ポケットモンスター トータス【本編完結】   作:G大佐

49 / 146
閑話なのでちょっと短めです。時系列では、光輝が皇帝に腕試しされたり、雫が皇帝に愛人に誘われる辺りです。


閑話:癒され少女は今日も愚痴る

 中村恵里は、天之河光輝に惚れている女子だった。そう、『だった』のだ。

 父親を交通事故で亡くし、母親に虐待され、再婚相手に性的暴行を受けそうになった彼女。川へ飛び込もうとした時に話し掛けてきたのが光輝だったのだ。

 それ以降、彼女は彼の『特別』になりたいと思っていた。だからこそ、彼の幼馴染みである八重樫雫や白崎香織が邪魔で仕方なかった。何なら殺してしまいたい程に。

 だからトータスに来れば、日本の法律に縛られずに好きに出来る。そう思っていた。

 

「ミミッキュ~。今日も疲れたから癒して~」

 

「ミキュッ!」

 

 ハイリヒ王国より与えられた自室にて、恵里はとあるポケモン……ミミッキュを抱きしめていた。

 どういうわけか知らないが、自分について来ていたポケモン。最初こそビックリしたのだが、何かを模した袋のような物を被っている姿が、猫を被っている自分と似ている感じがしたのだ。何より、「キュ~」と言う鳴き声が可愛く、教会の信者たちが語る魔物とは思えなかったのだ。恵里とて女の子、可愛い物を愛でたいという感性までは失われていなかった。

 流石に他人にバレると殺されるかもしれないため、こうして自室に匿っているのである。

 

「はーあ……。今日も光輝くん、香織~香織~って彼女に声掛けてたなぁ。何だか幻滅だよ」

 

 光輝に女子の幼馴染みが2人も居ると知った時は嫉妬で狂いそうになったが、そんな彼女に朗報もあった。香織には惚れている男子がおり、その男子も惚れている。つまり2人は両想いなのだと。

 香織は光輝を恋愛対象に見ていない。だから自分にもチャンスが来る。そう思っていたのに、光輝は自分を見てもらおうと香織にアピールしている。

 

 特に、オルクス大迷宮でのサイホーンとの戦いでハジメが落下してから、その頻度は多くなった。

 まるで邪魔物が消えた瞬間に勢いが増した小者のようなイメージになってしまい、恵里の光輝に対する想いは冷めつつあったのだ。

 

「はーあ……。光輝くんの為に、色々頑張ってきたのに。あんな様子じゃ八重樫さんにも同情するよ」

 

「キュ~……」

 

 香織というライバルが居なくなり、残りは雫だけ。そう思っていたのだが、光輝に幻滅した今の状態で彼女を見ると、まぁ苦労してるオーラが滲み出ていた。暴走しがちな光輝のストッパーになり、更にほかのクラスメイトの相談も引き受けている。恵里から見ても疲れているのが明白であり、そんな彼女に同情しつつある。最近では、ヘルシャー帝国の皇帝に、愛人にならないかと誘われたとも聞いた。ますます彼女は苦労するかもしれない。

 

「失恋、かなぁ……」

 

「キュッキュッ」

 

「慰めてくれるの? ……ふふ、ありがとう」

 

 恵里の気分が沈んでいるのを察したのか、袋の下から黒い手のような物を出して、ミミッキュは彼女の頭を撫でた。ちなみにメスである。

 ミミッキュと過ごすようになってから、不思議と心が落ち着くようになってきた恵里。そこである提案をした。

 

「そうだ、ミミッキュ。何時も部屋ばかりじゃ退屈だろうから、今度一緒に迷宮探索に行かない?」

 

「ミキュ?」

 

「君がどんな力を持ってるのか、知りたいんだ」

 

「キュ~……。キュッ!」

 

「来てくれるの? ありがとう! さ、ご飯持ってきたから食べよっか」

 

「ミー!」

 

 嬉しそうにすり寄るミミッキュ。この時の恵里は気付いていなかった。鏡を見たら驚くほどに、優しい笑みを浮かべているということを。

 

 

「ところで、その袋の中身ってどうなってるの?」

 

「ミッ!」

 

「あ痛っ! そんなに見せたくないんだね……」

 

 




次回はハジメsideに戻ります。いよいよ、あの娘が登場です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。