それと、メインタイトルを、本格的に「ポケットモンスター トータス」にします。
海人族とは、海上の町とも言われるエリセンに住む種族である。彼らはヒレのような耳や手足を活かして海産物を取っており、各地に輸出している。そのため、差別される亜人でありながらも公に保護が認められているという、何とも微妙な状態にあるのだ。
保護されている筈の海人族が内陸地であるフューレンにいる。この事が、ハジメに嫌な予感をさせていた。
「フィー……」
「大丈夫ですよ。お風呂で綺麗にしましたからね」
心配そうに海人族の子供を見るマナフィに、優しく声をかけるシア。その子供は、不衛生な下水道に居たと言うこともあってかなり弱っていた。シアとユエで洗っている間も目を覚ますこと無く、今も眠っているのである。
「で? このマナフィってポケモンは何なんだよ?」
「暖かい海流に乗って海を旅するポケモンなんだ。だけど一部の伝承では、海の王子って呼ばれている。滅多に見かけない存在だよ」
「そんなポケモンが、保護されてる筈の海人族と一緒に居た……。なーんかキナ臭いな」
「フューレンは商業都市。これだけ大きな都市ならば、裏の組織みたいなのがあっても可笑しくないね」
「異世界小説おなじみの、人身売買とかな」
ハジメと清水がそのような事を話していると、海人族の子供が目を覚ました。不思議そうにキョロキョロと辺りを見回している。
「目を覚ましたかな?」
「ひぅっ!」
「大丈夫。僕たちは君を傷付けない。僕の名前はハジメ。君の名前は何て言うのかな?」
「……ミュウ」
「おや、あのポケモンと同じ名前だ。不思議な縁もあるものだね」
ミュウと名乗った少女に対して、ハジメは優しく微笑む。すると、くぅと言う可愛らしい音が彼女のお腹から鳴った。シア達の微笑みは更に暖かいものへと変わる。
「おやおや、お腹が空いておるのか?」
「なら、一緒にご飯を食べましょう!」
「この子は君のポケモン? 心配そうにしていた」
「マナー!」
「あっ……!」
水の張った桶から、マナフィが嬉しそうに飛び出してミュウに抱きついた。
「あのタマゴから生まれたの?」
「フィ~」
「えへへ、ありがとうなの!」
タマゴと言う単語を聞き、ハジメは考察した。
「(マナフィのタマゴか……。確かに魔物の卵となれば、裏の組織からすれば良い金になるか。人身売買だけかと思ったけれど、予想より手広くやってるみたいだな)」
シアによって提供された料理を、ミュウは嬉しそうに食べ進めていく。マナフィも嬉しそうに食べており、その光景はまるで姉妹である。
「(敵は間違いなく、この子達を追ってくる。それだけじゃない。たぶん、ポケモンも売り飛ばしてるだろう)」
子ガルーラのように、ポケモンの子供ならば人間相手にも勝てるだろう。ましてや大規模な組織ならば、数にものを言わせて捕まえているかもしれない。いわゆるポケモンハンターのような事もやっていると、ハジメは考えた。
改めて、怯えの表情から一変して笑顔になったミュウとマナフィを見る。
「(許せない……。こんな微笑ましい光景を潰すような奴を放置なんて、出来る筈がない!)」
ポケモンと人がお互いに笑い合う光景は尊いもの。ハジメは前世に残っているアニメの思い出を胸に、そう誓った。
食事を終えた後、ハジメ達はミュウを連れて街中を歩いていた。なお、マナフィはハジメお手製のモンスターボールに入れている。
「ハジメよ。先ほどから、確かに着いてきておるな」
「逃した商品を取り戻そうと、躍起になって探してるはずだからね。向こうから来てくれたから、探す手間が省けた」
「大丈夫ですよ、ミュウちゃん。私たちが守りますからね」
視線と気配を感じながらも、ハジメ達は動かす足を止めない。敵が来るのを待ち伏せするのではなく、敢えてミュウをハジメが肩車することで誘っていた。
相手は大規模な組織。マトモに相手をすれば、如何にチートスペックを持つ集団でも、民間人を巻き込みかねないからだ。
「ハジメ、前からもだ。目線がこっち見てやがる」
「挟み撃ちか。ティオ、ミュウを抱えて。そしたら皆で突っ切るよ」
ティオがミュウを抱きかかえると、ハジメは声を上げる。
「今だ、走れ!」
「なっ、突っ込んで来やがった!」
まさか走ってくるとは思わずにハジメ達を取り逃す男たち。
「逃がすな、追え!」
ならず者達の怒号をバックに、ハジメ達はひたすら走る。
「裏路地へ誘い込め! 応援を寄越せるようにするんだ!」
ご丁寧なことに、大声による指示によってハジメも瞬時に作戦を閃く。
「チャンス! 敢えて誘われるんだ! 幸利、裏路地に入ったら、アレを頼むよ!」
「うっしゃ! 任せろ!」
裏路地へハジメ達が入り込んだのを見て、男達は舌なめずりをする。仲間が集まりやすい場所へ誘いさえすれば後は袋叩きにすれば良い。美人も多いため、「味見」をするのもアリかもしれない。そう思って裏路地に入った瞬間だった。
「掛かったなアホが! 影縫い発動!」
「がっ! 体が、動かねえ……!」
「仲間を呼ぼうとしても無駄だぜ。俺たちの仲間は、みんなチートだからな!」
影縫いで追っ手の動きを止めている清水の背後では、それはもうポケモンらしくない戦いが起きていた。
シアは持ち前の身体能力と、魔力操作で拳を強化してならず者達を殴り飛ばしている。
ユエは水属性の魔法である“破断”で、高圧縮の水をレーザーのように発射。敢えて即死させず、足を撃ち抜く事で行動不能にしている。
ティオは、片腕でミュウを抱えながらも、反対の手に持つ扇子を振るって雷属性の魔法を発動。これも死なない程度に加減をしている。
ハジメは錬成で地面を勢いよく隆起させて、ならず者達を吹き飛ばす。ナイフを持って突っ込んでくる輩には、こうてつプレートの効果を発揮しながら硬質化した腕で殴り飛ばしていた。 なお、殺していないのは、ミュウにトラウマを作らせない為である。
「な、何なんだよ、何なんだよお前ら……!」
「そう言われても、愉快な旅のパーティーとしか言えねえよ」
ものの数分で、ならず者達は全滅。清水の影縫いで動けず怯える生き残りに、ハジメ達は良い笑顔で近付いた。ユエとティオは指先に軽く電流を纏って威嚇、シアとハジメは拳の骨をポキポキと鳴らす。
「それじゃあ、色々と聞かせてもらおうかな?」
なお、この時のミュウは、ティオに目を瞑っているように言われていたため、ハジメの恐ろしい笑顔を見ずに済んでいるのであった。
ハジメは、普段が穏やかな物腰である分、怒ったりすると普通に相手を素手でボコボコにします。
実は、過去に檜山がハジメの両親をからかってそうなってると言う裏設定を設けてます。