人手不足だからって、6日連続勤務はさすがに心身ともにキツいと思うのです(真顔)。
聖教教会の地下牢。そこは、教会が異端と判断した者が収容される場所である。今ここに入れられているのは畑山愛子に八重樫雫、遠藤浩介に中村恵理、園部優花を始めとする『愛ちゃん護衛隊』の面々である。
南雲ハジメをリーダーとする旅の一行を異端認定すると言う教会の判断に、彼らは抗議した。すると向こうは武器とポケモンを取り上げ、地下牢に放り込んだのである。この檻にはライゼン大峡谷から採取された金属が使われており、魔法を無効化してしまう。脱出する手段が無い状態であった。
「ごめんなさい、皆。巻き込んでしまって……」
「そんな、謝らないでよ八重樫さん!」
「そうだよ! 南雲くん達のお陰で私たちだって、優花っちのシェイミと遊べていたんだし!」
「クラスメイトが犯罪者扱いされるなんて、俺たちだって許せねえよ」
雫が護衛隊の面々に謝るが、全員その事を全く気にしていなかった。幸利や浩介ほど長く関わってないが、地球にいた頃は楽しそうに絵を描いているハジメの姿を見たことがあった。実際にトータスでハジメからポケモンの事を教わり、別れた後も優花の連れてるシェイミと戯れてる内に、最初はあったポケモンへの忌避感は薄れていた。
だからこそ、何も犯罪をしていないのに異端認定をした教会の判断に、菅原妙子や相川昇といったポケモンを連れてない面々も抗議した。その結果、こうして地下牢に入れられた訳だが。
「何とか脱出して、永山たちの心配も解消させないとな……」
浩介は、同じように抗議しようとした永山パーティーの面々を心配する。だが光輝たち勇者パーティーと共に前線で戦う彼等はそれすら許されずに、自分だけ引き離されてしまった。なぜこの時だけ影が薄くならなかったのかと、自分の性質を今は恨んでいる。
「……先生?」
「……私、悔しいです。教会の歪さは南雲くんから教えられていました。戦闘への強制参加への抗議で私は強気になれたと思って、今回も抗議しましたが……もっともっと強気になれば良かった!」
愛子は強く後悔していた。立派な教師になると言いながら生徒を守れず、それどころか巻き込んでしまっている。「どれほど自分は弱いのか」と自己嫌悪に陥っていた。
「(……誰か助けてよ。こんな空気、ボクは嫌いだよ。助けてよ……)」
清水くん、と。恵理はふと脳裏に浮かんだ男子の事を思う。
その時だった。神殿騎士の1人が監視役の騎士へと慌てて話しかけていた。
「異端者の1人が来た! 魔物も連れてると言う話だから、人手が要るらしい! 来てくれ!」
「え、このガキ共の監視はどうする?」
「大丈夫だ。どうせ壊せないんだ。今は敵を殺すことが優先だ!」
「了解だ! お前ら、大人しくしてろよ!」
騎士2人がドタドタと慌ただしく地上へと向かい、地下牢はシンと静まり返る。
「……異端者の1人が来たって?」
「まさか南雲たち?」
全員が会話の内容に戸惑っていると、上から『ズドォォン……!』と音が響いた。それから少しして何者かがやって来た。
「無事か!?」
『『『清水(くん)!?』』』
「私も居ますよ」
『『リリアーナ王女ぉ!?』』
まさか幸利が来るとは思わず、さらに王女の登場で全員が混乱する。そんな彼等の様子に目もくれず、幸利は檻に触れる。
「っ、魔力を流してみたけど弾かれやがった。魔法では壊せないか」
「ガルーラならどうでしょうか」
「魔法が駄目なら物理で、てか? ガルーラ、頼むぞ。皆は檻から離れててくれ」
「ガァル!」
昇たちは改めてガルーラの姿を見たが、以前ウルの町で初めて見た時よりも怖くはなかった。むしろその目は強さと優しさを兼ね合わせた、何処か安心できる目である。
ガルーラは檻を掴むと、グググと持ち前の怪力でねじ曲げていく。
「カルル! カールー!」
「行けるぜガルーラ! 頑張れ!」
「ガルァアアアア!」
我が子と相棒の応援を受けて、ガルーラはお母さんパワーを全開。一気に檻を曲げて、大きな脱出スペースを作り出した。
「す、凄い……!」
「中村。ミミッキュ達は何処だ?」
「別の檻に閉じ込められてるかも。神殿騎士達がボクらを人質にしてたから、ミミッキュ達も抵抗できなかったんだ!」
「よし、ポケモン達も救出だ!」
意外なリーダーシップを見せた幸利を、恵理は少し頬を赤くして見ていた。
地下牢別エリア。其処に収容されていたのは雫のエルレイド、浩介のテッカニン、恵理のミミッキュ、優花のシェイミである。
「エル……」
「テカ……」
エルレイドとテッカニンは、檻をどうにか壊せないかと思考していた。
「ミ~……」
「ミキュミキュ」
優花に会えず寂しがるシェイミを、ミミッキュは黒い腕のようなもので優しく撫でる。
どこか沈んだ空気であったが、遠くからドタドタと足音が聞こえてきた。
「エルレイド!」
「テッカニン!」
「ミミッキュ!」
「シェイミ!」
相棒の声が聞こえ、ポケモン達は一斉に檻に駆け寄る。雫たちはすぐにでも抱き締めたかったが、その為には目の前の檻が邪魔である。
「よし、ガルーラ! もう一回こじ開けるぞ!」
「ガル!」
雫たちの時と同じように怪力で檻をねじ曲げると、ポケモン達はそれぞれの相棒のもとへ駆け寄った。
「ミミッキュ! 良かったぁ……」
「ミキュ~!」
恵理はミミッキュに頬擦りする。
「シェイミ、もう大丈夫よ……!」
「ミィミィ~!」
優花はシェイミを優しく抱き締めた。
「無事で良かったよ、テッカニン」
「テッカ!」
浩介とテッカニンは、ハイタッチするようにお互いの手を重ねた。
「エルレイド……本当に良かった……!」
「エルッ!」
泣きそうになる雫に、エルレイドは安心させるかのように笑みを見せる。
そのような光景を、幸利とガルーラは顔を見合わせ、互いに微笑んだ。
次回は、ハジメ達との合流を予定しています。