アンカジ公国に到着したハジメ達は大通りを歩いていく。美しいガラス製品を始めとして、様々な物品が店を彩っていた。赤褐色の砂地に、乳白色の建物、それを彩るガラスや織物に女性陣はもちろん、ハジメと幸利も感動していた。
「綺麗ですね~!」
「とっても綺麗なの!」
「あれ? これって……」
ハジメが見つけたのは、色とりどりのビードロ。興味を持ったことに気付いたビィズが語るには、グリューエン大火山の火山灰を混ぜて作った、特別なビードロらしい。
「効果は様々で、例えば毒に侵された者に吹かせることで解毒をしたりとかだ。もっとも、あくまで応急処置に過ぎないから過信は出来ないが」
「実用性としても、インテリアとしても良いと言う訳じゃな。ふむ……。妾の里の者にお土産として買っていくか……?」
出来れば店を色々物色して買い物をしたい所だが、この後はビィズの父であり、この国の領主であるランズィと謁見する予定になっている。
売り子の呼び声や店主と客とのやり取りをBGMに、ハジメ達はビィズの案内について行った。
アンカジ公国の宮殿にて。ビィズからの報告を受けたランズィは顔をしかめていた。
「魔人族め。この国のオアシスを狙ってきたか……」
「はい。父上、オアシスの警戒を厳にした方が良いかと」
「兵士の配属を考え直さねばな。して、そちらの方々が、魔物……いやポケモンと共に行動する者たちと?」
ランズィがハジメを見ると、深く頭を下げた。
「僕たちは、各地の大迷宮を攻略しようと旅をしています。そして僕たちがポケモンと旅をしてる証拠は……シア、ミュウ」
「はい! おいで、アブソル!」
「マナフィ~!」
ハジメのサイホーンやユエのゴルーグ、幸利のガルーラは体が大きいため執務室で出せない。そこでシアとミュウの出番と言うわけである。
モンスターボールからポケモンが出てくる様子に、ランズィとビィズは目を見開いて驚いていた。
「なんと! その小さなボールから呼び出せるのか!?」
「ポケモン達も、苦しそうにしていない。中は快適になっているのか……?」
ハジメは心の中でガッツポーズをした。最初のランズィの視線は、ハジメ達がポケモンと共に居ることを疑うようなものだったからだ。
だが今は違う。その目は驚きと、ボールへの関心に変わっていた。
「……ハジメ殿」
「(来たっ!)……何でしょうか」
「そのボールは、我々でも作れるだろうか」
その問いはハジメの予想通りであった。モンスターボールさえあれば、ポケモンを隠し持つ事が出来る。今のアンカジ国民には必要な物だろう。
「(ハジメ君、どうするの?)」
香織の目は、ハジメがこれにどう答えるのかという心配を訴えていた。
「(ポケモンと一緒なのは良いが、悪用されればどうなるか……だな)」
幸利もハジメの判断を待っている。彼としては、悪用される可能性を危惧していた。
ハジメの答えは……
「はい。作り方も、教えられます」
ミュウ以外の全員の目が見開かれた。
ハジメがボールの作り方を教えると決めた理由。それは、エヒトを倒した後を考えての事だった。
偽物の神を倒せば、アルセウスがこのトータスの神となる。問題は、人間と亜人族と魔人族の確執だ。
残念ながら、ハジメには三勢力の確執を解決する力は持っていない。だが偽神を倒せば、宗教関連の組織が権力を失うことは確実である。至上の神と教えていたのに倒された。その時点で至上とは言えなくなるからである。トータスの人々は教会への不信感を抱くだろう。そうなれば、本来の王族が権力を取り戻す。もちろん、種族としての確執は残るだろうが、神敵だからと言う理由による戦争は起こりにくいだろう。
また王国は、ハジメから見ても経済的に潤っている。魔人族も、今まで出会ってきた者たちの服装からして貧しいとは言えない。よって不況による戦争も起こりにくいだろう。つまりは大規模な戦争が起こりにくいと考えているのだ。
「(きっと遠い将来、何か別な形で争うことになる。僕が目指すのは、ポケモンバトルによる決着。その為にはモンスターボールが普及されることが、第一歩だ)」
もちろん、下手すれば劇場版の1つにあった、ポケモンを利用した武力戦争もあり得るだろう。
そうならないように、まずは信用に値するアンカジ公国から、広めようと考えたのだ。
「(それに……。オスカー・オルクスもこれを望んでるかもしれない)」
人とポケモンが一緒に暮らせる世界を、オルクス大迷宮の創設者であり解放者の一人であるオスカー・オルクスは望んでいた。
彼の願いのためにも、ハジメはモンスターボールの作り方を教えることを決意したのだった。
ホウエン地方には、火山灰を集めてビードロを作る要素があったことを知り、アンカジ公国にもこれを取り入れました。
さて、エヒトを倒した後のそれぞれの勢力をどうするかというハジメの計画は、後半の通りでした。
現実はそんなに甘くないかもしれませんが、私が思い付く限りではこれが精一杯で……。
次回は、大迷宮に入ろうかと思っています。