ポケットモンスター トータス【本編完結】   作:G大佐

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お待たせしました。サブタイトル通り、あのポケモンのお話です。ですがあくまで私の解釈なので、そこはご了承下さい。


閑話∶巨人の王の物語

 ハジメの精神世界において、火の球ことゼンセが小さく揺れる。彼の誘いとは、大昔のトータスを見に行こうと言うものだった。

 

「大昔の……?」

 

「あぁ。エヒトの野郎が君臨するよりも前の時代へな」

 

 ゼンセは続けて語る。

 

「お前が手にしたプレート。俺が生前に遊んだゲームの中だと、文章が刻まれていた。宇宙誕生の物語と、巨人との戦いだ」

 

「巨人ってことは……レジ系?」

 

「恐らくな。気になってたんだ。仮にアルセウスとレジ系が戦い合い、その力を奪ったのがプレートだとしたら……」

 

 ハジメはハッと息を呑んだ。

 

「レジスチル達が各迷宮でプレートを守って、僕たちに託す意味が無い! そのまま自分の力にする事が出来た筈なのに!」

 

「正解だ」

 

 続けてゼンセは、過去の世界を見る方法を伝えた。

 プレートの力は膨大で、それは精神世界に居たゼンセを強化する程の影響を及ぼした。その結果が、シュネー大迷宮での戦いだ。

 此処からはオカルト染みた話になるが、ゼンセは生命力や魔力の事を、「魂が保有するエネルギーの別称」と捉えている。より分かりやすく言えば、今この精神世界にいるゼンセの魂とハジメの魂は、エネルギーの塊なのだ。

 

「プレートが『俺たちというエネルギーの塊』に干渉するならば、その逆が可能な筈だ。川の源流を辿るようにな」

 

「エネルギーという川を遡った先の源流に、過去の世界が記録されている。それを見に行くということ?」

 

「……ほんと、理解の早い弟で助かる」

 

「え、待って? 今僕のことを弟って……」

 

「さあ、とっとと過去の世界を見に行くぞ! お前の肉体が起きたら精神世界から引き離されるからな!」

 

 火の球の筈なのにゼンセに手を引っ張られる感覚で、ハジメは過去の世界へと遡っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前に広がるそこは、地球で例えるならば古代ローマ。人々は音楽を奏で、露天の市で売り買いをし、時に人と語らいながら生活していた。

 

「ここが過去のトータス……?」

 

「見た感じは、歴史の教科書とか漫画に出てきそうな光景だな」

 

 ハジメ達の姿は半透明となっており、ハジメと古代人がぶつかりそうになるも、ハジメの身体をすり抜けてしまう。

 辺りを見回していると、とある山が見えた。

 

「兄さん、あそこ。山の上に神殿がある」

 

「山の上に神殿? まさか、『やりのはしら』か……? 言ってみようぜ」

 

「わ、わわっ!?」

 

 再び手を引かれるような感覚。しかし今度はそれに加えて、空を泳ぐような感覚もあった。実際に2人は空を飛んでいる。

 その道中でも人々は笑いあっていた。中には結婚式を挙げている様子もあったが、人間の男と雌のミロカロスとが挙式しており、思わずギョッとした。

 

「……あれ? でも人間とポケモンが結婚してるってことは、もしかしてアレが、シアたち亜人族の始まりって事なの!?」

 

「見ろよ。それに対して忌避感ある目をしてる奴がいねぇ。この時代は人間同士だけじゃなく、人とポケモンが愛し合える事も当たり前だったのかもな」

 

 歴史の思わぬ一面を見た2人は、そのまま神殿へと辿り着く。その神殿には、壁画に巨大な六芒星が刻まれており、その頂点1つ1つにポケモンが描かれていた。

 

「三角形の各頂点にはディアルガ・パルキア・ギラティナ。逆三角形の各頂点にはユクシー・アグノム・エムリット。それで六芒星か」

 

「そして中央の丸が示すのは……アルセウス、かな」

 

 そんな六芒星の刻まれた大広間にて、数人の神官と、身なりからしてこの集団の長が話をしている。

 

『結晶は集まった。この世界を司る、18の属性の力の結晶が!』

 

『星に流れる力を人の脈と例えるならば、それ即ち星脈(せいみゃく)

 

『我らは星脈の恩恵によって生きている。されど、地の揺れ(地震)火の噴出(火山噴火)生命飲み込む大波(津波)……。数多の災いが星脈の乱れによって起こるのならば……』

 

『作らねばならぬ。星脈の守護者を! 星脈より手に入れた、この結晶で!』

 

 神官たちが移動したその先に、ハジメ達は目を見開いた。

 

「兄さん、あれって!」

 

「レジギガス……! 星脈の守護者ってのはレジ達の事だったのか!」

 

「僕の知らない個体も居る……!」

 

 神官達は何処か緊張した面持ちで、まだ像の状態であるレジ達に結晶を埋め込んでいく。18の属性……即ちタイプエネルギーの結晶が、彼らの心臓部となるのだろう。

 

 そして、その時が来た。

 

 

『レ…………ジ、ギ、ガ、ス………………!』

 

 

 点字のような目を点滅させながら、ゆっくりと一歩を踏み出したレジギガス。その場は歓喜に包まれていた。SFアニメならばきっと、ロボットが動いたのを喜ぶ整備士達のような雰囲気だっただろう。

 しかし生命を、ましてや神の如き存在を造るということは、喜劇で終わらない。

 

「兄さん、あのレジギガス、何だか様子が変だよ」

 

「他のレジ達もそれに反応してる。……不味いな、これは」

 

 一歩踏み出した姿勢のまま静止するレジギガス。やがて小刻みに震え始めると、その他のレジ達も痙攣し始めた。そして……。

 

 

『レ、ガ、ガガガガガガガガ!!』

 

 

『っ!? な、何だ!? 何が起きた!?』

 

『神官長! ち、力が、力が強すぎます! 見てください、属性の力が守護者の体から溢れている!』

 

『何という、事だ……!』

 

『レェェェェギガァァァァァァ!!』

 

 この状況を一言で言うならば、暴走。核として埋め込まれた力が強すぎるが故に、レジギガス自身が抑えきれていないのである。他のレジ達も暴走が始まり、その剛腕で辺りを破壊していく。

 

『我々は……とんでもない過ちをしたのかもしれない……!』

 

 神官長は暴れ回るレジギガスの豪腕に潰されそうになる。

 

 しかし、突如レジギガスの体に稲妻が直撃した。更に他のレジ達にも稲妻が降り注ぐ。

 

「…………っ!」

 

「……アルセウス」

 

 ハジメとゼンセが見上げた空の先には光輪が見えた。距離は遥かに遠くだと言うのに、光輪の中央に見える小さな影とその威圧感が、稲妻を発した存在……アルセウスだと分かる。

 神官長と他の神官たちはその姿を見ると、思わず平伏してしまった。

 

『お、おぉぉ……! 主よ……!』

 

『人の子よ』

 

 全ての人間に等しく響き渡る声。その厳かさはまさに、神。

 

『過ぎたる技は己を、果ては世界を滅ぼす物と知れ』

 

『ははぁっ! 申し訳ありませぬ!』

 

 地面に擦り付けるように頭を垂れる人間を尻目に、アルセウスはレジギガス達へと体を向ける。

 

『星脈の守護者として造られし者たちよ』

 

『ガ、ガガ……!』

 

『己に与えられし使命を忘れるな。守護者が破壊者へ成り下がる事を望む者は居ない』

 

 レジギガス達から光が溢れ、18の球体となる。それらはアルセウスによって空へと上げられると、四方八方に飛び散った。星脈へと戻されたのだろう。

 

『戒めよ。我は、過ぎたる力ゆえの終焉を認めない』

 

 一度だけ赤いオーラを放つと、アルセウスは天高く消えていった。それと同時に、ハジメとゼンセも無理やり精神世界へと引き戻されていった。

 

 

 

 

 

 ハジメの精神世界へと戻された2人。ハジメは先ほどの物語を整理していた。

 

「……つまり、古代のトータス人はエネルギーの流れを星脈と呼んでいて、それが乱れるから自然災害が起きると考えていた」

 

「その星脈が乱れないように、守護者としてレジ系を創り出した。核として、星脈から抽出したタイプエネルギーを付与したが……暴走した」

 

「それをアルセウスが止めて、暴走する程の強力なエネルギーを星脈に還した……かぁ」

 

「レジ達の生命そのものを奪わなかっただけ、まだ温情だろうな」

 

 ゼンセから与えられた知識によれば、レジギガスの特性はスロースタートと言い、暫くの間は調子が上がらないそうだ。それがアルセウスによって力を奪われたと言うのならば、納得のいく話である。

 

「しかし、だとすると……」

 

 ゼンセが考え込む。

 

メルジーネ大迷宮(アクーシャ)で見たあの巨大隕石は……?」

 

「どうしたの?」

 

「いや、エヒトがアルセウスから力を奪った原因を思い出していてな」

 

「確か、巨大隕石を破壊して、それでプレートが飛び散ったのをエヒトが奪ったんだよね?」

 

「そうだ。だが、さっきの暴走レジギガスにアルセウスが介入した事と照らし合わせてみたんだ」

 

 真剣な顔をしてゼンセは言った。

 

「レジギガスの暴走は、言ってしまえば人災だ。人災で世界が滅びそうだと判断したから、アルセウスは介入した」

 

「っ! ま、待って、それって……!」

 

 その答えにハジメもたどり着き、愕然とした表情になる。

 

「あの巨大隕石も、人災……て事!?」

 

「魔法を生み出したのはエヒトだ。ハジメ達を異世界転移させる魔法をトータス人に教える事が出来るということは、自分も転移することが可能と言う事。だが異なる世界を渡るということは、時間や空間に干渉することだ」

 

「……もしかして、エヒトも元々は異世界人で、古代トータスに転移した事で時空間に異常が発生。本来落ちるはずのない巨大隕石が接近して、アルセウスはそれに介入した……!?」

 

「あり得ない話ではないな。魔法を使った副作用で隕石の軌道とかが変わったのなら、人災と判断しても可笑しくない」

 

「エヒト……!」

 

 忌々しくハジメは呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ライセン大迷宮の深奥。大迷宮の創設者であり解放者の生き残りであるミレディ・ライセンはその日、不思議な胸の高鳴りを感じ、その場へ来ていた。彼女の視線の先にあるのは、巨大な玉座。そこに腰掛けるは巨人の王。

 その時、玉座の間に設けられた複数の転移陣が光りだす。

 

「え……!? まさか、嘘……!?」

 

 転移陣から現れるは、各迷宮に眠っていた巨人達。迷宮の試練を突破されると転移するように設けられたその陣が発動したと意味を、ミレディは即座に察した。

 

「や、やった! やったやった! やり遂げたんだ! あの子(ハジメ)達は皆の試練を乗り越えたんだ!!」

 

 ぴょんぴょんと飛び跳ねながら、レジスチル達からの力を受け取る王へと視線を向ける。

 

「いよいよだよ、王様! あのクソ野郎をぶちのめせるんだ!」

 

 巨人の王は目覚めと共に思い出す。守護者でありながら、破壊者へと堕ちそうになったあの時を。己の使命を忘れるな。あの戒めの言葉を今も尚、忘れていない。

 討たねばならぬ。あの偽者は星脈を乱す者。守護者として、同胞の王として。

 

 

 

「レ、ジ、ギ、ガ、ス…………!!」

 

 




というわけで、この作品におけるレジギガスとアルセウスの関係は、「暴走した者とそれを鎮めた者」という感じです。
今回の話は、風の谷のナウシカのオープニングをイメージしました。まあ、あちらは過ぎた技術力で破壊兵器を生み出したというイメージですが……。
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