今回は、ポケモンと言うよりありふれ要素が多めです。
光輝や檜山たちに責められはしたものの、大多数がハジメに感謝していたことで場の空気は少しだけ収まる。問題は、此処からだった。
「このポケモン達、どうするの?」
「それなんだけど……」
ハジメが解放されたポケモン達を見ると、ハガネールはその体をくねらせて地面へと潜っていき、バクガメスはハジメ達に背を向けて洞窟の奥へと消えていった。ゴースト達も暗闇に紛れて何処かへと消えていく。
「やっぱりね。元々この大迷宮を住み処にしてたんだ。あの魔人族は、戦力を現地調達してたみたいだね」
「だとしたら、元の場所に返すのはテッカニン達とエルレイドか。だけど……」
幸利の視線の先には、浩介にやたらと懐いているテッカニンと、エルレイドに話しかけている雫の姿があった。
「魔人族なんかより良いパートナーを見つけたようだな」
「2人なら、僕も安心かな」
浩介に懐いているテッカニンは、他の仲間達からも激励されているように見えた。
ハジメは空のモンスターボールを取り出すと、それぞれに渡す。
「2人とも、もしポケモンをパートナーにしたいなら、これに入れると良いよ」
「これって、モンスターボールか?」
「うん。ボールに入れておけば、いつでも側にいるからね」
「ありがとう、南雲くん。エルレイドも良いかしら?」
「エルッ」
雫の言葉に力強く頷くエルレイド。解放されたばかりの時は、操られている間の記憶があったのか落ち込んでいた様子だった。しかし雫が励ましたお陰なのか、彼女の手持ちになることを受け入れたのだった。
「テッカニン。一緒に行こうぜ!」
「テッカ!」
浩介がボールを見せると、テッカニンは自らボールに触れて中に入っていった。ちなみにこの個体は、ハジメ達が迎撃した時にサイホーンの“ロックブラスト”を回避し、浩介によって攻撃を防がれた個体である。
仲間が1人の人間の手持ちになったのを見届けた他のテッカニン達は、他のポケモン達と同じように洞窟の奥へと消えていった。ハジメはこれに少し驚いたが、真オルクス大迷宮には森のエリアもあったので、どこかに虫ポケモンのエリアがあるのだろうと考えていた。
一方、恵里の元には幸利がやって来た。
「ほら、ミミッキュもボールに入れとけよ。鞄とかに隠すの大変だろ?」
「う、うん。ありがとう……」
「どうした? どっか怪我でもしたか?」
「う、ううん! 何ともないよ!」
「そうか? なら良いけどよ」
首を傾げる幸利。だが恵里の頬が若干、よく見てやっと気付く程に赤くなっていたのは、誰も知らない。
大多数の生徒がハジメに感謝した為に何も言えなかった光輝は、面白くなさそうにこの様子を見ていた。
「(魔物を仲間にするなんて……。雫も遠藤も恵里も、南雲たちに騙されてる!)」
だが、自分が敬意を抱いているメルドすらハジメの味方をしているため、自分の主張を言えないでいるのだった。
オルクス大迷宮から出たハジメ達と勇者一行。先頭に立っていたハジメを出迎えたのは、ミュウだった。
「お兄ちゃーん! お帰りなさいなの~」
「ミュウ! ティオは一緒じゃ無いの?」
「ティオお姉ちゃんも一緒なの」
「『お兄ちゃんとお姉ちゃんをお迎えする~』って言ってのぉ。入り口で待ってたのじゃが、ハジメを見た瞬間に走り出したのじゃ」
可愛らしい幼女に、美しい和服美人がハジメ達を出迎える様子に、永山パーティーは「南雲と清水のやつ、ハーレムかよ……」と若干嫉妬した。
「えーと、香織? 何でむくれてるの?」
「美人さんに囲まれて旅してたんだ」
「ちょっと!? そのジト目止めてよ!?」
香織も頬を膨らませているが、それを諌めたのはユエである。
「嫉妬しなくて良い。ハジメは、貴女の事をずっと忘れなかった」
「ユエ、さん?」
「ユエで良い。……もう夕方。たぶんハジメは、近くの宿で一泊してから旅を再開する」
「え? また何処かへ行っちゃうの……?」
「ハジメには、やることがある。それは此処では言えない。貴女がハジメから聞くべき」
「……うん」
ユエの予言通り、ハジメはホルアドで休息を取ってからグリューエン大火山へ向かうと話す。それを聞いた香織は、あることを決意した。
休息のために取った宿。その一室のベッドに腰かけているハジメは、顔を真っ赤にして、鼓動が激しい胸を落ち着かせようとしていた。
「(どうしてこうなった!?)」
宿に泊まると決めた時、香織が一緒に泊まると言ったのだ。今まで会えなかった分たっぷりと話をしたいと、理由も付けて。当然ながら光輝は強く反対したのだが、雫と恵里が彼女の背中を押し、結局一緒の宿へ。
だが、まさか同じ部屋にされるとはハジメも予想外であった。
「(ユエもシアとティオも、幸利までニヤニヤしながら見てたよな!?)」
中々良い宿らしく、部屋に風呂が備え付けられていた。シャワールームの扉の向こうからは、恋人が体を洗う音がする。
「(……けど)」
再会した時の香織の涙。ハジメにはそれが、強い後悔となっていた。
「(……もう、離れたくない)」
シャワーの音が止み、何かに着替える音が少しだけした後、扉が開かれる。
「ハジメ君」
「かお、り……」
目の前にいるのは、ネグリジェ姿の香織。だがその生地は凄まじく薄い。つまり、そう言うことである。体が火照りそうになるのを抑えながら、ハジメは手招きする。
「……おいで」
「っ!」
ハジメに抱きつき、暫く胸板に顔を埋める香織。これが夢でないことを実感した彼女は顔を上げると、自然と目をつむり、ハジメと唇を重ねる。
「んっ、ハジメ君……本当に、会いたかったよ……」
「長く待たせちゃったね……」
一言二言交わす度に、2人は啄むようなキスを繰り返す。
「少しムッとしたんだよ? ハジメ君の仲間、綺麗な人ばかりだもん」
「まあ、そこは否定しないかな」
「むぅ……!」
「んむむむむ!」
ハジメの頬を抑えて、ブッチューと再び唇を重ねた。呼吸もままならず、ハジメは少し苦しくなる。
「ぷはっ。……これで許してあげる」
「ぷはぁっ! もう……。じゃあ、こうするっ」
「キャッ!?」
何をされたか分からない。だが気付けば目の前には天井と、顔を赤くして荒い息をするハジメの顔があった。
「地球にいた頃はキスで止まってた。けど……」
―――そろそろ、次に進まない?
ハジメのその言葉を理解した香織は、ゆっくりと頷いた。
本番は書いてないからセーフ……! 本番は書いてないからセーフ……!