道中ポケモン達を蹴散らしながら進む光輝たちだったが、昨夜ハジメが予想した通り、洞窟に生息するポケモンが多かった。
例えばズバットの群れであったり、ヤミラミの姿も見えたのだが、光輝たちの敵では無かった。全員に戦いを経験させるというメルドの言葉で交代しながら全員が戦った。しかし、その戦績が振るわないと言うか、動きがぎこちないのは、やはりハジメだった。
「……錬成」
ハジメは淡々とした口調で、ストーンエッジをイメージするように棘を生やして、ズバット達を攻撃する。仲間が倒れたことに恐怖したのか、残りのズバット達は逃げていく。
「錬成にそんな使い方があったとはな……。魔物に対する知識も豊富だし、お前は頭が良いな!」
「……ありがとうございます」
メルドの言葉に喜びたくないハジメだったが、そんな彼を察したのかメルドは頭に手を乗せる。
「……だが、無理はするな。聞けばお前たちの世界は平和で、生き物を傷付けることも無いそうじゃないか。本当に辛かったら、俺に言ってくれ」
「……はい」
その言葉にほんの少しだけ心が軽くなっていたハジメだが、それを面白くなさそうに睨む男がいた。檜山だ。
「(クソッ、クソッ! キモオタの癖に一丁前に褒められやがって! あんな弱そうな奴の恋人が
後列へと戻っていくハジメに、「大丈夫?」と声を掛ける香織。それに対してありがとうと応えるその姿すら、檜山にとっては忌々しいものだった。
そして二十階層へ進むと、鍾乳洞を思わせる空間に出た。辺りには岩が転がっているが……。
「気を付けろ! 岩に擬態しているぞ!」
メルドの警告と同時に、近くの岩が突然転がりだした。鈴が急いで結界を張ると、それに弾かれる。そしてその正体を露にした。
「ゴローン! てことは、今のは“ころがる”攻撃か!」
すると、ゴローンは近くの石を掴んで投げてくる。“なげつける”攻撃だ。しかも投げつけてきたのは只の石ではない。
「イッシ!」
「え!?」
なんと、それはゴローンの進化前であるイシツブテだったのだ。まさかポケモンを投げてくるとは思わず、固まってしまう香織。
「香織! はぁぁぁ!!」
いち早く動いたのは雫であった。剣を素早く抜き、切るのではなく弾くように振るう。
「(くっ、確か南雲君の描いていたポケモンかしら? 硬いわね……!)」
「ゴロロロロロ!」
「え、嘘!?」
だが、それもフェイクだったのか、今度は“ロックブラスト”を放とうとするゴローン。何もない所から岩を作り出す、まさに魔法のような攻撃。今まで“たいあたり”など、本当に動物のような行動が多く見られたからこそ起きた、非常識な光景による驚愕。それが雫の動きを止めてしまった。
「(まずい、このままじゃ八重樫さんも香織も危ない! 助けるためには、ゴローンに攻撃するしか……でも!)」
前世の頃から好きだったポケモンと、自分にとって愛しい人とその友人。2つが天秤に掛けられた。
「ぐっ…………くううっ! 錬成!!」
ハジメは駆け出した。ゴローンが香織と雫を狙ってる以上、「恋人とその友人を守る」と言う感情で動いたのだ。
“穴を掘る(人間ver)”でゴローンを足止めすると、龍太郎に声をかけた。
「岩のようなポケ……魔物は、水や草の魔法、そして格闘攻撃なんかが有効だ! 坂上がアタッカーになってくれ!」
「南雲、お前そこまで調べて……。分かった、任せろ!」
穴にはまって思うように動けないゴローンは、龍太郎の格闘攻撃によって倒された。それがリーダー格だったのか、イシツブテや他のゴローン達はジリジリと距離を取る。
「(僕たちを脅威と感じて、距離を取ってる。それで良いんだ。これ以上、無闇に戦いたくない)」
その時だった。
「よくも香織と雫を……! 許さない!」
「え!?」
驚きで動きが止まったのを、「怖くて動けない」と勘違いした光輝が、聖剣を構え始めたのだ。
「万翔羽ばたき、天へと至れ――“天翔閃”!!」
「待て、馬鹿者!」
「止せぇ!」
その瞬間、光が巨大な斬撃となって放たれた。狭い場所だからかポケモンたちは巻き込まれる。
光が晴れると、ポケモン達の姿は無かった。光輝は息を吐くと、イケメンスマイルで振り返り、もう大丈夫だと声をかけようとした。その瞬間、その頭に拳骨が落とされる。
「へぶぅ!?」
「この馬鹿者が! 逃げようとしてる奴に無駄に魔力を使ってどうする! しかもこんな狭い空間で大技を放って、崩落でもしたらどうするんだ! 仲間を殺す気か!」
「す、すみません……」
逃げようとしたポケモンに攻撃をしたことを咎めてくれたため、ハジメは何も言わなかった。だが小声で悪態はついてやった。
「逃げる奴にトドメをさすのが、お前の思う『勇者さま』のやり方かよ」
その時だ。香織が、先程の攻撃で壊れた壁の向こうに何かを見つけた。
「あのキラキラしてるの……何だろう? 宝石……?」
それは、壁に埋もれてはいるが、とても大きな宝石だった。メルドがそれを見ると、驚きのあまり目を見開いた。
「何と……こんな所に、金剛石があるとはな……!」
「金剛石って、つまりダイヤモンド!?」
生徒たちはざわめきながら、巨大ダイヤモンドをひと目見ようと近付こうとする。
「こらこら、無闇に近付くんじゃない! もしトラップだったら……」
「俺たちで回収しようぜ!」
メルドが注意しようとしたタイミングで、生徒たちの間を掻い潜った檜山が、一気にダイヤモンドへ近付いた。
「待て! 安全確認がまだ―――」
その時、フェアスコープと呼ばれる罠を調べる道具でダイヤモンドの周りを確認した騎士団員の1人が、顔を青くして報告する。
「団長、トラップです!」
「なっ、やはりか!」
メルドが退避を呼び掛けようとしたが間に合わず、辺りを魔方陣から放たれる白い光が包んでいった。
光が収まると、ハジメ達がいたのは巨大な石橋の上だった。手すりといった物も無く、足を踏み外せば底の見えない闇へとまっ逆さまだ。転移した状況に最初はポカンとしていた生徒たちだったが、メルドを始めとする騎士がすぐに動いた。
「階段へ急げ! 何が起こるか分からんぞ!」
慌てて階段へ走ろうとする生徒たち。ところが、その目の前で魔方陣が大量に展開され、光り始めた。
そこに現れたのは、牛の頭蓋骨のような物を被った、骨の棍棒を持つポケモン……ガラガラだった。
「まずい、数が多すぎる! お前達! 連携して……」
その時、ズシン!と足音が聞こえ、メルドは思わず振り返る。そこに居たポケモンの名を、ハジメは呟いた。
―――サイホーン……
それも、ハジメの想像よりも大きく、目が赤く光っている個体……オヤブンと呼ばれる個体である。
トラウムソルジャー枠はガラガラ、ベヒモス枠は親分サイホーンになりました。
さてさて、ハジメはどう戦うのか。次回をお楽しみに。