんとバトルをした時、私は諦めそうになりました。そんな時に、まだ戦えると諦めていない貴方の姿を見て、私も諦めないと決心できたんです」
一瞬キョトンとしたアブソルだったが、また笑みを浮かべた。
『そう言われると、私も頑張った甲斐がありますね』
「今が幸せみたいな事言ってますけど、これからも幸せになるんですからね?」
『おやおや、言われてしまいましたか』
お互いに、声を上げて笑い合う。
それぞれパートナーと話し合う姿を見ているコバルオン。
『(まさか、あそこまで人間と絆を深めていたとは……)』
自分のパートナーと話をしたい!と強く頼まれ、ゼルネアスからも了承を得て、試練内容を変更したのだが、間違っていなかった。
『(ゼルネアス様は、この事を見越していたのか)』
コバルオン、ビリジオン、テラキオンは過去の人間たちを知っている。偽りの神に躍らされ、幾度も争いを繰り広げ自分たちこそが至高だと言い張っていた。
真の神は封印され、いわば人質のように扱われてむやみに動けないが、彼らならきっと……。
『(合格だな)』
コバルオンが認めた瞬間のことだった。このエリアだけでなく、幸利達や光輝達の居るエリアにも、転移陣が現れたのだった。
本当はコバルオンとのバトルとか、手持ちのポケモン達とバトルとかも考えました。
ただ、ビリジオンやテラキオンでも戦闘だったので、ちょっと変えました。
次回でハルツィナ大迷宮は終わりになります。