シュネー大迷宮へと足を踏み入れたハジメ達。その内装はまさに『氷の大迷宮』と呼ぶに相応しく、壁から天井に至るまで全て氷で出来ていた。その透明度は、まるで鏡のように自分の姿を見ることが出来るほどである。
「氷の大迷宮というより、鏡の大迷宮だな」
「カー○ィのゲームかよ」
幸利と浩介が冗談を言うと、何かの足音が聞こえた。光輝はそれに気付いて2人に、会話を止めるようジェスチャーする。全員が警戒していると足音が徐々に大きくなり、その姿を現した。
「ガァブォ……!」
「あのシルエット……ガブリアス?」
マッハポケモン、ガブリアス。姿はそれなのだがまるで影のように全身が黒く、目が赤く光っていた。全身からモヤのようなものが揺らいでおり、普通のポケモンでは無いことが分かる。
「ガブルァァァ!!」
「っ! ミミッキュ!」
ガブリアス(?)が“ドラゴンクロー”を放ってくるが、瞬時に恵里がフェアリータイプのミミッキュを出すことで無効化に成功する。それを皮切りに、全員がポケモンを出そうとした。
「行け、サイドン!」
「グオォォン!……グル?」
雄叫びを上げてボールから出てきたサイドンだったが、ハジメの方を見て戸惑いの様子を見せる。やがて困惑から不信の目付きへと変わると、ハジメに向かって吠え始めた。
「グァァァァン!!」
「ちょ、どうしたのさサイドン! ってうわっ!?」
「バルゥ……!」
「ウゥゥゥゥ……!」
サイドンの咆哮を切っ掛けにバサギリとイワンコまで飛び出して、ハジメに向かって威嚇の声を上げる。
「ちょ、ハジメどうした!?」
「だぁぁクソ! ガブリアスもどきが来るぞ!」
「私達で迎え撃つしかありません!」
「ゴルーグ、抑え込んで!」
ユエのゴルーグがガブリアス(?)を剛腕で抑える。そこへ香織がピンプクを出した。
「ピンプク、“チャームボイス”!」
「プウウウウウウ!!」
そこへパチリスをくり出した鈴が、恵理に声を掛ける。
「エリリン。私のパチリス、“じゃれつく”攻撃が使えるみたい! ミミッキュと一緒にやろう!」
「…………」
「エリリン、聞いてる!?」
だが恵里は、ポケモン達から威嚇されているハジメの方を睨んでいた。
「……ごめん、鈴、ダーリン。僕……アイツが気に食わない」
一言だけ謝ると――魔力で“シャドーボール”のような物を作り出し、ハジメに攻撃した。
突然の凶行。鈴が、幸利がいち早くその事に気付き、続けて浩介と香織が気付く。
「っ!」
ハジメは魔力の塊が着弾する寸前にバックステップで回避し、直撃を免れる。
「ちょ、恵里、何してんだ!」
「……何のつもりかな、中村さん」
しかし、ハジメは攻撃されたにも関わらず何処か冷静で、恵里のことを値踏みするかのような目で見ていた。
「(……何? あの目……ハジメ君じゃない……!?)」
その事に香織が気付き始めた。一方恵里は、ミミッキュとカゲボウズを近くに寄せて警戒しながら、説明し始めた。
「僕の天職は降霊術師。だから魂とかそう言うのを見ることが出来るし、ミミッキュ達ゴーストタイプのポケモンと触れ合ったお陰で能力が強くなった」
どういう訳かガブリアス(?)は動きが止まり、その事に光輝達も違和感を強くした。
「あのガブリアスもどき、
氷の大部屋に響く恵里の声。静けさが訪れると、やがてハジメ(?)は俯き、体が小さく震える。
「くくっ……! あっはっはっはっはっ!!」
顔を上げた彼の目は大きく見開き、黒い瞳から赤色へと変貌する。
「マジかよおい! こんなに早く
彼の身体から魔力が溢れ、渦を巻くように肉体を包み込む。それによって生じる強風に、香織達は目を瞑ってしまった。
風が収まり目を開けると、そこには……変貌した青年が立っていた。黒髪は銀髪に、目は赤く、黒いマントを羽織っている。
その変化に大きく戸惑い、声を震わせて香織は問い掛けた。
「貴方は一体誰……?」
「俺か? そうだなぁ……」
少し考えるような仕草をすると、彼は不敵な笑みを浮かべた。
「ゼンセ、とでも呼んでくれや」
暗闇の中、ハジメは檻に閉じ込められていた。目の前には、炎がそのまま人の形を取ったかのような存在が立っている。
「しっかし何だこりゃ? 『南雲ハジメの可能性の姿』を取ってみたが、銀髪に赤目に黒コートとか……痛すぎだろ。眼帯と義手も加わったら尚更だな」
「此処から出せ!」
「我慢しろよ。俺のやることが終わってからだ」
目の前の炎の男はハジメよりも背が高く、男は目線を合わせるように屈んだ。
「君は……もしかして、『本来の南雲ハジメ』なのか?」
「んー? 何でそう思うんだ?」
「両親の影響で、異世界転生やら憑依転生やらの作品にそこそこ触れてきててね。憑依転生系に出て来る問題の1つに、必ずあるんだよ。元々あったそのキャラクターの魂はどうなるのかってね」
「ふーん?」
「だけど、どうやって身体の主導権を奪える程の力を……!」
「あー、違う違う。お前の答えは大ハズレだ」
呆れたように首を横に振る男。
「え?」
「話すと長くなるから、先に結論だけ話そう」
「お前は、
次回、ハジメとゼンセの関係を明らかにします。