ポケットモンスター トータス【本編完結】   作:G大佐

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最近、ありふれ×ポケモンの小説が増えてきて、頬が緩みます。

後半は少しシリアスです。またアンカジ公国については、完全に独自解釈です。


公国の実情

 アンカジ公国に向かうため、砂漠を渡っていたハジメ達。そこにあるオアシスにて、魔人族と戦う青年がいた。その青年は驚くことに、せいれいポケモンのフライゴンを連れていて、魔人族の操るノクタスと戦えていたのだった。

 

「ちっ! ノクタス、あいつを撃ち落とせ!」

 

「ノック……!」

 

 ノクタスが“ミサイルばり”を発射するが、青年が「避けろ!」と指示をすると、フライゴンは急降下。飛ばされる針を回避して地面スレスレを飛行する。

 

「そのまま“むしのさざめき”だ!」

 

「フラァァァ!!」

 

「ノッ…………!?」

 

 ノクタスは草・悪タイプ。故に虫タイプの技は効果抜群だ。

 あっという間に倒してしまった様子を見て、ハジメは驚いていた。

 

「(あの人、フライゴンに技を指示して、バトルを有利に進めてる! ポケモンの技が分かっていると言うことは、フライゴンと絆で繋がってるのか!?)」

 

 何よりも、人間族でありながらポケモンを恐れないと言う事が、ハジメにとって衝撃的だった。

 聖教教会の教えによって、ポケモンは人間を襲う存在であると強く唱えられている。故にトータスの人々はポケモンのことを「魔物」と呼んでいたのだ。

 

「クソッ、撤退だ!」

 

「待て!」

 

 赤い鎖が砕けて目を回すノクタスを放置し、魔人族は逃げ出した。青年が追おうとするも、魔人族は足元から煙幕を出して姿を隠す。煙が晴れた頃には、その姿は消えていた。

 

「オアシスに毒を入れようとしていたとはな……。警備をより厳重にしなければ」

 

 驚きのあまり固まっていたハジメ達だったが、ハッと我に返り青年へと駆け寄る。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「あぁ。大丈夫……だ……」

 

 ハジメ達の服を見て公国の人間だと思ったのだろう。だが、彼らの顔を見た瞬間に青ざめた。

 

「き、君たちは公国の人間では無いのか!? まさか、教会の……!」

 

「待って下さい! 僕たちもお聞きしたいんです。フライゴンについて」

 

「頼む! 私はどうなっても良い! だからフライゴンには、そして国の民には手を出さないでくれ!」

 

 地面に頭を着けるほど深く頭を下げる青年。その声は、まるで大きな失態が発覚した時のような、泣きそうな様子だった。

 その必死さに、ハジメと幸利と香織は顔を見合わせる。

 

「ねぇ、何かおかしくない?」

 

「『教会の』って言ってたな。まるで教会を恐れてるような、そんな感じだ」

 

「ハジメ君。この人を落ち着かせるためにも、私たちやポケモンの事を話した方が良いんじゃないかな?」

 

 ハジメは頷くと、青年に近付いた。

 

「僕たちは、アンカジ公国の商隊護衛を任された者です。仲間達の所で話を聞かせてくれませんか?」

 

「へ……?」

 

 糾弾されると思っていたのか、気を張っていた青年の力が抜けた。

 

 

 

 

 

「何と! 君たちも、魔物の力を借りて戦う者なのか!? しかも聖教教会が異世界より召喚したと言う、神の使徒とは!」

 

 商隊の荷車にて、青年……ビィズ・フォウワード・ゼンゲンが驚きの声を上げた。一方のハジメ達もビィズの素性を知って驚いている。

 

「僕たちも驚きですよ。アンカジ公国領主の息子だなんて……!」

 

「そんな大貴族が、自ら戦うなんてな」

 

「私たちとしては、トータスの人間にもポケモンと一緒になってる人がいた事に驚いてます」

 

 香織の言葉に、ビィズは感動したような顔をしている。

 

「ポケモン……そうか。君たちは魔物の事をポケモンと呼ぶのか。そっちの呼び名の方が親しみやすいかもしれない」

 

「先ほど、民には手を出さないでくれと願っておったな? つまりそれは、アンカジの民全員がポケモンと暮らしておるという事かの?」

 

「……そうなんだ」

 

 ティオの問い掛けに対するビィズの肯定に、またまた驚くハジメ達。

 

 ビィズの話によれば、オアシスがあるとは言え砂漠で生活するのは非常に厳しい。その為、アンカジ国民はポケモン達の力と人間の魔法とを併用して生活しているのだという。

 だが、それに良い顔をしないのが聖教教会である。アンカジ公国は他国との国交によって潤いを得ているが、教会がたちまち「異教徒の国」と称して国交断絶すれば、失業者が溢れてしまう。そのため、国民は普段はポケモン達を人目の付かない所に隠しながら、生活しているという。

 

「(何で……。何でそんな理想の国が、苦しめられなくちゃいけないんだよ……)」

 

 ハジメはアンカジ公国を、ポケモンと人間が共存する理想の国として見ている。それが、教会のたった一言で苦しくなるという現状に、悲しさと怒りを感じていた。そして改めて、聖教教会の歪さを強く感じていた。

 

「(……エヒトを倒したら、どうなるんだろう)」

 

 アルセウスの力を奪ったエヒト。ハジメはプレートを集めてアルセウスを復活させ、エヒトを神の座から退かせる事を計画していた。

 だがその後は? エヒトを倒し、もしアルセウスやパルキアの力を使って元の世界に帰っても、エヒトが死んだ後のトータスはどうなるのだろうか。

 

 エヒトの仇としてアルセウスを邪神扱いし、ポケモンを敵視する者達で溢れれば、アンカジ国民のようなポケモンと一緒に暮らす者たちは?

 仮にアルセウスが本当の神と認められて、信仰する集団が現れれば、「アルセウス様の意志」を免罪符に過激な行動をする者が現れるかもしれない。

 そもそも、何もかもを「神のおかげ」と信じて疑わないトータス人たちの末路は?

 

「(まず間違いなく、ロクな事にならない……)」

 

 ハジメが考える間に、一行はアンカジ公国へどんどん近付いていった。

 




果たしてハジメは、エヒトを倒した後はどうなるでしょうか。
一応考えてはいますが、まだまだ先の事ですのであまり明かしません。
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