冒険者ギルドホルアド支部長のロア・バワビスが、ハジメの手紙について本人から聞こうとやって来たのだが、そこにただ事ではない雰囲気を漂わせる浩介が居た。両者の話を聞こうと応接室へ案内したのだが、浩介の口から語られたのは、オルクス大迷宮内に魔人族が現れて勇者たちと交戦中という物だった。
だが、それを聞いて一番穏やかでなかったのは、ハジメだった。
「そこには、香織も居るんだね?」
「あ、あぁ。八重樫さんたちと一緒に戦ってる」
浩介からそれを聞いた瞬間、ハジメは席を立って部屋を出ようとした。ユエが、彼がやろうとしてることを察して呼び止める。
「何処へ行くの、ハジメ!?」
「香織を助けに行く!」
「まずは話を聞いてからにしましょうよ、ハジメさん! 相手がどんなポケモンを操るかも分かってないのに……!」
「離せ! 一刻を争うんだ! チートスペックなクラスメイト達でも、何処まで持ち堪えられるか分からない! 手遅れになる前に行かないと!」
シアが羽交い締めをしてハジメを止めようとするが、ハジメは振りほどこうとする。
その時、彼に近付いたのはティオだった。口元を隠していた扇子を閉じると、軽く小突く。
「落ち着かぬか馬鹿者」
軽くとは言っても、元は竜人族。その威力は悶絶するものがある。
「痛ぁぁぁぁ!?」
「まったく……。ハジメよ。お主の強みは、戦いにおいて相手を冷静に分析して対抗策を練ることじゃろう。恋人が危機ならば、尚更落ち着くべきじゃ」
「そうだぜ、ハジメ。ポケモンにはタイプ相性があるんだろ? それを考えずに突っ込んだら、むしろ危険すぎる」
幸利にも窘められ、俯くハジメ。そのまま先程まで座っていた席に座り直すと、浩介と向かい合う。ハジメが落ち着いたのを見た浩介は、もう1つ伝えることを口にした。
「ハジメ。戦えてるメンバーなんだが、中村が意外と戦力になるかもしれない」
「中村って、中村恵里さん? 彼女が?」
「俺たちに隠してたみたいなんだけど、ポケモンを仲間にしていたようなんだ」
「本当に!? どんなポケモン?」
「あれは確か、ミミッキュだったか?」
「ミミッキュか! 中々良いポケモンだよ! で、相手のポケモンは?」
「俺が見た限りでは、ハガネールにバクガメス、エルレイド、あとはゴーストやテッカニンの群れだ」
恵里の手持ちに希望を持ったハジメだったが、相手のポケモンの名前を聞いてすぐに思考する。
「ハガネールとゴーストは、ミミッキュにとって天敵かもしれないな……。けど、ユエのゴルーグだったらハガネールは何とか出来るし、シアのアブソルにゴースト達を任せるのも行けそうか……?」
なお、この時ミュウは難しい話を聞いて眠くなってしまい、ハジメの背中にしがみついたまま眠っていた。その為、浩介とロアからすれば、寝ている幼女を背負ったまま真剣な顔をして思考しているハジメがシュールに見えていた。
暫くして、ハジメは口を開いた。
「分かった。浩介、僕たちが助けに行くよ」
「良いのか!?」
「うん。正直、天之河とか檜山に何言われるか不安だけどね。だけどポケモン達を、香織を、八重樫さん達のようなポケモンを理解してくれる人たちを見捨てたくない」
話を一部始終聞いていたロアが、ハジメに味方するように話を繋げた。
「ならば、俺たち冒険者ギルドの方で依頼として扱おう。頼むぞ、最年少の金ランク冒険者」
「っ! 僕を、金ランクに……?」
「手紙の内容を拝見させてもらった。お前さんなら、救出もこなせそうだからな」
ニヤリと笑みを浮かべながら、ハジメが金ランク冒険者であることを認める証明書を見せる。
「よし! 浩介、案内してくれ! 僕とユエとシア、幸利で迷宮に向かう。ティオはミュウの守りをお願いしても良いかな?」
「勿論じゃ」
背負っていたミュウをティオに預けると、眠っていた彼女はうっすらと目を開けた。
「うみゅ……。ハジメお兄ちゃん……?」
「ミュウ。僕たちは、ちょっとお仕事してくるから、ティオとお留守番してるんだよ?」
「んぅ、いってらっしゃいなの……」
まだ眠たいのか、ウトウトしながらもゆっくりと手を振るミュウ。浩介がからかうようにハジメに耳打ちした。
「何だか兄妹っていうより、親子だな」
「それ、香織の前では言わないでよ? 割りとマジで」
そう言いながらもハジメは香織の無事を祈りつつ、オルクス大迷宮へと足を急がせた。
さて、いよいよ次回、ハジメが香織の救出へ向かいます!