ポケットモンスター トータス【本編完結】   作:G大佐

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今回は、話の区切りの関係でポケモン要素が殆どありません。ご了承下さい。


異世界召喚

 眩しさで閉じていた目蓋を開けると、大理石に囲まれた、まるで西洋の教会を思わせるような光景に変わっていた。周りには、自分達に祈りを捧げるかのように頭を下げている集団が見える。

 

「(香織は……無事か。良かった)」

 

 香織の無事を確認して安心しつつ、辺りを見渡す。

 

 まず目に映ったのは、大きな絵画だった。神と思わせるような人間が大きな腕を広げて山や湖を囲んでいる。その微笑みが、ハジメにとっては胡散臭く思えた。

 さらに天井を見上げた瞬間、ハジメは目を見開いた。

 

「(なっ……! あの絵は、まさか!)」

 

 そこへ、お祈り集団のトップであろう老人が、呆然としている光輝の前に歩み寄ってきた。

 

「ようこそトータスへ、勇者様。私は、聖教教会で教皇をしております、イシュタル・ランドバルゴと申します。我々はあなた方を歓迎いたしますぞ」

 

 その好々爺とした笑みが、ハジメには嘘に見えて仕方が無かった。

 

 

 

 

 

 状況が飲み込めないまま、晩餐会が行われるであろう長大なテーブル席の並ぶ部屋へと案内されたハジメ達。それぞれが席に座るが、ハジメと香織は一緒である。その光景に舌打ちするのは檜山など一部の男子だった。

 

「相変わらずのバカップルだな」

 

「幸利、何で僕の事をジト目で見るんだい?」

 

「いかにも異世界召喚ですみたいな展開なのに、然り気無くイチャついてるのに呆れてんだよ」

 

 ハジメの向かいに座りジト目で話すのは、清水幸利。ハジメとはオタク仲間で、ネットに投稿されたポケモンのイラストの作者と知った瞬間から意気投合した。かつては名字で呼び合っていたが、親しくなるにつれて名前呼びへと変わった、まさに心の友と言える。

 

 そこへ、イシュタルが話し始める。

 

「皆さま、どうか私たちの話を聞いてくだされ」

 

 イシュタルの語る内容に、ハジメと香織は顔をしかめ、幸利は真剣な顔で何かを考える。

 

 このトータスには、人間の他に、獣の特徴を持った亜人族、数は少ないが魔法を使うことに長けている魔人族という三大種族がいる。

 亜人族は神から見放された存在として、人間からも魔人族からも疎まれている。そして人間と魔人族とは、信仰する神の違いから長い間戦争を続けていたらしい。

 幸い人間側は、数で魔人族に勝っており、どちらか一方が優勢になるような事は無かった。

 

 ところが最近、魔人族の方で異変があったと言う。

 詠唱も魔方陣も使用せずに、炎や風、雷などを引き起こす『魔物』と言う生き物。それを魔人族が使役し始めたと言うのだ。

 これによって魔人族は、少なかった数の差を埋めつつあるのだと言う。

 

「あなた方を召喚したのは、我らが創造主であるエヒト様です。エヒト様は悟ったのでしょう。『このままでは人間が滅ぶ』と。そして神託を私に授けてくれました。異なる世界より救世主を喚ぶと。それがあなた方なのです」

 

 そしてイシュタルは続ける。どうか我々を救っていただきたい、と。

 

「(つまり、僕たちに戦争の代理をやれってことか。ふざけるなよ! 香織を戦争に参加させるなんて、出来る訳がない! ……けど)」

 

 右も左も分からない、文字通りの別世界。そして教皇であるイシュタルの、神託を受けたと語る時の恍惚な顔。この世界の在り方に、嫌な予感しかしなかった。

 

「ふざけないで下さい! 生徒達を誘拐まがいな事をしておいて、さらに戦争をやれだなんて! あなた方のやってることは犯罪ですよ!? 戦争なんて御免です! 早く元の世界に返してください!」

 

 大声で抗議したのは、社会科の担当教諭である畑山愛子。ハジメよりも小柄で、それでいながら威厳のある教師を目指している。そのため生徒たちはいつもの生暖かい視線を送ってるのだが、それは召喚されても相変わらずだった。

 

「ふむ、お気持ちは分かりますが、それは出来ませんな」

 

 この一言で、空気が凍りつく。

 

「な、何故ですか!? 呼び出せたなら、帰すことも出来るでしょう!?」

 

「先程も言いましたが、あなた方を召喚したのはエヒト様です。神の行ないに、人間は手出しできませんな」

 

 その瞬間に、クラスメイト達は次々と怒りを露にした。

 

「そんな、帰れないって何だよ!」

「戦争なんて嫌よ! 家に帰して!」

 

 そんな喧騒の中、ハジメ達は小声で話し合っていた。

 

「幸利、どう思う?」

 

「帰す方法が本当に無いのか、もしくは方法はあっても帰すつもりが無いから嘘ついてんのか、て所だな」

 

「どっちにせよ、詰んでるってこと……?」

 

「そうなるね。見てよイシュタルさんの目。あれ絶対に見下してるよ」

 

「『神託受けておきながら、何で反対するのか理解できない』ってか? なんとも自分勝手な」

 

 そんな時、ダンッ!とテーブルを強く叩く男が。天之河光輝である。それによって、場が静かになる。

 

「(嫌な予感がするな……)」

 

 同じことを察したのか、不安げに寄りかかる香織を、ハジメは片手で抱き寄せた。




前半でハジメが見た絵とは何なのか? 次回で明らかにしようかと思います。
次回はステータスプレート回の予定です。
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