他の方々のハジメ×香織を見ると、本当に尊いなぁと感じます。そのような描写が出来ることに尊敬します。
「ここは……どこ……?」
香織が立っていたのは闇の中。辺りをキョロキョロと見渡すと、遠くに愛しい人の姿が見えた。
「ハジメ君!」
嬉しそうに声をかけるが、ハジメは振り返らず闇の中を歩き始める。
「これ、予知夢と同じ……!」
予知夢の内容を思い出す。闇の中をハジメが歩き、やがて消えていく夢。香織は、今度こそ助けて見せると手を伸ばして追いかけた。
「ハジメ君、待って! ハジメ君!」
ハジメは歩く。香織は走る。それなのに彼との距離が遠ざかっていく。そしてとうとう、闇の中へ落ちてしまう。
だが前の予知夢と違うのは、香織も落下した事だ。だが悲鳴は上げない。彼へ手を伸ばすのを諦めない。
「絶対に、助ける……!」
その時だった。目の前に金色の光が溢れ始めた。
「え……?」
ハジメの前に現れた光は、徐々に形を作っていく。人ではない。だが香織は思わず呟く。
「神様……」
やがて光はハジメへと近づき――――
「ん、う……?」
「香織! 良かった、目を覚ましたのね!」
「雫ちゃん……? ここは……」
香織が目を開けると、心配そうな顔をしていた幼馴染みの姿が目に入った。次に見えるのは、トータスに来てから王国より与えられた豪華な自室の内装。大迷宮でハジメがサイホーンと共に落ちた所まで覚えているため、どうやら長い間眠っていたのだろう。
「ねぇ雫ちゃん。たぶんだけど私、眠ってたんだよね? どのくらい眠ってたの?」
「い、意外と冷静ね……。眠ってたのは5日ほどよ。その間に色々な事があったわ」
そうして雫は語り始めた。
ハジメが落ちた後、香織は錯乱した。雫や幸利、浩介たちが押さえなければ後を追いそうなほどには。しかし体の負荷を感じ取った脳がシャットダウンしたのか、メルドが気絶させるまでもなく、彼女は気を失った。
こうして心に大きな傷を残す結果となったクラスメイト達は、地上へ帰還。メルドはすぐに王国へ事の顛末を報告した。
ところが、落ちたのが「無能のハジメ」であることが判ると、王国も教会も安堵の息を漏らした。ステータスも(報告された時点では)低く、天職も非戦闘系。しかも替えが効く錬成師ときた。
確かに、王国の騎士団の装備の質を向上させたのは評価出来るが、それはトータスの人間でも可能なこと。それ故にハジメを重要視していなかったのである。
しかし、そのように酷評されることに耐えられなかったメルドは、
その事を聞かされた香織は、口元こそ笑っているが、目は冷たいものとなっていた。
「へぇ……。そうなんだ……。ふーん……」
「あ、あの、香織? リリアーナ王女とかは南雲君の死を悲しんでたわ?」
「他のみんなは? 誰が魔法を撃ったのか、判ったりしたの?」
「……判ってないわ。自分達の魔法が当たったんじゃないかと思うと、怖くなって」
「……そっか」
あの後、死を目の当たりにした生徒達は、光輝たちを除いて殆どが戦闘を拒否するようになった。
当然、教会は良い顔をしない。神の使徒は無敵であり、戦うことで人々に希望を見せないといけないと考えているからだ。そのため何度も戦いへの参加を促したのだが、それに待ったをかけたのが、畑山愛子だった。
天職の関係上、農地改善や開拓へと向かわされた彼女は、ハジメの死に寝込んでしまう程のショックを受けた。そして生徒たちがまだ戦わされそうになっていると知り、教会へ抗議したのである。
戦闘への参加を強制するならば、二度と農地改善などを手伝わない。この一言は教会を唸らせた。戦争において重要な物の1つは、食料である。愛子の能力は人間側の食料事情に大きく関わるのだ。
そのため、戦争への参加はあくまで志願制となったのだった。
「みんな、バラバラになってしまったわ。南雲君と仲が良かった清水君まで、先生の方へ行っちゃったし……」
戦いへ参戦したくない生徒たちの中には、愛子の元へ向かう者もいた。もっとも、それは教会が送り込んだハニートラップから愛子を守るためでもあるが。
「清水君が? ……ねぇ、彼は何か言ってた?」
「確か、南雲君は生きてるかもって感じだったわ」
『あいつはポケモンバカだからなぁ。意外としぶとく生きて、洞窟のポケモンと仲良くやってんじゃねえの? 取り敢えずあいつと合流した時のために、土産話探してくる』
そして、浩介も同じような事を言っていた。
『なんと言うか、ハジメってこの世界だと生き残れそうな気がするんだよな。だけどポケモンに関してハジメに頼りっきりになりたくないし。俺は残って、大迷宮のポケモンとか調べるよ。俺だってハジメのイラストのファンなんだからさ』
その事を知った香織は安心した。ハジメと2人によって、香織にとってポケモントリオと呼べるのだから。
「雫ちゃん。私は信じてるよ。ハジメ君は生きてる」
「どうしてそこまで……」
「夢を見たの。きっと、ハジメ君にしか分からないような神様が助けてくれる。それに、簡単に諦めたくないもん。この世界は魔法っていうファンタジーもあるんだよ? ハジメ君は言ってたもん。この世界にはポケモンが居るって。その『不思議な生き物』がいるなら、ファンタジーと不思議が合わさって、奇跡もあると思ってる。だから、私は諦めないよ」
「香織……。分かったわ。なら、私も手伝う。彼の話は面白いもの」
「ありがとう雫ちゃん! 私、もっと強くなる! だから手を貸して欲しいの!」
「任せなさい!」
香織は立ち上がる。恋人と再会するために。
とある裏路地を、1人の少女が苛立ちながら歩いていた。
「(クソ、クソ、クソ! 檜山の奴余計なことしてくれたよ、全く! 南雲が居たからあの女は光輝君を見てなかったのに! お陰であいつに声をかけまくる、未練がましい光輝くんを見ないといけないなんて最悪だよ!)」
ズカズカと癇癪を起こしながら歩く少女の背後を、とある生き物が見ていた。
「ミキュ?」
布を被ったその生き物は、こっそりと彼女について行った。
ラストシーン、彼女はポケモンによって癒されるべきだと思うんです。アニマルセラピーみたいな感じで。