シュネー大迷宮にてプレートを手に入れたハジメ達。クレバスから出ると、突入前は吹雪だった空が快晴となっていた。
「うわぁ、凄い青空!」
「キュレムの試練を突破したからなのか、それとも偶然なのか……。いずれにせよ丁度いいタイミングだな」
鈴や光輝が空を見てる中、ハジメはふとポーチからプレートを取り出した。鋼、岩、草、炎、水、龍、妖精、氷……これで8枚のプレートを手に入れた事になる。するとプレートは光の球となり、何処かへと向かって1本の光線を伸ばした。
「ハジメ君、これって……!」
「今までのプレートの共鳴とは違う!」
「あの方角、神山があるところです!」
光線の指し示す先は、聖教教会の本部がある神山。ハジメ達が最初に召喚された場所でもあった。
「あそこに居るのか? ……アルセウス」
ならばと彼らの動きは早く、飛行船に乗り込みすぐに光線の先へと急ぐのであった。
その頃、ハイリヒ王国の宝物庫は大騒ぎになっていた。聖教教会のトップであったイシュタルが昏睡状態となり、元々混乱の最中にあった王国であったが、今回はそれに拍車をかける事態である。
「宝物庫内に魔人族が入り込んでいたとは! 衛兵は何をやっていた!」
メルドは怒号をあげながら現場へと足を急がせた。巡回していた兵士から、「魔人族が宝物庫に入り込んでいる」という報告を受けたからである。宝物庫は文字通り国の宝が保管されている場所で、収められている物にはアーティファクトも含まれている。
「(この国には魔人族の侵入を拒む結界が貼ってある筈だが、どうやって宝物庫に潜り込んだ……?)」
メルドの脳内で疑問が生まれるが、現実を打開しなければ始まらないとメルドは判断した。いつでも抜けるようにと剣のグリップを握りながら、タックルに近い姿勢で宝物庫の扉を開けた。
「動くな!」
瞬時に剣を向ける。そこに立っていたのは、両手を挙げて降伏の格好をする魔人族の姿があった。
「……王国最強の騎士が出迎えか」
「(両手を挙げているだと? ……だが油断はできん)」
メルドは油断せず、魔人族――フリード達を睨む。彼らはそのような態度に腹を立てること無く、抗戦の構えも見せない。その態度が却ってメルドに緊張を与えていた。
『おっ! あった、あったぞ〜!』
そんな緊迫した空気の中を喜びながら飛び出たのは、フリードが連れているポケモン、フーパだった。だがタイミングが悪かった。彼が出てきたのは庫内に収められている国宝の山の中。そこから
「何だ!?」
「フーパ貴様っ! 場の空気が分からないのか!」
『ありゃ?』
「魔人族……! 我が国の宝を奪うつもりか!」
メルドの目付きがより鋭くなり、フリード達もやむを得ないかと魔法の発動準備をした、その時である。
「お待ちなさい」
凛とした女性の声。全員がその声の主に視線を向ける。初めに声を上げたのは驚愕の表情を浮かべるメルドだった。
「リリアーナ様!? 危険です!」
「メルド団長、落ち着きなさい。話は他の兵士やメイド達から聞きました」
制止するメルドを他所に、フリード達へと近付くリリアーナ。対面すると、彼女の影の中からダークライが現れる。驚きの声を上げたのはフーパであった。
『うえええっ!? ダークライ!?』
『……久しいなフーパ。その壺がお前の求める物か』
『そうさ。あ、言っとくけどな、悪い事には使わないぞ! お前が守ってきた一族に散々懲らしめられてきたからな!』
『……ならば良い』
「……貴方のお名前を。不思議なポケモンを連れている御方」
「……フリード・バグアー。なるほど、そなたはこの生き物たちのことをポケモンと呼ぶか」
あまりの混沌とした空気に、メルドを始めとした人間側の兵士も、カトレアを始めとした魔人族側の兵士も、思わず戦いの構えを解いてしまう。
「バグアーさん。話し合いの場を設けたいのです。……私は感じるのです。もしかしたら、この世界の時代が変わるかもしれない。その混乱を乗り切る為には、我々人間だけでは乗り越えられません」
「……同意だ。我らもフーパと共に巡った大迷宮にて、この世の真実を知った。永きに渡る怨恨を憂うよりも、今この瞬間の危機の打開が必要やもしれない」
これが、後世のトータスにおいて、歴史書に『時代の転換点』と記される会談の始まりである。
次回より本編最終章へ突入します!