ポケットモンスター トータス【本編完結】   作:G大佐

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お待たせしました。区切りの良さを考えたら、もう少しゼンセ戦が続く事になりました。


vsゼンセ(2)

 ザッ、と氷の地を一歩踏み出した香織。激しい戦いをしていた中でそれはやけに大きく聞こえ、ゼンセは彼女に目を向ける。

 

「お前も挑んでくるか。だがピンプクだけで何が出来る」

 

「この子だけじゃないよ! サイドン達も居るんだから!」

 

 4匹のポケモン達が影ガブリアスを睨む。一瞬キョトンとしたゼンセだったが、腹を抱えて笑い出した。

 

「はっはっはっ! 他人のポケモンがそう簡単に言う事聞くかよ!」

 

「根拠はあるよ! だって……ハルツィナ大迷宮での試練で、私も彼らとお話したんだから!」

 

 トテトテとピンプクがサイドンに駆け寄る。

 

「行くよピンプク! サイドンを“なげつける”攻撃!」

 

「プッ、クゥゥゥゥゥ……!」

 

「なあっ!?」

 

 なんと、ピンプクはその可愛らしい見た目とは裏腹に、120㎏もあるサイドンを持ち上げたのだ。流石のゼンセも驚きが隠せない。そのままサイドンを影ガブリアスに向けて投げ飛ばす。

 

「おいおい! アニメ版タケシのピンプクかよ!」

 

「投げられた勢いを利用して、サイドン! “ドリルライナー”!」

 

「だが忘れたか? 特性『さめはだ』は接触した相手にダメージ与えるんだぞ!」

 

「けど、かった〜い甲殻を持つサイドンならどうかな!」

 

「っ! なるほど、考えやがったな」

 

 影ガブリアスはサイドンの“ドリルライナー”を受け止めるが、サイドンは『さめはだ』によるダメージを気にしていなかった。硬い甲殻によって傷がつきにくい事を利用し、更にサイドンは影ガブリアスを押し込んでいく。

 

「ガルルォ……!」

 

「チッ。もう少しばかり抗わせてもらう!」

 

「なにか来る……!? バサギリ、“がんせきアックス”で止めて!」

 

「バルァァァ!!」

 

 バサギリが影ガブリアスへ接近し斧を振り上げるが、ゼンセは己の生命力を使ってガブリアスを変貌させる。

 

「暴れ狂え……! メガガブリアス!」

 

 幸利や雫などが扱うメガシンカとは異なり、足元から黒い渦が立ち昇り影ガブリアスを包み込む。渦が晴れるとそこには、両腕が鎌となり、全体的に刺々しくなったガブリアスの姿があった。そのまま影メガガブリアスはバサギリの攻撃を片腕で受け止めると、そのまま力押しで後退させていく。

 

「なっ、キーストーンとメガストーンも無しにメガシンカしやがった!」

 

「いや、違うわ! レックウザとの戦いで私達がやったものとは違う!」

 

「恐らくですが、何らかの力を使って変身させたのかと!」

 

「どこまでデタラメなんだ、アイツ! こうなったら俺達も! ガルーラぁ!」

 

「エルレイド!」

 

「アブソル!」

 

「「「メガシンカ!!」」」

 

 二重螺旋の光がポケモンを包み込み、それぞれのメガシンカした姿へと変わる。ゼンセはそれを見て、うっすらと微笑んだ。

 

「(俺が錬成したメガシンカのアイテムは大丈夫そうだな。特にアブソル。メガアブソルは戦いに特化したその姿を嫌うと言うが……。あの個体はそれを拒絶していない。シアとの絆は相当深いって事だな)」

 

 微笑みを悟られないよう表情を戻す。

 

「ガブリアス、“ドラゴンクロー”!」

 

「エルレイド、“テレポート”で接近して受け止めて!」

 

 爪と刃がぶつかり合う。動きが止まったその隙を、2匹が突こうとした。

 

「アブソル、“ふいうち”です!」

 

「ガルーラ、その後に“メガトンパンチ”!」

 

「ガ、ブオォォォ……!」

 

 メガエルレイドがシアと幸利の声を聞くと、そのまま後ろへと跳ねて距離を取る。その瞬間に“ふいうち”が命中した。続けてメガガルーラによる“メガトンパンチ”が命中しそうになるが、そこは影メガガブリアスが両腕で受け止める。

 

「今だ、“かわらわり”!」

 

「っ! 子ガルーラ……! 特性『おやこあい』をもう応用してきやがったか!」

 

 子ガルーラが母親の背中を駆け上り、影メガガブリアスの頭に“かわらわり”を食らわせた。脳天への一撃に、影メガガブリアスは大きくよろめく。

 

「うっ、がぁ……!」

 

 攻撃を受けた箇所と同じ所を手で押さえながら悶えるゼンセ。それに幸利が違和感を覚えた。

 

「何だ……? 何故アイツもダメージを受けてやがる……?」

 

「まだだ……! もっと……もっと攻撃してこい……!」

 

 頭を抑える指の隙間から、強い眼光を放つゼンセ。その目には何処か使命感があった。

 

「待ってくれ!」

 

 その戦いに待ったを掛けたのが、光輝だった。

 

 

 

 

 

 香織、ユエ、光輝。この3人はゼンセの振る舞いに違和感を感じていた。香織とユエはゼンセが時折見せる優しげな表情に、光輝はリオルを通じて見た感情の波に。

 口調や立ち振舞いとは真逆の、優しく穏やかな表情に3人は困惑した。だが、先程の素振りを見て確信した。

 

「ゼンセ。貴方は、そのガブリアスと痛みを共有してるのでは?」

 

 ユエの言葉に、先程まで戦っていたメンバーが驚きの表情でゼンセを見る。いつの間にか彼のコートは破れており、腕や顔には切り傷もあった。

 

「これ程の力を持っているのならば、ハジメ君を乗っ取ったまま私達を襲うことも出来た。でも貴方はわざわざ姿を現した」

 

「教えてくれ、ゼンセ。君は何を考えてこんな事をしているんだ?」

 

 風の音だけが響く。ゼンセは目を瞑り、一瞬俯く。真実が話される……と思いきや、彼があらわにしたのは怒りだった。

 

 

「事情を話したら手加減するってのか!!」

 

 

『『『!?』』』

 

「あぁそうだ! ガブリアスがダメージ受ければ、それは俺のダメージになる! だがそれがどうした! それを知ったお前らは手加減するってのか! ふざけんじゃねえ!!」

 

 怒りの勢いでゼンセは光輝たちを指さす。

 

「お前らが最後に相手をするのは狡猾な神モドキだ! もしもそんな奴に仲間を操られたら、お前らは『仲間を傷つける事は出来ない』と言って事態を手遅れにするつもりか!」

 

「そ、それは……!」

 

「本気でハジメを助けたいなら全力で来い!! 自分自身の決意を揺るがせるな! ガブリアス、“じしん”攻撃!」

 

 ゼンセの怒りに呼応するかのように足元が大きく揺れ動く。一瞬だけフラつきそうになったが、香織達は踏み止まる。そして鋭い目つきでゼンセを見た。

 

「ピンプク、サイドン、バサギリ、イワンコ! 全力のレベルを上げるよ! 絶対、絶対にハジメ君を取り戻すんだから!」

 

 ポケモン達が一斉に吠え、自らを奮い立たせた。




次回でゼンセとの決着をつける予定です
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