ライセン大迷宮での戦いは、ハジメ達が数で優利な筈だった。だが、魔力が分散されて魔法によるサポートが出来ないという点と、実際にエヒト神と戦ってきたミレディがサポートしてると言う点で不利になっていた。
レジロックの封印が解けた瞬間、ハジメ達をある魔法が襲い掛かる。
「なん、ですかぁ、これぇ……!」
「体が……重い……!」
「ミレディさん……! あなた、何で魔法を……!?」
歯を食い縛りながら問い掛けるハジメに、ミレディほニヤニヤしながら答える。
「ふっふーん。これはね、私の神代魔法なのだ~。ま、いわゆる重力操作ってやつ。で、何で使えるのかと言うと~……? 答えは簡単、慣れってやつだね。魔法が使えない環境で長いこと暮らしてたんだもん。如何に低コストかつ大きな効果を得られるか。消費する魔力を節約できるか。それを模索して出来るようになったのさ」
つまり彼女は、魔力が分散するエリアに適応してると言うことだ。魔法が使えないのは相手も同じという理屈が、通用しないのである。
ハジメは内心舌打ちしながらも、ユエ達に指示を出す。
「2人とも、ポケモンを出そう! 戦わなきゃ始まらない! 行くよ、サイホーン!」
「分かり、ました! 行きますよアブソル!」
「ゴルーグ、私も頑張るから……!」
3人は重い腕を何とか振り上げて、モンスターボールを投げる。出された3匹も、体の重さに顔をしかめた。
「サイホーン、“ドリルライナー”!」
「グルオオオオオ!」
「良いねぇ良いねぇ! それでも戦おうとする意志、それだけで30点はあげちゃいたい! レジロック、“アームハンマー”!」
「レ、ジ、ロ」
突っ込んできた所を、レジロックは迎え撃つかのように腕を振るい、サイホーンを殴り飛ばした。格闘タイプの技は彼に効果抜群である。
「サイホーン!」
「アブソル、“でんこうせっか”を!」
「アブッ……!」
サイホーンと入れ替わるようにアブソルが駆けるが、重力が大きくなっている影響によっていつものスピードが出ない。
「良いよ? 受けてあげる」
「舐めた真似を! “つじぎり”です!」
「レジロック、“まもる”を発動だよ」
「防がれた!? 受けるってそう言う意味ですか!」
淡い光がレジロックを覆い、アブソルの“つじぎり”を防いでしまう。
だがそこへ、大きな足音を立てながらレジロックに近づいたのはゴルーグだった。
「遅れて参上。その技の性質は知ってる! “かわらわり”!」
「おっと!?」
「レ、ジ……!」
ゴルーグの攻撃がレジロックに炸裂する。ユエは先輩らしくシアに声をかける。
「あの技は短時間で何度も発動出来ない! 畳み掛ける!」
「分かりました。行きますよぉ……! “ギガインパクト”です!」
「アァブ!」
「“まもる”を見破られちゃうなんてね! けどこっちだって負けない! “いわなだれ”だよ!」
アブソルとゴルーグの頭上に、大量の岩が降り注ぐ。
「ゴルーグ、“まもる”を発動しながらアブソルを守って!」
淡い光を発しながら、アブソルに覆い被さるゴルーグ。そのお陰で2匹ともダメージを負わずに済んだ。
「さーて、男の子の方はどうしたのかなー? まさかさっきの一撃でやられちゃってたり?」
「馬鹿を言わないで欲しいな……!」
そこには、傷が癒えてるサイホーンと、そこに並んでミレディを睨むハジメの姿があった。彼女はハジメの持っている物を見てギョッとする。
「もしかして、2人が戦ってる間にキズぐすりを!?」
「それと、仕返しの準備もね! サイホーン、もう一度“ドリルライナー”だ!」
「グオオオ!」
サイホーンは再び突っ込んでくる。
「ふーんだ! 何度やっても同じことだよ! レジロック、今度こそ“アームハンマー”で……」
その時ミレディは、サイホーンの角に装着されている物を見てしまう。
「あれは、まさか!? レジロック、ストップストップ!」
だが、それよりも先にレジロックの腕がサイホーンの角に触れてしまう。その瞬間だった。
「押したね? トラップを!」
「ざ、り……!?」
カチリという音と共に、大量の泡、鋭い木の葉、花びらがレジロックを襲う。水に草、どれもレジロックには効果抜群だ。
「私の仕掛けたトラップをサイホーンに着けてたなんて……! レジロックの腕が触れるのを予測して……!?」
「確かに貴女は、魔力が分散するこのエリアに適応してる。けどレジロックは別だ。“はかいこうせん”のような遠距離攻撃は疲弊させてしまう。それに、さっきからレジロック自身が動いていない。どれもアブソルやゴルーグが近付いてから迎撃するだけだった。だから、重力操作の影響を受けてたんじゃないかと思って、そうさせてもらったよ」
バトルに集中してたのか、戦う前の丁寧な口調では無いハジメ。だがミレディは機嫌を崩していなかった。
「……ふふふ。私自身が、レジロックにハンデをつけちゃってたのかぁ。これは私もうっかりだなぁ。けど!」
片膝を付いていたレジロックが、両腕を振り上げる。
「長々と語っておいて何も警戒してないってのは、減点要素かな! “ストーンエッジ”!!」
「レジロォォォォッ!!」
「「「うわぁぁぁぁぁ!?」」」
腕を勢いよく振り下ろした先の地面から、サイホーン、ゴルーグ、アブソルに向かって岩の棘が放たれた。その威力と衝撃は凄まじく、思わずハジメ達も吹き飛ばされてしまう。
決着!
「けどまぁ、君たちは十分合格だよ♪」
重力操作が解除され、一気に体が軽くなったハジメ達。ミレディは拍手しながら近付いてきた。
「合格~! 君たちってば、諦めずに逃げない姿勢、良かったよ~!」
「ミレディさん……」
「おや? 口調が戻ったかな? まぁ良いや。はいこれ、試練突破の証だよ」
ミレディが手渡したのは、大迷宮攻略の証。これが無ければ、樹海の迷宮が開かれないと言う。
「他の迷宮の攻略の証も必要だからね。ふふん、先輩として応援してるゾ~!」
「ありがとうございます!」
「うんうん、素直でよろしい! さて。本当のご褒美……プレートはこっちにあるよ。ついてきて」
部屋の奥の扉が開かれ、ミレディはそこへ歩き始めた。ハジメ達も相棒をボールを戻し、早歩きでついていく。
こうしてたどり着いた先は、真オルクス大迷宮と同じような祭壇であった。正三角形の中央にプレートが安置されている。
「……では、ミレディさん。このプレート、持っていきます」
「うん。本当の神様に返してあげてね」
ハジメは がんせきプレート を手に入れた!
「ミレディさん。この後は、どうするんですか?」
「プレートを守る役目は終わったけど、まだやることがあるんだ。君たちは、先に他のプレートも探しててね」
すると、ハジメ達3人の足元に魔方陣が展開される。
「君たちの冒険が、オモシロ愉快であることを祈ってるよ! じゃあね~!」
そして、祭壇からハジメ達の姿が消えた。
ハジメ達が消えた後、ミレディは彼らにも明かしていない巨大な部屋に来ていた。
「私たちにね、後輩が出来たんだ。本当の神様を信じてくれる人間なんだ」
彼女の言葉は、部屋に虚しく響く。目の前の相手は長い眠りについているのだ。来るべきその時まで。
「もう少しで、アイツを倒せる。もう少しだよ、王様」
玉座に腰かける巨人の王に、ミレディは呟いた。
ミレディ、どうやら切り札を持ってたようで……。
もうそろそろ、ハジメ達をウルの町に行かせようと思ってます。