結論として、とにかく書きたい展開を書く。そう吹っ切って書き上げた今回です。
エヒトとムゲンダイナとの戦いの中、ハジメ達のもとへ駆けつけた光輝達と魔人族のフリード。それは、永い時の中で漸く訪れた、種族の垣根を越えた共闘でもあった。
「おのれ……。まだだ! まだ終わりはしない!」
エヒトはムゲンダイナの体へ伸びている赤い鎖を握りしめる。鎖が怪しげな光を放つと、ムゲンダイナは再び苦悶の声を上げた。
「ガギィィ……!」
「まだ動けるのか!?」
「だがあの様子では、限界も近いだろう……」
光輝がエヒトの足掻きに驚き、フリードがムゲンダイナの限界を悟る。それを聞いたハジメは頭脳をフル回転させ、戦略を話す。
「鎖だ、あの鎖を壊そう! ムゲンダイナ自体が弱ってるなら、抵抗するのはエヒトだけだ!」
『ふはははは! ならばオイラも遠慮なく行くぞ!』
フリードの隣に降り立つは、戒められた力を解き放たれたフーパ。しかしその姿は、幼さのある姿から一変。厳つい顔に宙に浮かぶ6本の腕を持つ、巨大な魔人と化した。しかしテレパシーの声色は低くなったものの、その性格は無邪気であった。
『オイラが先駆けだ! “いじげんラッシュ”!!』
フーパが光輪を投げ飛ばし、鎖に向けて拳によるラッシュを決めていく。ムゲンダイナは身動ぎするが、抵抗として“りゅうのはどう”を光輪に向けて放った。
『うおお!? さっきのお返しと言いたいのか!?』
「フーパ、大丈夫か!?」
『なめるなよフリード! この姿のオイラはまだまだ戦えるとも!』
光輪を通して反撃を受けたフーパ。予想外の反撃に体勢が崩れそうになる。そこを駆け抜けるのは2つの青い影。2つの影が高く跳び上がり、ムゲンダイナの体に着地した。
『はぁぁぁぁっ!』
「ケルディオ、“しんぴのつるぎ”! リオル、“バレットパンチ”!」
光輝と共に歩んできたポケモン、ケルディオとリオル。2匹がフーパが攻撃していた鎖に攻撃を叩き込む。すると、赤い鎖は光を失いひび割れていく。
「もう少しだ!」
だが、ムゲンダイナはその身を大きく回転させる。あくタイプの“ぶんまわす”攻撃である。かくとうタイプを持つ2匹に効果はいまひとつであっても、巨体故に攻撃範囲は広い。
『うわぁぁ!?』
「ケルディオ、リオル!」
体から振り落とされるケルディオとリオル。その時、リオルの体が光り輝いた。進化の光である。
「これは……!」
「……ルオオオオオン!!」
咆哮を上げたのは、はどうポケモンのルカリオ。突然の進化に驚いているエヒトを睨みつけると、そこに“はどうだん”を撃ち込んだ。ポケモンの攻撃にエヒトは直ぐに防御魔法を発動するが、その隙を逃さない者達。
「ワンリキー、“かわらわり”だ!」
「パチリス、結界が割れたら“でんじは”!」
龍太郎のワンリキーがチョップして結界を破壊した。そこへ鈴のパチリスが素早く駆け抜け、エヒトに“でんじは”を浴びせる。
「がぁっ……!? 小癪な……!」
体が痺れ膝をつくエヒト。だが完全に動けない訳では無い。赤い鎖に魔力を流し込んでムゲンダイナに攻撃を指示する。ムゲンダイナが咆哮を上げると、空が光り始める。見上げたハジメ達の視界に入ったのは、此方へ迫ってくる大量のエネルギー弾。
「まさか、“りゅうせいぐん”!?」
「エルレイド!」
雫がキーストーンに手を触れる。二重螺旋の光にエルレイドが包まれると、メガエルレイドへとメガシンカする。
「シア、アブソル。力を貸して頂戴!」
「勿論です! アブソル、連続で“つじぎり”ですよ!」
「エルレイド、連続で“サイコカッター”!」
メガアブソルとメガエルレイドが飛び上がり、“りゅうせいぐん”によるエネルギー弾を次々と切り落としていく。だが、ムゲンダイナは空中にいた2匹に向かって“かえんほうしゃ”を放とうとしていた。
「2人とも危ねえ! ケロマツ……“ハイドロポンプ”だぁ!」
「ゲコォッ!」
浩介のテッカニンに運ばれ、高圧水流を発射した。炎と水とが相殺し白い爆発を起こす。その煙から進化の光があふれ……ゲッコウガが飛び出した。
「ゲコゥガ……!」
「うおおお!? 一気に進化したのかお前!?」
ハルツィナ大迷宮をクリアした後に仲間になったポケモン達は、ゲットした時点で高レベルであった。既にレベルとしての進化条件を満たしていたのである。驚愕する浩介にゲッコウガは小さく頷くと、“みずしゅりけん”を放って残りのエネルギー弾を破壊した。そのままシュタッと音を立てて着地する。その姿はまさに忍者であった。
「ありがとう、浩介くん」
「ん? お、おう(あれ? いま俺のことを名前で……?)」
一方、エヒト側への攻撃は幸利達へとチェンジしていた。
「“でんじは”の麻痺は解けたようだが、まだお前に動きはやらせねぇよ!」
「カゲボウズ、“したでなめる”攻撃!」
「ぶわっ!? きさ、ま……!?」
「おっとアルヴヘイト。余計なことしたらミミッキュの“シャドークロー”が炸裂するぜ?」
「っ……!」
再度麻痺で動けなくされたエヒト。エヒトに従っていたアルヴヘイトが動こうとするも、恵里のミミッキュが目を光らせており動くことが叶わなかった。
「本当は俺たちもぶん殴れれば良かったが……」
「それはボクらのリーダーに任せようかな」
チラリと視線を向けたその先には、飛行するゴルーグに乗るハジメ達の姿があった。
仲間たちが突破口を開き、ユエ、ハジメ、香織はゴルーグに乗ってムゲンダイナを縛る鎖に向かう。赤い鎖から与えられるエネルギーによってムゲンダイナは苦しみ、それから逃れようと様々な技を繰り出してきた。
「ゴルーグ、右に避けて!」
「ゴルッ!」
「ピンプク、“ひかりのかべ”!」
「プクッ!」
“ベノムショック”を放ってくる龍の頭。ゴルーグには効果がいまひとつであっても、乗っているハジメ達に当たればタダでは済まない。ユエの指示通りに回避しながらも、ピンプクが防壁を展開する。
「そのま突っ込んで鎖を壊す! ゴルーグ、“れいとうパンチ”!」
「ゴルゥゥゥ!」
足のジェット噴射を強め速度を上げるゴルーグ。拳がパキパキと音を立てて凍りつき、鎖に突撃する。そのまま“れいとうパンチ”が命中し、鎖は砕け散った。
「あと……1本!!」
ハジメはボールを握りしめる。目の前に見えるは、より濃い光を放つ赤い鎖。他の鎖が砕けた事で、ムゲンダイナを束縛するエネルギーが集中しているのだろう。握るボールの中身は、このトータスで初めて会ったポケモン。
「(プロテクターもない。通信交換と同じ環境でもない。だけど……!)」
ハジメはボールを投げる。
「行くよ、相棒!!」
ボールから姿が現れる。その瞬間、進化の光が溢れ出た。
「ドッ、サァァァイドォォォォン!!」
鉄球を思わせる丸い先端の尻尾。オレンジ色のプロテクター。厳つい顔に生えたドリル。いま、ハジメのサイドンは、ドリルポケモンのドサイドンへと進化を遂げた。厳ついながらも、ハジメを一瞬見たその目は優しいものであった。
「狙うはあの鎖! ドサイドン!」
ボールから空中へ飛び出たドサイドンは構える。ハジメは指鉄砲を赤い鎖へ向けた。
「“つのドリル”!!」
自身の身体を回転させ、頭のドリルも回転し、赤い鎖とぶつかり合う。火花が飛び散りギャリギャリと音を立て、一瞬だけ拮抗するも……
「馬鹿、な……!?」
「よぉし!!」
パキン、と音を響かせて最後の鎖が砕け散った。
赤い鎖が砕け散り、エネルギーの供給が止まる。見上げるほどの巨体であったムゲンダイナは、その姿を徐々に変えていく。巨大な手のような姿から、龍の骸を思わせる姿へと変わる。
「クオォォォン……」
「何とか解放出来たけど……」
「私に任せて」
香織が手を翳し、ムゲンダイナに治癒魔法をかける。目に見える傷は瞬時に癒えていく。ムゲンダイナは戸惑いの気配を放つが、やがて穏やかなものへと変わると空へと飛び立つ。
「オオオオオオオオオオ!!」
咆哮を上げた瞬間、ムゲンダイナに赤いエネルギーが収束する。それを見た光輝たちは構えた。
「まさか、また……!?」
「ううん。あれは……トータスに溢れたエネルギーを吸収してるんだ」
禍々しく赤色に染まった空は、月夜へと変わっていく。完全にエネルギーを吸収し終えたムゲンダイナはハジメを一瞥すると、そのまま更に空へと飛び立っていった。
「良かった……。ムゲンダイナを助けられて」
「何故だ!」
大声のした方へ振り向くと、エヒトが拳を握りしめ睨みつけていた。
「あれはプレートを奪われる前に作り上げた、神の鎖だぞ! 神の鎖が砕け散る筈がない! 完全物質たるあの鎖が……!」
『我の力を過信したな、エヒトよ』
響き渡る声。夜空に眩い光が現れる。そこから姿を見せたのは……宇宙創造のポケモン達。
「アルセウス」
ハジメはその先頭に立つポケモンの名を、呟いた。
ハジメのドサイドンの進化は、漫画『ポケットモンスターSPECIAL』でのイエロー編のラストを参考にしました。イエローの手持ちにいたポケモンが通信交換無しに進化したシーンがあります。