モンスターボールの作り方をランズィに伝えたハジメ。だが、やはりその仕組みは難しく、国お抱えの錬成師たちも混ぜての講義となった。
だが、作り方は何とか教えることが出来たものの、砂漠では材料の『ぼんぐり』が手に入りにくい。そのため、公国内でのモンスターボール普及には、まだまだ時間が掛かるとの事だった。
モンスターボール製作講座を終えたハジメ。ランズィからは感謝の印として、国一番の宿に無料で泊まる事が出来た。グリューエン大火山の迷宮に挑むことを伝えたところ、「良い宿で疲れを癒してほしい」という事も兼ねているという。
「流石、領主様がオススメするだけあって、布団も上質だねぇ」
「そうだね。そのベッドで香織に膝枕されてるのが僕には最大の癒しかな」
そんな極上の宿の一室にて、ハジメは香織に膝枕をされていた。自分よりも歳上な錬成師たちに、オスカー・オルクスの発明品を分かりやすく、丁寧に教えたのである。頭脳をフル回転させての講義だったため、その疲労感は半端じゃない。
講義が長くなったため香織たちを先に宿に行かせていたのだが、部屋に戻った瞬間に彼女に頭を撫でられたのだった。
『お仕事お疲れ様♡ 良い子良い子♡』
『しゅきぃ……!』
恋人の甘やかし台詞は、思わず幼児退行しそうな程の魅力があり、今はハジメはすっかり骨抜きにされていた。
「んふふ。今のハジメ君、とっても可愛いよ」
「それはちょっと恥ずかしいな……」
普段は優しく、バトルの時は勇ましく、夜の行為では逞しい。そんなハジメの姿を見てきた香織にとって、甘えん坊な彼の姿は新たなギャップに萌えるきっかけとなった。
「……ねぇ、ハジメ君」
「なぁに?」
「トータスが、人とポケモンが一緒に暮らせる世界になると良いね。ハジメ君たちとポケモンを見てると、そう思うんだ。……だから、ハジメ君はボールの作り方を教えたんでしょ?」
「……うん。地球ではポケモンのゲームを作りたいって思いがあったけど、トータスの色んな所を見てきて、この世界でもやりたい事が出来たんだ」
「そっか……」
撫でている手を止めると、両手でハジメの頬を包み、そのまま唇を重ねた。最初は驚くように目を開くハジメだったが、すぐに目を閉じる。舌を絡ませるようなものではなく、長く唇を重ねるだけのキス。
しばらくして香織が顔を上げると、彼女は言った。
「私、どんな世界でもハジメ君と一緒に行くよ。地球でも、トータスでも。恋人だからって言うのもあるけど、それだけじゃない。ハジメ君が夢見る世界を、私も見たいから」
「香織……」
ハジメの胸が今まで以上に暖かくなる。彼女とならどんな世界でも冒険できる。不思議とそんな気がした。
翌日。グリューエン大火山の迷宮に挑みに行くハジメ達だったが、火山の内部であるため非常に暑い。暑さに弱いミュウには酷すぎると言うことで、彼女は留守番することになった。
「それじゃあミュウ。お留守番してるんだよ?」
「はーい! マナフィといっぱい遊ぶの~!」
「マナマナ!」
マナフィとお互いに頬擦りするミュウに周囲はほっこりするが、その中でも幸せそうな顔をしてる少女がいた。
「はぅわ~……! 可愛い~……!」
少女の名前はアイリー・フォウワード・ゼンゲン。ランズィの娘である。ミュウの姿を見たときから、まるで妹を甘やかすように構い倒している。ハジメが講義をしてる間に2人は仲良くなったようだ。
「アイリーお姉ちゃんも一緒に遊ぶの!」
「うん! 一緒に遊ぼうね~!」
アイリーの手を引いて走るミュウと、そんな彼女の頭に乗るマナフィ。ビィズとランズィもほっこりしていた。
「ハジメ殿。グリューエン大火山は、その環境ゆえに手強いポケモンが多い。十分に気を付けてくれ」
「ありがとうございます。それじゃあ、行こうか」
「うんっ!」
こうしてハジメ達は、グリューエン大火山へと向かっていった。
大砂漠の上空。火山へ向かうハジメ達を見下ろす者がいた。
――あの少年、我らが祖の力を集めし者か。
全身を炎に包んだその者は、ハジメ達が火山の迷宮へ……『炎の力』が眠る場所へ向かっている事を悟った。
――ならば、試さねば。
火山へたどり着いたその瞬間、その者は上空からハジメ達を奇襲した。
次回から、迷宮攻略が本格的にスタートです。