ユエの働きによって、捕らわれていたハウリア族とポケモン達が再会した。お互いに生きていることを喜ぶ姿に、ハジメは微笑んでいる。
「ハジメ、嬉しそう」
「離ればなれになって、死んでるかもしれないと思っていたら会えたんだ。何となく、気持ちは分かるよ」
ハジメは、自分の恋人である香織のことを忘れていない。今でも彼女は悲しんでるのだろうか。早く会いたい気持ちはある。だが……。
「(あの魔法攻撃……。もし僕を狙ってる奴がいたとしたら、僕が生きてると知ればまた殺しに来るかもしれない。特に檜山あたりは警戒しないとな……。だからこそ、そんなことに香織を巻き込むわけにはいかない……)」
自分を殺しに来そうなクラスメイトについて、心当たりがあり過ぎるのだった。
こうしてハウリア族を助けたハジメ達だったが、その引き換えに大迷宮への案内を取り付けることに成功した。そもそもハルツィナ樹海には霧が立ち込めており、並みの人間が入ることは難しいと言う。
「カムさん。案内を引き受けてくれて、ありがとうございます」
「いえいえ。むしろ私達はあなた方に感謝しかありません。この、モンスターボール、でしたかな? これのお陰で、ポケモン達とコソコソせずに済むのですから。さらに捕らわれていた同胞まで助けてくれた。私達に出来ることならば、何だって言ってくれて構いませんぞ」
ハウリア族の人数は多く、それに伴って保護していたポケモンの数も多い。大集団になれば移動がしにくいため、ハジメはモンスターボールを彼等に渡したのだ。最初は、狭そうな空間に入れるのは可哀想だと反対されたのだが、シアが率先して挑戦し、アブソルが何の問題もなくボールから出てきたために、受け入れてくれた。
その時にハジメは、ちょっとした願望も含めて、魔物呼びからポケモンへと変更させた。おかげでハウリア族では、ポケモンという言葉が定着しつつあった。
そうして進んでいくと、霧の中に沈む木々が見えてきた。ハルツィナ樹海の入り口らしい。
「ハジメ殿、ユエ殿。どうか我々から離れないように。我々はお尋ね者でもありますからな」
「お願いします」
この時ハジメは、この霧が自然発生による物ではないと思っていた。ただの勘ではあるのだが、少なくともポケモンの“きりばらい”では晴らせないような予感がしていた。
その頃シアは、同じ女性と言うこともあってか、ユエに色々聞いていた。
「ハジメさんって、戦うときはキリッとしてるのに、ポケモンや私達には笑みを浮かべてること多いですよね」
「ポケモン達に会う夢を見てたみたい。だから、嬉しいのだと思う。ハジメはポケモンが好き。そしてシア達はポケモンの事を変に恐れず、ポケモン達と暮らしていた。そこに好感を持ったのかも」
「……そうなんですね」
シアは、自分の相棒が入ったボールを見つめる。
「(ハジメさんもユエさんも、とても強いです。私も……)」
何かを決意した、その時だった。先頭のハジメとカムが止まる。ハジメは思わず舌打ちした。
「こんな所で……!」
目の前には、虎模様の耳と尻尾のある男達が、剣を抜いていたのだ。
「お前達! なぜ人間といる! 種族と族名を……!」
「待て。白髪の兎人族……まさか、裏切り者のハウリア族か!」
虎の亜人……おそらく虎人族であろう男たちが、カム達を侮蔑を込めた眼差しで見ていた。
「裏切り者の一族が、よりにもよって人間と歩いているとはな!」
全員が剣を抜いた事に、ハジメは舌打ちした。
「(掟を破ったからって、そこまでやるかよ!)」
ハジメは感情のままに、カム達を庇うように前へ出た。
「ハジメ殿!?」
「彼等には、この樹海にある大迷宮へ案内してもらってるだけです。あなた方が考えてるような、奴隷狩りとか、そのような意図はありません」
自分よりも年下であろう青年。亜人を庇うようなその姿勢と相まって、一瞬だけ虎人族の男……警備隊長は信じそうになった。だが、それだけでおいそれと信じる訳にはいかない。集落にいる同胞を守らなければならないのだから。
「どこにその証拠がある!」
「僕は武器を持っていない!」
「なら、その腰に着けてる球は何だ!」
「それは……」
「中身を見せろ! そして我々に説明するんだ!」
ハジメはたじろぐ。ここでポケモンを出してしまえば、魔人族と見られるかもしれないからだ。亜人族は人間に良い感情を抱いていないが、それは魔人族でも同じである。
だが、出来る限り従わなければ、カム達が殺されてしまう。今のハジメ達には、彼等を圧倒するような武器を持っていない。だから力ずくで突破など出来ないのだ。
「…………分かった。出ておいで、サイホーン」
「グオオオ!」
それを見た虎人族はより警戒する。
「魔物だと!?」
「魔物を従えていると言うことは、魔人族か!」
「だが、魔人族のような肌も耳もしていないぞ。奴らなら魔法ですぐに攻撃してくる筈だ!」
「馬鹿な! 人間が魔物を従えられる筈がない!」
他の部下達が叫ぶなか、隊長は考えていた。
「(あの魔物、我々の剣ではまず太刀打ち出来ないだろう。それにあの青年も、魔物を従えているならば、すぐにあの球から解き放ってフェアベルゲンを攻撃していた筈だ。だというのに、今も攻撃してこない。まさか……本当に敵意が無いのか?)」
考え込んだあと、隊長は提案した。
「敵意が無いのは認めよう。だが、これは俺の一存では決められない。長老方を呼ぶため、待機してほしい」
「……分かりました」
「ザム! この事を長老方に伝えろ! 誇張はするなよ?」
「はっ!」
配下の1人を伝令に向かわせ、ハジメ達の監視のために視線を戻し、そして察した。
「(ハウリア族も同じ球を持っているだと!? もしや、匿っていたという魔物たちか。これは、戦闘をしなくて正解だったかもしれんな……)」
こうした緊張感は、エルフそっくりな見た目である森人族の族長、アルフレリックが来るまで続いたのだった。
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