ヒードランは口に炎を溜め込むと、跳躍してアブソルに襲い掛かってきた。“ほのおのキバ”だ。
「アブソル、避けて!」
「ゴルーグ、“じゅうまんばりき”!」
「ゴルッ!」
ゴルーグが技を放とうとするが、ヒードランはアブソルから向き直り、ゴルーグに向けて“ほのおのうず”を放った。巨体を包み込む炎に、ゴルーグは身動きが取れない。再びアブソルに狙いを定めると、頭部を光らせる。
「“アイアンヘッド”か。やらせない! サイホーン、“ドリルライナー”!」
アブソルを守るように、ハジメのサイホーンがヒードランとぶつかり合う。炎・鋼タイプのヒードランにとって、地面タイプの技は効果抜群。重さの方ではヒードランが有利にも関わらず、後ろへ押し退けた。
「ありがとうございます! アブソル、“バークアウト”です!」
「アァァァァブ!!」
「ゴッ……!」
悪タイプのエネルギーが込められた咆哮に、鬱陶しそうな顔をするヒードラン。そこへ幸利が続けて攻撃をして来た。
「ガルーラ! “メガトンパンチ”で吹っ飛ばせ!」
「ガルラァァ!」
ガルーラの拳がヒードランを正確に捉える。勢いのついたパンチが炸裂した。しかし……。
「ゴォォォォ……!」
「やべっ! ガルーラ、回避だぁ!」
「ゴォォァァァァァ!!」
十字の爪を地面に食い込ませることで後退りせず、むしろそのまま口に炎を溜め込んで“かえんほうしゃ”を発射した。
「何つー威力だよ……!」
「清水くん、一旦ガルーラを下がらせて! 回復させるよ!」
「ユエ、妾が魔法で風を起こす。その炎が払えないか試してみよう!」
「ん、分かった! ゴルーグ、もう少し耐えて!」
「ゴル!」
ティオが魔法でゴルーグに纏わりつく炎を払おうとする。香織は幸利のガルーラに治癒魔法と、ハジメお手製のキズぐすりを施していく。
回復役がやられないように戦えるのは、ハジメとシアだけだった。
「私の身体強化では……蹴ったり出来なさそうですね。硬そうですし、何か熱そうです」
「少なくとも僕たちが直接殴ったりするのは、オススメしないかな」
サイホーンとアブソルが、ヒードランと睨みあう。再びヒードランは“アイアンヘッド”を放とうとする。
「“ずつき”だ!」
「“でんこうせっか”で接近、“スピードスター”を近くで撃って!」
サイホーンが攻撃を受け止め、その隙にアブソルが“スピードスター”を真横から食らわせる。だがヒードランも負けじと爪を光らせ、“メタルクロー”で2匹纏めて切りつけた。
更にヒードランは、口に勢いよく炎を溜めると、某狩猟ゲームの雌火竜のように、三方向に向けて炎の球を発射。着弾した所から、“ほのおのうず”よりも強力な炎が上がった。
「“マグマストーム”か!」
「ううっ、さっきよりも暑くなりましたよぉ……」
ハジメとシアを取り囲む炎の渦は、2人の体力をジワジワと削っていく。早く決着をつけるためにもと、ハジメが錬成の姿勢を取った。
「片足だけでも封じれば!」
「ゴオッ!?」
ヒードランの右後ろ足が、ハジメの錬成によって穴にめり込む。動けないことを察した瞬間、ヒードランは攻撃方法を遠距離系に切り替えた。口に炎を溜め込み、“かえんほうしゃ”を放とうとする。
そこへ、アブソルを背に乗せたサイホーンが突進してきた。
「“まもる”だ、サイホーン!」
ヒードランの口から放たれる炎を、サイホーンの“まもる”が防ぎきる。
「今です、アブソル! “つじぎり”!」
「アァブッ!」
「!?」
サイホーンの背中から高くジャンプしたアブソルは、ヒードランの背中を切りつけた。真上からの攻撃に姿勢を崩すヒードラン。そこへ風の渦が、巻き上がっていた炎の渦を突き破る。その隙間を潜って現れたのは、ティオ達だった。
「香織のお陰で回復した! 妾たちも加勢するぞ!」
「ゴルーグ、“メガトンパンチ”!」
「ガルーラもだ!」
2匹の拳が、ヒードランを吹き飛ばした。ノーマルタイプの技ではあるが、2匹とも香織の治療のお陰でコンディションは最高で、それが技の威力に直結している。
「ゴォ、ボッ……!」
ダメージを堪えるような仕草をするが、ヒードランはハジメ達を見つめる。彼らは警戒を解かない。
「…………ッ!」
左前足を勢いよく地面に叩きつけ、エネルギーを送る。すると、ヒードランの背後にある扉が音を立てて開いた。
「合格、なんだね?」
「…………」
ハジメの問い掛けに答えず背を向けるヒードラン。彼はそのまま壁をよじ登り、洞窟の奥へ消えていった。
「入り口で出くわした、ファイヤーだったか? アイツは空を飛んでいたし厄介だったが、あのヒードランって奴も中々手強かったな」
「爪を使って足を地面に固定していた。その気になれば、向こうは洞窟の壁を使って一方的に攻撃できたかも」
「此方が攻撃すれば、下手したら洞窟が崩れるかもしれないからのぉ」
「それなのに、正面からぶつかってきました。試練を与える存在だと自覚してたからなのでしょうか……?」
シアの疑問に答えたのは、香織だった。
「きっとそうだよ。私たちだって、ポケモンと一緒に旅をしてるんだもん。ヒードランは、この迷宮を作ったグリューエンさんの相棒だったんじゃないかな」
だとすれば、彼は何千年も、この大迷宮で待ち続けていたのだろう。自身のパートナーが遺したもの。それを託すに値する人間を。
「……行こう。そんな番人から認められたんだから」
こうして、ハジメ達は奥へと進んでいった。
洞窟の奥の祭壇。そこに納められているプレートを、ハジメは手にした。
ハジメは ひのたまプレート を手に入れた!
その時だ。祭壇の後ろにあった壁に、再びアンノーン文字が現れた。
――大地の化身への謁見を許す
そうして祭壇の後ろに、洞窟が現れた。
「まだ何かあるの!?」
「大地の化身……こりゃ相当なポケモンだよな?」
「まさか……」
プレートを手に入れて終わりでは無い事に驚きつつも、ハジメは文章にあった『大地の化身』に心当たりがあった。
更に洞窟の奥へと進むと目の前に広がるのはマグマの海だった。その中央に、大きな石像がある。
「あれも、ポケモン?」
「石になってますね」
「封印されとるのか、それとも自らが眠るときに石化しておるのか、もしくは両方もあり得そうじゃ」
不思議そうに石像を眺めるシアやユエ、ティオ達。だがハジメはその石像を見て、震えた。そしてその石像の名前を呟こうとした瞬間、ハジメのポーチから「ひのたまプレート」が飛び出し光を放った。
「これは……!」
ハジメの視界は白く染まった。
ハジメが目を開けると、そこは燃え盛る大地だった。空から容赦なく日光が降り注ぎ、火山は噴火を繰り返している。だが不思議と暑さは感じない。
「ここは……」
『人間』
「っ!」
辺りに響く、低い声。同時に地面が大きく揺れて、ハジメの目の前に『ソレ』は現れた。
『神の力の一端によって、意識がここへ飛ばされたか』
「グラードン……!」
それも石像の姿ではない。真の力を開放した、
『急げ、人間。創造神を復活させろ。三神の怒りが蓄積されつつある』
「三神って、まさか……!」
『偽りの神が、創造神の力を手にした時の赤き鎖。三神はそれにより縛られ、憎しみに身を染めつつある』
「(魔人族の赤い鎖とは違う……? まさか、エヒトは……!)」
ハジメが立てた仮説。それは、アルセウスの力を奪った後のエヒトの行動だった。
解放者オスカー・オルクスの言葉を聞いた時から、ハジメは疑問に思っていた。ディアルガ、パルキア、ギラティナはアルセウスから産み出された存在である。産みの親とも言える存在が力を奪われれば、3匹は間違いなくエヒトを襲うだろう。にも関わらず行動を起こした形跡は無く、ましてや3匹が怒ればこのトータスは崩壊している筈なのだ。なぜ、数千年も保っていられたのだろうか。
仮説にしか過ぎないが、エヒトはアルセウスの力を奪った十全な状態の時、「完全な赤い鎖」を用いて3匹をそれぞれの世界に縛り付けたのでは無いだろうか。それにより3匹は動けずに居るのかもしれない。
魔人族の神が伝えた「不完全な赤い鎖」は、おそらく解放者達によってプレートを奪還された後に、作られたものかもしれない。
「(だけど、あくまでエヒトがやったのは、3匹の邪魔が入らないように行動を封じただけ! 意識はある訳だから、3匹ともエヒトに対して怒りを溜め込んでいるのか!)」
『急げ人間。神の力を集め、創造神を復活させろ。三神の怒りを静めるのは創造神しかいない』
ゲンシグラードンの言葉を最後に、再び視界が白く染まった。
仕事も忙しくなり、取りたい資格もあるのでその勉強で更新が遅くなるかもしれません。ですが失踪するつもりはありません。