アルセウスから力を奪い、その力で以てトータスを戦乱に陥れていた元凶、エヒト。ポケモンの事を獣と嘲る者が召喚したのは、何とムゲンダイナであった。
「でっか!? 何だアイツ!?」
「ムゲンダイナ……! かつてトータスで『黒き災厄』を引き起こしたポケモンだ!」
「っ! アレが……!」
その巨体に驚く幸利と、ムゲンダイナを簡単に説明するハジメ。それに強く反応したのがシアだった。シアの故郷フェアベルゲンに伝わる御伽噺にて語られた、『黒き災厄』と出会うとは思わなかったからである。
「ポケモン達を獣と言うくせに、お前もポケモンを使うなんて!」
恵里がエヒトの事を睨む。矛盾に満ちた行動にエヒトは疑問を抱きもせず、ただ見下すばかり。
「神の力の前ではみな獣に等しいわ!」
その瞬間、ムゲンダイナの周りに赤い鎖が出現する。
「グ、ゴ、オオオオオオオオ!!」
ムゲンダイナが咆哮し、赤い色をした粒子が溢れ出す。咆哮と共に発生した風圧がハジメ達に襲い掛かるが、ハジメと香織は防がずに受け止めた。風が止むと共に、二人の頬に一筋の涙がこぼれる。
「……香織。聞こえたかな?」
「うん。聞こえたよ、ムゲンダイナの声が……!」
『苦しい』『痛い』。悲鳴とも取れる声が二人の脳内に響いた。
「……今、助けるからね。ムゲンダイナ」
「総力戦だよ、皆! 行くぞ!!」
『『『応っ!!』』』
ハジメ達は、手持ちのポケモン達を全て繰り出した。
その頃、ハイリヒ王国の王宮にある庭園にて、光輝を始めとした地球組もムゲンダイナの出現を見ていた。
「クソッ! やっぱりエヒトって奴はとんでもない邪神だったってのかよ!」
「あそこに居るのはハジメ達だ。俺達も行かねえと……!」
浩介が悪態をつき、龍太郎がハジメ達との合流を提案する。しかしそれに対して難しい顔をするのは、光輝と雫だ。
「そうしたいのは山々だけど……」
「皆がこの有様じゃ……」
彼らの視線の先には、ムゲンダイナに怯えるクラスメイト達の姿があった。未だにポケモンを害ある生物と見ていた生徒たちにとっては、キョダイマックスしたムゲンダイナはまさに邪龍とも見えるのだろう。
「……南雲のせいだ」
ポツリと呟かれた筈の言葉が、やけに大きく響いた。全員がその発言の主を見る。
呟いたのは、頭を抱えて蹲る檜山だった。
「南雲があんな生き物連れて帰って来るからこんな事になったんだ……!」
「おい檜山! 何を言って……」
「そうだろ!? 全部、全部南雲のせいだ! あの
「おい檜山! いい加減に……!」
「あのままオルクス大迷宮で死んでれば良かったんだ!!」
シン、と場が静まった。彼の言ったことを飲み込むのに時間が掛かったからである。先に動いたのは、異世界転移前からハジメと仲の良かった浩介だった。
「おい檜山……。それ、どういう事だ……?」
「あっ……」
自分でも驚くほどの低い声が出ていた。影が薄い事に定評のある筈の浩介が、今は驚愕で注目されている。
「『オルクス大迷宮で死んでれば良かった』? なあ、檜山。お前まさかとは思うが……。初めての迷宮でハジメを攻撃して橋から落としたの……お前か?」
「な、何言ってんだ。俺の得意は風魔法だぜ? そ、そんな事出来るわけ……」
「俺たちはステータスが軒並み高い。それに、得意属性はあっても、その他の属性魔法を使えない訳じゃないだろ」
「……ぐっ、くっ!」
周りからの非難の視線。檜山は狼狽えるが、そんな姿を浩介は冷めた目で見ていた。
「……もう良い。今はそんな事してる場合じゃない」
「っ……」
そのまま地面に手と膝をついて項垂れた檜山をよそに、ポケモン所有者たちは話し合う。
「光輝。ハジメ達と合流しよう。あれ程の巨体だと、戦力は多い方が良いと思う」
「私も賛成よ。ポケモンを持ってない人たちは、この国の人達を落ち着かせる役に徹して貰いましょう」
ハイリヒ王国内では、エヒトの降臨に色めき立ったのも束の間、ムゲンダイナの出現に混乱状態となりつつあった。パニックによる暴動が起きてもおかしくない。
「でも、神山まではそれなりに距離がある。合流までに間に合うかどうか……」
光輝が迷ったその時、彼らに歩みを進める集団があった。
「フーパの力を貸そう。勇者よ」
声の主へ視線を向けた瞬間、光輝達の目は驚きで見開かれる。
「魔人族!?」
「過去の清算とはならないかもしれないが、な」
魔人族のフリードが、フーパを連れて姿を現した。
この決戦編では、私の入れたい場面をどんどん書けたらなと思います。