ライセン大迷宮は、一言で言うならば過酷と言えるだろう。
どこにトラップがあるか分からないため、いつも気を張り積めなければならない。寄り掛かる事も難しい。
「うあっ! ま、またトラップが……きゃぁぁぁ! 見ないでぇぇ!」
疲れてしまい、思わず壁に手をついたシアに、花びらの突風が下から吹き荒れる。彼女はスカートを履いているため、当然めくれあがる訳で……。
「ハジメ、見ちゃ駄目」
「目潰しの構えは止めて!?」
また別の場所では、分かれ道が存在していたのだが……。
「落石トラップ!?」
「アブソル、“つじぎり”です!」
「よし、これで先へ……て、行き止まりかよ!」
落石をポケモンの技で破壊したものの、行き止まりになっていた。もと来た道を引き返して、反対の道を進むも、そこにもトラップが。
「また吹き飛ばし系のトラップ!?」
「ハジメ! 前、前!」
「んげぇ!?」
目の前に迫る壁は、粘着質のもの……いわゆるトリモチであった。3人はそれに見事にへばり付くが、そこへ天井から水が降り注ぎ、乱雑に引き剥がす。
「トラップのコンボとか、本当によく考えてるなぁまったく!」
「ムカつく……!」
「ゴルーグやサイホーンで何とかなりませんか?」
「出来なくは無いと思うけど、それでトラップが一斉に起動したらなぁ……」
「そう言う事も含めて、何かしらの対策してると思う」
張り巡らされたトラップに、ハジメ達は肉体的な意味でも精神的な意味でも疲れ始めてきた。どうにかトラップを突破出来ないかと考える。
「……トラップの起動条件は、足で踏むか、壁に寄り掛かった瞬間か。つまり、ある程度の圧力を感知してから発動するって事かも」
「それが分かった所で、どうにもならないと思いますけど……」
「いや、指とかで触れた程度なら起動しないと思うんだ。要するに、押さなければ良いんだよ。慎重に探して、取り出してしまえば解除出来ると思う」
「「おぉ~!」」
そこでハジメはある姿勢を取るのだが、それに2人は顔をひきつらせた。
迷宮の遥か奥。そこで「準備」をしていたフードの存在は、ハジメ達の様子を見ていた。
「さてさて、あの子達はどんな目に遭って…………ぶっ!?」
モニターのような特別な石で覗くと、その光景に思わず吹き出した。
何故なら、ハジメ達は地面に這いつくばって、いわゆる匍匐前進をしていたのだから。
『うぅ、ハジメさ~ん。どうしてもこの格好ですかぁ~?』
『仕方ないでしょ。こうした方が、トラップを見つけやすいんだから』
『女の子にこんな姿勢させるって、ハジメって鬼畜……?』
だが、とんでもない台詞を聞いてしまう。
「トラップを見つける……? 本当に言ってるの、この子?」
その言葉は、見つけられるわけが無いという意味ではない。ハジメ達が取っている姿勢だと、地面にあるトラップを発見されてしまうからだ。
『ん? この地面なんか怪しいな……』
『ハジメ、慎重に』
『分かってるって。指先で慎重に……よし! 見つけた!』
ハジメが指先で地面から取り出したのは、板状の物体だ。
「嘘……。本当に見つけちゃった……」
『板みたいな形ですねぇ。それにこの模様、何でしょうか? 泡みたいな模様ですけど』
『たぶん、トラップの内容だと思う。泡まみれになるとか』
トラップを見つけられたことに唖然としたが、すぐに我に返った。
「(で、でもでも! そんなヤドンみたいにノロノロしてたら、何時まで経っても辿り着けないもん!)」
『これを、こう分解して、カチャカチャカチャ……』
『ハジメさん? 何してるんです?』
『これを分解した物から、トラップの反応を探知するアイテムを作ろうと思って。錬成するには、いつもよりも体力とか使っちゃうけど』
『反応を探知する?』
『ズバットってポケモンがいる。口から超音波を出して、その反響音で獲物とか障害物とか感知するんだよ。それと同じものを作ろうと思ってるんだ。トラップの回路とかに反応して、音が変わるとかね』
「嘘でしょぉ!? 何なのこの子! そんな攻略法、私も予想外だよ!」
なお、迷宮に挑む前に大峡谷で、石やら鉄の欠片やらを手に入れていたらしい。それらに分解したトラップのパーツを組み込んで、いわゆるレーダーを作っていた。
『完成~! あー疲れたぁ』
『ハジメ、私が使ってみて良い?』
『良いよ。性能も試してみてほしいな』
「オー君、生成魔法を与えてないよね? あの子、マジックアイテム作ってるんだけど……」
映像には、レーダーによってトラップを次々と見つけていくハジメ達の姿が映っていた。
「って、このままじゃ皆来ちゃうじゃん!」
フードの存在は、大急ぎで準備を進めた。
一方のハジメ達。彼らはトラップを攻略する方法を見つけ、次々と解除していった。
「流石ハジメさん、略してさすハジです! こんなに楽になるなんて!」
「でも、解除したトラップを何でわざわざポーチにしまうの?」
それを聞いたハジメは、ユエに爽やかな笑顔で答えた。
「少しでも仕返ししたいじゃん?」
「「確かに」」
ハジメのポーチには、解除したトラップが詰め込まれている。魔法が使えないと言う状況で、少しでも優利になるためのようだが、他にもトラップによるストレスを発散したい目的もあるようだ。
そうして進んだ先には、大きな扉がある。
「行くよ、みんな」
「はい!」
「うん!」
3人で扉を開けると、部屋の中央にはフードの存在がいた。
「やっほ~! 解放者のアイドル、可愛くてキュートなミレディ・ライセンちゃんだよ~! 拍手拍手~!」
「「「…………は?」」」
スマイルマークの頭を持った変わった存在が、まさかミレディ・ライセン本人とは思わず、ポカンとしてしまう。
「あっはは~! そう言う反応は慣れてるゾ☆……とまぁ、おふざけは此処までにしといて」
おふざけだったんだ。3人の内心が揃った。
「まさか、私の仕掛けたトラップを解除する道具を作っちゃうなんてね。君ってばオー君から生成魔法を受け取った?」
「オー君? オスカー・オルクスの事、ですか? 僕が受け取ったのはクラフト能力とそのレシピ、そして……プレートです」
「……そっか。さてさて、君が世界の真実を知った上で試練を突破したってことは、此処へ来た目的は、ずばり私の持つプレートだね?」
「はい」
すると、ミレディは真剣な顔になる。
「神様のプレートは、凄い力を持ってるんだ。君も心当たりないかな? オー君の所は、確か鋼の力。君も変化があったと思う」
「そう言えば、あの時……」
フェアベルゲンにて、熊人族の族長ジンから攻撃を受けた際、相手の爪や牙が折れ、殴った腕が折れた。まるで体が鋼になったかのようだった。
「プレートの力があれば、何でも出来る。君はプレートの力で何をするんだい?」
ハジメとミレディの目が合う。だがハジメの答えは決まっていた。
「プレートは、アルセウスの物です。だから僕は、アルセウスにプレートを返す。その為にはエヒトからもプレートを奪う!」
それを聞いたミレディのスマイルマークは、より嬉しそうな雰囲気を放っていた。
「うんうん、合格~! その心意気やよし! なら、私の試練を突破して貰おうかな! 足元にご注目~!」
ハジメは床を見てギョッとし、更に奥にある物を見て声を上げてしまう。
そこには、真オルクス大迷宮の試練と同じ、光る床と石像があった。
すでに石像の目と同じ配置のパネルが光っており、ミレディの足元のパネルが光れば、完成するだろう。
「ミレディさん! 貴女、まさか!」
「そう、その通り! この子はかつて、解放者のみんなと一緒に戦った私のパートナー! その封印を解くよ!」
最後のパネルを、ミレディは光らせた。
――ざざ ざり ざ……
かいほうしゃの ミレディが
しょうぶを しかけてきた!
と言うわけで、ミレディの相棒は、意外や意外なレジロックです。
でも、原作でもゴーレムに憑依してたし、レジロックってゴーレムっぽい……ですよね?