夜にライセン大迷宮の入り口を見つけた翌日。テント等を片付けたハジメ達は、再び入り口まで来ていた。
「これ、本物だと思う?」
「ミレディって名前、オスカー・オルクスの残してた日記にあった。結構ウザいって書いてた気がする」
「だとしたら、この文章も納得ですねぇ……」
問題は、入り口が見当たらない事である。ハジメは慎重に岩壁を触る。
「プレートを簡単に渡さない為にも、入り口を隠してるのか……? だとしたらどうやって……」
そして壁の一部分に触れた瞬間、回転扉のように壁が回り、ハジメはそのまま壁の奥へと消えてしまった。それを見たシアとユエがぎょっとする。
「ハジメさん!?」
「回転扉……!? 私たちも追おう」
「はい!」
こうして一行は迷宮へと突入したのだった。
所変わって、大迷宮の遥か奥。そこにフードを被った存在がいた。
「およよ? 迷宮に誰か入ってきたみたい? しかもこの感じ……」
迷宮の壁からその存在へと流される情報。それは、挑戦者……ハジメから放たれている特別な力。
「ふふっ……ふふふふふっ……! 遂に来たんだ……! あの糞野郎をぶっ殺せそうな後輩が! 本当の神様を信じる存在が!」
それは、フードの下にあるスマイルマークよりも嬉しそうな声で、笑った。
偶然にも迷宮へ入れたハジメ達。目の前に広がるのは、広い通路だ。壁に等間隔で設置されているランタンの様子から、まるで鉱山の内部のようにも見える。
『ようこそ~、ミレディちゃんの大迷宮へ~♪』
ハジメから見て右側の壁に、小さな石板が埋め込まれていた。ミレディってチャラいんだなーと思っていると、石板の文字が一瞬消え、新たな文章が出てきた。一行は驚くも、大迷宮だし可笑しくないかと開き直った。
『この迷宮には、不思議な生き物たちは居ませーん! その分たっくさんのトラップがあるから、気を付けてね~♪ なお死んでも自己責任なのであしからず~』
「うわぁ……」
「えっと、罠に警戒しながら進めって事ですかね?」
「ゆっくり歩けば問題ないってこと? だとしたら簡単すぎる……」
「唸っててもしょうがないし、警戒しながら進もう」
足元だけではなく、壁や天井も警戒しながら歩いていくと、カチリと音がした。音の発生源は、シアである。
「……えっと、ごめんなさ―――」
その時だった。大量の木の葉がシアの顔にへばりついた。
「ぶっ、ぺっぺっ! 何ですかこれぇ!?」
「今のがトラップ……?」
「地味……」
今度はユエの足元から音がした。彼女がポカンとしていると、炎が吹き上がった。
「熱い熱い熱い! 私じゃなかったら死んでる!」
「洒落にならないなぁ、ちょっとぉ!」
ハジメの足元からも音がした。何が来るかと警戒していると、目の前から凄まじい向かい風が襲ってきた。
「か、風が強すぎ……うおわぁぁぁぁぁ!?」
「何で私たちまでぇ!?」
「これ、入り口に戻され……!」
強風に耐えきれず、ハジメ達は開始地点へと戻された。石板の文が新しくなる。
『だから気を付けてって言ったじゃ~ん? 色んな所に埋め込んでるからね~♪』
「埋め込まれたトラップだって……!?」
ハジメはハッとする。。ポケモン要素のあるこの世界でトラップと言えば、彼の頭には1つしか無かった。
「まさか、シンオウ地下通路のトラップが敷き詰められているのか!?」
シンオウ地方にある地下通路。リメイクされる前の作品では、地面にトラップが埋め込まれていた。もしうっかり踏んでしまうと、落石やら炎やらで主人公を足止めしてしまうのだ。中には矢印の方向へ大きく吹き飛ばされるトラップも存在している。
このライセン大迷宮には、そんなトラップが地面だけではなく、壁にも仕掛けられている。休憩しようと迂闊に寄り掛かることも出来ないだろう。
「肉体面だけじゃなく、精神面を試す迷宮か……!」
ハジメの背中に、嫌な汗が流れた。
再び迷宮の遥か奥。フードの存在は、壁に埋め込んだ特殊な石によって、遠くのハジメ達の様子を見ていた。
「あの腰に着けてるボール、オー君が作ったものだよね。ふふふ、期待できるかも。さーて、私も準備しなくちゃね」
そう呟くと、部屋を出ていった。
と言うわけで、ライセン大迷宮はシンオウ地下通路のトラップだらけです。ハジメ達は掻い潜る事が出来るでしょうか?