愛子たちを連れ、山脈までやって来た一行だったが、目の前の荒れた景色を見て驚いていた。
「何かが暴れた跡、かな?」
「大木がへし折れてますよ……」
「これが、夢で言われた災いなのかしら……?」
地面は大きく抉れ、木はへし折れている。その荒れ具合にハジメは更に詳しく観察する。
「単なる力任せな暴れ方じゃない。折れた木が一直線に並んでいると言うことは、此処を真っ直ぐ走っていったと言うことか……?」
「ハジメ。足跡があった」
「ナイスだよ、ユエ」
ハジメを中心にして、シアにユエ、愛子や優花達が覗き込む。その足跡を見た優花が呟いた。
「これ、蹄……? 馬の足跡?」
「大木をへし折るなんて、そんな強い馬いるかよ!?」
「何言ってんのよ、相川。ここは異世界よ?」
相川昇と菅原妙子の会話をBGMに、ハジメは考える。
「(怪力かつ馬のようなポケモンと言ったら、バンバドロ辺りか? だけど足跡の間隔からして、相当なスピードだ。スピードならポニータとかギャロップ辺りだけど、地面にクレーターを作るほどとは思えない……。スピードと怪力を併せ持った馬型のポケモンとなると……)」
その時だった。優花が悲鳴を上げる。
「きゃあぁっ!? せ、背中に何か居る!」
「背中?」
シアが彼女の背中を見ると、そこに引っ付いているポケモンを優しく抱きかかえた。
「ハジメさんハジメさん! この子、すっごく可愛いです! 何てポケモンですか!?」
「ミィ~?」
「驚いたな……。シェイミじゃないか」
シアに抱えられたシェイミは腕の中でもがき、そのまま抜け出す。そして優花の足元にすり寄った。
「ミィ~」
「何かこの子、優花に懐いてない?」
「優花なんかした?」
「いや、何も……」
戸惑いながらもシェイミを抱える優花。だが、ハジメは心当たりがあった。山脈へ向かう道中、優花が彼に対して助けてくれたお礼をいったのだ。
「シェイミは別名かんしゃポケモン。人の感謝の思いに反応して、花を咲かせるんだ。園部さんがさっき言ってくれた『ありがとう』に興味を持ったんじゃないかな」
「感謝の気持ち……。あなた、私と一緒に行きたいの?」
「ミッ!」
力強く頷くシェイミ。優花は満面の笑みを浮かべて抱きしめた。
「可愛い……! 一緒に行きましょ、シェイミ!」
「ミィ~!」
ポケモンを相棒とする人間が増えたことに、ハジメは心から祝福した。
シェイミが優花のパートナーになり、捜索と調査を再開したハジメ達。山の中腹に差し掛かった所で、愛子の様子が変わった。周りをキョロキョロと見回すようになったのだ。
「先生、どうしたんスか?」
「いえ、さっきから何か不思議な感じがして……」
「ちょ、先生やめてくださいよ。只でさえ何か寒いのに」
「ここで幽霊とかホントに洒落にならないですって」
生徒達の言葉にハジメは再び考える。
「(確かに途中から気温が下がったような……)」
「っ! 止まってください皆さん! 何か来ます!」
シアのウサ耳が音を捉え、警戒を促す。全員が警戒する中、その足音はハジメ達の耳でも聞こえるようになってきた。
「あれって、白馬?」
「さ、寒い……! あの馬、氷を纏ってるぞ!」
「待って、何か乗ってる!」
濃い冷気が徐々に晴れていき、乗っていた存在が姿を現す。その白馬のポケモンに跨がるポケモンに、ハジメは震えた。そしてその名前を呟く。
「「バドレックス……!!」」
この時、愛子もその名を呼んだ。夢で教えられた、豊穣の王の名を。
遂に登場、バドレックス。果たして前話で彼が告げた「災い」とは、愛馬の片割れによるものなのか? 次回で明かそうと思っています。