雲1つ無い夜空の下、金属のぶつかり合う音が響き渡っていた。
「ちぃっ!」
舌打ちしてしまうティオに対し、ノイントの表情は変わっていない。ティオは“ドラゴンクロー”を両手に展開しており、ノイントを切り裂こうとしていたのだが、彼女の持つ大剣によってガードされてしまう。
対するノイントの内心は、ティオへの警戒を優先していた。
「(強大な力を感知。主の定めた魔物と同等の力。脅威と判定)」
つばぜり合いを止めお互いに距離を取るが、それぞれ相手から目を逸らすことは止めない。
ノイントは剣に魔力を込め、
「フゥー……ッ!」
「っ!」
その瞬間、指の輪から群青とも言えるような不可思議な色をしたブレスがノイントを襲った。ポケモンで言うならば“りゅうのいぶき”だろう。だが、ノイントは咄嗟に剣を盾にする。“分解”の効果によりブレスは消滅し、無傷で耐えた。
「これも効かぬか」
「…………」
銀色の翼を羽ばたかせ、光弾を発射する。ティオはその弾幕を掻い潜って距離を詰めていく。再び“ドラゴンクロー”を振り下ろすが、ノイントは表情を変えずに剣で防ぐ。
「同じことをして何になるのです」
「先程のお返しになるのじゃよ」
「っ!!」
その瞬間ノイントを襲ったのは、“かみなり“。その威力は大きく、上から受けた彼女が一時的にとはいえ動けなくなる程であった。
体勢を立て直すが、高度ではティオが上を取っており、出会った当初とは逆の位置になっていた。「お返し」とはこの事だったのである。
「どうじゃ、見下される側になった気分は。続けて行くぞ!」
「挑発のつもりであるならば、効いていません」
ティオが腕を振るうことで“りゅうのはどう”が発生。ノイントは剣2本を振るい攻撃を凌ぐと、そのまま固有魔法を解除し、リミッターの解除を宣言した。
「プレートエネルギー、解放」
ノイント達『神の使徒』。それはアルセウスから力を奪った後、全盛期にあったエヒトが造り出した存在。彼女たちの心臓に当たる部分には、エヒトから与えられた力が内臓されている。それはエヒトオリジナルの魔力だけではなく、アルセウスのプレートの力も込められていた。
ノイントがプレートの力を解放すると、彼女の体を薄いピンク色のオーラが包み込む。その姿に、ティオは本能から恐怖した。それもその筈、ノイントが纏ったのはフェアリータイプのオーラだったのだから。
「(あれは……ちょっと、いやかなりマズイのぉ)」
ノイントは力強く羽ばたき、もともと上に居たティオを追い抜くと、月の光を背にエネルギーを溜める。
「発動」
その瞬間ティオを襲い掛かったのは、ピンク色のエネルギーの波と、肌が焼けるような感覚。目の前がピンク色に染まっていると言うのに、感じるのは痛みだ。
「ぐぁぁぁ!?」
ノイントが放ったのは“めざめるパワー”。『神の使徒』たちは、これを
「(いかん! 体勢を整えて……!)」
「墜ちなさい」
「ぐっ、はっ……!」
続けて放たれる“めざめるパワー”。今度は氷タイプによるもの。空中で大ダメージを負ったティオは、そのまま白目を剥いて意識を失った。そのまま地面に向かって落ちていく。
彼女の脳内によぎるのは、幼き日の思い出。
亡き親の手に引かれて訪れた、神聖な『塔』。
塔の中にて出会うは、黒き竜と白き竜。
雷の力、炎の力と共に現れたその姿に。
彼女は「カッコいい」と純粋に言った。
2匹の竜はその言葉に微笑んだ。
ノイントの目の前に、地上から炎の渦が舞い上がる。雷を伴いながら放たれたその力に、彼女は防御の姿勢をとった。
「排除した筈です。なぜ」
炎の渦が消える。その中から現れたのは、墜ちた筈のティオ。しかしその目は左が赤、右が青のオッドアイに変わっていた。気になるところは、その目に光が無いことか。
「(その力は強すぎる。主は望んでいません。彼女の排除を優先)」
再び体内からプレートの力を解放しようとするが、ティオはそれを許さない。
「“クロスサンダー”」
ティオは青白い雷を身にまとい、ノイントに向かって一気に突撃。攻撃を受けた彼女は大きく姿勢を崩した。
「くっ……」
「“クロスフレイム”」
「固有魔法、展開」
続けて左腕を空に掲げると、そこから巨大な火球を作り出す。その熱量にノイントは、固有魔法“分解”で打ち消そうとした。
ところが、まるで技量など関係ないと言わんばかりに、その熱はノイントの剣を溶かし始めたのだ。
「馬鹿な……」
「墜ちよ。……“りゅうせいぐん”」
一瞬だけ空から射し込む光。次の瞬間には、ノイントに向けて大量の礫が降り注いだ。彼女は残った剣で防ごうとするが、その弾幕によって徐々に押し負けていく。
「あり得、ない……!」
そうして、ノイントは墜ちていった。
「……う、ぐ……」
対するティオも、“りゅうせいぐん”の副作用で力が大きく抜けてしまい、ゆっくりと地上へ降りていく。
「休むと……しよう……」
目の色が戻ったティオは、近くの木に寄り掛かると、休息のために目を閉じた。
次回は幸利&リリアーナ視点のお話になります。