ブルックの町に着いた翌日。疲れを癒したハジメ達は、買い出しなどを済ませて町を出ようとしていた。
「何で半日だけなのにこんなに疲れるんですかぁ」
「この町の人間、個性強すぎ……」
「特にクリスタベルさんとかね……」
未だにハジメの脳内には、身長2メートル強の筋肉モリモリマッチョの漢女のインパクトが離れていない。恐らく、前世のゲーム知識にある「観覧車イベント」の一部のキャラクター並だろう。
だが、人は見た目によらないと言う言葉を具現化した存在でもあった。ユエとシアに施したコーディネートは、服にあまり詳しくないハジメから見ても感嘆の声が出るほどのレベルだったからである。
「食料も買った、クラフト能力で薬も作った」
「準備万端ですね!」
「ん。行こう」
町を出た3人は、人目のつかないところで相棒ポケモン達を呼び出し、それぞれに跨がって駆けていった。
夜のライセン大峡谷。そこでハジメ達は野営をしていた。町で購入したテントを立て、火を起こし、見張りとしてゴルーグにサイホーンにアブソルが周りに立っている。
「ご飯が出来ましたよ~!」
シアの声で、クラフトをしていたハジメや、ゴルーグの肩に乗っていたユエが降りて来る。他のポケモン達も同様だった。
「シチューかぁ。美味しそう」
「シア、料理上手。私とは大違い……」
「えへへ~」
この世界はポケモンの存在が目立つが、不思議なことに他の動物……馬や、豚を初めとする畜産動物なども存在している。ハジメはどうやって生きているのか気になったが、考えるのをやめた。ポケモンと言う不思議な生き物がいる世界であり、魔法も存在するファンタジー世界。常識が通用しない世界だと割り切ったのだ。
「少し肌寒い夜に、暖かいシチュー。最高だね」
ポケモン知識がハジメ、魔法がユエなら、シアはサポーターである。彼女は母を亡くして以降、料理をしてカムの支えになっていた。その経験が活かされているのである。
「ガウッ!」
「サイホーンも慌てないで下さいね。今みんなの分も盛り付けますから」
そうして料理を出すと、その匂いが良かったのか、ポケモン達は食べ始める。見た目は石像のゴルーグも食べるのが意外だった。
そうして全員が食事を取りつつも、目的地について話し合う。
「この峡谷の何処かに、大迷宮がある筈なんだ。ここの近くだと思うんだけど……」
「何で分かるの?」
「これさ」
ハジメがポーチから取り出したのは、オルクス大迷宮で手に入れた、こうてつプレート。それが小さな光の輪を発していた。
「こ、これがプレートですか。何だかゾワゾワします……」
「でも、迷宮に安置されてた時は光ってなかった。何で?」
「これは推測でしか無いんだけど、これは『共鳴』してると思うんだ」
様々な考察があるが、プレートとはアルセウスの力の欠片だとハジメは考えている。元は1つだったものが散らばったものとも言える。その力の欠片が元に戻ろうとしている反応、それをハジメは共鳴と名付けたのだ。
「この近くに来た頃から、共鳴みたいなのが始まったんだ。だから何処かにある筈なんだけどなぁ……」
だが辺りは暗くなり、捜索は危険と判断した。続きは明日になるだろう。
その後、一行は眠っていたのだが……シアが起き上がる。
「(うぅ、催してきちゃった……)」
ハジメ達を起こさないようにこっそりとテントを出て、少し離れた茂みで花を摘もうとした。その時だった。
「え……?」
その頃、安眠していたハジメ達。だがそれはシアの声で破られた。
「ハジメさん、ユエさん! 大変です! こっち来てくださぁぁい!」
「わ、何、何!?」
「安眠妨害……」
目を擦りながら2人はテントを出て、シアの元へ向かう。
「どうしたのシア。そんなに大声出して……」
「大変なんですよ! これ見てください!」
シアが指さした先を見る。そこは見た目こそ只の岩壁だが、そこに文字が刻まれていた。
『おいでませ! ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪』
ハジメは見間違いかと思って、もう一度目を擦って見直す。だが、文は変わらない。
「え、文がチャラいんだけど。何これ?」
「……歓迎のメッセージ?」
「解放者って個性豊かですねぇ……」
呆れのような空気が広がる。
「取りあえず……明日にまた来る?」
ハジメの言葉に2人も頷いた。
次回から、ミレディの大迷宮攻略スタートです。