夜空の中で輝く光。ハジメ達の前に降り立つは、宇宙創造のポケモン達だ。
「アルセウス」
『ハジメよ。汝のお陰で、この宇宙は守られた』
アルセウスの背後に立つのは、時間の神と空間の神。しかしその姿はハジメが知っている姿ではなかった。ディアルガは前脚がより太ましくゴツゴツとしたものとなり、パルキアは二足歩行から四つ足となりアルセウスに似た姿となっている。
「(何あの姿!? 聞きたい! 知りたい! けどそんな空気じゃない!)」
ハジメのポケモンに対する好奇心が目に出ていたのか、アルセウスの放つ気配からして、苦笑いへと変わる。ハジメの疑問に応えたのはディアルガとパルキアであった。
『エヒトが繰り出したポケモン、その者が放つエネルギーは時空間を乱してしまった』
『その乱れは我らの領域にも及んだ。放置すれば、この星そのものが消滅する可能性もあった』
『故に我らは本気を出した。
「その姿が、ディアルガとパルキアのオリジンフォルム……!」
ムゲンダイナのエネルギーは、ディアルガ達の領域にも影響を及ぼすほどの力を秘めていたらしい。時間と空間、そして反物質という三つの点によって成立するこのトータス。世界そのものが消滅しかねないために、ディアルガ達は抑え込んでいたのだろう。
一方、アルセウスはエヒトへと向かい合っていた。
『我の力を過信したな、エヒトよ』
「アルセウス……!」
エヒトは忌々しげにアルセウスを睨みつける。ボロボロになりながらも尚、力を求めんと手を伸ばす。
「もう一度貴様から奪うまでだ! 私は、私はこの世界に魔法を広めたのだぞ! この世界を作り上げたのは私だ! 私の好きなようにして何が悪い!」
『……まだ気付かぬか』
あと少しで手が届く。その瞬間、エヒトを拒むかのようにアルセウスは輝き出す。
「ぐぁぁぁぁ!?」
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!! も、燃えるぅ! 私が燃えていくぅぅ!? エヒト様ぁぁぁ!!」
光に当てられたエヒトは大きく弾き飛ばされ、アルヴヘイトは火の玉となって燃え盛る。
『神とは見る者。神が世界に介入する事は、その世界に多大な影響を及ぼす。それこそ己の存在する世界すらも壊しかねないもの。そうならない為に、神とは静観でなければならない』
だがお前は違った、とアルセウスは続ける。
『我から力を奪う前より、元いた世界を滅ぼし、そしてこの宇宙へと介入してきた。それにより本来起きない筈の星の滅びが起きる所であった。我が何とか阻止したものの、お前は力の分かれた我よりプレートを奪った!』
辺りが濃密な怒気に包まれていく。
「あぁぁぁぁぁぁぁ…………!!」
アルヴヘイトの魂は限界を迎え、そのまま燃え尽きた。
『遊戯盤の如くこの世界を乱したその罪。ただ消し去るだけでは生温い!!』
すると、エヒトの体が光りだした。そこから小さな球体が飛び出しアルセウスへと吸収されていく。彼が持っていたプレートを回収したのだ。
これはハジメにも教えていない事ではあるが、確かにアルセウスはプレートの大部分をエヒトに奪われていた。しかし、1つだけ無事だったプレートがある。
その名は、レジェンドプレート。アルセウスをアルセウスたらしめる石板。これを持つ限り、その他のプレートはアルセウスに吸収されるのだ。
『プレートの力により、お前の命は人間を大きく超えた。だが不死ではない。それに他の人間と同じように感情もある。故に……』
その瞬間、ガラスがひび割れるような音が響いた。
「ビシャアァァァァァァン!!」
「っ! ギラティナ!?」
驚くハジメの目の前に姿を現したのは、オリジンフォルムのギラティナ。その咆哮は怒りが込められていたが、ハジメにだけは念話が送られてきた。
『借りを返しに来た』
そのように伝えると、ギラティナはその口でエヒトを咥える。
「なぁ!? は、離せ! 悍ましい化け物が!」
『領域を乱され、その者は怒っているのだ。さあ連れて行け』
エヒトの視界に入ったのは、黒い穴であった。何処までも暗く、底が見えない。
「離せ! 離せぇぇ! 私を何処へ連れて行く気だ! 離せぇぇぇ!!」
『何処へ連れて行くかだと? それは……無だ』
「無……?」
ハジメの聞き返しに頷くアルセウス。
『音も無い。光も無い。文字通り何も無い世界。プレートによって昇華された命が尽きるまで……その世界を彷徨い続けるが良い』
その命が尽きるまで。そう言われた瞬間、エヒトの顔は青ざめる。ジタバタと幼子のように、処刑される罪人のように、暴れてもがく。
「無の世界だと!? そんなの、死と同じではないか! 嫌だ、嫌だ、そんな世界に落とされるなんて嫌だぁぁぁ!!」
そこに居たのは、もはや神でも何でもない、哀れな人間の姿であった。
「助けてくれ! 嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ、嫌だぁぁぁぁぁ!! 何故だ! どうして!? 何故文明を作り上げた私がこんな目にぃぃ!」
「…………だから、何?」
「…………へ?」
ピタリとエヒトの藻掻きが止まる。視線の先にいたのは、哀れむような目で見るハジメの姿。
「魔法を作った
香織も、光輝も、ミレディも、フリードも、全員がハジメの言葉に耳を傾ける。
「お前の『お遊び』で、沢山の人が死んだ。きっと戦争に巻き込まれて犠牲になったポケモンも居る。お前の『お遊び』に付き合わされた人達だって、こう思った筈だよ。……『なんで自分がこんな目に』って」
言いたいことは言ったと、ハジメは背を向ける。
「哀れ過ぎる。人間の僕ですら分かるような事を、神の真似をしてたお前は……分かっていなかったんだね」
『連れて行け』
「あ、あ、あぁぁぁぁぁぁぁ!!」
エヒトは懸命に手を伸ばすも、誰もその手を掴むことなく……無の世界へと落とされて行った。
参考にしたのは、鋼の錬金術師での「フラスコの中の小人」の最期。エヒトは、無の空間に寿命が尽きるまで幽閉エンドとなりました。