少女の封印が解除されたあと、ハジメは自分の上着を着せていた。彼だって健全な男子、女の裸体に興味はある。だが、自分の愛しい人を一心に想い続ける事で理性を保っていたのである。
その後、お互いに自己紹介をした。
「僕はハジメ。ハジメ・ナグモ」
「……名前はあるけど、封印された時の事を思い出すから、言いたくない……」
「ご、ごめん。……そう言えば、傷が勝手に治るって言ってたけど、君はどんな種族なの?」
「吸血鬼。でも、日光も平気だし、血だけ飲んで生きてる訳じゃない」
「……マジ? それ吸血鬼としてかなり高位じゃ……」
「……名前、つけて欲しい」
「えぇ!?」
「これからハジメと一緒に行動するなら、名前が必要だから」
「それはそうだけど、名前……名前かぁ……」
下手な名前を付ければ、彼女の後ろにいるゴルーグから拳が放たれるだろう。服を渡した時、「なに彼女の裸を見てるんだテメェ」みたいな唸り声を上げていたのだから。
すると、吸血鬼であると言う点と、彼女の美しい金髪と紅い目を見て、とある単語が出てきた。
「ユエ」
「?」
「吸血鬼に紅い目、そして金色。月夜が似合いそうなイメージなんだ。そしてユエって言うのは、僕たちの世界にある国の言葉で、月を意味するはず」
ハジメの提案に少女は、「ユエ、ユエ……」と繰り返すように呟く。
「ユエ。それが私の新しい名前。よろしく、ハジメ」
「あぁ、よろしく」
2人は微笑み、握手した。
それからハジメは、何故この奈落に居るのか、自分が何者なのかを語り始めた。憑依転生者であることを除いて。
「ハジメは、会いたいんだ。そのカオリって恋人に」
「うん。ましてや、迷宮に潜る前日に予知夢も見ちゃってるから、相当参ってると思う」
「……残された人は、悲しい」
悲しそうに顔を伏せるユエ。訳も分からず封印され、同族と故郷がどうなったか分からない。取り残された経験をしてるからこそ、顔を見たこと無いとは言え香織の心情を察してるのだろう。
「ユエは、此処が迷宮のどこら辺なのか、分かる?」
「分からない。でも、反逆者が作ったと言われてる」
「反逆者……。神エヒトに歯向かい、神の力を奪った人たちか」
ハジメは、かつて図書館で読んだ本に出てくる「神の力」を、アルセウスと深い関係にあるプレートと推測している。
「つまり、反逆者たちはアルセウスと言う存在に気が付いていた……?」
メルド団長が言うには、迷宮の遥か奥には宝物庫のアーティファクトよりも貴重な「何か」が眠っており、挑んだ冒険者は多いが誰も手に入れることが出来ていないと言う。
「……ユエ。出口を探したいけれども、この迷宮についても調べたくなったんだ。一緒に来てくれる?」
「勿論。こう言う冒険みたいなこと、楽しみ」
ユエは微笑み、ゴルーグは黙って頷く。
こうしてハジメとサイホーンの冒険に、ユエとゴルーグが加わったのであった。
この小説でのユエは、ゴルーグが居てくれた為にそこまで寂しさは感じていません。なので、ハジメに対しての感情は「一緒に旅する仲間」と言う感じですね。
次回は、原作で言うエセアルラウネとヒュドラ戦を予定しています。どちらかと言うとヒュドラ戦がメインになりそうです。