大迷宮を攻略したハジメ達。ブルックの町に戻ってから1週間が経過した。その間に準備などを整えていた訳だが、濃厚な1週間であった。
「ソーナちゃんに僕の事を根掘り葉掘り聞かされるなんてね……」
「ハジメさんは良いじゃないですか。私なんて、町の人たちに奴隷になれって迫られたんですよ? 新手のナンパですか!?」
「踏んでくださいって言われた私はどうなの……」
ハジメは、マサカの宿の看板娘のソーナに香織との恋愛事情をしつこく尋ねられた。なお彼女はその後母親に何故か亀甲縛りで玄関に晒されていた。
シアは、男の冒険者たちに奴隷にならないかとナンパされた。幸いなことに、念のためとハジメが同伴してたため拉致といった強行手段は無かったが、それでもしつこさにはウンザリしていたのである。
ユエの方はもっと疲れており、ある性癖持ちの男たちから踏んで欲しいと土下座され、一部の女性たちにはお姉さま呼びされると言う事態になった。酷い者は、仲間であるハジメを襲う者もいたが、こうてつプレートの効果によってどの襲撃も無意味に終わっている。
「明日あたりには出発しよっか。キャサリンさんにも挨拶したいし」
「賛成です」
「お世話になったから」
そして翌日。キャサリンのもとへ挨拶に向かい、そのついでに商業都市フューレンへ向かう商隊の護衛依頼も引き受けた。
「それと、これも持っていきな」
「手紙……?」
「紹介状みたいなもんさ。あんた達には私も注目してるからねぇ。何かギルドでトラブルがあったら、それを上の奴に出してやりな」
「キャサリンさん、貴方って一体何者……?」
「良い女には秘密が付き物さ」
「は、はぁ……」
こうして、ハジメ達はフューレンへと向かうのだった。
商隊長のモットー・ユンケルに挨拶を済ませた一行。フューレンへ向かう道中、ハジメとモットーは商談のような事をしていた。
「この『かおるキノコ』、どこで見つけたのですか!? これは、貴族が愛用するお香の材料になる物ですよ!」
「ライセン大峡谷とハルツィナ樹海の境界です。どうです? 僕の仲間を引き抜くよりも、他の貴族というお得意様を付けた方が、そちらにとっても得なのでは?」
モットーは最初、亜人族でも珍しい髪色のシアを売らないかと提案してきたのだが、仲間を売るつもりは無いハジメは断固拒否。その代わりにと、ギルドに売らずにとっておいた換金アイテムを出したのである。
「大峡谷も樹海も、あそこで手に入る物は品質も良く高価になる。下手すれば凄い稼ぎになるのでは……?」
「僕はこれを差し上げます。なので、シアの事は諦めてくれませんかね?」
「……なるほど。あまりしつこくすると、嫌われそうだ。お客様を不快にさせるのは、ユンケル商会に泥を塗るもの。この『かおるキノコ』で手を打ちましょう。その代わりに」
「分かってますよ。ユンケル商会の食材など、買わせて頂きます」
2人は握手をする。その会話が聞こえていたユエとシアは、食事に困らなくなりそうだと小さくガッツポーズした。
その後も一行はフューレンへ進み続けるが、派手な戦闘は起こらなかった。と言うのも、ポケモンが現れるたびに他の冒険者達が戦おうと構えるのを、ハジメが止めていたからである。
今、目の前にはリングマがいる。その厳つい顔に、ある冒険者は足が震えていた。
「ほ、本当に大丈夫なのか?」
「むしろあのリングマは戦う方がまずい。あいつの足元を見て?」
「ん? ありゃあ……ヒメグマじゃねえか」
「たぶん、親子連れなんだ。こっちが大声出したり攻撃を仕掛けたら、子供を守ろうと暴れまわるかもしれない」
「確かに厄介だが、さっきから俺たちを見てるぞ……」
「正確には商隊の積み荷じゃないかな。食べ物の匂いを感じてるのかも。近付いてこないのは、僕たちが居ることに警戒してるんだと思う」
やがてリングマは、諦めたように背を向けて、ヒメグマと共に去っていった。
「ふーっ……! 緊張したぁ」
「むやみに戦ったら、それこそ余計な疲労になるからね。こちら側から仕掛けるのは止めた方が良いかも。明らかに敵意むき出しだったら、迎撃するしかないけど」
「でも、お陰で薬とかも節約できるし、助かってるぜ」
他の冒険者達と険悪な空気になることなく、ハジメ達も進む事が出来た。
そしてブルックの町を出て6日後。一行は、フューレンへと到着する。だが、この先にトラブルが待ち構えてることを、ハジメ達はまだ知らなかった。
ハジメに襲うトラブルとは、いったい何ミンなんでしょうか……。