光輝達の乗る飛行船を、まるで導くかのように飛ぶフリーザー。伝説ポケモン登場の報を受け、ハジメと香織を除く全員がブリッジに集まっていた。
「綺麗ですねぇ……」
「ファイヤーとサンダーは戦いを仕掛けてきたけど、もしかしてフリーザーは冷静な性格なのか?」
シアがその雄々しく飛ぶ姿に見惚れ、幸利は今までの流れとは異なる事態を考察していた。そうこうしている内に、フリーザーは真下に広がる雲海の中へと急降下を始める。
「この下に大迷宮があるのか?」
「とにかく降りてみようよ!」
「待ちなさい。この雲海の下は吹雪の筈よ。操縦を誤ったら墜落するかもしれないわ」
鈴が降りることを提案するも、シュネー雪原の天候を覚えていた雫が注意する。光輝もその事を覚えていた上で、指示を出す。
「でも、俺達の目的はこの雪原の大迷宮だ。フリーザーがここで降りていったのも、何か意味があるのかもしれない。……俺は着陸してみようと思う。みんなは、どうだ?」
舵の手を離せないため、全員の顔を見ることは出来ない。だが目的を自覚している全員の答えは決まっていた。
「……思えばレックウザの時と言い、ゼルネアスの時と言い、どの道危険だらけよね。今更だったわ」
「此処まで来れたんだ! 進むっきゃねえ!」
雫は苦笑いし、龍太郎は握り拳に力を入れて決意をあらわにする。シアやユエも頷くが、幸利と浩介は同じ疑問を言葉にした。
「ハジメはどうする?」
「看病してる白崎さんも、彼から離すことは出来なさそうだ」
「ハジメには申し訳ないけど、俺達だけで挑むしか……」
「その必要はないよ」
突如聞こえた声に振り返ると、先程まで苦しんでいた姿が嘘だったかのようにピンピンしているハジメの姿があった。
「ハジメさん! 大丈夫なんですか!?」
「うん。心配かけさせてゴメン」
「本当だぜ、ったくよぉ!」
「よし! なら着陸しよう!」
周りはハジメの早い復活に喜んでいたが……
「(何、アイツ……?)」
恵理だけが、彼のことを訝しげに見ていた。
フリーザーの後を追い、飛行船を着陸させた一行。猛吹雪を警戒していた彼らだったが、待っていたのは少し勢いが強いだけで、歩けない訳ではない程度の風雪だった。
「…………」
「此処から更に迷宮を探さないといけないのか?」
フリーザーはハジメ達の姿を一瞥すると、また飛び始める。それを追おうと一歩踏み出した、その時だった。
バコンッと足元の雪が崩れ、その下から大きな裂け目が現れた。
「……え?」
シアの呆然とした声が、全員の気持ちを現していた。全員が空中にいたのは一瞬のこと。そのまま彼らは裂け目の中へと落ちていった。
「キャアァァァァァァ!?」
「何だよ、コレぇぇ!?」
「ク、クレベース……じゃなかった、クレバスだぁぁぁ!!」
雪山の脅威の一つ、クレバス。氷河や雪渓で見られる巨大な裂け目のことである。目に見えるものならともかく、いまハジメ達が落ちているような雪に隠れているタイプも存在している、非常に危険な地形だ。
そのまま落下していくハジメ達だったが、高さはそこまで無かったのか、すぐに着雪する。ところが其処から更に彼らの絶叫は続く。
「ぶわっ、冷た、目が回るぅぅぅ!!」
「ぶっ、ぼふっ、がはっ!」
急斜面となっている雪の坂を転がり落ちていく。途切れ途切れとなるその声は、しばらく続いた。
「ぜぇ……はぁ……。何この天然のアトラクション……」
「だけどようやく着いたね……!」
坂を転がり落ち、体の雪を払って息を整える。地表からどれ程落ちたのだろうか。しかし風の影響もなく、周りが氷で覆われているのにそれ程寒さを感じない。
眼の前に見えるのは、氷で作られた荘厳な門。ハジメの持つプレートの共鳴の光も強くなり、此処が大迷宮だと分かる。
「行こう、みんな!」
共鳴の光と共に、門はゆっくりと開き始める。ハジメの掛け声に全員が頷くと、迷宮へと突入していった。
「……………………」
それを見ていたのは、突き出ていた氷に止まっていたフリーザー。彼は静かに飛び上がり、迷宮の『別の入口』へと向かっていった。
次回、いよいよ大迷宮の試練……ですが……?