ポケットモンスター トータス【本編完結】   作:G大佐

9 / 146
いつも書き終えたら12時ちょうどに投稿できるようにしていたのですが、今回は思ったより書けず遅れてしまいました。申し訳ないです。


運命の分岐点

 サイホーンの姿を見た瞬間のメルドの動きは迅速だった。

 

「アラン、生徒達を率いてガラガラの群れを突破しろ! カイルとイヴァンとベイルは、全力で障壁を張れ! 光輝たちは撤退するんだ!」

 

「待って下さい、俺たちも戦います! あのサイみたいな奴がヤバいのでしょう!? なら俺たちも!」

 

「馬鹿者! 今のお前達では、サイホーンを相手にするのは無理だ! 最強と謳われた冒険者ですら倒せなかったんだぞ!」

 

「ですが、置いてなんて行けません!」

 

「こんな時に我が儘を……!」

 

「ブルォォォォォォ!!」

 

 サイホーンが大きく咆哮し、前足で地面を軽く蹴り始める。明らかに突進する合図だが、あの巨体ではあっという間に全滅するだろう。

 

「「「全ての敵意と悪意を拒絶する、神の子らに絶対の守りを、ここは聖域なりて、神敵を通さず―――“聖絶”!!」」」

 

 騎士団員たちが長い詠唱を終えて、時間は短くともあらゆる攻撃を防ぐ障壁を展開する。それと同時にサイホーンが一気に突進してきた。

 もしハジメが見ていたら、魔物学によってその技を“スマートホーン”と判断していただろう。

 

 

 

 

 

 その頃、生徒たちはパニックになりながらガラガラに攻撃をしていた。しかし65階層に相当する此処のガラガラたちも、それなりにレベルが高い。魔法攻撃を骨で弾き、お返しにと骨で殴ってくる。まだ技を放ってないあたり、本能で生徒達を格下だと見たのだろう。

 

「みんな落ち着け! 訓練での連携を思い出すんだ!」

 

「あいつには水属性の魔法が効く! だから落ち着いて!」

 

 護衛の騎士アランが大声で呼び掛けても、ハジメが対抗策を叫んでも、混乱は収まらない。そこへ一体のガラガラが骨に力を溜め始めた。格下を相手に戦うのが面倒になったのか、技で倒すつもりのようだ。

 

「(骨が光ってる……? “ボーンラッシュ”か“ホネブーメラン”を放つつもりか!)」

 

 そのガラガラの近くに居たのは、園部優花。

 

「あっ…………」

 

 優花は恐怖のあまり足腰の力が抜けて、へたり込んでしまう。ガラガラの睨むような目付きが、彼女に死を悟らせてしまった。

 

「(私……死ぬんだ……)」

 

 “ボーンラッシュ”が放たれる……その時だった。

 

「錬成ぇぇぇっ!!」

 

「ガラァッ!?」

 

「え……?」

 

 突然、地面から棘のようなものが飛び出し、ガラガラを突き飛ばした。その攻撃をしたのは……ハジメだ。

 

「立てる!?」

 

「え、あ……」

 

「しっかり! 僕よりステータス高いんでしょ!?」

 

 優花の腕を引っ張って立たせると、更に錬成を駆使してガラガラの群れを突き飛ばしていく。

 

「あ、ありが―――」

 

「もう、こんな時に天之河は何やってんだよ!」

 

 お礼を言おうとした優花だったが、ハジメは真剣な顔のまま、未だにメルドと問答をしている光輝のもとへと向かってしまった。優花は名残惜しそうだったが、すぐにガラガラとの戦いに戻った。

 

 

 

 

 

 サイホーンが突進を繰り返しており、障壁にどんどんヒビが入っていく。メルドはその事を察して光輝を説得する。

 

「もうもたないぞ! 光輝、早く撤退するんだ! お前達を死なせる訳にはいかないんだ!」

 

「嫌です! メルドさんを置いていく訳には行きません! 皆で絶対に生き残るんです!」」

 

「こんな時に我が儘を言うな! 力量の差を見ろ!」

 

「光輝、メルドさんの言う通りよ! ここは退くべきよ!」

 

「そうだぜ光輝! 俺でも分かる! アイツはヤバい!」

 

「みんなどうしたんだ!? 俺たちは世界を救わないといけないんだぞ!」

 

「いい加減にしてよ光輝くん! 私たちじゃ勝てないってメルド団長も言ってるんだよ!?」

 

「香織まで……! いや、大丈夫だ! 怖がる事なんて無い! 俺たちなら勝てる!」

 

 自分の力に過信してるのか、根拠もなく戦おうとする光輝。雫の怒りが頂点に達しようとした、その時だった。

 

「何やってんだよ!」

 

「南雲、何で此処に!? ここは君の出る所じゃ――」

 

「もっと後ろも見ろよ! リーダーが居ないからみんなパニックになってる! 皆を守るって言ったよね!? なら、皆を落ち着かせてよ!」

 

 ハジメの言葉に一瞬詰まるも、何かを言い返そうとした時だった。

 

「下がれぇぇぇ!!」

 

 その瞬間、再び“スマートホーン”を放ったのか、最後の障壁が砕け散った。ハジメが咄嗟に壁を錬成した事で威力は下がる。

 

「……僕が足止めします」

 

「なっ! 坊主、無茶だ!」

 

「足止めだけです! それに、僕の知識が正しければ、アイツは今突進することしか考えてない。足元を崩せば時間稼ぎくらいは……!」

 

 ハジメは、自分の錬成を岩・地面タイプの技と認識している。サイホーンは地面・岩タイプのポケモンであるため、“穴を掘る(人間ver”で足止めすることを考えたのだ。

 

「……分かった。必ず助けるからな!」

 

 メルドは光輝の襟首を掴んで引き下がる。

 

「ハジメ君!」

 

「香織……必ず戻るから!」

 

 両手を合わせ、地面に手をつける。

 

「錬成ぇ!!」

 

「グオオッ!?」

 

 前足をつけている足元に穴が開き、地面に頭を打ち付けるような姿勢になるサイホーン。

 

「人間版ストーンエッジぃ!!」

 

 前のめりに近い姿勢になった所を更に錬成し、サイホーンの背中を押さえつけるようにした。

 

「お前達、坊主を援護しろ!」

 

 メルドと光輝によってガラガラ達を撃退出来た生徒たち。ところが、メルドの言葉に戸惑う。

 

「みんなお願い! ハジメ君が1人で戦ってるの!」

 

 香織の言葉で石橋の方を見ると、ハジメがサイホーンを足止めしているのを見た。

 

「あの化け物が埋まってる……?」

 

「あの南雲がやったの……?」

 

 その戸惑いがサイホーンにチャンスを与えてしまった。穴から抜け出し、押さえつけていた錬成物を破壊すると、ハジメを睨み付ける。

 

「やばっ……!」

 

「グルオアァァァ!!」

 

 再び攻撃しようとするサイホーン。ハジメは咄嗟に逃げようとする。

 

「お前達なにをやってる! 坊主の脱出を手伝え!!」

 

 メルドの一喝で、生徒達は魔法の詠唱を始める。風や炎など、タイプ相性を考えてはなかったが、足止めするには十分かもしれない。

 

「ハジメ君、早く!」

 

「ハジメ、急げ!」

 

 香織や幸利が叫ぶ。多くの魔法が放たれる中を、ハジメは走り続ける。

 

 その時だった。

 

「グオオオオオオ!!」

 

 ハジメを逃がさないと言わんばかりに咆哮をあげると、何と小さくジャンプして大きな振動を与えた。

 

「(しまった……“じならし”か!)」

 

 その振動で大きく体勢を崩して、走るのが止まってしまうハジメ。

 

 

 そこへ1つの魔法がハジメに迫り……直撃した。

 

 

 魔耐のステータスが低いハジメは、大きく吹き飛ぶ。

 

 それと同時に、ハジメの錬成と“じならし”の影響で脆くなった橋が崩れ始める。

 

「(みんな……香織……!)」

 

 手を伸ばすも、ハジメの体は奈落へと向かっていった。

 




ハジメ、奈落へ。しばらくはハジメ視点の話を書くつもりでいます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。