魔人族カトレアとの戦いで、操られたポケモンの大部分は解放に成功するも、カトレア本人には逃げられてしまった。ケーシィの“テレポート”で飛んだ先が分からない以上、追うのは不可能であった。
「ハジメ君!」
ハジメが振り返ると、自分の恋人が勢いよく抱きついてきた。倒れそうになるのを何とか踏ん張り、彼女の事を抱き締めた。
「香織……!」
「信じてた! 生きてるって信じてたよ! 私、わだじぃ……!」
「待たせてごめん……! ごめんよ……!」
ポロポロと涙を流し、ハジメの胸に顔を埋める香織。これ程までに待たせてしまったことを謝りながら、ハジメも彼女の抱き締める力を強めた。もう絶対に離さないと言わんばかりに。
「香織。南雲から離れるんだ」
だからこそ、光輝のこの発言が場を乱してしまった。
「光輝くん! 何でハジメ君に剣を向けてるの!?」
「香織を離せ、南雲!」
「……一応聞くけれど、僕は剣を向けられるような事をした覚えが無いんだけど?」
「黙れ! 魔物を操って戦うなんて、魔人族に寝返ったんだろう! そうでなければ、俺たちが苦戦した魔物たちを簡単に倒せる筈がない!」
光輝の脳内では、容易く相手を倒せたのは、予めカトレアと打ち合わせをしていたからだと決め込んでいた。自分達を油断させる為の罠だと思っているのだ。
「お前は最低だ、南雲! 香織の気持ちすら利用して俺たちを罠に嵌めようとしてるんだからな!」
「そうだ、その通りだ!」
「この裏切り者が!」
「とんだクズ野郎だぜ!」
光輝に便乗するかのように、檜山たち小悪党4人組もハジメを糾弾し始める。それに反論するのはハジメの仲間達である。
「テメェ等なんなんだよ! ポケモンを操るだけで魔人族扱いするとか、じゃあ俺やユエ達はどうなるんだ!」
「清水! 君は南雲に騙されてるんだ! 君は友人であることを利用されてるだけだ!」
「んなこと勝手に決めつけんな! 俺がハジメの仲間なのは、俺自身が決めたことだ!」
「だとしたら、テメェも裏切り者って事じゃねえか! このクソ野郎!」
光輝と檜山たちによる罵詈雑言が、洞窟内に響く。そんな彼らを黙らせたのは、ユエとシアだった。ユエは魔法で水を生み出して檜山たちに浴びせ、シアは身体強化を発動した足で地面を踏んで周囲に亀裂を起こした。
「ふざけるな!」
「ふざけないでください!」
彼女たちの顔は怒りに染まっていた。そのただならぬ空気に、光輝たちはたじろぐ。
「私たちは、ハジメが友人の助けを聞いて、助けるって決めた気持ちについて行った!」
「それなのに、戦いが終われば魔人族と同じに扱うとか、酷すぎます!」
「それに、私たちはポケモンを操っているんじゃない! ポケモンと一緒に旅をするって決めて、パートナーを信じて戦っている!」
「意思を奪って無理やり戦わせるような魔人族と、一緒にしないでください!」
2人の叫びに、場が静まり返る。しばらくの沈黙の後、声を挙げたのは雫だった。
「南雲くん。私たちを、操られていたポケモン達を助けてくれてありがとう。そしてごめんなさい。酷いこと言っているのに止められなくて」
「お前が生きてたなんてビックリだぜ。だけど助かった。ありがとうな。」
「八重樫さん、坂上くん……」
雫に続いて龍太郎もお礼を言い、さらに永山パーティーのメンバーもお礼と、糾弾を止めなかったことを謝罪した。光輝は、幼馴染が謝ったことに驚く。
「雫、龍太郎、どういうつもりなんだ!? 南雲や清水は魔物を操ってるんだぞ!」
「光輝、あのねぇ……。魔物と一緒に戦うのが魔人族なら、中村さんはどうなのよ?」
「それは……」
「俺は難しいことはわかんねえ。だけどよ、南雲も清水も、俺たちを助けてくれた。それだけは分かる。だからこそあいつ等が悪い奴らじゃねえと思うんだ」
「龍太郎まで……」
そこへメルドが、ハジメ達の元へ来る。
「坊主」
「メルドさん……」
「助けてくれて感謝する。そして、すまん! あの時助けてやれず、そしてさっきまでの罵詈雑言を止めず、本当にすまない!」
ここは異世界であって、地球ましてや日本ではない。だがメルドは心からの謝罪として土下座をした。王国の騎士団長がそこまでやるとは思わず、先ほどまで激怒していたシアやユエまでもが驚いた。
「これが謝罪になるかは分からないが、お前達が魔物いやポケモンを仲間として戦っている事は、王宮だけでなく教会にも秘匿しよう!」
「え……。そんな事をしてバレたら、メルドさんが……」
「助けてもらった恩を仇で返すくらいなら、どうってこと無い」
他の騎士たちも、メルドの部下である影響だろう。「団長だけにそんな責を負わせない」と口々に誓っていた。
「(なんで……なんでみんなは魔物を許せるんだ……。俺たちを、人間を傷つけてきたんだぞ……!)」
だからこそ、光輝はその心にモヤモヤしたものを感じていた。
次回こそ、次回こそ香織との再会&イチャイチャを書きます……!