ポケットモンスター トータス【本編完結】   作:G大佐

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短めですが、ハジメがキレそうになる話です


激昂寸前

 ハジメに攻撃を仕掛けたジンは、怪我を治すために別の場所へと運ばれた。だが牙も爪も砕けたとあっては、今後しばらくは動くことは出来ないだろう。戦士としてはそれは致命的でもある。

 

「それで……あなた方は結局どうしたいんですか? まさかと思いますが、僕が攻撃したとか言うつもり無いですよね?」

 

 ハジメの視線に数人の長老が目をそらす。確かにハジメが反撃などで殴ったりすれば、そこを突いて何か言えただろう。だがジンは、爪での攻撃から始まり、殴打に噛み付きまでやってしまった。無抵抗であった相手への三度に渡る攻撃を擁護しようが無い。

 

「だ、だがハウリア族は我々が処刑する!」

 

「……は?」

 

「ジンの件とハウリア族の件は別物だ! フェアベルゲンに災いをもたらす者たちなど、あってはならない!」

 

 小柄な、しかしハッキリと分かる筋肉からドワーフにも見える亜人の言葉にハジメはポカンとし、そして内容を理解すると溜め息をついた。

 

「さっきの僕の言葉を聞いてなかったんですか? アブソルやシアが本当に災いをもたらすなら、匿ってる間に災いが起きてたかもしれないじゃないですか」

 

「そんな屁理屈が通じるか! 魔物とは離れて暮らすと言う掟を破ったのだ! それだけでも重罪なのだぞ!」

 

「……………………」

 

 この時のハジメの顔を見たユエは、恐怖で震えてしまった。彼の目からハイライトが消え、怒りの感情すら無い。そのような顔だったからだ。

 ハジメは溜め息を着くと、長老たちから背を向ける。

 

「アルフレリックさん。貴方は話が分かる人で良かったですが、他の長老方はそうではないみたいです。フェアベルゲンは美しい街でしたが、人はそうじゃなかったみたいですね」

 

「何だと貴様!」

 

「やめろグゼ! 彼は大迷宮を攻略する者! 彼ならば、今の我々も変えられるかもしれないんだぞ! そもそも魔物と離れて暮らすと言うのは明文化されていない! 掟破りでは無い!」

 

「アルフレリック! 何故そこまでこの人間とハウリア族を庇う! 思えばフェアベルゲンからの追放に反対していたのも貴様だな!」

 

 そもそも何故アルフレリックがそこまで味方で居てくれるのか。それは、孫娘のアルテナ・ハイビストがシアと友人だったからである。孫娘の泣く顔を見たくないという依怙贔屓もあった。

 

 その時だ。無表情のハジメが言い放った。

 

「……もう良いです」

 

「何?」

 

「樹海の大迷宮に挑もうと来ただけなのにそこまで足止めされたのなら、僕たちで勝手にやります。案内人を巡っての言い争いに参加するために、ここに居る訳じゃないんですよ」

 

 彼ら亜人族は人間を嫌ってる筈だ。だというのに人間と同じように同族を、ハウリア族を差別している。その矛盾がハジメを失望させたのだ。

 

「ハウリア族は、僕がイワークや帝国兵から助け出した対価として、迷宮まで案内する約束を取り付けたんです。だというのに案内されないまま処刑する? 納得できません」

 

 アルフレリックは内心焦る。ハジメが防御した時に見えた手の甲の紋章。あれは恐らく、大迷宮に眠る『神の力の欠片』の1つなのだろう。そんな力を持つ彼を怒らせたら、フェアベルゲンが大変なことになると、直感が告げていた。

 自らの頭脳をフル回転させ、出した案。それをアルフレリックは示した。

 

「ハジメ。ならば、ハウリア族を君の奴隷にすると言うのはどうだろうか」

 

「僕の奴隷に?」

 

「そうだ。奴隷となった亜人は死亡扱いになる。死んだ者を処刑することなど出来まい? もちろん、奴隷となった後に彼らをどうするかは、君の自由だ。これでどうだろうか?」

 

 ハジメは考える。アルフレリックはポケモンと暮らすことに意欲的な態度を見せている。そして、ハウリア族を守る案も出してくれた。見たところ、他の長老達を説得しようともしており、まるで苦労人のような印象を抱いたのだ。もしここで無茶な対価などを求めれば、自分が悪者に見えるかもしれない。

 

「……ハウリア族を僕の奴隷にしたら、他の人は僕の所有物に手を出す事が出来ない、か」

 

「そう言うことになる」

 

「……分かりました。その案、受けましょう」

 

 アルフレリックは安堵の溜め息を漏らす。まさか此処まで苦労することになるとは思わなかっただろう。

 すると、この状況を見ていたシアは恐る恐る口を開く。

 

「えっと、あの……私達は助かるのですか?」

 

「そうだよ?」

 

「アブソルも?」

 

「当然」

 

 内容をゆっくりと理解していき、シアの目から涙が溢れ出す。

 

「うっ、ううっ、ありがどうございばずぅぅ……!」

 

「あーもう泣かないの。ほら、ハンカチ」

 

「ズズーッ!」

 

「鼻水じゃなくて涙を拭いて欲しかったんだけど!?」

 

 だが、数人の亜人はこの光景を面白くなさそうに見ていた。

 




次回はハウリア族を鍛える話を予定しています。
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