トータスに、ムゲンダイナの咆哮が轟く。この世界で最もムゲンダイナの近くに居るであろうハジメ達は、咆哮と共に生じる風圧に飛ばされないように、足を踏ん張った。ムゲンダイナがダイマックスしたその姿は、さながら人の手のよう。指の一本一本が龍の頭のように見える。5本のうちの2本が紫色に光りだす。
「サイドン、“ストーンエッジ”で迎え撃つんだ!」
サイドンが足を地面に叩きつけ、岩石の刃がムゲンダイナに向かって放たれる。ムゲンダイナはと言うと2本の指で“クロスポイズン”を放ってきた。刃が命中し軌道を逸らすことに成功するも、相手が巨体ゆえに僅かなものでしか無かった。巨大な指はサイドンにそのまま向かってくるが、横から抑えつけるポケモンがいた。
「レ、ジ、ガ……!」
「レジギガス!」
「ナイスだよ王様! そのまま握り潰しちゃえ!」
「レッ、ガァァァァァ!!」
レジギガスの技“にぎりつぶす”は、相手の残り体力が多いほど高威力になる。更に、レジギガスの特性は『スロースタート』という、一定時間が経過するまで攻撃力や素早さが低い状態であるのだが……
「ギシャァァァァァ!?」
ハジメのもとへ駆けつけた時点で、
「たたみ掛ける! サイドン、“ドリルライナー”!」
体を高速回転させてドリルのようにムゲンダイナへ突撃するサイドン。ムゲンダイナは毒・ドラゴンタイプ。地面タイプは効果抜群である。
「他の皆も行くよー! レジ族、突撃じゃい!」
「レェェジガァァ!」
ミレディが腕を振るうと、レジギガスも号令を飛ばす。それに従うは各迷宮に眠っていた、他のレジ族のポケモン。レジアイスやレジエレキが光線技を、レジドラゴにレジロック、レジスチルが剛腕を振るい始めた。
「何が巨人だ! その巨体で振り払え!」
「バサギリ! あの鎖に向かって“がんせきアックス”!」
モンスターボールを投げてバサギリを出すと、バサギリはムゲンダイナを足場にして走り出す。そのまま石斧と化した腕を赤い鎖に向けて振り下ろした。
「シャオオォ……!?」
「バルッ……!」
しかし指の1本がバサギリの方へ向けており、そのまま“はかいこうせん”を撃ってきた。光線は直撃し、バサギリは落下してしまう。
「バサギリぃ!」
その時である。ハジメのボールからイワンコが勝手に飛び出してきた。イワンコはバサギリへ向かって走り出す。だが、その速度は徐々に上がっていき、やがて全身が光り始めた。
「進化の光!? このタイミングで!?」
「ワオオオオオオオン!!」
光が収まっても彼は止まらない。大きくなった身体でバサギリを受け止める。
「バル……」
「ワフ……!」
「バサギリ、今回復するよ!」
香織がバサギリに駆け寄る。一方のハジメは、新たな姿となった相棒に目を向けた。
オレンジ色の身体。逆立つような鬣。その凛々しさを秘めた緑色の目が、ハジメを見ていた。
「ルガルガン!」
「ワウ!」
「バサギリを助けてくれてありがとう。君の新しい力……見せてくれ!」
「ワオオオオン!!」
サイドンの隣に立つ、黄昏のルガルガン。サイドンは入ったばかりの新人が進化したことに一瞬驚いたが、お互いに頷くとムゲンダイナに目を向ける。
『良い絆だ』
『我らも負けておられぬな、弟よ!』
『おうよ、姉者!』
ムゲンダイナの指が“ベノムショック”を放ってくる。だがザマゼンタが鋼タイプの技“きょじゅうだん”で突撃することで無効化した。技が衝突した煙の中からザシアンが飛び出し、“きょじゅうざん”を繰り出す。
『はぁぁぁぁぁぁ!!』
「ギイイイイイイイ!?」
赤い鎖が数本ちぎれ飛ぶ。ムゲンダイナは束縛から解放されつつある事に困惑しつつあった。
「もう少しだ! だから耐えてくれ!」
ハジメはムゲンダイナにそう声を掛けた。
その頃、ユエ達はアルヴヘイトと対峙していた。
「ユエ。恵里が降霊術を応用して、お前の叔父の身体からアルヴの魂を引き剥がす! その間、俺たちで動きを止めるぞ!」
「分かった!」
「小童共が! この世に魔法を生み出した我らに、魔法で挑むと言うか!」
アルヴヘイトが小さな魔法陣を周囲に展開すると、火球に水球、帯電した光球や氷の槍などが弾幕のように放たれる。
「ゴルーグ、“まもる”を発動!」
「ミミッキュ、“ひかりのかべ”!」
ゴルーグがユエ達に直撃する弾を防ぎ、その肩に乗ったミミッキュが広範囲に“ひかりのかべ”を展開した。
「おのれ……獣共が……!」
「引きずり落とす……! 緋槍!」
ユエの手に炎の槍が握られ、アルヴヘイトに向かって振り投げる。アルヴヘイトが回避すると、そこへ黒い球が命中した。
「ぐふぁぁぁ!?」
「カゲボウズ、“シャドーボール”ありがとう」
「キヒヒッ!」
恵里のカゲボウズが放った“シャドーボール”によって、アルヴヘイトは地に堕ちる。その大きな隙を見逃さない幸利は、習得している影縫いで、アルヴヘイトを縛り付ける。
「ぐ、おぉぉ……!」
「神だ何だと持て囃されたようだが、大したことねえなぁ!」
「ナメるな人間……! 我々は生物を越えた存在! この程度ぉ!」
「っ、マジか!」
影を地面に縫い付けられ、身動きが取れないにも関わらず、アルヴヘイトはゆっくりと動き出す。魔力の糸が無理やり千切られ、ブチブチと嫌な音を立てていた。
「ダーリン、もう1回!」
「無理だ! 此処で緩めたら確実にやられる!」
その時だ。幸利のボールから、ポケモンが飛び出した。
「モクロー!?」
「ホーゥ!」
「何だきさま……ぐわっ!?」
飛び出たモクローはアルヴヘイトの顔を“つつく”と、幸利を守るように着地する。そして……光り始めた。
「進化の光……!」
ユエが驚くように呟く中、光は収まる。モクローの進化形、フクスローだ
「フゥー……」
「お前……!」
だが、フクスローの状態から再び進化の光が放たれる。
「はぁ!? 嘘だろ!?」
ボールの中にいたガルーラも驚いている中、光が収まり……フクスローはジュナイパーへと進化した。
「フルッホーゥ!」
「おぉぉ! お前まさかの二段階進化かよ! すっげぇな!」
「ジュッ、パッ!」
「進化したばかりだけどよ、ジュナイパー。こいつを抑えるのを手伝ってくれないか?」
「ジュパッ!」
するとジュナイパーは、己の羽根を取り、矢をつがえる姿勢を取る。そのまま先端にゴーストエネルギーを溜めると、一気に解き放った!
「何っ!?」
一回だけ放ったように見せかけ、アルヴヘイトの影に三本の矢が突き刺さる。すると先程まで動けていた筈のアルヴヘイトは完全に身動きが取れなくなった。
「頭の中に技名が浮かんだぜ! お前も“かげぬい”が使えるんだな!」
「フルッホーゥ!」
「ば、馬鹿なぁ……! 獣の技に敗れるだと……!?」
アルヴヘイトが現実を受け入れられない中、悪どい笑みを浮かべた恵里と、鋭い目つきのユエがアルヴヘイトに近付く。
「さーて、最期にユエから一言言ってもらおうかな!」
「……叔父さまの身体、返してもらう!」
その瞬間、恵里は巨大な魔法陣を展開。ユエの叔父ディンリードから、アルヴヘイトの魂を引き剥がし始めた。
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁ! ふざけるな、ふざけるなぁ!! 我らは神ぞ!? 無から魔法を生み出した我らが……文明をも作り上げた我らがこうも簡単にぃぃぃぃ!!」
断末魔を上げるアルヴヘイトに冷たく言い放ったのは、邪魔をすまいと見守りに徹していたイベルタルであった。
『神の思考など神自身にしか分からぬ。貴様等が真に神であるならば、この者たちは貴様等の思考など理解せぬまま戦ったであろう』
だが、とイベルタルは続けた。
『この者たちですら理解出来る事を繰り返して来たのならば、貴様等は所詮……見下してきた人間と同じだったという事だ』
「ふざけるなぁぁぁぁぁぁ!!」
そうして、ディンリードの肉体からアルヴヘイトの魂は引き剥がされた。
不定期更新ではありますが、本編終了までもう少し。もう暫しのお付き合いをお願いします。