ポケットモンスター トータス【本編完結】   作:G大佐

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区切りの良さを考えて、原作のあの胸糞シーン(個人的感想)までにしました。


メルジーネ大迷宮(前編)

 メルジーネ大迷宮。海底遺跡とも海の神殿とも言えるその場所は、入り口のやや暗めな雰囲気とはうって変わって、透明な海中を映す神秘的な光景をハジメ達に見せていた。ラブカスが群れとなって泳ぎ、ネオラントが水面から差し込む月の光を反射して輝く。サシカマスがその鋭いフォルムに違わず勢いよく泳ぐのを、ヨワシたちは逃げ惑う。

 まるで水族館のチューブの中を歩いているような、試練とは思えない程の美しさ。感動している彼らの目の前を、ホエルオーが通り過ぎた。

 

「ひゃあぁぁぁぁ!?」

 

「シア、驚きすぎ。でも大きい……凄い……!」

 

「現実で見ると圧巻だな……!」

 

 ミュウも目を輝かせながら歩いている。一方のマナフィは、言葉にするなら「ほえ~……」と言いそうな表情で、海のポケモン達を見ていた。

 

 だが、その美しい光景もだんだんと暗くなっていく。カラフルなポケモン達の姿は消え、魔法によって寄せ付けていないのか、ハンテールのような深海のポケモンすら姿が見えなくなってきた。

 

「まさか、このまま海底まで歩き続けるとか無いよね?」

 

「今まで戦い続きじゃから、こう言った異色な試練は戸惑うのぉ……」

 

「……待ってみんな。何かある」

 

 チューブが終わると、ドーム状となっている広場へ来た。中央には、相当昔の物であろう沈没船が鎮座している。その沈没船を挟んだ向こう側に、扉があるのだがハジメ達には見えていない。

 

「行き止まりなの?」

 

「いや、火山の迷宮のパターンを考えると、何かある……!」

 

 

――あなた達は知るべきよ。偽りの神がもたらす惨劇を。

 

 

 その瞬間、広場の床全面を使用した魔方陣が展開され、眩い光を放つ。

 

「香織、ミュウ、みんな!」

 

 目の前が真っ白になっていく。

 

 

 

 

 

 

 ハジメが目を開けると、そこは甲板だった。空の暗さからして夜であり、何かしらのお祝いのような雰囲気であった。

 

「ハジメ君、ここって……」

 

「あの沈没船が、沈む前の時代かな……」

 

 地面に足を着けている感じがしない。自分達は過去の出来事を観ているのだと、ハジメは悟った。

 会話を盗み聞きしてみると、このパーティーは終戦を記念したパーティーだと言う。魔人族に亜人族、そして人間族。侮蔑し合う筈の種族が一堂に会し、談笑するのはまさに奇跡の光景だった。

 

「こんな時代があったのか……」

 

「先人達の偉大さ、ですね!」

 

「楽しそうなの~!」

 

 幸利やシア、ミュウは微笑んでいたが、それに違和感を覚えたのはティオとユエだ。

 和平条約を結んだならば、何故いまは戦争が続いているのか?

 

 思い付くのは2つ。何処かの代で条約が反故にされたか…………()()()()()()()()()()()()()()()()か、だ。

 

「ティオ、ミュウの目を隠して、耳も塞いで!」

 

「了解じゃ!!」

 

「みんなも見ない方が良い! トラウマになる!」

 

 しかし、ミュウへの対応は迅速であったが、ハジメ達への対策は一歩遅かった。

 

 人間の国王が「この和平が愚かであった」と告げた瞬間、魔人族の王が人間の兵士に殺された。困惑する亜人族、魔人族に人間達は次々と剣で、槍で殺していく。

 エヒトへの賛辞を叫びながら、狂ったように笑う王。ハジメ達の顔が青ざめた。

 

「な、なん、なんで、どうして……!」

 

「さっきまで平和を喜んでたのに! 何でそんなことが出来るの!?」

 

「これが、これがエヒトが俺たちにやらせようとしてた事だってのかよ!」

 

「酷い……酷すぎます、こんなの! 何で皆が積み上げてきたのを、こんな簡単に……!」

 

 血の臭いはしない。逃げ惑う者も、殺す者も、自分達の体をすり抜けていく。だがその断末魔は、狂った賛辞は、鼓膜にこびりついたままだった……。

 

 

 

 

 

 気付けば、周りは先ほどまで居た広場に戻っていた。だが戻った瞬間、ハジメ、香織、幸利、シアは先程までの残酷な光景に耐えられず、吐いてしまった。

 ユエはかつて一国の王であったこと、ティオはその長い寿命ゆえに死と言うものを見てきたから耐性はある。だがそれでも、先ほどの光景は2人を不快にさせるには十分だった。

 

「う、ううっ、ううっ……!」

 

「酷い……酷いよ、こんなの……!」

 

 シアと香織は吐きながら泣く。

 

「胸糞すぎんだろ、クソが……!」

 

 幸利は口を拭いながら舌打ちした。そしてハジメは……。

 

 

 

「クズが…………クズが…………クズがぁぁぁぁ!!

 

 

 

 今までに無い叫び。普段のハジメなら絶対に言わないであろう言葉だった。

 

「人々を争わせて、ポケモンを迫害して、平和を掴んだと思ったら叩き壊す! それがアルセウスの力を使ってやることかぁぁぁ!!」

 

 ハジメの中で怒りの炎が燃え上がる。その叫びは、ティオですら唖然とするほどの圧を放っていた。

 叫び終えると、ハジメは肩で息をしながら黙り込む。

 

「スゥー………! ハァー…………!」

 

 そうして大きな深呼吸を繰り返すと、ハジメの怒りの圧が鎮まった。

 

「……行こう、みんな。エヒトを許しちゃいけない。奴を倒すためにも、プレートを集めなきゃ」

 

 その言葉に、全員が大きく頷いた。




次回こそ、アルセウスとエヒトの真実を明らかにします……!
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